エストロゲン ホルモン補充療法の批判とリスク
Criticisms and Risks of Estrogen Hormone Replacement Therapy

強調オフ

ステロイドホルモン

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「クリティカルウインドウ」仮説

健康なニューロンを有する患者ではエストロゲン投与の早期治療にポジティブな応答を見せるが、高齢となりニューロンに異常があるとエストロゲンはネガティブな応答となるという仮説。

原因はわかっていないが、エストロゲンのが一定期間存在しないことによって脳が何らかの不可逆的な変化を受ける可能性があることを示唆する。このクリティカルウインドウの開始年齢、期間は不明。

ホルモン治療がアミロイドの蓄積を遅らせ認知症を防ぐ研究がある一方で、ホルモンによる早期治療が脳を縮小する相反する研究が存在する。エストラジオールの過剰な投与量、またはプロゲステロンとの拮抗作用などが要因として疑われている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3511049/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3780981/

このクリティカルウィンドウ仮説については、多くの見解があるが、そのいくつかは後述のWHIMSでまとめている。

血管機能低下によるリスク

エストロゲンによるアルツハイマー病発症リスク年齢の低下は、加齢による血管リスクの差から生じる可能性がある。ホルモン療法は、アルツハイマー病の治療において実質的な役割を有していない。約65歳後に始まるエストロゲン – プロゲストゲン療法はおそらく認知症リスクを増加させる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3830600/

アテローム性動脈硬化におけるリスク

エストラジオールは健康な血管系内皮を保護するが、アテローム性動脈硬化病変の存在下では有害である。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11730394/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17438515/

ApoE4での限定的効果

ApoE4対立遺伝子多型は男性よりも女性でアルツハイマー病発症リスクを高める。

エストロゲン療法は非ApoE4メスマウスのアミロイド沈着を減少させたが、ApoE4メスマウスでは増加した。エストロゲン療法は、非ApoE4キャリア女性へ利益があることを示唆する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24368217

エストロゲンは、脳のアポリポタンパク質の発現に影響を与える。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9056393

ホルモン補充療法による亜鉛欠乏

外因性のホルモン投与は、亜鉛欠乏を誘発しミネラルバランスの不均衡を引き起こす。

銅の過剰

エストロゲンは銅の取り込みに重要な役割は果たす腸細胞が、ATP7A-mRNA発現の増加を介して銅の輸送と取り込みを増加させる可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4105953/

HIF-1αの阻害

エストラジオールの代謝産物である2-メトキシエストラジオール(2ME2)は、低酸素誘導因子1αの阻害作用を有する。

HIF-1αは脳虚血、低酸素症に対して保護作用をもつ因子のため、2ME2が保護作用を低下させる可能性がある。一方でHIF-1αの過剰活性、長期的な増加は有害な作用をもたらすことも示されており諸刃の剣の標的因子としても知られている。

HIF1-αが不適応に増加している場合、抑制作用をもつ2ME2が保護作用を示す可能性がある。

エストロゲン補充療法の乳がんリスク

一般的にエストロゲンのメタアナリシスは、合成か生物学的同一のものであるかといった区別をしないため役に立たない。また経口と経皮もリスクが異なるため細部を読み込んでいくことが必要となる。

5年以上の併用療法

エストロゲンとプロゲストゲンの併用療法を5年以上行うと、リスクが増加する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23672656/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22784968/

プロゲステロンとの併用による乳がんリスクの微増

エストロゲンに加えていくつかのプロゲストゲンが乳癌のリスクを増加させたが、エストロゲン単独ではそうではなかった。

結腸直腸および子宮内膜がんに対する有益な効果および卵巣がんに対する有害な影響は生じたが、少数の女性にしか影響しなかった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20566620/

推奨治療期間は、エストロゲン療法とエストロゲン&プロゲストゲン併用療法で異なる。

エストロゲン&プロゲストゲン併用療法は乳がんおよび乳がん死亡率の増加リスクがあるため3~5年の治療期間に制限される。

エストロゲン補充療法では平均7年および4年の追跡調査により有益なプロファイルが観察される。

エストロゲン補充療法は女性の健康推進イニシアティブ(WHI)において、乳がんリスクを増加させなかったが、乳がんの病歴をもつ患者においては、一つのRCTで高い乳がん再発率の報告がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3443956/

リスクは治療期間の長さと関連する

10年間のエストロゲン単独補充療法は、1000人あたり5人の乳がん患者が増加、

エストロゲンおよびプロゲステロンの併用補充療法では1000人あたり19人の癌患者が増加。

用量によるリスクの差はほとんどなく、連続的な治療期間の長さがガン発症リスクへの大きな影響を与える。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12927427/

プロゲスチン併用によるリスク

エストロゲンとプロゲスチン(合成プロゲステロン)補充治療のリスクは、エストロゲン単独製剤よりも高く、閉経前後の時点でホルモン療法が開始された場合にはリスクが高かった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21278356/

天然プロゲステロン・経皮投与

天然プロゲステロンと経皮投与経路がより安全なホルモン補充療法を提供する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18775609/

遺伝的乳がんリスク(参考)

乳がんリスク遺伝子 BRCA1 BRCA2

乳癌発生率のピークは、BRCA1突然変異キャリアでは41-50歳の女性、BRCA2突然変異キャリアについては51-60 歳の女性に見られた。乳がん発症の累積リスク推定値は、BRCA1キャリア72 %、BRCA2キャリア69%であった。

両方のBRCA遺伝子の突然変異に関して、卵巣癌のリスクは、女性の年齢が61〜70歳に達するまで、年齢の増加とともに増加した。

80歳までに卵巣がんを発症する累積リスク推定値は、BRCA1突然変異キャリアでは44 %、BRCA2突然変異キャリアでは17%。

乳癌既往歴をもつ女性の20年後の対側乳癌発症累積リスクは、BRCA1変異キャリアで40 %、BRCA2変異キャリアで26%であった。

www.cancer.gov/news-events/cancer-currents-blog/2017/brca-mutation-cancer-risk

BRCA1遺伝子 SNPs
BRCA2遺伝子 SNPs
ATM遺伝子 SNPs
CHEK2遺伝子 SNPs
TP53遺伝子 SNPs
対立遺伝子の該当数とリスクのオッズ比

0: 1.00 (by definition)
1: 1.46 (CI: 0.89 – 2.40)
2: 1.39 (CI: 0.86 – 2.25)
3: 1.75 (CI: 1.09 – 2.80)
4: 1.56 (CI: 0.95 – 2.55)
5: 1.31 (CI: 0.76 – 2.24)
6: 1.84 (CI: 1.04 – 3.26)
7: 2.10 (CI: 1.06 – 4.16)
8: 4.02 (CI: 1.56 – 10.38)
9 or more: 8.04 (CI: 1.89 – 34.26)

www.snpedia.com/index.php/Breast_cancer

認知機能への影響(WHIMS)

Women’s Health Initiative Memory Study (WHIMS)

女性の健康イニシアチブ-記憶研究

認知機能障害に対するホルモン療法に関して、もっとも議論の対象となり、研究者を困惑させるのWHIMSの大規模臨床研究。

エストロゲンの脳への有益なメカニズムから、エストロゲンを投与することによってアルツハイマー病などの認知機能障害リスクを低下させるだろうという仮定の元行われた大規模の臨床研究。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15213207/

結果は閉経直後のエストロゲンが急低下する時期を除き、エストロゲン療法の有益な利益は認めらず、65歳以上の女性の認知症リスクを増加させるが、軽度の認知障害のリスクは増加しないことを示した。

批判的検討

WHIMSの結果は、若い閉経後の女性には適用できず、クリティカルウィンドウ仮説と一致する。60歳間未満の女性への絶対的リスク自体は非常にまれ。 1000人に一人

健康な高齢女性の閉経後の、エストロゲン標準用量の投与は臨床的な認知機能に重大な影響を与えない。

健康な若い女性の閉経後の合成エストロゲン、合成プロゲステロン療法は言語記憶にわずかではあるが、重大な影響をおよぼす。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3667708/

比較的小規模な臨床試験の証拠では、アルツハイマー病女性に対するエストロゲン療法の有益な効果も有害な効果もないことが示唆されている。

これまでの研究から、エストロゲンがアルツハイマー病の生化学的経路を直接的に悪化させることは考えにくい。

研究結果に影響を与えうる要因
  • ホルモンの血中濃度が脳内濃度を正確に反映していない可能性
  • エストロゲンのいくつかの効果はプロゲステロンによって変化する
  • エストロゲンによって、エストロゲン受容体(αとβ)への親和性が異なる
  • プロゲステロンによっては異なる効果となる。
  • エストロゲンの経口摂取と経皮摂取の効果の違い
  • 暴露の用量、期間による影響の違い
  • 内因性のエストロゲンは、BMI、遺伝的要因、その他の個人差により異なる
  • 卵巣摘出手術などの外科的閉経は自然に生じる閉経とは異なることがある
  • 早発閉経による効果の違い
  • 食事からのエストロゲンまたはエストロゲン受容体に影響を与える成分、や薬などはホルモン療法の効果を変化させる可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3683552/

 

ホルモン療法には多くのパラメータが存在し、WHIMSではそのパラメーターが制御されていないゆえに無効または欠陥であるという見解が、機能性医学やブレデセン博士らグループから提出されている。

ホルモン補充療法に影響を与えうる要因(パラメーター)
  • 合成ホルモン vs 天然ホルモン
  • 投与形態、経口 、パッチ、塗布、膣クリーム
  • エストラジオール投与量 低用量 vs 高用量
  • エストラジオールレベル
  • プロゲステロンとの併用
  • エストラジオールとプロゲステロンの比率
  • 投与開始年齢
  • 卵巣摘出手術
  • 摂取タイミング
  • がんリスク遺伝子
  • 認知機能低下のトレードオフ
  • エストロゲン受容体遺伝子変異(ESR1、ESR2)
リコード法での調整項目
  • 天然ホルモンの使用(特にプロゲステロン)
  • エストラジオール、プロゲステロンレベルそれぞれ、最適値の範囲におさめる。
  • エストラジオールとプロゲステロンの比率
よりベターな条件
  • エストラジオール投与形態はパッチまたはクリーム(プロゲステロンは明確ではない)
  • 摂取タイミング エストラジオールを午前中 プロゲステロンは午後か夜
  • プロゲステロンだけ、一週間オン・オフを繰り返して使用

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3683552/

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