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カビ毒・マイコトキシンのクリーニング
はじめに
環境カビ毒の専門家 ジョン・バンタ
カビは屋外のどこにでも存在し、胞子は家の中にも入り込む。胞子が入り込むことができない家はこの世に存在しない。
カビ胞子は、電気スイッチやコンセントの小さな隙間、エアダクトなどの経路を移動することができる。壁、天井、床などにある亀裂は、髪の毛の厚さの隙間があれば、カビにとっては高速道路が用意されているに等しい。
ニール・ネイサン博士
カビと水害の専門家として30年以上調査や提案を行ってきた私の結論としては、カビの生えた家は修復可能だということだ。
ただし、誰もがカビの生えた家を修理する時間、エネルギー、予算、専門知識をもっているわけではない。カビの問題に対処するための必要なケアと専門知識のレベルは、住人の必要性によって異なってくる。家庭では、カビに最も敏感な人を基準に対処していく必要がある。
カビの発生を防ぎ、成長したカビをコントロールしていく原則は複雑ではないが、カビに特化したアプローチが必要となってくる。
水害建物のカビ毒
マイコトキシン
カビ毒の曝露経路は、水害を受けた建物(主にビル建築)に住むことによってマイコトキシンへ曝露することが最も一般的な理由。
www.vk1call.com/property-damage-restoration/mold/
マイコトキシンとは、カビの二次代謝物として産生される毒の総称、300種類以上ある。
密閉環境での高リスク
近代建築の密閉された通気性のない環境で、感性リスクが飛躍的にリスクが高まる。
一度水害を受けるとカビは24~48時間で成長する。
水害被害は一般的
(米国の)建物の水害はかなり一般的で、資料によると調査した建築物の43%に水害があり、85%が過去に水害歴があったとされている。屋内湿度が50~60%を超える建物でも、発生する可能性がある。
マイコトキシンのみならず、他のダニ媒介病原体、オクラトキシンもCIRSを引きおこす可能性がある。
水害によるカビ毒リスク
水災害を受けた建築物で真菌やカビ毒などの生物毒素が増加するリスクがある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3131638/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19191921
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1764149/
水害建物、カビ毒、マイコトキシン曝露による疾患発症メカニズムと治療方法
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3654247/
水害建築物のカビ毒検査
ERMIテスト
作成中
カビ毒 除去
カビ毒除去の基本
乾燥を保つ
湿った建物はカビの成長を促進する。カビの成長を防ぐには乾いている状態を保つこと。建物が乾燥していればカビは生えない。外部から建築物に入ろうとするカビの胞子と断片は常に存在するが、建物内の水分レベルが高く無い限りカビが発芽したり成長はしない。
カビの成長が始まると対処が複雑化するため、カビを成長させないようにすることが肝要だ。
いくつかのカビは60%の湿度で成長を維持し、70~80%で成長を拡大する。
シンプルに取り組む
カビ毒除去を考える際、カビに強力に効く!といったメーカーの宣伝などが目につき抗し難くなる。またメーカーが宣伝する様々な製品、デバイス、化学的な説明に、困惑することになるだろう。
カビは物理的に取り除く
水害を受けてカビが生えた断熱材や石膏ボードは取り外して廃棄する必要がある
木材の成長したカビは研磨して表面から物理的に取り除く必要がある。
定着した胞子やカビの断片によって影響を受けた自宅や所有物は徹底的に洗浄する必要がある。家族の最もカビに対する感覚過敏な人が受け入れられるレベルになるまで掃除を続ける必要がある。
窓の結露で発生するカビや、タイルのつなぎ目にある軽度のカビは、定期的にクリーニングする必要はあるが、通常交換までする必要はない。
- 表面が硬いモノは簡単に掃除できる。
- 衣類、シーツ、タオルは必要に応じて洗剤で洗うかドライクリーニングする。
- 枕、布張りの家具、マットレスなどの厚みのある柔らかい多孔質のモノは、ケースバイケース。クリーニングするよりも交換したほうが簡単で費用対効果が高いことがある。
カビ毒除去のヒント
季節性のアレルギーを除けば、カビに敏感な人でも屋外ではカビに反応することはない。これは屋外では新鮮な空気が流れる中で、カビ同士または生物同士が競争してバランスを保っているからだ。
クリーニングがどこの家でも有益であることは間違いなく、特に水分損傷のある家では重要となる。しかし、自宅が、屋外の生物環境バランスと一致しないとその恩恵は低下する。
ロードマップの作成
カビ毒の除去を実行する前に、どれだけをどのようにやっていくかロードマップを作成する。
カビ毒除去の実行前、実行中、実行後の建築物の状態を、住人の感受性レベルに基づいて計画し文書化していく必要がある。カビ毒除去中の合併症を回避してくために何を行う必要があるのかの判断に役立つ。
閉じ込めと隔離
カビ毒やその汚染物質は広がることを防ぐために、可能な限り隔離してカビ毒の修復を実行する。通常、区画に閉じ込めることと空気の流れをコントロールすることで広がることを防ぐことができる。
殺菌は逆効果!
カビを殺菌、抑制する、覆い隠すといった方法が成功することはめったになく、通常、より状況を悪化させる。
よく耳にするのは、「カビを殺すために酢、重曹、エッセンシャルオイルなどを使った高価なカビ専用クリーナーだけを使用している。」というものだ。
これは、カビの成長、胞子、断片またはマイコトキシンには役に立たない。カビを殺すというのは問題の解決ではなく、通常はより多くの問題につながる。
カビ毒の予防
乾燥が重要
カビの成長を引き起こす水分や湿気を改善させることが不可欠。水分が残っているとカビの成長は復活する。カビが自然界でどのように成長し移動するのかを理解することは、家のカビ感染の予防や改善のためにするべきことがなんであるかを理解するのに役立つ。
定期的クリーニング
定期的なクリーニングは、有害物の蓄積を防ぐことで特にカビに敏感に反応する人には役に立つ。カビ毒をどこまで除去すべきかは個人によって異なり住人のもっともカビ毒感受性の高い人に基準を合わせて、どの程度のクリーニングが必要か学んでいく必要がある。
毒性のない(浴槽、トイレ、タイル)洗浄剤を日常的なクリーニングとして使用することは、表面の軽度なカビに対しては十分に役立つ。
HEPA掃除機
HEPAフィルターを使った掃除機を使用すること。残念ながら多くのHEPAフィルター付き掃除機は適切に機能していない。
私(ニール・ネイサン博士)のオススメはShark Rotator Lift-Awayという、完全に密封されている掃除機だ。しかし、一つ欠点がありゴミパックがないためゴミを取り出す時埃が放出されてしまうかもしれない。ゴミの取り出しは屋外で行ったほうが良い。
HEPA掃除機は表面からカビの胞子と乾燥した断片、汚れ破片を取り除くことができる。
カビ臭と隠れカビ
カビの成長を示すカビ臭
カビ臭は、実際にカビが視認できなくとも湿気や水漏れなどによりカビが活発に成長していることを示す強力な指標である。カビの生えた臭いは、湿気によって成長しているときにのみ発生する。
休眠しているカビや死んでいるカビはカビ臭につながるガスを生成しない。またカビている領域が乾燥すると臭いは消える。
時間が経過すると、休眠中のカビは消滅するが、これはカビがなくなった、もしくはカビの問題が解決されたことを意味しない。
環境保護庁(EPA)は、「死んだカビはなおアレルギー性であり、一部の死んだカビは潜在的に有害である」と述べており、死んでもカビ汚染は残っている。
カビ自体は無臭
一般的な誤解は、マイコトシキンがこれらのカビ臭を引き起こすというものだが、実際には微生物の揮発性有機物(mVOC)と呼ばれるガスが臭気を引き起こす。マイコトキシン自体は通常無臭である。
マイコトキシンは粒子に付着し、粒子フィルターで除去されるがmVOCは粒子フィルターを通過する。高品質のHEPA空気清浄機はマイコトキシンやほこりは収集できるが、カビ臭は除去することはできない。
また空気清浄機、オゾン処理、その他化学処理によって臭気を減らすことはできるが、間違った安心感につながることがある。無臭の微粒子とカビの成長の原因に対しては、なお適切に修復していく必要がある。
カビ毒クリーニング 概要
掃除機で吸い取った後、濡らしても大丈夫な硬い表面の材質のものは、石鹸水で少し湿らせた使い捨てマイクロファイバークリーニングクロスで拭くことができる。そしてできるだけ速くかつ完全に乾燥させる必要がある。
このクリーニング方法により、表面のカビの成長は除去できるが、汚れは除去されない。
乾燥した後では過酸化水素ベースのクリーナーは汚れを少なくするまたは除去するのに効果的。
壁の表面的なカビの成長に対しては塗り直す前に、汚れ防止剤を使用する必要がある場合がある。ただし、これらの方法は、結露によって表面膜上に発生したカビに対してのみ有効。
壁の空洞内やタイルとグラウトの後ろに隠れているカビの成長には無効。
水分が壁の空洞やタイルの裏側に入ってしまうと、表面のカビの成長や汚れを取り除くだけでは不十分となる。この場合、カビが生えた材料の除去が必要となる。湿気の原因が解決されない場合、カビは再発し続ける。
効果的なカビ毒クリーニング 10のルール
- ほうきの使用は禁止
- 適切に動作する真のHEPAフィルター掃除機を常時使用する
- あらゆる方向から吸引する。
- 掃掃除機の収集バッグ、キャニスターは屋外で外し空にする。
- 掃除機をかけたとき、汚れがどれだけ取り除けていないのか確認する
- 湿らしたり濡らしてクリーニングする前に掃除機をかける。
- 硬い表面はマイクロファイバークリーニングクロスできれいにする
- 硬い表面をどれくらい効果的に洗浄したかチェックする
- 一般的にある安全な家庭用品を使用して効果的にクリーニングする
- 効果のない危険性のある製品の使用を避ける