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概要
Wntという名の由来は、羽のないショウジョウバエ(Wingless)の原因遺伝子として、脊椎動物のホモログ名称(Int-1)と合成されたところからきた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9891778/
Wnt経路には大きくβ-カテニン経路、Planar Cell Polarity(PCP)経路、Wnt/カルシウム経路の3つの経路が存在する。
標準経路であるβ-カテニンを介したWntシグナル伝達は、胚発生、細胞増殖による組織恒常性、細胞極性、細胞運命決定を制御する基本的なメカニズムのひとつ。
主にWnt/β-カテニンシグナル伝達経路(その他のWnt経路も含む)の不均衡(喪失)は、アルツハイマー病と強く関連していることが示されている。
がん患者では反対にWnt/β-カテニンシグナル伝達の過剰が多くの研究で示されており、アルツハイマー病とガンで示されているトレードオフ関係(アルツハイマー病になりやす人はガンになりにくく、ガンになりやす人はアルツハイマー病になりにくい)のメカニズムのひとつと考えられている。
Wntのオンとオフ
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6128062/figure/F1/
中枢神経系におけるWntシグナル伝達の役割
段階的な分化と増殖
海馬微小環境におけるWntシグナルは高度に段階依存的であり、特異的な条件下でニューロンの分化と成長が起こることが証明されている。
Wntシグナル伝達は他のシグナル伝達経路と相互作用することによって多面的効果を引き起こす可能性が高く、そのことが研究を困難にしている。
神経新生の主要な調節因子
Wntシグナル伝達は、初期段階で神経形成中に自己複製を促進し神経前駆細胞を維持することに加えて、中期および後期での神経発生段階で中間前駆細胞の分化を誘導する。
Wnt3は、成体海馬幹細胞/前駆細胞からの神経新生の増加において主要な調節因子である。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16251967
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19701198
海馬神経新生の調節
Wntシグナル伝達が成体海馬神経新生を調節することが試験管研究で実証されている。
歯状回顆粒層(SGZ)におけるWntシグナル伝達の活性化は神経新生を増加させたが、阻害は、増殖およびニューロン分化の減少を引き起こした。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16251967
Wntシグナル伝達の脳内での役割
シナプス前構造を調節し、シナプシンⅠ、α7-ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のクラスター化を誘導する。
小胞のエンドサイトーシスおよび再利用を促進、シナプス前部位の増加
刺激された樹状突起形成
神経伝達物質放出の誘発
LTP活性を促進(シナプス可塑性、認知機能の役割。)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6128062/
Wntファミリー
β-カテニン 表皮細胞の増殖、分化、および遊走を促進する
Wnt3a Rhoキナーゼ活性 線維芽細胞の増殖を促進する
Wnt7b マクロファージの刺激
Wnt10b 毛包の発達を刺激する 変異は肥満と関連
Wnt5a βカテニン経路活性 炎症誘発因子
GSK-3β アポトーシス核DNAの阻害
C-myc 表皮幹細胞を刺激する
アルツハイマー病
アミロイドβ・タウリン酸化
標準経路のWntシグナル伝達の喪失は、アルツハイマー病マウスのアミロイド沈着を悪化させ、Wntシグナル伝達の阻害は記憶喪失、タウリン酸化、アミロイドβ形成と凝集をもたらすことが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6128062/
認知機能低下との関連
PS1突然変の家族性アルツハイマー病患者はβ-カテニンレベルが低下しており、Wntシグナル伝達の喪失を強く示唆している。
また、アルツハイマー病患者の前頭前野、特に眼窩前頭皮質および内側前頭回において、対照と比較してWnt活性を喪失していることが示された。
βカテニンレベルの減少は、疾患の進行、認知機能低下、GSK3βリン酸化の増加との関連が示された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29804228
アミロイドβ毒性からの保護
Wntシグナル伝達経路の活性は、in vivo、in vitroにおいてニューロンをアミロイドβ毒性か保護する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15194435/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19621015/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24501359/
標準的なWntシグナル伝達は、アミロイドβ誘導性の神経細胞損傷に対する神経保護に関与している
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20140278
Wntシグナル伝達は、ミトコンドリアのカルシウムレベルに直接影響を及ぼす。Aβによって生成される細胞内カルシウムの増加も防ぐ。
Dkk1 Wnt阻害因子
WntアンタゴニストであるDickkopf関連タンパク質1(Dkk1)の発現は、成体海馬では年齢とともに増加することが示されている。
顆粒ニューロンからのDkk1欠失は、老齢マウスにおける神経発生の十分な回復を示した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23395445
アミロイドβとDkk1のフィードバックループ
背側海馬へのDkk1注入は物体認識に障害のあるマウスの記憶統合をもたらした。
アミロイドβはDkk1発現を増加 → Wntシグナル伝達PCP非標準経路を活性化させる。その結果、シナプスを喪失しアミロイドβがさらに増加。このポジティブフィードバックループの遮断することでアルツハイマー病治療の可能性。
特異的Rho阻害剤ファスジルは、Wnt − PCPシグナル伝達に対するDkk1およびVangl2の刺激効果を完全に逆転させる。
www.nature.com/articles/s41398-018-0231-6
Prox1・Neurod1
Prox1およびNeurod1は、Wnt/βカテニン-TCF/LEFシグナル伝達の主要な直接転写標的のひとつ。神経分化に関与する遺伝子を制御することが知られている。
NeuroD1による神経細胞の生存と成熟の促進は、海馬の神経発生に必須である。
Sfrp3
分泌型フリズルド関連タンパク質3(Sfrp3)は歯状回顆粒細胞によって分泌されることが示されており、sFRP3の喪失は静止状態の放射状神経幹細胞の活性化、そしてそれに続く樹状複雑度の増加をもたらした。
電気痙攣刺激およびオプトジェネティクス(光遺伝学)によって模倣された神経活動は、Sfrp3の発現を減少させることが示されており、神経活動とWnt媒介の神経発生との間に関連性が示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23395446
Wnt標準経路 Wnt /β-カテニン経路
もっとも広く研究されているWnt経路であり、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の変異は様々なガン、骨粗鬆症、心血管系の石灰化などの疾患との関連で研究されており、アルツハイマー病、双極性障害においても関与していると考えられている。
19種類のWntが報告されており、Wnt1,Wnt2,Wnt3,Wnt3a,Wnt8,Wnt8bが Wnt/β-カテニン経路を活性化することが知られている。
- Axin
- adenomatous polyposis coli(APC)
- glycogen shynthase kinase-3β(GSK-3β)
- casein kinase 1α(CK1α)
の4つの複合体によるプロテアソーム分解で制御され、細胞質内のβカテニン量は低く抑えられている。
Wnt受容体 Fntzled(Fz)・LRP5/ 6
Wnt /β-カテニン経路は、Fntzled(Fz)受容体、共受容体LRP5 / 6へのWntリガンドの結合によって活性化される。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22952392
この相互作用はDvlを活性化し、そして破壊複合体の解離を引き起こし、GSK-3βを阻害、そしてプロテアソームを介したβ-カテニン分解を防止し、細胞質への蓄積を誘導する。Wnt標的遺伝子の発現を誘発する
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22682243
反対にWntたんぱく質が存在しないと、GSK-3βは活性化され、βカテニンはリン酸化されプロテアソーム分解を促進する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28575679
Fz受容体
Fz1 シナプス前領域に位置し海馬ニューロンのシナプス分化を促進する
Fz2 主に神経細胞体に位置する
Fz3 樹状突起で発現し、軸索伸長、誘導、神経管閉鎖を調節する
Fz5 視床の成熟ニューロンの生存を制御する。海馬ニューロン発達中の成長円錐に局在して、海馬におけるシナプス形成を調節する
Fz7 体細胞、海馬新生、神経突起の間の発現は減少する
Fz9 海馬神経新生の成長円錐の濃縮に重要。成熟海馬ニューロンのシナプス後領域のプロセスに沿って発現する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6128062/
ApoE脂質代謝
LRP6対立遺伝子は、遅発性アルツハイマー病の感受性遺伝子
ApoEは、Wnt、LRP5/ 6の複合体形成とβカテニン経路の活性化に関与する。
ApoEたんぱく質は、Wntホモログの分泌、輸送を行う小胞に必須の分子であり、ApoE脂質代謝によるアルツハイマー病の発症に関連する可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17517621
Wnt3a
Wnt3aリガンド(またはリチウム)は、アミロイドβペプチドが媒介するシナプス変性および細胞死を防止する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12610652/
Wnt3aの神経保護作用は受容体Frizzled-1によって媒介されることもまた示されてい
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18521822/
Wnt3aはRunx2転写因子を介して骨芽細胞分化中にアセチルコリンエステラーゼの発現を誘導する。AChEがWnt /β-カテニンシグナル伝達経路によって調節されている可能性。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5535040/
Wnt/β-カテニンシグナル伝達 概日リズム
Wntシグナル伝達に関わる多数の遺伝子が、概日リズムの制御を行なっている。Wntシグナル伝達に関与する約50個の哺乳動物の遺伝子のうち39個の遺伝子が、概日リズム変動を示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6324728/
明暗周期の元にあるマウスと比較して、光を浴びせ続けられ概日リズムが破壊されたマウスではWnt/シグナル伝達経路を介して悪性腫瘍の進行を誘導することが示唆された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21203463/
概日リズム遺伝子であるBmalの過剰発現は、Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路の活性化を示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22961668/
Wnt/β-カテニン経路とPPARγ
PPARγの機能不全とデスモソーム(接着斑)遺伝子の関連は、概日リズム特性を示すWnt/β-カテニンシグナル伝達経路の不活性化を介して起こる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4220097/
Wnt 非標準経路
Wnt / PCP経路
Wnt / PCP経路は、WntリガンドとそのFrizzled(Fz)受容体との相互作用によって活性化される。
この結合はDishevelled(Dvl)の活性化を引き起こし、それが次に低分子量GTPアーゼRho、Racを活性化し、最終的にJun N末端キナーゼ(JNK)を活性化し、細胞骨格の再編成を調節する
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15608632
Wnt / Ca2+経路
Wnt/Ca2+経路では、WntリガンドとFz受容体との間の結合は、三量体Gタンパク質を活性化し、それがホスホリパーゼC(PLC)の活性化およびジアシルグリセロール(DAG)の産生を誘導する。
イノシトール三リン酸(IP3)、細胞内Ca 2+レベルの増加、続いてCa 2+依存性タンパク質の活性化を引き起こす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20010950
Wnt-5a
Wnt5aリガンドによる非標準的Wnt経路の詳細なメカニズムは解明されていない。
Wnt5aリガンドの活性化は、ミトコンドリア分裂を刺激し神経活動に必要とされるエネルギーを満たすことでCa 2+の緩衝能力を増強、アミロイドがβ曝露に対する神経保護効果をもつ可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23805073
Wnt経路の阻害
ビタミン・ミネラル
ビタミンD
ビタミンDはWnt、Notch、NF-κB、およびIGF-1シグナル伝達を抑制できることが実験的研究で示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20070897/
ビタミンD受容体はβ-カテニンを介した転写を阻害する可能性がある。
ビタミンDおよびその受容体によるβ-カテニン活性の阻害は野生型APCによって著しく増強されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20043299/
ビタミンDは、特にSmoの不活性化と下流のHhシグナル伝達を介して、管内の細胞の増殖を阻害する可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20495364/
ビタミンE
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23424864
γ-トコトリエノール
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27323693
レチノイド
レチノイドは、発がん性AP-1およびWnt /β-カテニンシグナル伝達経路の機能を阻害し、接着結合の成分を安定化させることが示された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14576840
フラボノイド
フラバノン
フラバノンがβ-カテニン/ Tcfシグナル伝達を効率的に阻害することを示した
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15883006/
イソフラボン ゲニステイン
イソフラボン(特にゲニステイン)はGSK-3βの発現をアップレギュレートし、GSK-3βのβ-カテニンへの結合を増強、β-カテニンのリン酸化を増加させた。
ゲニステインはWnt /β-カテニンシグナル伝達を不活性化し、それにより前立腺癌の成長を阻害することを示唆する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18687691/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19298854/
ケルセチン
Wnt /β-カテニンシグナル伝達活性はケルセチンにより低下、ケルセチンはDKK1、2、3および4の遺伝子発現を誘導する。外因からのDKK1処理は細胞増殖の阻害効果を示す。
Wnt3a(またはリチウム)によるWnt /β-カテニンシグナル伝達経路の刺激はケルセチンによる低下を回復させた。
www.spandidos-publications.com/10.3892/ijo.2013.2036
ハーブ
クルクミン
クルクミン処置は、細胞質β-カテニンの分解の増加および核βカテニンレベルの減少をもたらす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19000900/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20100380
クルクミンとケルセチンは、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を調節し、相乗的にガン細胞増殖を阻害する。
www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0944711318305075
EGCG
EGCGは肺癌幹細胞のWnt /β-カテニン活性化をダウンレギュレーションする。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27836540
EGCGはGSK-3βおよびPP2Aとは独立した機序により、Ser 33/37残基でβ-カテニンのリン酸化を誘導し、続いてβ-カテニンの分解を促進し、それにより結腸癌細胞の増殖を阻害した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4285564/
レスベラトロール
レスベラトロールは結腸癌細胞の核内のβ-カテニンのレベルを有意に減少させることが示されています。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18504708
低濃度のレスベラトロールは、RKOの核内のβ-カテニンの量および割合を有意に減少させ、すべての細胞株において、β-カテニン局在化の調節因子であるlgsおよびpygoIの発現を減少させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18347188
レスベラトロールは、Akt、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、Wntシグナル伝達経路の下方制御を媒介する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18347188
ルペオール
ルペオールは、果物では、オリーブ、イチジク、マンゴー、イチゴ、ブドウ、野菜ではピーマン、白キャベツなどに含まれる。
薬用植物(アメリカニンジン、シアバター植物、Tamarindus indica、Crataeva nurvalaおよびBombax ceiba)に含まれるルペオールは北アメリカ、中国、アフリカ、カリブ海の島々に住む先住民族によって広く使われていた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3384069/#bib167
ルペオールは、炎症、癌、関節炎、糖尿病、心臓病、腎臓毒性、および肝毒性に対する有益な活性が含まれる。
ルペオールは、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性を示す黒色腫細胞に対して有意な増殖阻害能力を有する。
ルペオールはβ-カテニンの核への局在化を抑制し、セリン部位ser552,ser675でのβ-カテニンのリン酸化状態を減少させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20732907
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16199882
リコピン
リコピンはGSK-3βリン酸化の効果を弱めることによって、核内のβ-カテニンの局在を減少させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20711635
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20155615/
スルフォラファン
カルノシン酸(ローズマリー)
ローズマリー由来のカルノシン酸は、β-カテニンを減少させる天然化合物。
ガジュツ(βエレメン)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29363722
トンカットアリ
www.inm.u-toyama.ac.jp/jp/nennpo/14np/14_sosetsu.pdf
薬剤
NSAIDs
イブプロフェン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3078769/
cancerpreventionresearch.aacrjournals.org/content/4/1/161
セレコキシブ
ci.nii.ac.jp/naid/500000575933/
ビスフェノールA
ラット脳における神経幹細胞の増殖および分化に対するビスフェノールAの阻害効果は、Wnt /β-カテニン経路に依存する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31273605?dopt=Abstract
Wnt経路の活性化
ニューロン分化の促進におけるその極めて重要な役割にもかかわらず、Wnt / βカテニンシグナル伝達経路の活性化は分化よりも、むしろ増殖を促進することが示されている。
ビタミン・ミネラル
リチウム
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17676991/
セレン
セレン酸ナトリウムによるPP2Aの活性化は、Wnt /β-カテニンシグナル伝達の活性化および標的遺伝子のトランス活性化をもたらしうる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28711506
ハーブ
オリーブ葉(オレウロペイン)
マウスへのオレウロペイン局所投与0.4mgはマウス皮膚の成長期発毛を誘発する。マウス皮膚組織におけるWnt10b /β-カテニンシグナル伝達経路の刺激、およびIGF-1、KGF、HGF、VEGF遺伝子発現のアップレギュレーションと関連して発毛促進効果に寄与している可能性がある。
journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0129578
バイカリン/スカルキャップ
バイカリンはWnt3a、Wnt5a、frizzled 7、dishevelled 2発現を刺激する。
一方でAxin / casein kinase1α/腺腫様ポリープ症/グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β分解複合体を阻害し、β-カテニンの蓄積とWnt経路の活性化をもたらす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29336472
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5810219/
アンジェリカ/アンゲリシン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6472132/
CBD カンナビジオール
CBDはPPARγの刺激、アミロイドβの阻害、アミロイド前駆体タンパク質のユビキチン化によってWnt/β-カテニン経路を増加させ得る。また、CBDは酸化ストレスを軽減し、ミトコンドリア機能障害と活性酸素種の生成を減少させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28981597
アマチャズル
Gynostemma pentaphyllumサポニンは、メラニン形成を誘導し、そしてcAMP / PKAおよびWnt /β-カテニンシグナル伝達経路を活性化する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31288940
フユアオイ
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26249736
菊花木
Bauhinia championi(Benth)
www.spandidos-publications.com/10.3892/ijmm.2013.1527
青黛(せいたい、indigo naturalis)
GSK-3βの阻害によるWntシグナル伝達経路活性
www.medchemexpress.com/Meisoindigo.html
トウゴマ(リシニン)
リシニン(Ricinine)は、トウゴマに含まれる毒性アルカロイド
www.inm.u-toyama.ac.jp/jp/nennpo/14np/14_sosetsu.pdf
薬剤
GSK-3β阻害剤
エストロゲン
エストロゲンは、Fhl1発現を誘導することにより、骨形成中のWntシグナル伝達の活性を高める。Fhl1は骨形成マーカー、Runt関連転写因子2(Runx2)、オステオカルシン(OCN)、およびオステオポンチン(OPN)の発現を促進する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25676585
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3855436/
バルプロ酸
バルプロ酸処置は、神経幹細胞のWnt-3αおよびβ-カテニンの発現を有意に増加させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25755748
バルプロ酸治療はβ-カテニンレベルを上昇させ、GSK-3β活性を阻害、NeuroD1の発現を誘導し、アルツハイマー病マウスの学習と記憶能力の改善を示した。
www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnagi.2019.00062/full
ミノキシジル
ミノキシジルのWnt/β-カテニンシグナル伝達活性
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21524889
運動
座りがちな動物は、Wntアンタゴニスト、Dkk-1のより高いタンパク質レベルが見出された。対照的に、長期的に中程度の運動を行なった動物ではそれらのタンパク質が最低レベルを示した。
また、運動だけではなくマウスの環境エンリッチメントによっても、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化に変化が生じた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24183784
LLLT
Wnt10bおよびβ-カテニンの発現レベルの増加
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28508243
環境エンリッチメント
環境エンリッチメントと恒常性フィードバック
マウスを環境エンリッチメントの中で飼育すると、神経細胞の成長が速くなり、分岐が増加した。しかしこれらの変化は、より早いそしてより広範な刈り込みによって打ち消された。その結果、環境エンリッチメントマウスの神経細胞の樹状形態は、標準条件下で飼育されたマウスと有意な差が示されなくなった。
対照的に、Wntシグナル伝達の破壊がもたらした樹状突起成長の抑制は、より短い長さではあるが、同様の分岐構造を有する樹状突起をもたらした。
これらの知見は、Wntシグナル伝達には、樹状突起形態の活性依存性変化を元に戻してしまう恒常性フィードバックの仕組みがあること示唆する。
環境エンリッチメントはマウスのシナプス後CA3錐体ニューロンWnt7a / bレベルの増加を示し老齢によって減少しシナプス数を逆転させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19477153
咀嚼
咀嚼刺激の低下したマウスの海馬Wntシグナル障害
kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H06191/
軽度の低酸素
長期間(5週間)の間欠的低酸素または、軽度の持続的低酸素(6〜72時間 10%の酸素濃度)への曝露は、マウス海馬のWnt /β-カテニンシグナル伝達経路の活性化を刺激し、成人の歯状回顆粒層(SGZ)領域で細胞増殖と神経新生を促進することが見出された。
これは、成人の海馬におけるWnt /β-カテニンシグナル伝達経路を刺激する可能性があることを示唆する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24574965/
しかし、慢性間欠性低酸素症(CIH)を経験したマウスの海馬では、有意な神経形成は観察されなかった。短期間のCIHおよび軽度の持続的低酸素では、ニューロン増殖に異なる効果を示す可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4819306/
関連因子
BMP/TGF-βシグナルの阻害
チロシンキナーゼ受容体シグナル伝達の活性化