ウクライナ-ロシア戦争について 概要 Alzhacker
About the Ukraine-Russia War

強調オフ

ロシア・ウクライナ戦争社会問題

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ウクライナ-ロシア戦争

戦争の最初の犠牲者は真実である

– ハイラム・ジョンソン

最初に

ホームページに記載していましたが、長文になりましたので、こちらに別ページとしてまとめました。

ウクライナ-ロシア戦争の問題については、すでにトップレベルの専門家から多くの素晴らしい意見が述べられており、主要なものはサイト内でも紹介していますので、そちらを参照していただければと思います。

ここでは、当サイトが議論の別れているウクライナ問題について考えていくにあたって、どのようなアプローチを採用したかなど、(どのように考えているかではなく)経緯について簡単に述べておきたいと思います。

まず、最初にお伝えしておきたいことは、驚くようなことではありませんが、当サイトがロシア、ウクライナいずれであろうと加担する、または反対する利害関係はなく、どちらかの意見に固執したい心理的理由もありません。そして、記事内容の傾向からロシア支持のように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのようなことはありません。

ここで、支持が何を意味するか人によって異なる理解をもつかもしれませんが、特定の支持をしないというのは、ロシアやNATOへの肯定的または否定的評価を、アイデンティティやイデオロギーと結び付けないという意味です。説得力のある議論があれば、それがどちらにとって肯定的であろうと否定的であろうと情報として耳を傾け、提供しようと考えています。

正戦論と部族主義

そして、戦争を止めるには、周囲がどう考えるかだけではなく、どのような条件(目的、範囲、権限)で外国のアクターによる占領が正当化されるのかという「正当性の概念・理論」が重要な意味を帯びてきます。正当性の概念は私たちが素朴に「正しい」と感じる感覚と密接に関連しあっていますが、概念的には異なるものであることを理解することが重要です。ロシアの側の戦争への正当性の論拠がどのようなものであるかを理解することも、彼らが素朴に正しいと考えることとは異なります。(言っている意味がよくわからない場合、まず最初にメタ倫理学と正義の戦争理論を学ぶことをおすすめします。)

参考記事:占領権限の正当性:正義の戦争理論を越えて

完全勝利の概念ほど危険な幻想はなく、過去に我々を苦しめたもの、あるいは未来に我々を苦しめる恐れのあるものはない。- ジョージ・ケナン

もちろん感情的にはウクライナの人々に同情的であり、ロシアについては、米国政府とCIAの行ってきた非道な行為を知った後では、同情的にならざるを得ず、また、それ以上に米国が戦争を仕掛けてきた多くの国々についても、居たたまれない気持ちをいただくようになりました。これは無知だった私自身が反省するところです。

しかし、繰り返しになりますが、それはチームに別れてロシアまたはウクライナを支持したりすることとは異なります。対立、部族主義がもたらす愚かさを強く嫌っており、どちらかを一方的に支持することほど戦争において危険な行為はありません。

また、ロシアの目指すBRICSを中心とした多極化した国際社会が、米国、欧米を中心とする一極集中型の政治構造と比較して、薔薇色の解決案を提供してくれるという考え方にも懐疑的です。空間だけではなく、ロシア-ウクライナ-米国-NATOの歴史の時間をどこで区切るかによってもニュアンスは変わってきます。全体としては白黒で是非をつけれるようなものではないが、かといってどっちもどっちという中間色も誤りであるという印象を抱いています。

このどっちが悪いんだ的な思考から抜けられない人には、プーチンについて批判的であるイアン・デイビスの総説をおすすめします。パート1~6まであります。

参考記事ウクライナ戦争!?何にとっての利益なのか?その歴史的背景(前編)

もう一点加えておきたいことは、メディア、SNS上で、あまりにも支持と不支持の対立概念にさらされているため、異なる概念の構成がそもそも理解できない方もおられるようですが、サイトとして中立を主張しているわけでもありません(正確には「中立」という概念に積極的な意味を見いだせない)。

ここには、何を言おうとしているかではなく、なぜそう言うのかに対する誤解があるように思います。(評価体系、価値体系の軸が異なる人の存在が理解できていないのかもしれません)

死者、孤児、ホームレスにとって、狂気の破壊が全体主義の名の下に行われようと、自由や民主主義の聖なる名の下に行われようと、どんな違いがあるのだろう? – マハトマ・ガンジー

侵攻前はどのように語られていたのか

話を情報収集の方法論に戻しますが、多少の時間をかけてはいるものの、考え方、方法論はシンプルなものです。日本が米国を中心とする連合国の側にいることを考えれば、日本にいる限り、ウクライナ側に有利なプロパガンダのインセンティブが強く働くと思われますが、暫定的にロシアとウクライナ両者にプロパガンダの要素があると仮定しました。

そして、もうひとつの仮定は、ロシアがウクライナ侵攻した後ではなく、侵攻前にどのようなことが語られていたのか、2022年3月以前の報道や記事、論説などは、現状よりもプロパガンダの要素が少ないであろうと推測したことです。

そこで、主に利益相反のないと考えられるロシア研究の専門家の著作で評価の高いものを、特定の主張に偏らないようランダムに(関連性だけで)選び、集中的に読み理解することに務めました。歴史書、学術書を含め数十冊、論説は1000を超えていると思います。

一般報道と事実のギャップ

その結果、何十年にもわたってロシアを研究してきた多くの専門家が共有しているコンセンサスが、現在、アメリカや日本国内のメディアで語られる主張と単に大きく異なるだけではなく、ロシア側の主張がまったく扱われていないという、現在と過去の大きな情報のギャップに直面することになります。

そのコンセンサスについて手短に知りたい方は、最近出版された「How the West Brought War to Ukraine」がおすすめです。小著であり、さほど網羅的ではありませんが、重要な経緯が文献とともに、まとまっていると思います。以下の記事で一部を翻訳して紹介しています。

参考記事西側諸国はいかにしてウクライナに戦争を持ち込んだか

ここで断っておきたいのは、研究者同士で概ね得られている過去のロシア、ウクライナ問題におけるコンセンサスや見解が正しいと主張しているのではありません。そうではなく、その歴史的で重要な主張が、メディア報道などで批判的な意見の一部としてどころか、全く扱われていないに対する「なぜ?」という疑問です。報道内容が非常に選択的であるだけではなく、私の知る限り、ほぼすべての報道で統一されており、かつ継続的でもあるため、それが偶然起こったこととは、とても考えにくいものです。

とんでもない陰謀論を決して許さないようにしよう。

-米国大統領ジョージ・W・ブッシュ、9.11後の最初の国民向け演説

バイアスを避けたかったことから多読してきましたが、現在の露骨な選択的報道を理解するのにそこまで調べたり読んだりする必要はありません。ロシア-ウクライナ問題が直接主題となっている本はさほど多くはなく、出版されているものは10冊届かない程度だと思います。ほぼすべて通読していますが、その中の数冊の本を少し時間をかけて読めば、報道が虚偽だけではなく重要な多くの情報が「省略」されていることを発見すると思います。つまりこれは巧妙に隠された陰謀論のようなものではないのです。

※少々余談ですが、ワクチンやイベルメクチン、マスクの問題は、少なくとも当時は実際には思われているほど簡単に是非を理解できる問題ではないものでした。

言い換えれば、テレビで登場して特定の話題しか語らない専門家は、その数冊でさえ読んでいないほどに能力が欠如している人物か(それを報道機関がわかって採用しているのか)、専門家本人が何らかの隠れた動機に基いて嘘をついているかのどちらかであると考えなければ、その統一された「省略」の説明が私にはつきません。

参考記事ウクライナ戦争に関する米国政府の16の大嘘

省略されている事実は一つや2つではなく、控えめに見ても二桁はあり、そのすべてがロシアに有利であり米国に不利益な事実であると言っていいでしょう。個々のレベルでは単に無知で語っていないだけという可能性もありえると思いますが、メディアにでてくる専門家全員が無知で、複数ある特定の話題について一切語らないということがあり得るのでしょうか??

集団思考特徴一つは、「故意盲目性」と呼ばれるものである。人々はしばしば、物事を知っているが、より大きな社会集団に適合するために、知らないふりをすることを選択する。 このような意志的無知逆説は、どこを見ないようにすればよいかを知っていなければならないということだ。「Groupthink in Scinece」

反対意見を封じること

語られない(または片側の意見しか述べない)一例だけでも、NATOの東方拡大、セルビアへの主権侵害・78日間の空爆リベラル外交の悲劇、ロシアのレッドライン、ウクライナとグルジアを加盟国リストに加える計画ランド研究所のロシア弱体化計画対露挑発とウクライナへの侵攻の予測、侵攻前の米国のウクライナへの軍事的支援、CIAの工作、マイダン革命の米国による選挙工作、ソロスの支援、ウクライナ政府の腐敗、ウクライナのバイオ兵器計画、パンドラ文書、ネオナチのウクライナ民族主義者組織 (OUN)、2022年までに殺された1万4千人のドンバス系住民、ロシア系ウクライナ人のロシア語禁止アムネスティの公開文書、ミンスク協定の拒否、侵攻直前のバイデンの外交放棄、ロシア侵攻の直前、キエフは分離独立した州であるドネツクとルハンスクとの国境に大規模な部隊編成を敷く、デュープロセスの放棄、ロシア恐怖症、ウクライナの戦争犯罪、ブチャの虐殺の偽造、等々…あげればきりがありません。

このようなおびただしい数の事象だけではなく、ジョン・ミアシャイマージャック・マトロックスティーブン・コーエンノーム・チョムスキーキッシンジャー等、ロシア研究の第一人者と呼んでもいいような研究者、政治学者の意見も、その異常な省略の中に含まれます。

私たちは、自分たちが作り出した問題でロシアや中国と戦争の淵にいる

-ヘンリー・キッシンジャー

デュープロセス

これらに対する反対意見もあるでしょうしロシアにもプロパガンダはあるでしょう。または「だからといってウクライナの侵攻を正当かすることはできない」という意見もあるかもしれません。複雑化した社会的事象で意見が別れる際、両サイドにおいて確証バイアスがつきものであることも理解しています。

しかし、私が聞いてみたいのは、その最初の主張は、このような歴史の経緯やロシア研究者の意見もすべて知った上でのことだったのか?という疑問です。ここで書かれているこの記事は事実とは違うという証拠があるのであれば、その事実の指摘はもちろんあってしかるべきです。

参考記事:ロシアの侵攻を「侵略」と思わない人がいる その理由がここにある

しかし、過去の地政学的な経緯だけではなく、特に米国や巨大資本企業が行ってきたウクライナや他の地域での犯罪的行為を人々に知らせない、報じない、議論しない、検閲するというプロパガンダは、真偽の検証以前に、その公平性を大きく損ねており、結果として意見の正当性も失われています。

最近になって、ロシア側からの視点に近い内容の報道が一部の報道機関でも出てきましたが、それは常に疑問を呈するグループの情報が広がり始めてからの反応的な報道となっています。戦争報道はタイミングがすべてです。戦争が終わって間違いを指摘したり、平和をアピールすることは誰にでもできます。

金持ちが戦争する時、死ぬのは貧しい人々である

– ジャン=ポール・サルトル

結局のところ、こういった欺瞞の繰り返しが、長い目で見れば人々に知れ渡り、不信感を助長させ信じる人々と信じない人々の間で分断が起こることは自明の理ではないでしょうか。

ウクライナの支持を表明する市民の善意は疑いませんが、ロシアやプーチンを交渉相手の不可能な悪魔だとみなし、米国の行ってきた犯罪に対する糾弾を伴わないものである限り、プロパガンダによって利用され、戦争は継続し、反対に彼らを(そして自分たちも)苦しめてしまう遠因になっているようにも見えます。

参考記事情報、コミットメント、そして戦争

戦争プロパガンダの再来

政府レベルでもロシア恐怖症に基づく単純な無知の問題があるのでしょうが、このような経緯から、米国同様に日本でも、2003年にイラク戦争で行われたような非常に露骨なプロパガンダが行われている可能性を強く疑うようになりました。

このような協調的に見える偽りの報道が、日本流の忖度のようなものなのか、明確な組織の指令があってのことなのかは私にはわかりません。私の知り得る情報と証拠から明確に言えることは、多くの報道機関や専門家が「一致した嘘」を伝えていることです。そして、その嘘を否定できない証拠が圧倒的であるということです。これはけして小さな嘘ではありません。

さらに、もうひとつの大きな心配は、少し自分で調べればわかる話であるにも関わらず、なぜこれほどの虚偽の報道がまかり通りのか。一般の人々はこの高度に協調的な報道によって騙されているという説明が一応はつくと思いますが、知識階級に属する人々までもが簡単に騙されているように見えるのか。(騙されていない場合、それが意図的だっとことを強く示唆するため、より大きな問題を提起することになります)

今回の報道に関して疑った多くの人はイラク大量破壊兵器の嘘ナイラの証言を思い浮かべたそうですが、私は福島の原発事故の際の、非常に統制のとれた報道と、それを鵜呑みにした国民のことを思い出しました。少なくともメルトダウンについての公表を官邸の指示によって東京電力が隠蔽したことは文書化されており、報道の自由度ランクング72位、G7で最下位ということも含めると、今回のことも本来さほど驚くことでもないのかもしれません。

そうだとすれば、大多数が報道に疑いをもたずに受け入れる理由がますます不可解になります。イエメンやイラク、シリア、その他数え切れない国々において、米国の関わる戦争で亡くなった数千万人の人々への無反応とは対照的に、あたかも野球の応援でもしているかのようにウクライナの国旗が並び立つのはなぜなのか?安易に重ね合わせたくはありませんが、80年前の歴史の韻を踏んでいるのではないかという疑念を頭から拭い去ることができません。

米国とNATOは、ウクライナ人が何人死のうが気にしません。一般市民も、女性も、子供も、兵士も。私たちは気にしません。サッカーの試合になりましたね。私たちは私たちのチームを持っています。彼らは彼らのチームを持っています。私たちは最大の得点を取りたいし、それを積み重ねたい。そして、自分たちが勝つためなら、何人の選手が競技場で不具になっても構わないのです。

-リチャード・ブラック大佐

一点、過去の戦争と異なる点は、外部の情報を入手することがほぼ不可能だった過去と違い、体制やメディア側が嘘であることを示す多くの信頼できる証拠を自分たちで見つけてくることが、可能になっていることです。逆説的ですが、マジョリティの情報を見つけてくる能力が高まれば、検閲の技術もそれに適応してハードルは高くなると考えることができます。

とはいえ建前上、西側諸国は自由社会を標榜しているため検閲も中国のように直接的に遮断するというよりは、より間接的に巧妙化した形で検閲を行っており、そこをくぐり抜けて証拠を見つけていくことは、努力は必要ですが、技術的にはそれほど高いハードルでもありません。

このことは、証拠の有無の問題ではなく証拠を検索し理解する能力の問題であることを示唆しており、市民がパターナリズムから脱却して、より強い情報リテラシーが求められことを示してはいないでしょうか。より強い主張を行うなら、情報を選択し信頼したことについて、その失敗が明らかになったとき少なくとも責任の一端を問われる可能性を示唆しているのかもしれません。

プロパガンダの深層

現在、ウクライナ戦争の露骨なプロパガンダが、一部の人々に気づかれつつあることは、わずかながら救いに感じています。しかし、プロパガンダの存在に気がつくことと、その背後にあるより深い意図や仕組みがどのようなものなのかを知ることの間にはいくらかの距離があります。

私は今回のことだけで問題を見ておらず、これは過去にもあったことでしょう。それにどうやら気づいていなかった私自身も反省しなければならないことです。もし私が誰かを批難しているように聞こえるのであれば、その批難は私自身にも向けられているものです。

そして、このような構造的問題を人々が理解し事実との距離を縮めていかければ、私たちは永遠にこのゲームから抜け出せないのではないか、という危機感を感じています。

私は、ある種の現実主義的な見方をもっているところもあり、良いプロパガンダがあるであろうことも理解しています。世の中には信じる、または信じたフリをしなければならない必要な嘘もあるでしょう。

福島原発の事故であったであろう情報統制はその是非はともかくとして、関東圏に住む3千万人がパニックを起こしたらどうなっていただろうと考えると、たしかに理解できる一面もあります。「高貴な嘘」は滑りやすい坂であり、その扱いには厳格な注意が必要な概念ですが、ある限られた状況の中では必要なこともあるかと思います。

しかし、今、私たちが目にしているプロパガンダには正当化できる理由が見当たりません。それは民主主義の根幹としても、倫理的にも一線を明確に超えているものです。さらに、将来、多くの社会的な権威の信頼性を失うという結果によってその踏み外した事実は証明されるだろうと予想しています。

ひょっとすると政治の必要悪のように考えている政治家もいるのかもしれませんが、その深い毒に自分たちが飲み込まれていることに気がついていないことが最大の問題なのかもしれません。

フランシス・フクヤマは、「社会に蔓延する不信は。..あらゆる経済活動に一種の税を課しているが、高信頼社会はこの税を払う必要がない」と書いている。それは正直者に対する税金だ。なぜなら、人間の本性として、そうしなければタカ派になり、他の人を利用してしまう人があまりにも多いからだ。そして、それは高価な税である。「Liars and Outliers」

奇妙な運命ですがCOVIDワクチン神話の崩壊とも重なろうとしています。後でも後述しますが、これらの事象がもたらす分断は、社会が最低限保持しなければならない信頼性の閾値を下回ってしまうことであり、性善説で多くのことが成り立っているこの社会(ソーシャル・キャピタル)が崩壊しかねません。そう思うのは私だけなのでしょうか?

第三次世界大戦のリスクは?

平和な時代が長く続くことは、必ずしも大規模な戦争の可能性が変化したことの証拠にはならない – Aaron Clauset

もう一つの大きな気がかりは、戦争の行方ですが、ウクライナと核をもったロシアの戦争が長引き、そして、同様に核をもったNATO、米国が関与し、壊滅的な戦争に発展しかねないことです。

参考記事プランA 米国-ロシア核戦争シミュレーション  プリンストン大学

そのシナリオのひとつが核戦争です(壊滅的なシナリオの一つに過ぎないことに注意してください)。多くの人が核戦争が起きればそれは全面核戦争につながり、人類は滅びるからそんな愚かな選択はしないだろうと誤解しているようですが、核戦争シミュレーションの研究で人類が滅びる可能性は非常に低く、また壊滅的ではあるものの国土と備えのあるロシア国民は欧米諸国よりも少ない死者と犠牲で済むことが推定されています。(直接的な死者は最大で人口の1割を失う程度)

戦争を制限しておくには二人必要だ

– ローレンス・フリードマン

つまり仮に全面的な核戦争となった場合、甚大な被害を両陣営が受けるのは事実ですが、失うものが大きいのは明らかに米国でしょう。一極支配のパワーを一瞬にして失うことは間違いありません。核の冬という影響の変数はロシアに不利と考えることはできるものの、アメリカでの犠牲がより大きいと考えられていることから、復興期間を含めた起死回生策として追い詰められた局面で核を用いることは、ロシアにとって完全に非合理的で狂気の行為である(から起こらないだろう)とは言い切れないことを示唆します。

ロシアは、第二次世界大戦で苦い教訓を得たので、どんな状況でも国民を守るためにあらゆる努力を傾けている。この活動には年間数十億ドルを費やしている。核攻撃を受ける前に、都市から避難するための効果的な計画を持っている。都市に留まらなければならない人々のために、強力なシェルターも用意している。重要な時期を乗り切るために、保護された食糧を蓄えている。

これらのことは、われわれが回避あるいは抑止しなければならない核兵器の応酬において、ロシアの死者が1千万人を超えることはないだろうということを意味しているのかもしれない。このような悲劇的な数字であっても、ロシア民族は生き残るだろう。もし米国を排除することに成功すれば、世界の他の地域から食糧、機械、労働力を徴発することができる。急速に回復することができる。そして、世界征服という目標を達成するのである。

アメリカの考えでは、ロシアの計画は実現不可能である。このように主張する人たちは、核兵器の大きな力を指摘する。この点では、彼らは正しい。彼らの主張は、心理的効果において特に印象的である。しかし、この主張は、ロシア住民の分散と避難の計画、およびロシア側が取った、あるいは取るつもりのその他の措置を考慮した慎重な定量的分析によって裏付けられたことはない。

「核戦争で生き残るための技術」序章より

敷居の高くない限定核戦争

また研究者がより懸念しているのは限定核戦争です。もちろん、全面核戦争につながるリスクもありますが、全面核戦争よりも敷居が低く、特にロシアが追い込まれた際、さらには全面核戦争という局面での有利な立場を考えた際、警告を目的として戦術核を使用すら可能性はさらに敷居が下がることが予想さます。これには、EMP爆弾による軍や電力網の破壊も含まれます。

戦術核はすでにウクライナ近隣国に移送されていると言われており、既にキューバ危機の核戦争リスク(確率)を超えているという国際政治学者ジョン・ミアシャイマーを始めとする、いくつかの専門家の見解も散見されます。

合理的であればボタンは押さない?

プーチンの合理性に関して、これは少し込み入った話なのですが、政府高官はプーチンが合理的な人間であることをよく知っており、でなければ現在のような軍事支援を行うことはないでしょう。一方で、プロパガンダではプーチンは狂った人間であるとして描こうとしており、ゆえに、プーチンが狂って核戦争のリスクがあると叫びながら、軍事支援を積極的に行うという表面上の言葉と矛盾した行為が生じています。

このことから、「プーチンは狂気の人間なので核爆弾を使用するかもしれない」と「プーチンは合理的な人間なので核爆弾を使用しない」という結論は異なるが論理的には共通した2つの選択的な考えが想定できるのですが、上記の考察から「プーチンは合理的な人間であり、核爆弾を使用する可能性が(局面によっては)ある」という、異なる論理的可能性が浮上してきます。

もちろん、核ミサイルのボタンを押す閾値が非常に高いことには変わりありません。しかし、これは今回ウクライナ問題がロシアにとっての死活問題であることを加味すると、ウォーゲームの中で核の使用が十分に現実的なシナリオとして存在するということは理解しておく必要があるでしょう。

「私(プーチン)が説明しよう。米国の戦略計画文書には、敵のミサイルシステムに対する、いわゆる先制攻撃の可能性が含まれている。そして、米国とNATOにとっての主敵は誰なのか。それもわかっている。それはロシアである。NATOの文書では、わが国は北大西洋安全保障に対する主要な脅威であると公式に直接宣言されている。そしてウクライナは、その攻撃のための前方踏み台となる。」(プーチン演説、2022年2月21日)

もうひとつのシナリオは、ロシアの核戦争への意欲が高まり、それを米国が察知した場合に、米国の核による奇襲的先制攻撃を核攻撃を誘発させることになり、これも非常に懸念されることです。偽旗作戦を予想する識者もいます。

参考記事アメリカ「核の優位性」と「電撃的な核戦争」

戦争予測の過小評価

さらに、これも不思議と見落とされる点ですが、過去の危機の事例では、核戦争のリスクが考えられていたよりもはるかに高いものであったことが、何十年も経過してから判明することが往々にしてあります。

当時の我々の認識以上に、我々は核戦争に近づいていた。

– 米国防長官ロバート・マクナマラ

専門家は理解可能な変数だけでリスクを計算し過小評価するからなのかもしれません。例えば、ミサイルが誤ってNATO加盟国へ着弾するといった不確定要素や、戦争のカオス環境において、個人の不合理な行動や勘違い、警戒レーダーや衛生システムの部品の故障といった初期値の小さなエラーなど、不確実な要因が無数にあり、特に核戦争リスクの緊張化においては、それらの要因が増幅する可能性が飛躍的に高まります。

核のハルマゲドンまで15秒

1983年9月26日、実質的に世界を核戦争から救ったソ連防空軍の中佐、スタニスラフ・ペトロフの生涯の15秒間を再訪することが適切であると私は思う。

彼は、核の脅威を監視するモスクワ郊外のコマンドセンターで勤務していた。その朝、勤務が始まって数時間後、警報が鳴った。「なんてこった!」コンピューターは、アメリカがソ連に向けて5発のICBMを発射したことを即座に警告した。

「15秒間、私たちはショック状態にあった」と彼は後に語っている。この15秒間は、人類の運命-あなたの運命、私の運命-がかかっていたのだ。『ニューヨーク・タイムズ』紙が指摘するように、この時期は冷戦が深く緊迫した時期であった。その3週間前、ソ連はソ連領内を飛行中の大韓航空機を撃墜し、乗員269人全員を死亡させた。レーガン大統領は最近、ソ連を「悪の帝国」と断じ、軍拡競争の凍結を拒否していた。ああ、そうだったのか。

手順としては、ペトロフはこの警報を軍の指揮系統に報告すべきであり、核兵器による報復が予想される。しかし、コンピュータの警告は奇妙なものだった。発射されたミサイルは5発と表示され、意味不明である。なぜ、そんなに少ないのだろう?ショックから立ち直り、気を取り直した15秒間に、彼は点滅する地図を調べた。直感的に「これは違う」と思った。「誤情報だ」タイムズ紙はこう書いている。

「200人もの視線がペトロフ大佐に注がれ、司令部の緊張が高まる中、彼は警報の内容をシステムの不具合として報告する決断を下した」

そして、そう、彼の直感は正確であることが証明された。軍の指揮系統が明確で正気であったために、世界は核戦争を回避することができた。[R][R]

米国が供与した武器によってネオナチがプーチンの暗殺に成功し、核のボタンを押しかねない好戦的な人物が後継に着くというシナリオは荒唐無稽でしょうか?

問題は個々のシナリオのリスクではなく、このようなひょっとするとあるかもしれない未知のシナリオがいくつあるのか誰も知らないということです。例えば、ジョージ・ビービーはその著者である「The Russia Trap」の中で、サイバー攻撃という変数が、偶発的なリスクを劇的に増加させていると述べています。

ますます敵対化する米露関係における最大の危険は、米露双方の能力や意図によるものではない、ということである。むしろ、科学者が言うところの「複雑系の危険」である。冷戦後のヨーロッパの安全保障構造に関する未解決の問題が、対立に拍車をかけている。相手の意図に対する認識が大きく異なるため、それぞれが信じているシグナルが不明瞭になり、相手が出来事にどう反応するかについての誤った推測が強まっている。

複数の要因が相互に作用し、補強しあい、あるいは減殺しあう「システム問題」は、単一要因の問題よりも解決がはるかに困難であるということだ。

「The Russia Trap」George S. Beebe

長期化とシステミックリスク

これは確率的な思考実験ですが、仮に核戦争1%/年の可能性のシナリオが100本ある場合、そのうちのどれか一つが1年以内に実現する確率は63.4%です。ウクライナ-ロシア戦争が始まって、まだ1年が経過していないことを思い出してください。この確率が変化せずに続くと仮定して2年、3年と続くと、それぞれ、86%、95%と有意水準に達します。

システミックリスクは、統計的に独立した故障だけではなく、N個の相互接続されたシステム構成要素のネットワークにおいて、相互依存的な、いわゆる「カスケード」故障が発生するリスクである。つまり、システミックリスクは、リスク同士のつながりから生じる(「ネットワーク化されたリスク」)。このような場合、局所的な初期故障(「摂動」)が悲惨な影響を及ぼし、原理的にはNが無限大になるにつれて無限の損害を引き起こす可能性がある。[R]

1%は高すぎる見積もりであるという人がいるかもしれません。では、0.1%で計算してみましょう。3年目戦争が継続すれば約26%に達します。壊滅的な結果を考えると、到底許容できる確率ではありません。

参考記事

キューバ危機から60年 | ロシアンルーレットをやめる時

核戦争が起こる確率は6分の1だと思う理由 MITマックス・テグマーク教授

2023年までに核戦争が起こる確率が仮に6分の1というのは、到底許容できるリスクではありません。交通事故に遭遇する確率は年間1%未満であり、控えめに計算しても約20倍のリスクです。交通事故の発生に備えて私たちは保険、安全教育、法律等を用意しています。さて核戦争は?

戦争では、重要な出来事は些細な原因の結果である。

-ウィリアム・シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』より

実際、キューバ危機では多くの誤警報があり、核戦争に発展する可能性は間一髪だったと言っていいものでした。あまり知られていませんが、「エイブル・アーチャー事件」でも、数年後に機密解除された報告書で、「我々は1983年、うっかりソ連との関係を核戦争の一歩手前まで追い込んでしまったかもしれない」と結論づけています。

「賢い人達が深く計算をしているはずだ」と考える方は、米国連邦政府が遺伝子ワクチンを採用した際の組織としての賢さと、それほど大きな違いはないかもしれない可能性について考えてみてください。ベトナム戦争やアフガン戦争での愚かな決断について思い出してみてもいいでしょう。

宝くじを買う人を確率がわかっていないと馬鹿にする人々が、核戦争については何の反応も見せないのは、一体どういうロジックに基づくのでしょうか?歴史に習って常識を働かせるなら、今回の事件は世界中の空気が一変するはずですが、少なくとも世間もエリートもそうではないようです。。

戦争サイクル

近代史を振り返ると、血生臭い三十年戦争、ナポレオンによる征服、第一次、第二次世界大戦など、世界の大国が百年に一度の極端な地政学的イベントを繰り返してきたことがよくわかる。そして、これらの出来事は、驚くほど規則正しくやってくる一方で、時間とともにその破壊力を増してきた。冷戦時代に米ソが幸運と好政策の組み合わせでこのような破壊を回避できたのは、歴史的に見ても異常なことである。「The Russia Trap」

私は以下の戦争予測モデルについて評価できるほどの能力をもっていませんが、一考する価値のある学説ではないでしょうか。

世界には、一定期間ごとに激しい戦争が繰り返されるという経験的なパターンがある。大国間の戦争の平均的な間隔は34年である。激しい戦争の頻度は、べき乗則にしたがって分布している。激しい戦争の間には、より頻繁な小規模の戦争がある。戦争のサイクルは、経済のサイクルと強い相関関係がある。

– Mike under「周期的な戦争」

ゴールドスタインは、2020年代が世界政治の次の真の危険地帯になるという予測について、次のように明言している:「1988年の著書で、私は2020年代前後を潜在的な危険地帯と指摘したが、それは今でも私を悩ませる」 (Goldstein 2005: 8)。 「戦争サイクル

私は、日本という国に直接関与できる役割を大きく期待しているわけではありませんが、結果があまりにも壊滅的な可能性をもつことから、国民の公正な理解によってわずかな可能性でもあるのであればというのが一点。

対米追従のコストとリスクに加え、米国が行っている世界の国々に対する犯罪に対して、国益のために一切非難せず盲目的に従う日本の政府と国民の倫理的な責任をどのように考えていけば良いのかというが、もう一点です。

より実践的、個人的なレベルでは、最悪の事態に備えて個人でできる(個人にしかできない)準備により関心をもっており、サイト等を通じて様々な対策情報を共有できればと考えています。

そして、次に述べるようにこの問題の根っこにはプロパガンダとそれに騙される国民という構造的問題に行き着いたことです。

ロシアとワクチン

この時点で大衆形成のプロセスに深く関わっていない私たちの多くは、COVID恐怖ポルノを押すレガシーメディアから、ウクライナ/ロシア紛争を「プーチン狂った悪人-ゼレンスキー良い人」のテーマとして押し出した同じ報道機関に、協調的な軸足があるのを見ることができる。しかし、銃撃戦が始まるとすぐに、よりニュアンスに富んだ複雑な対談が登場した。

その逆説とは、民主党の主要党首の子供たちとウクライナの石油産業関係者との深い結びつきのことである。そして、ロシアとの国境沿いを含むウクライナ全土にある、アメリカがスポンサーとなっている生物兵器の研究施設である。ところで、私は現役の中佐に、2022年4月10日に、同じアメリカがスポンサーとなっている生物兵器研究施設を「私たちが」爆破したと報告してもらっている。これらの施設を破壊したのはロシアではない、と。誰を信じればいいのか?現役の将校か、主流派の企業メディアか?それから、ロシアを地政学的に包囲しようとするNATOの努力に対するロシアの正当な懸念がある。その他の問題としては、ゼレンスキーは本当に西側の操り人形なのか、むしろ私たちに提示されたポピュリスト的指導者なのか、などがある。もちろん、世界経済フォーラムが密かに関与していることは言うまでもない。このような代替情報が蓄積されるにつれ、事態は「プーチンは狂気の悪人、ゼレンスキーは善人」以上の複雑なものに見えてきた。 -Robert W Malone, MD

安易に持ち出すべきではないのかもしれませんが、関係のないワクチンとウクライナ、それそれの意見に、ある関連性を見てしまうのは私だけではないでしょう。ワクチンの反対とウクライナを支持しないグループ、またはその逆には相関が見られるといった意見があり、確かにそのように見えます。

事後的にはたしかにロシア寄り、ウクライナ寄りに傾く心理的バイアスは起こりうると思いますが、少なくともその本質は、ワクチンの反対が、反体制的な心理的傾向をもつからといったようような心理学に帰属する問題でははないと見ています。

ウクライナ戦争とワクチン被害の両者に共通することは、メディアで報道される真偽が「露骨に」歪められており、政府とメディア、ビッグテックの協調的なプロパガンダによってコントロールされていることです。その2つの共通項は統合されたプロパガンダであり、そういった背景的事象に気がついているかどうかの問題に過ぎないように思われます。両者のプロパガンダが見えない人にとって陰謀論者といった定義の曖昧さを利用した心理学的ラベルを貼ることは、その人の理解を容易にするものかもしれません。

 

逃れられない負債

さて、現実的な問題は、不利益を被るのはプロパガンダを信じた国民だけではなく、見抜いた国民であっても国の背負う負債としてのしかかってくることです。もちろん戦争犠牲者の(ワクチン被害者も同様に)人道的、倫理的問題が見て見ぬふりされるのも痛ましいものです。

彼らが最初共産主義者を攻撃したとき -マルティン・ニーメラー

さらに、この問題は根っこのところではパンデミックで露わになったグローバリズムの覇権的な性質の問題ともむすびついているようにも見えます。あまりの問題の複雑さと、検証の難しさから、サイトでの取り扱いほど強い意見をもっているわけではありません。

しかし、この戦争は米国や西欧社会、アジアの大国とのこれからの関係を含め、日本社会の向かう方向性が問われているものとして立ち現れていることは確かです。今後10年間の間に非常に大きな変革が起こると予想していますが、同時にコロナでこれだけ叩きのめされれながら、まったくと言っていいほど日本に変革をもたらさなかったことも思い起こす必要があります。

それどころか、中央集権的なデジタル管理社会という、非常に怪しげな方向へ向かい始めていると言うべきでしょう。トップダウンのアプローチの愚かさはすでにコロナパンデミックとワクチンで証明されています。もし変革が期待できるとすれば、それはボトムアップのアプローチでしかないと確信しています。

わずかな準備や備えに対する投資が袂を分かつ可能性はかつてないほど高まっています。コロナパンデミックやワクチンの問題と同様に、個人の生き方や哲学も問われていかざるをえないものになるでしょう。

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