コンテンツ
リコード法について
概要
リコード法(ReCODE Protocol)は、アルツハイマー病の予防と逆転を目的としたアプローチであり、医師であり研究者のデール・ブレデセン博士によって提唱されました。このプロトコルは、アルツハイマー病が単一の原因によるものではなく、複数の要因に基づいて発症するという考えに基づいています。従って、生活習慣の変更、栄養補助、運動、脳の刺激、睡眠の質の改善など、複数の側面からアプローチすることを推奨しています。
ブレデセン博士は、アルツハイマー病の発症にはさまざまなタイプがあるとし、それぞれに対応するためにパーソナライズされた治療計画を提案しています。たとえば、炎症を引き起こす生活習慣や環境要因、栄養不足、代謝の問題など、様々な要因を特定し、それに基づいた治療を行うことを提案しています。
アルツハイマー病の基本3タイプ
リコード法におけるアルツハイマー病のタイプ分けは、デール・ブレデセン博士による疾患の異なる原因や特徴への対応を指します。ブレデセン博士は、アルツハイマー病が一つの病態ではなく、複数の異なる生理学的なメカニズムによって引き起こされると提唱しています。これに基づき、アルツハイマー病を以下のように大きく分類しています:
タイプ1型:炎症によるアルツハイマー病
- 特徴:炎症反応が強く、感染症、長期にわたる低級炎症、または免疫系の問題などによって引き起こされます。
- アプローチ:炎症を引き起こす要因の特定と管理、抗炎症食の摂取、適切な運動。
タイプ1.5型:糖毒性によるアルツハイマー病
- 特徴:糖尿病やインスリン抵抗性に関連する糖毒性によって特徴づけられます。これは、血糖値の問題が1型の炎症と2型の萎縮の両方を引き起こすことによります。
- アプローチ:血糖管理、低糖質食の採用、運動を通じたインスリン感受性の向上。
タイプ2型:萎縮によるアルツハイマー病
- 特徴:栄養素の不足、ホルモンの不均衡、または神経成長因子の不足によって引き起こされる神経の萎縮が主な原因です。
- アプローチ:栄養補助、ホルモン補充療法(必要に応じて)、脳の健康を支える食事。
タイプ3型:毒性によるアルツハイマー病
- 特徴:重金属、溶剤、農薬などの環境毒素による神経損傷が原因です。このタイプは、しばしば遺伝的要因と組み合わせて発症します。
- アプローチ:毒素の除去、デトックス対策の強化、脳保護のための栄養補助。
これらの分類は、アルツハイマー病の治療において、患者一人ひとりの原因や症状に対してパーソナライズされたアプローチを提供することを目的としています。ブレデセン博士のアプローチは、従来の治療法に比べてより多面的で個々の患者の生活習慣や環境因子を考慮に入れたものです。アルツハイマー病の予防と逆転の可能性を探る上で、 これらの分類とアプローチは重要な役割を果たします。
治療目標
治療目標を大きく、毒素の除去、回復力の促進、神経系の再構築の3つにまとめるています。
- 認知機能の低下に寄与する毒素、有害物など要因の除去
- 最適な健康サポートによる回復力
- 神経ネットワークの再構築
7つの生化学的目標
これらを実現するために以下の大きく7つの生化学的目標を掲げています。
- インスリン抵抗性に対処する
- ケトーシスを得る
- 栄養、ホルモン、栄養因子(成長因子)サポートのすべてを最適化
- 炎症の解消・予防
- 慢性病原体の治療
- 生物毒素などの毒素を特定して除去
- 睡眠時無呼吸症候群を取り除き睡眠を最適化
リコード法 7つの基本アプローチ
それぞれの生化学的目標を達成するための7つのアプローチ。
- 食事
- 運動
- 睡眠
- ストレス軽減
- 毒素の解毒
- 認知機能増強・脳トレ
- サプリメント
リコード法 各プロトコルのガイドライン
アルツハイマー病の生化学的な問題と、取り組みをより詳しくまとめた記事です。
この記事でとりあげた30項目のすべてを実行する必要があるというわけではなく、検査によって不要なものであったり、実行内容が変わることがあります。
サイト概要-認知症
管理人がサイト開設に至るまでの経緯を織り交ぜながら、リコード法についての考えや内容を解説しています。基本的な内容は変わっていないと思いますが、サイト開設時(2017年~)に公開していた記事であり、多少古びているデータや考え方もあります。
- 母が若年性アルツハイマー病と診断されて
- 母の進行抑制の本当の理由
- 「私は母のことを、母の皮をかぶった化け物だと思っていました。」
- 現代医療と相性が悪い認知症
- リコード法 作用機序・3種類のアルツハイマー
- リコード法を構成する3つの軸
- リコード法 アルツハイマー病には36の穴がある
- リコード法 専門家の批判・医療制度
- リコード法 個人的課題(費用・時間・他)
- リコード法 倫理的課題
- リコード法 技術的課題
- リコード法 社会的課題
- アルハカ改善策
- 日常の改善策・伝統療法の復権
- 複雑な多因子疾患を治すには
- 早ければ早いほど回復も治療も簡単
- リコード法は信頼して実行するものではない
- 世界が注目する認知症大国日本の未来
- 認知症ビジネスを通じた日本の課題の解決
- 何もしなければ結果は最悪だが責任は回避できる
- 注意事項・趣旨説明
- 最後に
- 補足(情報探索・学習方法)
リコード法 関連書籍
当記事のリコード法に関する記事を利用するにあたって、リコード法開発者であるデール・ブレデセン博士の著書「アルツハイマー病 真実と終焉」(日本語訳)が出版されていますので、そちらを読んで頂いた上で、当記事を利用していただくようお願いします。
「アルツハイマー病 真実と終焉」(日本語訳) 2018年2月出版
英語書籍がOKな方であれば、出版されたばかりの「The End of Alzheimer’s Program」をおすすめします。より実践的な内容へと大幅にアップグレードされています。
「The End of Alzheimer’s Program」2020年8月出版(英語)
第一部を公開しており、第二部の4章以降はパスワード制限をかけています。原著を購入した頂き、購入証明を提示して頂いた方にはご要望に応じてパスワードをお知らせしています。
リコード法を実行した患者さんの体験報告
「The First Survivors of Alzheimer’s」(アルツハイマー病の生存者たち:患者が人生と希望を取り戻すまで)2021年8月出版(英語)
その他の関連サイト、文献は当ページ下段に記載しています。
その他 アルツハイマー病 関連書籍
「アルツハイマー病は治る」ミヒャエル・ネールス (2018)
ブレデセン博士と同様にアルツハイマー病の多因子説を支持し、生活習慣や代替医療を用いてアルツハイマー病の治療を目指したドイツ人医師の著作です。リコード法の先見性と密度の影に、地味な表装とありがちなタイトルで^^;隠れてしまっていますが、また少し違った角度でアルツハイマー病の多因子治療を見ることのできる良書です。
著者の論文 アルツハイマー病の統一理論(UTAD)(2016)
著者はリコード法とは直接関係しないものの、リコード法で取り入られている多くの介入が豊富な引用文献とともに紹介されている総括的な論文であり、特にライフスタイルに関与するプロトコルについての学術的な理論的根拠を知りたい場合はこちらのほうが参考になるかもしれません。
論文形式としては比較的平易な文体で記述されており、健康と理論メカニズムの関係に興味のある一般の方やにもおすすめできます。
日本語訳
アルツハイマー病 3型(毒素)患者さん向け
書籍「TOXIC HEAL YOUR BODY」ニール・ネイサン博士
直接アルツハイマー病を題材に扱った本ではありませんが、リコード法のサブタイプ3型でもあるカビ毒暴露の患者さん必読の書です。アルツハイマー病に限らず、精神疾患、慢性疾患、ME/CFS、病名がはっきりせず苦しんでいる方、おそらくはLong-COVID患者さんの一部でも関係してくると思います。最初の3章までを翻訳しています。
https://alzhacker.com/toxic-heal-your-body-chapter1-why-would-anyone-want-to-read-this-book/
医療関係者向け
アルツハイマー病の終焉 – 第2版 – The End of Alzheimer’s 2017年
トーマス・ルイス(Thomas J. Lewis)博士によるアルツハイマー病の分子的基盤について書かれた包括的な書籍です。紛らわしいタイトルですがブレデセン博士との関わりはないようです。偶然にも内容も驚くほどブレデセン博士の基本的なコンセプトと重なります。一般の医師、研究者向けに書かれてあり、難易度は中程度、英語ですが、より学術性が高いため、内容的にはこちらがより受け入れられるという方もいらっしゃるかもしれません。
日本語訳(一部)
リコード法関連論文
アルツハイマー病の次世代治療薬(2013)
日本語訳
認知機能低下の逆転 新しい治療プログラム(2014)
症例研究 10人の患者(アルツハイマー病、aMCI、SCI)のうち、9人が主観的または客観的改善を示す。6人の患者が仕事への復帰または継続が可能に。
日本語訳
代謝プロファイリングはアルツハイマー病の3つのサブタイプを区別する(2015)
代謝プロファイリングによってアルツハイマー病のサブタイプが3つ明らかに
日本語訳
アルツハイマー病における認知機能低下の逆転(2016)
5~24ヶ月間のパーソナライズされた治療を受けた10名の患者の改善症例
日本語訳
吸入性アルツハイマー病(タイプ3)CIRSの表現型(2016)
3型アルツハイマー病は特定の毒素への曝露の結果であり、マイコトキシンなどのバイオトキシンによる慢性炎症反応症候群(CIRS)の表現型として最も多いのが吸入性(IAD)である。
日本語訳
100名の認知機能低下の逆転症例 2018-8月
症例研究 軽度認知障害(MCI)、主観的認知障害(SCI)、確定診断を伴わない認知機能低下を示す患者100名(英語) 改善の平均ポイント4.9
日本語訳
システム・ネットワーク障害としてのアルツハイマー病:慢性ストレス・不恒常性、自然免疫、そして遺伝 2020年9月
アルツハイマー病をシステムネットワークの障害としてとらえる視点の紹介。そして、アルツハイマー病の病因・病態・生物学的研究において、慢性的な組織傷害・不恒常性、自然免疫反応、炎症が中心的な役割を果たしていることを示唆する生化学的・遺伝学的証拠の紹介。
日本語訳
認知症医療のパラダイムが必要である理由について
アミロイド仮説の限界
アデュカヌマブ
アルツハイマー病のマルチモーダル(集学的)治療について
アルツハイマー病に対する疾患修飾併用療法の根拠
- 複数の複雑な生物学的経路がこの疾患(アルツハイマー病)に関与している。
- これらの経路内には、幅広い範囲の薬物投与可能なターゲットが存在する。
- 臨床的に意義のある効果を得るためには、複数の経路または2つ(またはそれ以上)の点で同じ経路を標的とすることが必要である。
- 単剤療法は、それ自体が中程度の臨床効果を有するものであっても、組み合わせることにより、相加的または相乗的な効果が得られる場合がある。
- 2種類以上の疾患修飾剤の使用は、各薬剤の投与量をより小さく、より安全な可能性にすることを可能にし得る。
- 生物学的メカニズムの進化に伴い、一連の薬剤の使用、または組み合わせが、疾患の連続性に応じて必要とされる可能性がある。
- 規制当局(食品医薬品局)は、併用療法の概念を支持しており、2つ以上の新薬を併用するための共同開発のためのガイダンスを発表している。
- 臨床医は、多くの疾患の治療のために治療法を組み合わせることに慣れている。
統合医療・精密医療・システム生物学
現在の臨床研究・エビデンスの限界
https://alzhacker.com/category/medical-research/research-method/
リコード法 臨床試験と結果
リコード法 2019年開始の臨床試験(前向き観察研究)2020年12月 終了予定
アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)と診断された被験者
日本語訳
アルツハイマー型認知症に対する精密医療アプローチ 概念実証試験の成功
Precision Medicine Approach to Alzheimer’s Disease: Successful Proof-of-Concept Trial
50歳から76歳までのMCI(アルツハイマー病の前段階)または初期の認知症患者25名が参加。それぞれの患者は、炎症、インスリン抵抗性、栄養素やホルモンの欠乏、特定の病原体、毒物、バイオトキシン、遺伝など、複数の潜在的要因を評価された後、個別のプロトコルで治療を受け、9カ月間継続した。
認知機能検査の結果、試験参加者のうち、21名が改善(84%)、1名が変化なし(4%)、3名が低下(12%)した。[R]
日本語訳
ReCODE: 認知機能低下の回復を目的とした個別化、標的化、多因子化の治療プログラム
リコード法 改善率
リコード法の実践と課題
リコード法を実行する上で考えられる障害要因を、これまで寄せられた体験談も取り入れてまとめてみました。
リコード法は、進行ステージだけで判断できるわけではありませんが、実行の判断、治療の目的とする考え方もMCI、初期、中期、後期で大きく変わってきます。
本来はこういった個人差がある事柄の一般化は、過小な効果の評価による機会の損失、または反対に過度な期待を与えてしまう両方の側からのリスクがあります。しかし、不明瞭なままにしておくことが、かえって弊害が大きくなると考えたため作成しました。管理人の主観的な解釈が含まれていることを念頭に、また改善可能性は刻一刻と変化しつつあることも含めた上で参考にしてください。
リコード法を実行してみたが改善を示さない、という人が見落としがちな16のポイント。「The End of Alzheimer’s Program」からの翻訳です。
リコード法の検査と治療
リコード法 タイプ診断・検査項目
リコード法における1型、1.5型、2型、3型(4型、5型)の特徴や検査値などの概要です。
認知症未発症段階での認知症予防検査一覧です。日本では検査機関がまだ未整備であるため、この予防検査が実質リコード法の基本的な治療のための検査として用いられています。
コグノスコピーを基本とする内容ですが、検査値のぞれぞれの詳細を書き加えています。
認知機能低下予防のための検査 PreCode(プリコード)
認知症発症後やMCIの方への治療検査ではなく、将来の認知機能の低下を防ぐための最小限に構成された予防検査(PRECODE)です。日本で可能な検査も多いため、リコード法の治療検査が難しい方は、これらの検査だけでも受けられることをおすすめします。
リコード法の検査機関・検査費用
リコード法に肯定的な医療機関のリストを、リコード部のうにさんが作ってくれました。
日本ではハードルが高いリコード法の検査ですが、リコード法を実行する上で避けて通れないため、検査と実行プランをたたき台として作成してみました。
検査項目の費用と、検査可能な範囲の違いを機関別、難易度別にまとめてみました。
病院関係者の方へ リコード法と関連する検査
多くのリコード法を実践したいと考える患者さんが、リコード法関連の検査を受けてくれる病院を見つけることができず未検査のまま実施しているのが日本の現状です。検査のみならずリコード法のアドバイスや指導を行ってくれる病院が広がってくれることが理想ですが、異なる分野、リソースの制約、混合診療の問題など様々な懸念事項があることも承知しています。
まずはリコード法と関連する検査のうち可能なもの、例えばリコード法の予防検査項目だけでもセットを組んで実施していただけると、現在自主的に行っている認知症患者さんの大きな助けとなります。リコード法検査の導入を検討していただくよう切にお願いいたします。
アルツハイマー病のリスク因子
アルツハイマー病 36の発症因子(ブレデセングループ)
ブレデセン博士のAPP依存性受容体仮説に基づく、アルツハイマー病発症36の寄与因子。(現在は50以上に増加しています。)多少専門的な内容になります。
ブレデセンプロトコルでは特に各プロトコルに参照文献が付随しておらず、各因子・標的についての記事内容や文献等は管理人が調べたものです。
リコード法のアルツハイマー病36の発症因子は、主にアミロイドβの増加要因の上流に位置するものが取り上げられています。それら以外にも、アルツハイマー病の進行に伴う下流の事象や、アミロイドとは直接的な関連性が弱いが、アルツハイマー病発症リスクに寄与しうる因子もまだ多く存在するように思われます。それらを管理人が覚書として記録しているものです。乱雑にまとめています。
アルツハイマー病 12の危険因子(ランセット委員会の報告)
教育不足、高血圧、聴覚障害、喫煙、肥満、うつ病、運動不足、糖尿病、社会的接触の少なさ、過度のアルコール消費、外傷性脳損傷、大気汚染
アルツハイマー病と関連する400~600の潜在的寄与因子
https://alzhacker.com/prevention-and-reversal-of-alzheimers-disease-es/
アルツハイマー病 オフラベル医薬品
サプリメント・プログラム
アルサプについて、詳しくはリンク先の記事に書いていますが、サプリメントを中心にリコード法などのライフスタイル介入を組み入れて作った、検査が難しい人のためのアルツハッカープロトコルです。
関連サイト
アポロヘルス
ブレデセン博士が所属するアポロヘルス社、様々なリコード法関連の情報やサービスを提供しています。
ApoE4.info
アルツハイマー病、患者さんベースのサイトですが、リコード法関連の認知症治療情報が最も充実している掲示板サイトです。