記事のまとめ
承知した。各章の内容を客観的に要約していく。
第1章「物議を醸すCDS」
二酸化塩素(CDS)は、支持者たちによって安価で効果的な万能薬として提唱されている物質である。マラリアから自閉症まで様々な症状を治したという証言が世界中から寄せられている。一方で、否定派は治療効果がないばかりか、危険な物質だと主張している。2020年のCOVID-19パンデミック時には、CDSが治療薬として再び注目を集めた。また、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供の親たちがCDSと食事療法で子供が「治った」と主張するグループも存在する。CDSは亜塩素酸ナトリウムに弱酸を加えて水で薄めた物質である。
第2章「発見者ジム・ハンブル」
MMSの発見者であるジム・ハンブルは、1996年にガイアナのジャングルでマラリアに効果があることを偶然発見したと主張している。その後、塩素ナトリウムの研究を続け、2006年に著書を出版した。マーク・グレノンと共に「ジェネシスII・オブ・ヘルス・アンド・ヒーリング」という教会を設立し、MMSの販売を始めた。グレノンは2020年8月にコロンビアで逮捕され、不正な物質の販売の罪に問われている。教会設立はMMSの使用を「合法化」するための計画だったことをグレノン自身が認めている。
第3章「アンドレアス・カルカー」
ドイツの「生物物理学者」アンドレアス・カルカーは、自身の関節リウマチがMMSで治癒したことをきっかけに研究を始めた。より低用量の服用方法を開発し、CDSと名付けた。カルカーは様々な病気に対する「プロトコル」を策定し、がんから自閉症まで幅広い症状に効果があると主張している。各プロトコルには具体的な投与量や期間が定められている。
第4章「CDSとは何か、どのように服用するのか?」
CDSは次亜塩素酸ナトリウムとは異なる物質である。MMSは28%の亜塩素酸ナトリウムを蒸留水に溶かし、酸で活性化させて二酸化塩素を生成する。CDSはMMSから生じるガスを水に溶かしたものである。作り方は、MMSと活性化剤を別々の容器に入れ、水の入った容器に入れて琥珀色になるまで待つ。CDSは11度以上で蒸発するため冷蔵保存が必要である。治療効果の根拠として、PHバランスの調整と酸素化作用の2つが挙げられている。
第5章「世界保健・生命連合」対 COVID-19」
2020年4月、トランプ大統領の消毒薬注入発言をきっかけに、CDSは再び注目を集めた。COMUSAV(世界健康生命連合)という約3000人の医師からなる組織が設立され、COVID-19の治療法としてCDSの使用を推進している。カルカーは、CDSがウイルスのカプシド・タンパク質を変性させ無力化すると主張している。また、ヘルシンキ宣言を引用し、実績のない治療法の使用に関する法的根拠を示している。
第6章「浄水器としての亜塩素酸ナトリウム」
メキシコウイルス学会のラモン・ゴンサレス医師によると、二酸化塩素は浄水や製紙産業で使用されている酸化物質である。動物実験では1リットルあたり100mgの濃度で赤血球の減少やグルタチオンの減少などの影響が確認されている。浄水処理に使用されるのは、未処理の水を飲むリスクの方が高いためだ。二酸化塩素は自然界には存在せず、実験室で作られる反応性の高い分子である。
第7章「CDSと陰謀論」
CDSへの医学界や製薬業界からの反発は経済的な理由に関連していると支持者たちは主張している。カルカーは、特許が切れた安価な物質であるCDSは製薬業界にとって脅威だと述べている。また、世界の主要政府は少数の富豪一族に支配されているという陰謀論を展開している。寄生虫感染に関する世界保健機関の調査を引用し、製薬業界が寄生虫を「栄養」し、薬物依存を促進していると主張している。さらに、自閉症の多くは「寄生虫によるワクチノーシス」だと説明している。
第8章「自閉症と闘うための抗寄生虫プロトコル」
不動産業者のケリ・リヴェラは、自身の娘がMMSで「治った」ことをきっかけに、自閉症治療用のクリニック「AutismO2」をメキシコに設立した。「Parasitosis Autista Inicio」というフェイスブックグループでは、グルテン、砂糖、乳製品、加工食品を排除する食事療法とCDSの組み合わせを推奨している。この治療法は「3D治療」(食事療法、駆虫、解毒)と呼ばれている。治療中に排出される物質について、支持者は寄生虫だと主張し、反対派は腸の剥離片だと主張している。
第9章「息子は呼吸が苦しい」
CDSに関する情報は、インターネット上で絶えず削除やブロックの対象となっている。英国のエマ・ダルメインやアメリカのメリサ・イートン、アマンダ・セイグラーらは、ASD児の親のグループに潜入し、CDSの使用を通報する活動を行っている。その結果、子供の親権を失うケースも発生している。多くのCDS使用者は、社会からの非難や報復を恐れて匿名を希望している。
第10章 「グレゴリオ・プラセレス、ジョセップ・パミエス、テレサ・フォルカデスのケース」
これらの人物は主要なCDS推進者である。化学者のプラセレスは性器ヘルペスがCDSで治癒したと主張している。農民のパミエスは薬草とCDSの使用を推進し、罰金を科されている。修道女で医師のフォルカデスは、同じ物質が希少疾病用医薬品として承認されていることを指摘し、CDSの安全性を主張している。
第11章「危険か、有効か、それとも単なるプラセボか?」
副作用として心臓の電気的活動の変化、肝不全、嘔吐、重度の下痢などが報告されている。米国毒物管理センター協会によると、2013年から2018年の間に16,521件の中毒事例があり、8人が死亡している。CDSの否定派は、科学的な研究の欠如を指摘している。推進者たちは医師ではなく、ハンブルはエンジニア、カルカーは経済学者、リベラは不動産業者である。否定派は治癒報告をプラセボ効果によるものと説明している。
第12章「暴露的な証言」
CDSを使用している人々の多くは、社会的な非難を恐れて匿名を希望している。証言には、コロナウイルスの症状改善、自閉症の子供の状態改善、予防的な使用などが含まれている。使用者たちは、プロトコルに従って適切に使用すれば問題は起きないと主張している。
第13章「副作用や死亡例」
2010年、シルヴィア・フィンクの死亡事例がアメリカで報道された。マラリア予防としてMMSを摂取後、下痢や嘔吐を発症し死亡している。推進者たちは、死亡や重篤な副作用の事例について、使用方法や投与量の誤りが原因だと主張している。アルゼンチンではCOVID-19パンデミック時に、CDSが原因とされる死亡事例が2件報告されたが、検死では因果関係は確定されていない。
第14章「各国におけるCDSの経験」
アフリカではマラリア対策としての使用が報告されている。大部分の国でCDSの医薬品としての使用は認可されておらず、保健機関は警告を発している。ボリビアでは上院がCOVID-19対策としての使用を承認したが、保健省は反対している。CDSは世界的に需要が増加しており、インターネット企業やマスコミによる規制にもかかわらず、推進活動は継続している。製薬業界の利益追求の歴史も議論の対象となっている。現時点で推進派と反対派の論争に決着はついていない。