Conflicts of Interest In Science
よお、クリムスキーの『科学における利益相反』を読んで、mRNAワクチン(ファイザーとかモデルナのやつね)をガチで考察してみるぜ。クリムスキーの視点ってのは、利益相反(COI)が科学をどれだけ歪めて、公衆衛生を危険に晒すかって話だから、mRNAワクチンにもバッチリ当てはまるんだわ。
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— Alzhacker ᨒ zomia (@Alzhacker) May 2, 2025
本書の要約
本書「Science in the Private Interest: Has the Lure of Profits Corrupted Biomedical Research?」(シェルドン・クリムスキー著)は、生物医学研究における利益相反(COI)の問題について分析した論文集である。著者は1980年代から2017年までの自身の研究成果を通じて、学術界と産業界の関係変化、特に生物医学研究における商業的利益の影響を検証している。
主要テーマは、科学の客観性と公共の信頼を脅かす金銭的利益相反の問題である。著者は、バイ・ドール法(1980年)以降、大学研究者と企業間の関係が急速に変化し、学術的価値観が侵食されていく過程を詳細に追跡している。特に製薬会社からの資金提供が研究結果に影響する「資金効果(funding effect)」について複数の研究事例を示している。
著者は、利益相反の透明性だけでは不十分であり、科学の独立性と公平性を保護するためには、金銭的利益相反の予防が必要だと主張している。特に重要な指摘は、商業的利害関係を持つ科学者は同時に公共の利益の観点から批判的な評価を提供することができなくなるという点である。
「知識を追求し広めることを目的とした大学という古典的なイメージは、過去の時代の薄れゆく記憶となった」という著者の言葉は、学術界の変容を象徴している。本書は、生物医学研究における商業化が科学的客観性にもたらす危険性と、それに対する政策的対応の必要性を強調している歴史的に重要な文献である。
第1章 学術科学の企業による乗っ取りとその社会的コスト(The Corporate Capture of Academic Science and Its Social Costs)
大学の生物学者と企業の関係性が変化する中で、商業的影響が科学研究の客観性や方向性に与える影響について論じている。学術的科学者が企業と財政的関係を持つと、その分野の商業的応用に関連する問題への批判的視点が失われるという主張が中心。科学者は企業から資金提供を受けると、スポンサーを公に批判することを避ける傾向がある。マサチューセッツ州の企業科学諮問委員会に所属する大学教員の調査から、利益相反の広がりを示す証拠を提示している。(258字)
第2章 バイオテクノロジーにおける学術-企業関係:定量的研究(Academic-Corporate Ties in Biotechnology: A Quantitative Study)
1980年代後半における大学研究者とバイオテクノロジー企業間の構造的関係を定量的に分析した研究。889社のバイオテク企業と832人の二重所属科学者(DABS)のデータベースを構築して調査した結果、ハーバード大学では69人の教員が43社と関係を持ち、MITの生物学部では教員の31.1%が企業と関係していた。また、全米科学アカデミー会員のうち生物医学者の37%が企業と関連していることが判明。研究資金の審査を行うピアレビュアーの41.2%が企業と財政的関係を持っていた。科学の規範と商業主義の急速な融合を示している。(254字)
第3章 科学、社会、拡大する道徳的言説の境界(Science, Society, and the Expanding Boundaries of Moral Discourse)
マルチベストな科学(複数の利害関係を持つ科学)に関する短い抜粋。マートンが提唱した「無私性」という科学の規範が、現代の科学研究の社会構造変化によって挑戦を受けている状況を説明。生物科学者たちは企業とのコンサルティング関係、株式保有、特許取得、新会社設立など多様な商業的活動に携わるようになった。これにより、科学の自律性と公的責任の概念が再構築されつつある。科学と社会の規範的領域が接近し、自主管理の境界が再調整されている現状を論じている。(198字)
第4章 科学雑誌における著者の金銭的利益:14の出版物のパイロット研究(Financial Interest of Authors in Scientific Journals: A Pilot Study of 14 Publications)
1992年に科学・医学雑誌14誌に掲載された789論文について、マサチューセッツ州の著者の金銭的利益を調査。研究対象となった1,105人の著者のうち、15.3%が特許、諮問委員会、会社役員などの形で研究内容に関連する金銭的利益を持っていた。論文の34%は少なくとも一人の主要著者が金銭的利益を持っていたが、これらの利益は論文中で一切開示されていなかった。調査当時、ほとんどの雑誌は利益相反の開示を要求していなかったが、科学と産業の密接な関係が透明性の欠如につながっている実態を明らかにした研究である。(242字)
第5章 科学出版物における金銭的利益とその開示(Financial Interest and Its Disclosure in Scientific Publications)
科学出版物における金銭的利益の開示について論じた短い論考。著者の金銭的利益が研究の客観性や信頼性に影響する可能性を指摘し、医学雑誌編集者が開示方針を採用する動きについて説明している。著者は、金銭的利益の存在自体がバイアスを意味するわけではないが、読者や審査者がバイアスの有無とその影響を評価するためには開示が重要だと主張。雑誌編集者に対して、金銭的関係の透明性確保のために開示方針を真剣に実施するよう促している。(190字)
第6章 科学的発見の利益とその規範的影響(The Profit of Scientific Discovery and Its Normative Implications)
科学の商業化の歴史的展開とその影響について分析。1980年のバイ・ドール法制定と1980年のダイヤモンド対チャクラバーティ訴訟における最高裁判決が、大学の研究成果の商業化と生物の特許取得を促進した経緯を説明。分子生物学の急速な商業化により、発見から応用までの時間短縮、知識の共有から秘匿への転換、マートンの提唱した科学規範(共産主義、無私性)の侵食が生じたと指摘。特に医療分野では生物医学知識の私有化が公衆衛生に脅威をもたらす懸念があるとしている。(204字)
第7章 利益相反と費用対効果分析(Conflict of Interest and Cost-Effectiveness Analysis)
医薬品の費用対効果分析における利益相反問題を扱った短論文。製薬会社から資金提供を受けた研究者による分析は、同様の研究を非営利団体が資金提供した場合と比較して、スポンサー企業に有利な結論を出す傾向が8倍高いという調査結果を紹介。この「資金効果」は研究バイアスを示唆するが、企業による事前選別など他の説明も可能であるとしている。標準化された分析手法や開示要件の重要性を強調し、費用対効果分析の専門家が独立性と客観性を維持できる仕組みの必要性を提言している。(199字)
第8章 科学と医学雑誌における利益相反方針:編集実践と著者開示(Conflict of Interest Policies in Science and Medical Journals: Editorial Practices and Author Disclosures)
科学・医学雑誌の利益相反(COI)方針に関する大規模調査を報告。1,396の影響力の高い雑誌を調査し、15.8%がCOI方針を持っていることを発見。さらに181の査読付き雑誌のうち65.7%は著者の金銭的利益開示が1997年に皆無だった。テンプレート式の開示要求を採用した6誌は開示率が高かった。138人の編集者へのアンケート調査では、73.7%が著者の開示内容を常に公表すると回答、60.2%はCOIを理由に投稿原稿を拒否したことがないと回答。開示率の低さは著者の不遵守が主因と推測される。(246字)
第9章 自律性、無私性、起業家的科学(Autonomy, Disinterest, and Entrepreneurial Science)
学術界における自律性と無私性の概念について考察している。1980年代以降、大学の商業化が進み、特許取得、産学連携、研究重視の傾向が強まった。相対的自律性の条件として、研究テーマの選択、方法論の決定、データの管理、結果の解釈、発表の自由の5点を挙げている。金銭的利害関係は他の利益と区別すべき理由として、法制度での特別扱い、科学活動から分離可能な性質、公開性の欠如を指摘。「資金効果」の研究結果から、資金源による研究バイアスの証拠を示し、無私性の規範維持の重要性を主張している。(217字)
第10章 DSM-IV パネルメンバーと製薬業界の間の金銭的関係(Financial Ties between DSM-IV Panel Members and the Pharmaceutical Industry)
精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)の作成パネルメンバーと製薬業界との金銭的関係を調査した研究。DSM-IVとDSM-IV-TRの170人のパネルメンバーのうち、56%が製薬企業と何らかの金銭的関係を持っていた。特に気分障害と統合失調症の作業部会では100%、不安障害、摂食障害、薬剤誘発性運動障害、月経前不快気分障害の各パネルでは80%以上のメンバーが金銭的関係を持っていた。最も多い関係は研究資金提供(42%)、次いでコンサルタント(22%)、講演者団体(16%)だった。精神医学の診断カテゴリーが製薬業界の利益に直結している状況を浮き彫りにした重要な研究である。(270字)
第11章 科学的「利益相反」の倫理的および法的基盤(The Ethical and Legal Foundations of Scientific “Conflict of Interest”)
科学における利益相反(COI)の倫理的・法的基盤を分析し、公共セクターと科学分野でのCOIの違いを検証している。従来、科学者は自己規制的な規範システムの中で客観的真理を追求する存在とみなされてきたが、現代では産業界との関係が複雑化している。COIの倫理的根拠として「管理責任」「透明性」「結果主義」「科学の完全性」の4つの枠組みを提示。特に「資金効果」の研究から、産業資金を受けた研究が資金提供者に有利な結果を出す傾向が明らかにされている。著者は透明性だけでは不十分で、場合によってはCOIの禁止が必要と主張する。(298字)
第12章 スポンサー付き研究が認可テストに失敗した場合:規範的フレームワーク(When Sponsored Research Fails the Admissions Test: A Normative Framework)
大学が研究助成金や契約の倫理性を評価するための規範的枠組みを提案している。大学の「多重人格」モデル(古典的、ベーコン的、防衛的、公益的)を説明し、それぞれが研究の目的と方法論に影響を与えることを示す。教員の相対的自律性とコミュニタリアン・リバタリアン的価値観のバランスを論じ、メタレベルと基礎レベルの規範の区別を提案。メタレベル規範(研究者の自律性、非機密性、透明性など)は普遍的であるべきだが、基礎レベル規範は機関ごとに調整可能。タバコ産業資金、武器研究、商業テスト、巨大研究契約、差別に関する事例を分析し、特定の研究資金の拒否は学問の自由を侵害しないと結論づけている。(300字)
第13章 米国精神医学会の臨床実践ガイドラインにおける利益相反と開示(Conflicts of Interest and Disclosure in the American Psychiatric Association’s Clinical Practice Guidelines)
米国精神医学会(APA)の臨床実践ガイドライン(CPG)における利益相反(COI)問題を調査した研究。統合失調症、双極性障害、うつ病に関する3つの主要ガイドラインの作成委員会メンバーの製薬企業との財務的関係を分析した。20名の委員のうち18名(90%)が製薬業界と少なくとも1つの財務的関係を持ち、この関係はガイドラインで開示されていなかった。委員の多くが複数の利益相反を持ち、ガイドラインで「最適」とされた薬剤を製造する企業と財務的関係があった。著者らはAPAに対して、より厳格なCOI方針を採用し、実質的なCOIを持つ個人のガイドライン作成への参加を制限するよう提言している。(268字)
第14章 日光の下の科学:財務的利益相反の透明性(Science in the Sunshine: Transparency of Financial Conflicts of Interest)
2010年に米国保健福祉省(DHHS)が提案した財務的利益相反(FCOI)規制の改訂を分析している。この改訂は1995年以来の大幅な変更であり、利益相反管理の透明性強化を目指している。主な変更点は、COIの定義拡大(「金銭的価値」から「金銭的価値または潜在的金銭的価値」へ)、開示閾値の引き下げ($10,000から$5,000へ)、機関のCOI方針の公開要件などである。しかし、この改訂にも欠点がある。民間資金による研究はこの規制の対象外であり、利益相反の防止ではなく管理に焦点を当てており、機関の利益相反に対処していない。著者は、透明性は必要条件だが十分条件ではないと結論づけている。(268字)
第15章 科学における資金効果との闘い:透明性を超えて何があるか(Combating the Funding Effect in Science: What’s Beyond Transparency?)
「資金効果」(企業資金による研究が資金提供者に有利な結果を出す傾向)に関する証拠と、科学における利益相反の倫理的基盤を検討している。政府の利益相反政策の発展を概観し、利益相反の4つの倫理的根拠(管理責任、透明性、結果主義、科学の完全性)を分析。著者は、透明性だけでは科学における商業的バイアスと公衆の信頼喪失に対処できないと主張する。製薬業界、タバコ研究、薬剤経済学における資金効果の証拠を検討し、医学雑誌編集者と医師団体による透明性を超えた取り組み(利益相反の禁止など)の例を挙げる。特に臨床研究、編集職、スポンサー付き研究における利益相反禁止の必要性を強調している。(284字)
第16章 高額な費用をもたらす贈り物に注意:民間資金が学問的独立性を侵害するとき州立大学に潜む危険(Beware of Gifts That Come at Too Great a Cost: Danger Lurks for State Universities When Philanthropy Encroaches on Academic Independence)
フロリダ州立大学(FSU)がコーク・チャリタブル財団から150万ドルの寄付を受け入れた2008年の決定に関する論評。財政難の公立大学が外部資金を求める際に学問的自律性と判断力を損なうリスクを警告している。コーク財団は最小限の政府を支持する政治的イデオロギーを持ち、FSUとの契約には問題のある条件が含まれていた。財団は経済学部の教員選考基準を決定し、候補者に対する拒否権を持ち、イデオロギーを「実践」するための使命を定めていた。著者はこの契約が大学の自律性を侵害し、政治的イデオロギーを促進するものだと批判し、FSUに契約破棄と資金返還を求めている。(273字)
第17章 財務的利益相反は研究にバイアスをもたらすか?「資金効果」仮説の調査(Do Financial Conflicts of Interest Bias Research? An Inquiry into the “Funding Effect” Hypothesis)
科学における「資金効果」(企業資金による研究が資金提供者に有利な結果を出す傾向)の証拠を調査し、これがバイアスの証拠といえるかを検討。製薬試験、薬剤経済学的研究、タバコ研究、ビスフェノールA(BPA)研究の複数のメタ分析と体系的レビューを分析したところ、資金効果は実在するが、その原因は複雑である可能性を指摘。産業界が資金提供する研究では、事前スクリーニング、方法論的選択、出版バイアスなどの要因も関与している。著者は、資金効果の存在は必ずしもバイアスを意味せず、社会科学者は「組織的懐疑主義」を持ち、資金効果の背後にある他の説明を検討すべきだと結論づけている。(287字)
第18章 DSM-IV および DSM-5 パネルメンバーの製薬企業との財務的関連性の比較:悪質な問題が継続(A Comparison of DSM-IV and DSM-5 Panel Members’ Financial Associations with Industry: A Pernicious Problem Persists)
精神障害の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)パネルメンバーの製薬業界との財務的関係を調査した研究。米国精神医学会(APA)が開示ポリシーを導入したにもかかわらず、DSM-5タスクフォースメンバーの69%が製薬業界との関係を持ち、これはDSM-IVより21%増加していた。13のパネルのうち3/4が過半数のメンバーに業界との関係があり、特に薬物治療が第一選択となる障害のパネルで利益相反が多く見られた。現行ポリシーには、講演者団の明示的開示要件の欠如、無制限研究助成金の除外、高い閾値限度などの問題がある。著者らはDSM-5タスクフォースメンバーから利益相反を排除し、講演者団参加者をパネルから除外するよう提言している。(288字)
第19章 DSM-5における三者間の利益相反と高額な特許延長(Tripartite Conflicts of Interest and High Stakes Patent Extensions in the DSM-5)
DSM-5で新しく導入された精神障害に関する臨床試験における三者間の利益相反を調査した研究。DSM-5パネルメンバー、臨床試験の主任研究者(PI)、そして製薬会社の間の財務的関係を分析。13の臨床試験のうち12で、DSM-5パネルメンバーと試験薬を製造する製薬会社との間に財務的関係が確認された。研究対象となった10の特許薬のうち9つは特許が切れるか間もなく切れる「ブロックバスター薬」で、新たな適応症を得ることで特許保護の実質的延長が可能になる。3つの試験では、PIもDSM-5パネルメンバーであり、新障害の採用決定と治療薬の試験という二重の役割を担っていた。著者らは、このような多重的利益相反が臨床判断に影響を与える可能性を指摘している。(287字)
第20章 全米科学アカデミーの遺伝子組み換え作物研究における委員会メンバーの利益相反ポリシーと産業関係(Conflicts of Interest Among Committee Members in the National Academies’ Genetically Engineered Crop Study)
2016年の全米科学アカデミー(NASEM)が発行した遺伝子組み換え作物に関する報告書の委員会メンバーにおける利益相反を調査した研究。NASEMは公式に「利益相反はない」と表明したが、調査では20名の委員のうち6名が財務的利益相反を持っていたことが判明。5名が営利企業から研究資金を受け、5名が遺伝子組み換え作物に関する特許を持っていた。これらの利益相反はNASEM自身の基準に照らしても開示すべきものだった。さらに、NASEMは機関としても農業バイオテクノロジー企業から資金を受けていたが、これを開示していなかった。著者らはNASEMに対し、利益相反の特定と管理のための独立した委員会の設立など、より厳格な利益相反ポリシーを提言している。(280字)
第21章 うつ病の臨床実践ガイドラインに関する利益相反ポリシーと産業関係:横断的研究(Conflict of Interest Policies and Industry Relationships of Guideline Development Group Members: A Cross-Sectional Study of Clinical Practice Guidelines for Depression)
うつ病治療のための臨床実践ガイドライン(CPG)開発における利益相反(COI)ポリシーと産業界との関係を調査した研究。14のガイドラインのうち6つしかCOIポリシーを含んでおらず、開示要件は大きく異なっていた。172名のパネリストのうち18%が製薬業界と財務的関係を持ち、ガイドラインの57%で少なくとも1名のメンバーが産業界と関係を持っていた。特に問題なのは、メンバーの多くが製薬会社の「スピーカーズビューロー」に参加していることであり、これは学術医学では一般的に禁止されている。非政府組織が作成したガイドラインは政府機関よりもCOIが多く、委員長の55%にCOIがあった。著者らは、IOMとG-I-Nの基準に従って、ガイドライン作成者の産業界からの独立性を高めるよう提言している。(293字)
あとがき
私は本書の冒頭で、民主主義社会の礎として、自由で独立した知識セクターの重要性を強調した。このような部門がなければ、他の2つの礎である選挙権や自由な報道が著しく損なわれてしまう。報道機関は、公衆衛生や環境問題を報道する際、学術的な科学に依存している。また、有権者がイデオロギーに汚染された情報や、真実を追求する以外の利益に支配された情報にさらされた場合、投票所において情報に基づいた選択を実現することはできない。
この巻に収録された調査研究と解説は、「セクター・ブレンディング」、つまり営利セクターが高等教育とパートナーシップを組むことの影響を明らかにするための努力の結晶である。ラルフ・ネーダーは、米国における消費者運動に最も貢献した人物として、企業が学術科学を支配することが民主主義にとって危険であることを理解している。彼はこう書いている。
開かれた交流の習慣、贈与関係、権力に真実を語る専門家の証言、偶然の好奇心、次世代の学生科学者への非独占的な遺産を持つ学術科学は、企業秘密や利益優先の研究選択、支配や支払い者への服従など、自らのやり方を貫く強大な政治力を持つ企業科学と大きく異なる」1。
これらの部門が混在する中で、前進する道はあるのだろうか。1980年のバイ・ドール法で定められたモデルのもと、民間企業から大学への資金提供は、両機関が利益を得るため、間違いなく継続されるだろう。科学的自由と誠実さの原則は、価値体系として、商業的目的のために真実を歪めることを合理化する短期的利益利益よりはるかに上位に立たなければならない。将来はどうなるのだろうか。
1990年代以降、学術誌、専門家協会、政府機関は、金銭的利害の衝突に対してより注意深くなっている。例えば、大学は、連邦政府の助成金受給者の重大な金銭的利害の対立を報告し、管理しなければならないが、これは多くの場合、すべての助成金受給者に拡大され、研究の客観性に影響を及ぼすと思われる。また、議会は製薬会社や医療機器メーカーに医師への贈答品の支払いを開示するよう求めるPPSA (Physician Payment Sunshine Act)を可決し、これは一般にアクセス可能なデータベースに記録される。最も権威のある医学・科学雑誌は、強力な利益相反開示方針を持ち、ゴーストライティングや名誉著者を禁じている。しかし、強力な方針を採用していない、あるいは採用した方針を実行していない査読付き学術誌も多く残っている。
大学は、研究者の自主性を制限するような助成金や契約書を受け入れてはならない。スポンサーに出版権や結果を編集する権限を与えるような契約文言は拒否されるべきである。大学は、教員のゴーストオーサーシップや名誉オーサーシップを剽窃の一形態であり、科学的誠実性の侵害であると考えるべきである。
連邦政府機関は、規制により利害関係者の代表が委員会に参加することが求められている場合を除き、諮問委員会の委員が実質的な金銭的利害関係を持つことを禁止する政府のガイドラインに厳格に従わなければならない。諮問委員会メンバーのすべての金銭的利害の対立は、公に認められ、委員会のあらゆる報告書に記載されなければならない。
公共・環境衛生に責任を持つ連邦機関の政府職員は、機関の業務に関連する商業に従事する営利企業において、株式、契約、コンサルタント業を含む金銭的利害関係を持つことを許可されるべきではない。
新薬、医療機器、農薬、化学化合物の認可を求める企業が、規制当局に研究成果を提出する場合は、資金源と、その企業が研究設計に関与したかどうかを開示すべきである。証拠として規制機関に提出された研究論文は、一般に公開されるべきであり、独占的なビジネス情報として保持されるべきではない。
出版後、著者の個人的な利益相反情報を開示しなかったり、ジャーナル編集者を欺いたりした科学者は、科学的誠実性に違反したとみなされ、制裁の対象となるべきである。いかなる企業も、自社製品の製造者と唯一の評価者を兼ねるべきではない。ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの元編集長は、「製薬会社が自社の医薬品の臨床試験をコントロールすることはもはや許されるべきではない」2と述べ、新薬の試験を監督する独立機関として処方薬試験研究所を提案した。3 これらの提案は、科学における金銭的な利益相反の影響に対処するために不可欠であり、企業と学問の境界が侵食されることによる問題を軽減することができる。