レプチン抵抗性を改善する7つのアプローチ

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アルツハイマー病患者のレプチン抵抗性

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概要

食べすぎないための食欲抑制ホルモン?

レプチンは、全身の脂肪細胞で作られ、視床下部内で作用することで食欲を抑制し、体脂肪を減少させる脂肪蓄積の調節ホルモンとして知られている。そのためレプチン研究初期の頃は「満腹ホルモン」「痩せホルモン」などと呼ばれてきた。

しかし、レプチンの作用部位は視床下部だけではなく、また食欲だけがレプチンの生物学的効果ではないことが明らかになってきた。

多彩な脳への役割

レプチンは、脳の多くの領域に作用する多面性をもつホルモンであり、食欲、モチベーション、学習、記憶、認知機能、神経保護、生殖、成長、代謝、エネルギー消費など多くの影響を与える。

神経保護作用

末梢性レプチンおよびアディポネクチンは、脳の代謝と炎症の調節を介して神経保護特性を発揮することが示されている。

視床下部・海馬・皮質で発現するレプチン受容体

レプチン受容体は、主要部位である視床下部だけではなく、皮質、海馬神経幹細胞に局在することが判明しており、海馬、長期増強に役割を果たす。

反対にレプチンの代謝障害は記憶と学習プロセスを損なう可能性も示唆されている。

アルツハイマー病患者のレプチンレベル

アルツハイマー病患者の低いレプチン

アディポカインおよび細胞増殖因子アディポカインであるレプチンは、健常者に比べてアルツハイマー病患者で有意に低い。

また、アルツハイマー病において、レプチンの機能不全(一般にレプチン耐性と呼ばれる)を示唆する証拠も存在する。

より高いレプチンレベルは、βセクレターゼ活性を低下させ、アミロイドβレベルを改変することが動物モデルの研究において示されている。[R][R]

体脂肪組性により異なるアルツハイマー病患者のアディポネクチン

アディポネクチンは、神経保護特性を付与するアディポカインであるが、アルツハイマー病患者の体脂肪組成の違いが、この集団のレプチン合成の異質性と変動性を説明する可能性がある。

これらの知見は、アルツハイマー病の発症に対して、運動の認知機能保護効果を説明する生物学的機構となるかもしれない。

レプチン濃度は脊髄液内で異なる

これまでの研究では、末梢アディポカイン濃度はアルツハイマー病群と対照群の両方で脳脊髄液濃度を反映していることが実証されている。

末梢血レベルにおいては、アルツハイマー病患者と健常者で違いは見出されなかった。

レプチン機能不全の影響

体重減少とレプチン低下による認知機能低下

体重減少に伴うレプチンの減少は認知機能の低下に関与することが近年示されている。

レプチンは、軸索を伸長、シナプス形成および細胞の生存率を改善し、グルタミン酸作動性細胞傷害性および酸化的損傷に対して保護を示し、海馬前駆細胞の増殖を促進する。[R]

神経原線維変化によるレプチン抵抗性の増加

アルツハイマー病患者の死後の脳の剖検では、海馬のレプチン受容体は有意に減少していた。またレプチン受容体陽性細胞が神経原線維変化と共局在しており、活性型レプチン受容体の数の全体的減少と関連していた。[R]

レプチン欠乏による軸索突起密度の低下

レプチン欠乏症はレプチン感受性ニューロンからの軸索突起の密度を低下させる。

レプチンの構造的な欠乏は、新生児へのレプチン治療によって回復され得る。[R]

血清レプチン

抹消循環レプチン濃度は、おそらく脳へ作用するとレプチン量と相関するが、血液脳関門の輸送体の障害によりアルツハイマー病においては正確ではない可能性もある。

Megalin mediates the transport of leptin across the blood-CSF barrier.

疫学的研究 レプチンと認知症

12年間の追跡調査によると、低いレプチン濃度下位25%を有する人は、アルツハイマー病の発症率が4倍高かった。[R]

レプチン濃度の高値は、高齢のイタリア人の認知低下リスクと関連している。[R]

高齢(平均82歳)の女性の高いレプチンレベルは認知症、MCIの低い発症リスクと関連。[R]

レプチンの神経保護効果

レプチンの多彩な神経保護効果

レプチンの神経保護効果は、抗アポトーシス作用をもつBcl-xLの産生、ミトコンドリア膜透過性の安定化、ミトコンドリア生成酸化ストレスの減少を含む。[R]

レプチンは、神経幹細胞、グリア制限前駆細胞、神経系細胞の維持および分化に関連していることを示している。[R]

レプチンによる学習・記憶能力の改善

レプチン投与は、ラットの海馬CA1の長期増強およびCaMK IIリン酸化を促進し、学習と記憶能力を改善する。[R]

レプチンは、マウスの海馬CA1シナプスにおける興奮性シナプス伝達を調節し、長期増強(LTP)だけでなく、海馬依存性学習および記憶課題を改善することができる。[R]

レプチンのニューロン構造と可塑性への影響

レプチンが欠損しているマウスでは、摂食関連ニューロンへのシナプス入力分布が歪んでおり、レプチン治療は、これらのARCニューロンへのシナプス入力再編成を急速に誘導する。

レプチンがニューロンの構造および可塑性に影響をおよぼす可能性がある。[R]

レプチンシグナル伝達およびレプチン抵抗性が脳の領域内(視床下部の内側、外側)において変化する可能性がある。[R]

レプチン濃度と灰白質体積の相関

正常なヒトの空腹時血漿レプチン濃度が、いくつかの脳領域の灰白質体積と相関する。[R]

レプチンのアルツハイマー病改善効果メカニズム

レプチンによるアミロイドβの減少
γセクレターゼの下方制御

レプチンは、γ-セクレターゼ複合体のダウンレギュレーションによりアミロイドβ蓄積を阻害する。[R]

βセクレターゼ活性の低下

レプチンの慢性投与は、おそらく膜脂質ラフトの脂質組成を変えることにより、神経細胞のβ-セクレターゼ活性を低下させ、ADマウス脳のアミロイドβ負荷を減少させた。[R]

SIRT1経路

レプチンは、SIRT1シグナル伝達経路を介して、BACE1発現および、アミロイドβの産生を減弱させる。[R]

PI3K / Akt / mTOR経路を介したアミロイドβ原繊維形成の阻害

レプチンは、PI3K / Akt / mTOR経路を介して神経細胞表面のGM1ガングリオシドを減少させることにより、アミロイドβタンパク質線維形成を阻害する。[R]

タウリン酸化の阻害(GSK3-βの阻害)

レプチンはリチウムと同様に、GSK3-βを阻害して神経細胞のタウリン酸化を防止する。[R]

AMPK、SIRT活性

レプチンは、AMPKとサーチュインを活性化してニューロンのタウリン酸化とβ-アミロイドを減少させることにより、細胞代謝を促進する。[R]

レプチン耐性(レプチン抵抗性)のメカニズム

レプチンが増えても反応しない症候に対してレプチン耐性と呼ばれている。ちょうど血糖値が高まってもインスリン抵抗性により、細胞が糖を取り込めないメカニズムと似ている。

レプチン耐性は、大きく3つの原因が考えられている。

1. 血液脳関門を通過するレプチン輸送が減少

レプチンが中枢神経と相互作用するには、まず内皮細胞の輸送体機能をもつレプチン受容体を通して血液脳関門を通過しなければならない。(レプチンはサイズが大きいため拡散でBBBを通過できない)[R]

さまざまな物質や条件が血液脳関門の輸送を阻害する。

増加させる輸送調節因子

飢餓、エピネフリン、インスリン、グルコース、アルコール[R]

減少させる輸送調節因子

肥満、断食、トリグリセリド、卵巣切除、レプチン受容体の欠陥、[R]

2. レプチン受容体LEPR-Bシグナル伝達の障害

レプチン受容体の一つLEPR-B受容体のシグナル伝達カスケードに関わる各成分の欠損は、レプチン耐性をもたらすと予想されている。[R]

SOCS3、SH2B1、TCPTP、STAT1およびSTAT3の脱リン酸化など

高脂肪食は、LEPR-B発現を減少させ、高脂肪食飼育されたマウスの体重増加を抑制する。[R]

レプチン受容体LEPR-Bは、マウス不安関連行動の調節に重要な役割を果たす[R]

3. 視床下部神経回路メラノコルチン系の障害

メラノコルチン4受容体

メラノコルチン系は、視床下部神経回路を支配している。5つの受容体がありメラノコルチン4受容体(MC4R)は脳に豊富に存在する。MC4R遺伝変異は最も一般的な肥満の遺伝的メカニズム[R]

レプチンはメラノコルチン4受容体(MC4R)依存性機構を介して腹側視床下部中のBDNF発現を刺激する。BDNF/TrkB経路が阻害されると、ラットの体重減少が誘発される。[R]

メラノコルチンは、脳内でよく知られている抗炎症および抗アポトーシス効果を持つ神経ペプチドであり、ラット視床下部でBDNF発現とERK-cFos活性化を誘発する。[R]

メラノコルチン受容体アゴニストであるNDP-α-MSHは、メラノコルチンMC4受容体の活性化を介して、アルツハイマー病トランスジェニックマウスの強力な神経新生と認知回復を誘導する。[R]

 

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Defining Clinical Leptin Resistance - Challenges and Opportunities
The lack of a universally accepted definition of the term “leptin resistance” led the National Institutes of Health to hold a workshop, “Toward a Clinical Defin...
非選択的メラノコルチン4受容体アゴニスト

[R]

レプチン耐性を引き起こす要因

アミロイドβ

アミロイドβのレプチン阻害

アミロイドβはウサギ海馬細胞のPI3k / Akt / mTORC1シグナル伝達経路を阻害することにより、レプチン発現が減少した。in vitro[R]

ADマウスモデルにて過剰なアミロイドβが視床下部弓状NPYニューロンを破壊する可能性があり、アミロイド負荷が増加するにつれて徐々に体重減少を示し、病理学的な低いレプチンレベルをもたらす可能性がある。[R]

アミロイドβオリゴマー仮説 12の治療アプローチ

飽和脂肪酸・炎症

脂肪豊富な食餌はラットの視床下部の炎症反応を活性化し、視床下部のインスリン抵抗性を誘発する。[R][R]

飽和脂肪酸は視床下部の炎症を誘発する。視床下部IKKβ/ NF-κB経路の活性化はレプチン耐性を誘導する。[R]

高い中鎖脂肪酸レベルは、血液脳関門を透過するレプチンの輸送を減少させる。[R]

レプチンはAMPKとPPARαの活性化に関与しており、どちらも脂肪酸酸化の誘導に関与する。[R]

小胞体ストレス(ERストレス)

ケミカルシャペロンによるレプチン耐性の逆転

小胞体ストレスはタンパク質が正常な高次構造の折り畳まれないことによるストレス応答。ERストレスの原因となる変性タンパク質は、遺伝子変異、ウイルス感染、炎症、有害化学物質などにより生じる。

小胞体ストレスは、レプチン耐性を誘導する。ケミカルシャペロンがERストレス誘発性のレプチン耐性を逆転させた。[R][R]

視床IKKβ/ NF-κBと肥満の抑制

視床下部ニューロンに炎症性メディエーターであるIKKβ/ NF-κBは豊富に存在するが、通常は不活性である。これらを活性化させると中枢インスリン/レプチンシグナル伝達の活動が中断する。視床IKKβ/ NF-κBと肥満の抑制が関連疾患と戦うための戦略である[R]

レプチン感作剤 TUDCAとケミカルシャペロン

小胞体ストレスは、レプチン耐性の発達に中心的な役割を果たす。

ERストレスを減少させる化学的シャペロンである4-フェニル酪酸(PBA)およびタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)がレプチン感作剤として作用する。[R]

小胞体ストレスと神経変性

オートファージー障害

不完全なオートファジーは視床下部プロオピオメラノコルチンニューロン数に有意には影響を与えなかったが、レプチン誘発シグナルトランスデューサーおよび転写活性化を損なった[R]

ラパマイシン、スペルミジン、レスベラトールなどのオートファジー誘発剤はマウスの血清レプチン濃度を低下させ、オートファジーを誘導する。[R]

オートファジーの阻害は、マウスのエネルギー代謝の不均衡および肥満につながる。[R]

アルツハイマー病と関連するオートファジー経路と障害

エストロゲンの欠乏

エストロゲンの欠乏は、ラットのレプチン感受性を低下させる。

17βエストラジオールの補充により、レプチン感受性の低下に伴う過食症と体重増加を逆行させることができた。[R]

抗加齢ホルモン エストロゲン 14の神経保護効果

フルクトース摂取

フルクトースの慢性的な消費はサイレントレプチン耐性を誘導し、ラットの肥満を促進する。

フルクトース群と対照群の間では、生理学的、生化学的な差異がほとんど検出されなかったにもかかわらず、レプチン耐性が生じた。[R]

運動不足

高強度の運動が必要

60分以内の短時間の運動や800kcal以下のエネルギー消費の運動の後ではレプチンの濃度が変化しない。

60分以上、800kcal以上の長時間の運動はレプチンを減少させ、アディポネクチン濃度を増加させる可能性がある。[R]

レクチン・小麦摂取

レクチンは糖分子に結合するタンパク質、レプチン受容体にマメ科(ConA)、小麦(WGA)などのレクチンが結合すると、レプチン受容体は機能しなくなる。[R]

概日リズム障害

概日リズム障害は、マウスのレプチン抵抗性を高める。

時計遺伝子 BMAL1 / CLOCK は、血清レプチンのリズムを駆動させる概日レプチン転写を直接制御する。[R]

深夜に高まるレプチン

血漿レプチン濃度は一日を通じて変動しており、午後の中頃に最低レベルを示し、深夜に最高レベルを示す。[R]

概日リズム障害とアルツハイマー病

レプチン耐性 改善戦略

慢性炎症の治療

慢性的に高いコルチゾールレベルは、レプチン耐性の寄与因子となる可能性がある。[R]

心理的ストレスの緩和・HPA軸

コルチゾールの調節不全と関連づけられているHPA軸モデルは、レプチンを組み込んだ視床下部-下垂体-副腎-レプチン軸が提案されている。レプチンはコルチゾールに対する拮抗作用を有しており、HPA-レプチン軸の不均衡はコルチゾールの増大とHPA軸の負荷が高まる可能性がある。[R]

HPA軸

カロリー制限

慢性的な過食は、慢性的なレプチンの高いレベルにつながり、レプチン耐性を引き起こす可能性が高まる。適度なカロリー制限を行うことでレプチン感受性の改善に役立つ。[R]

レプチン感受性は肥満および老齢によって低下するようである。

カロリー制限は、老齢ラットのレプチンに対する応答性を高める。[R]

糖質と飽和脂肪の制限

[R][R]

睡眠・概日リズムを整える

睡眠はレプチンなどの食欲を調節する主要なホルモンを調節する。レプチンレベルの低下は、交感神経の上昇に伴っており、レプチンの変化は睡眠の持続時間によるコルチゾール、TSHの変化と定量的に関連している。[R]

レプチンの発現は、脂肪の分子時計によって直接的調節される。[R]

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DEFINE_ME

運動

ダイエットおよび身体活動はいずれも血漿レプチン濃度を変化させる。[R]

IL-6

身体運動は、IL-6に依存する仕組みによって視床下部IKKβ/ NF-κBの活性化を抑制する。IL-6を破壊したマウスでは運動によるレプチン抵抗性への改善効果を阻害した。[R]

ランダム化比較試験 食事由来の脂肪摂取量の減少と身体活動を増加させたライフスタイルの長期的な変化は、ヒトの血漿レプチン濃度を減少させた。 [R]

アミリン(IAPP)?

レプチン抵抗性の食餌誘発性肥満ラットへのアミリンとレプチンの同時末梢投与は腹内側部内の視床下部レプチンシグナル伝達(pSTAT3免疫反応性)が部分的に回復した。[R]

アルツハイマー病脳に蓄積するアミリン

アルツハイマー病のβアミロイドと2型糖尿病のアミリンは、共通の毒性メカニズムをもっているという証拠が示されてきている。

このアミリンタンパク質は、アルツハイマー病患者の脳にも蓄積し、アミロイドβと相互作用することで神経変性プロセスを悪化させる可能性がある。

content.iospress.com/articles/journal-of-alzheimers-disease/jad161192

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