書籍:『多すぎるとは何人のことか?』米国への移民削減を求める進歩派の主張
How Many Is Too Many? :The Progressive Argument for Reducing Immigration into the United States

SDGs 環境主義マルサス主義、人口抑制移民問題

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コンテンツ

How Many Is Too Many?

The Progressive Argument for Reducing Immigration into the United States

何人は多すぎるか?

多すぎるとは何人か?

米国への移民削減を求める進歩派の主張

フィリップ・カファロ

シカゴ大学出版局

フィリップ・カファロはコロラド州立大学の哲学教授であり、地球環境サステイナビリティ学部の提携教員である。著書に『Thoreau’s Living Ethics』がある。

目次

  • 1 善良な人々、困難な選択、そして避けられない問題
  • 2 数字で見る移民
  • 3 大量移民の賃金
  • 4 勝者と敗者
  • 5 成長、あるいは経済は何のためにあるのか?
  • 6 人口問題
  • 7 環境保護論者の人口論からの後退
  • 8 アメリカの人口爆弾を打開する、あるいは地球を調理する
  • 9 解決策
  • 10 反対意見
  • 11 結論
  • 付録
  • 謝辞
  • 備考
  • 参考文献
  • 索引

AI解説

第1章

移民政策が善良な人々の運命を左右し、国の将来を決定づける重要な問題であることを述べている。著者は政治的に進歩的な立場から、現在の高い移民レベルがアメリカの労働者や環境に悪影響を及ぼしていると主張している。移民を減らすことで、経済的に公平で持続可能な社会を実現できるとしている。一方で、移民を減らせば、貧しい国の人々がより良い生活を求めてアメリカに来る機会が奪われると指摘している。善良な移民を受け入れつつ、移民流入が同胞や社会全体に深刻な害を及ぼすレベルにならないよう、バランスを取る必要があるとしている。

第2章

1790年の初の国勢調査以来、アメリカの人口が7625%増加し、2010年には3億900万人に達したことを述べている。アメリカの移民の歴史は4つの時期に分けられ、1965年の移民法改正により年間移民数が大幅に増加した。1986年の移民改革・管理法で多くの不法移民に恩赦が与えられ、不法移民の総数は1,000万人以上に達した。移民レベルを変更する法改正は世論の支持を得ずに行われていた。移民レベルの違いにより、2100年の米国の人口は3億4,300万人から6億2,900万人の間で大きく変動する可能性がある。世論調査では、多数のアメリカ人が移民を増やすのではなく、減らすか現状維持を望んでいるが、近年の移民政策決定において民意は無視され、企業の影響力が大きくなっている。

第3章 「大量移民の賃金」

大量移民が米国の労働者、特に未熟練労働者の賃金を長年抑制してきたことを示している。移民の流入により労働市場が供給過剰になり、賃金上昇が抑えられている。また、移民は労働組合の組織化を難しくし、労働者の交渉力を弱めている。著者は、現在の高い移民レベルが貧困層の賃金を押し下げ、経済的不平等を拡大していると主張している。

第4章 「勝者と敗者」

現在の移民政策がもたらす経済的影響の勝者と敗者を分析している。熟練労働者、投資家、経営者は移民から利益を得ているが、未熟練の米国人労働者は不利益を被っている。移民自身も勝者だが、全体としての利益は比較的小さく、移民送り出し国の貧困層には利益がない。著者は、富裕層に有利で労働者に不利な移民政策は、所得格差を拡大し、政治的分断を生んでいると指摘している。

第5章 「成長、あるいは経済は何のためにあるのか?」は

移民が経済成長を促進するとの主張に疑問を投げかけている。むしろ、一人当たりの富の増加、生活の質の向上、経済的不平等の緩和こそが重要だと主張している。現在の移民政策は、一部のエリートに利益をもたらすが、多くの労働者の生活を犠牲にしており、真の意味での国民の豊かさにつながっていないと著者は論じている。

第6章 「人口問題」

第6章「人口の問題」は、著者が環境保護活動を通じて得た経験から始まる。オコニー川とキャッシュ・ラ・プードル川の開発をめぐる取り組みの中で、人口増加が環境保護の努力を妨げていることを実感した。

人口増加は、大気汚染、水質汚濁、種の絶滅、スプロール化など、様々な環境問題の主要な原因となっている。20世紀、米国の人口は4倍、経済は25倍に増加し、それに伴って資源消費量も急増した。大気汚染と水質汚濁の改善は、人口増加によって鈍化している。

人口増加は種の絶滅の主な原因である生息地の喪失と直接関連している。人間は他の種と生息地や資源をめぐって競合しており、人口が増えれば、必然的に他の種は減少する。スプロールについても、人口増加が最も重要な原因であり、スプロールを止めるには人口政策の変更が不可欠である。

著者は、純粋な効率性による環境問題の解決は一時的な対症療法にしかならず、持続可能な解決には人口制限が必要だと論じる。人口が際限なく増え続ける中では、いかなる環境保護の取り組みも意味を失うことになる。

米国の将来人口は移民レベルによって大きく左右される。現在の高い移民レベルを維持すれば、今世紀末までに人口は2倍以上になる可能性がある。一方、移民を減らせば、人口を比較的低いレベルで安定させることができる。

国内外の環境問題に真剣に取り組むには、移民を減らして米国の人口増加を食い止める必要がある。人口安定化だけでは持続可能性は保証されないが、それなしでは持続可能性の実現は不可能である。過剰消費の抑制と技術革新と並んで、人口制限は賢明な環境保護政策の不可欠な要素なのである。

第7章 「環境保護論者の人口論からの後退」

第7章「環境保護主義者の人口学からの後退」では、環境保護運動と移民・人口問題の関係の変遷が論じられている。著者は、1950年に移民が途絶えていたら、2000年の米国人口は5,000万人も少なくなっていただろうと指摘する。1960年代と1970年代には、米国の人口安定化は環境保護主義の重要な一部とみなされており、主要な環境団体は移民削減を支持していた。

しかし、1980年代以降、環境保護団体は人口問題や移民問題に沈黙するようになった。その主な理由は、アメリカの人口増加の主因が移民に代わり、移民問題が人種問題と結びついているためである。環境保護主義者は、移民削減を主張すると人種差別主義者とみなされることを恐れ、この問題から撤退した。

環境保護主義者が移民を支持する理由には、消費問題への焦点、グローバルな視点、移民の環境的中立性、効率性の向上などがある。彼らは、消費削減こそが環境問題の解決策であり、移民は単に人々を移動させるだけで環境的には中立であると主張する。また、効率性の向上によって、人口増加を続けながらも環境保護を実現できると論じる。

しかし、著者はこれらの議論が人口増加の長期的な影響を無視していると批判する。移民は移民先での一人当たりの消費量を大幅に増加させ、移民元の国々における人口増加や環境破壊、社会的不公正を助長している可能性がある。また、効率性の向上は人口増加によって相殺されてしまう。

著者は、環境保護主義者が移民問題を避けるのではなく、人種的な側面を意識的に軽視し、生態学的なメリットに基づいて議論すべきだと主張する。持続可能な社会の実現には困難な選択が伴うが、それが環境保護主義者の仕事なのだ。移民が環境に与える影響を直視し、議論することが求められている。

この章では、環境保護と移民・人口問題の関係について、歴史的な変遷と現在の論点が詳細に論じられている。著者は、移民が環境に与える影響を直視し、人種的な側面に囚われずに建設的な議論を行うことの重要性を説得力をもって主張している。環境保護運動が移民問題に取り組むことの難しさと必要性が浮き彫りにされた興味深い章である。

第8章「アメリカの人口爆弾を打開する、あるいは地球を調理する」

人口増加と環境問題の関係を詳述している。人口増加は資源消費や廃棄物の増加をもたらし、気候変動、生物多様性の喪失、汚染などの環境問題を悪化させている。著者は、米国の人口増加を抑制することが、国内の環境問題に取り組み、地球規模の持続可能性に貢献する上で不可欠だと主張している。移民を削減することで、米国は環境面でのリーダーシップを発揮できるとしている。

第9章 「解決策」

著者が望ましいと考える移民政策改革の具体的な提案を示している。不法移民に対する雇用主制裁の強化、長期滞在の不法移民への一回限りの恩赦、現在の米国人と将来の世代の利益を優先した移民数の設定などを提案している。また、貿易政策や外交政策を通じて、移民送り出し国の貧困削減に取り組むべきだと主張している。

第10章「反対意見」

著者は、移民制限に対する主な道徳的反論を検討し、自身の政策提案を擁護している。移民には移民する権利があるという主張に対し、著者は、そのような一般的権利は存在せず、移民制限は他の重要な権利や利益とのバランスを考慮すべきだと論じる。無制限の移民は、自然環境、国内の貧困層、自治、将来世代の権利を脅かすとしている。

移民は移民当事者の福祉を改善するが、貧困層の賃金低下、不平等拡大、環境悪化というコストを上回るものではないと指摘する。豊かな国の人々には世界の貧困層を助ける義務があるが、無制限の移民ではなく、貿易、援助、外交を通じて果たすべきだと提案する。

国境は悪ではなく、自治、社会的連帯、環境保護のために必要であり、同胞市民への特別な義務を生み出すと論じる。抽象的で非現実的な「コスモポリタニズム」の道徳観ではなく、現実のトレードオフを直視し、正当な義務のバランスをとる「本当の道徳」が求められるとしている。

著者は、これらの反論に答えることで、より現実的で責任ある進歩主義の社会像が見えてくると結論づけている。移民を減らすことで、持続可能で公正な社会を実現できると訴えている。

第11章「結論」

著者は、移民を減らすことで経済的不平等を縮小し、生態系の持続可能性を高められると主張する。合法移民を年間30万人に削減し、不法移民の雇用に対する制裁を強化し、移民送出国の状況改善に取り組むことを提案している。

現状の高い移民レベルを支持することは、環境悪化、貧困層の賃金低下、不平等拡大を容認することになると警告する。移民を無制限に受け入れることは、持続可能で公正な社会というアメリカの理想の実現を妨げ、世界の模範としての力を損なうと論じている。

そして、自由の女神像の意味を再解釈する。アメリカが持続可能で公正な社会のモデルとなることが重要だと訴え、巨大化によってアメリカの自由と世界の模範となる能力が脅かされていると指摘する。

著者は、政治改革、経済的不平等の是正、持続可能性の追求において、移民削減が果たす役割を理解する必要があると結論づけている。アメリカ人がこれらの課題に取り組むことで、世界中の人々に希望の光を示せると力強く主張している。

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