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オステオカルシンとアルツハイマー病
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はじめに
オステオカルシンとは
骨の25%を占める非コラーゲン成分であるオステオカルシンは、骨芽細胞(骨の形成)の活性を調節する骨制御因子。破骨細胞とその前駆体の活性の調節因子としても作用する。
カルボキシル化することによって骨の結合作用をもつが、カルボキシル化されていない状態では体内でホルモンとして以下の働きを示すことが報告されている。
- 膵臓のβ細胞に作用してインスリン分泌の促進
- 脂肪細胞に働くことで、アディポネクチンの分泌を促進
- 筋肉に作用してエネルギーの利用率を高め運動能力を促進
- 精巣への刺激によりテストステロン生合成を高める
- 脳神経細胞の発達と機能に重要な役割果たす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21131432
加齢によって低下するオステオカルシン
ヒトの循環オステオカルシンは加齢によって低下する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18301972
骨粗鬆症患者で高い血清オステオカルシンレベルが示されることがある。
これは骨からのオステオカルシンの急激な流出を示唆しており血清オステオカルシンレベルの高値は、骨密度を高い精度で予測する因子となる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22211018
高齢女性の認知機能に関連
比較的健康な高齢者では全身の骨ミネラル密度と認知機能の間には関連性は認められないが、オステオカルシンの血漿レベルは、高齢女性の実行機能と認知スコアに関連する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5105824/
パーキンソン病への保護効果
パーキンソン病ラットモデルでは、脳脊髄液のオステオカルシンレベルが低下することが発見されている。オステオカルシン投与は、AKT /GSK3βシグナル伝達を介して6-ヒドロキシドーパミン誘発性パーキンソン病ラットモデルの運動機能障害を改善する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6170617/
オステオカルシンの役割
骨を強くする
オステオカルシンは、ビタミンK2によって活性化された後、骨組織においてカルシウム結合の役割をもつことにより、骨の強度や柔軟性をもたせることができる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4566462/
糖代謝の改善
オステオカルシンは、インスリン産生を増加させグルコースの取り込み能力を底上げすることにより、高血糖を抑制する作用ももつ。オステオカルシンは膵臓ではβ細胞を増殖させインスリン産生を増加させる。
脂肪細胞のアディポネクチン発現を増加させ、脂肪組織へのグルコースの取り込み能力を高め血糖値を抑制する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17693256
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25577163
骨-膵臓軸
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3108355/figure/fig1/
テストステロンの増加
オステオカルシンは精巣のライディッヒ細胞で発現するGタンパク質共役受容体に結合することにより、CREB依存的にテストステロン合成に必要な酵素の発現を調節し、生殖細胞の生存を促進する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21333348
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27304508
オステオカルシンの脳機能への効果
非カルボキシル化であるオステオカルシンは血液脳関門を通過し、脳幹、視床、視床下部に蓄積し、これらの領域のニューロンと特異的に結合して、さまざまな神経伝達物質の合成とシグナル伝達に影響を与える。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24074871
神経伝達物質・抗不安作用
セトロニン合成の増加
脳幹ではオステオカルシンは、セロトニン作動性に関わる背側縫線核、正中縫線核に結合することにより、セトロニン合成が増加し、カルシウムフラックスが誘導され、神経活動電位の周波数が増加する。
ドーパミン合成の増加
オステオカルシンは、腹側被蓋野(VTA)のニューロンに結合し、ドーパミン合成を促進する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5626410/
認知機能
記憶の改善
オステオカルシンはマウス海馬のGpr158とBDNFの発現を調節することにより、ヒストン結合タンパク質(RbAp48)の作用を制御することが示されており、これにより加齢に伴う記憶喪失に対する有益な作用をもつことがわかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30355501
www.nature.com/articles/nrendo.2017.181?proof=true
糖尿病患者の認知障害
血清低カルボキシル化オステオカルシンの減少は、2型糖尿病男性患者の認知障害と関連する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29126874
遺伝子変異
オステオカルシンの主な調節因子であるRUNX2遺伝子変異は、認知機能の低下を招く頭蓋骨異形成症を引き起こす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9182762
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24797831
オステオカルシンを増やす12の方法
運動
持久運動
ランダム化比較試験 一時間にわたる中程度の持続的な運動は肥満成人の後に抑制される循環オステオカルシンおよび低カルボキシル化オステオカルシンの食ボキシル化を弱めた。対照的に高強度インターバルトレーニングでは変更が示されなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30306222
運動によって異なるオステオカルシンへの適応
マラソンランナーは、コントロールグループよりも有意に高いオステオカルシンレベルを示す。
運動の初期段階では副甲状腺ホルモンの分泌が増加し、オステオカルシンが減少する。そのため運動経験のない若者が週に2〜3回運動を行うと、オステオカルシンのレベルは最初の4週間は著しく低下し8週間後には回復する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9844096/
骨刺激
骨形成の刺激および形成は継続的に与えることによってトレーニングに適応する。これは、運動の期間が骨代謝の速度に大きな影響を与えることを示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6416492/
栄養化合物
ビタミンK2
ビタミンKは骨芽細胞の増殖と分化に影響を与える。ビタミンK欠乏は、ビタミンKの欠乏はオステオカルシンの低下を招き、骨密度の低下と骨折リスクの増加に関連する。
二重盲検無作為化プラセボ対照試験 40人の若い男性へのビタミンK投与は4週間後にオステオカルシンレベルを増加させた。同時にインスリン抵抗性が低下し糖代謝の改善を示した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4580041/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2571052/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18374202
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15018483
ビタミンD
ビタミンD(2500IU)の6週間の補給とカロリー制限は、食事のみのグループと比較して肥満高齢女性の血清オステオカルシンレベルを上昇させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25576857
ビタミンC
ビタミンCの投与は骨粗鬆症ラットモデルのオステオカルシン発現を増強し、破骨細胞と骨芽細胞活性への調節を介して骨粗鬆症を抑制することが実証された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6471534/
オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸の投与はラットのオステオカルシンを増加させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16671873
亜鉛
正常な血清亜鉛レベルを有する特発性低身長の子供への6~12ヶ月の亜鉛補給は、オステオカルシンを増加させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15679071
マンガン
マンガン補給は、ラットの血清オステオカルシンを大幅に増加させ、脊椎と大腿骨のミネラル密度を改善する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18330520
ハーブ
オリーブ抽出物
二重盲検無作為化プラセボ対照試験 12ヶ月のオリーブ抽出物の摂取は、骨密度が低下したオステオペニア女性のオステオカルシン濃度を増加させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25560820
シリマリン(ミルクシスル)
ミルクシスルに含まれるシリマリン成分の骨折したマウスへの投与は、血清オステオカルシンを上昇させ骨ミネラル密度(BMD)が上昇し骨折部位の改善を示した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24093748
レスベラトロール
レスベラトロールは培養細胞にてオステオカルシンのmRNA発現を増強した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16964405
レスベラトロールサプリメントは、さまざまな動物モデルで骨保護作用があることが示されており、転写因子/シグナル伝達経路を介して骨芽細胞/破骨細胞に影響を与える。
linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0925443914003093
レスベラトロールのSirt1を介したオステオカルシンの増強
molecularbrain.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13041-019-0444-5
薬剤・ホルモン
メトホルミン
メトホルミンはマウスのオステオカルシン発現のアップレギュレーションを示し、ケトジェニックダイエットによって誘発される骨量減少を緩和する。
link.springer.com/article/10.1007%2Fs00223-018-0468-3
メトホルミンは閉経後女性の血清オステオカルシンレベルおよび骨形成に影響を与えなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24633493
エストロゲン
エストロゲンは、Fhl1発現を誘導することにより、骨形成中のWntシグナル伝達の活性を高める。Fhl1は骨形成マーカー、Runt関連転写因子2(Runx2)、オステオカルシン(OCN)、およびオステオポンチン(OPN)の発現を促進する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25676585
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3855436/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16964405