リチウムの効果 認知症・アルツハイマー関連情報
概要
ヒトの体内でいくつかの酵素、ホルモン、ビタミン代謝、成長因子とも相互に多彩に関連していることがわかっているが、明確な体内メカニズムはまだ解明されていない。
躁うつ病治療薬として
1949年にオーストラリアの医学者ジョン・ケイドによって、炭酸リチウムが躁病に効果があることが発見された。
抗躁薬としての作用機序は、神経伝達物質の伝達への影響や脂質代謝の抑制が考えられているがこれらもよくわかっていない。
狭い有効域
治療で用いられるリチウム投与の有効領域は狭く、中毒となる上限値が低いため血中濃度を定期的に確認しながら用いられる必要がある。
暫定的なRDA摂取量 1mg/日 とされている。
腎不全、心不全、妊娠初期の患者さんに対しては禁忌。
自殺率の低下
リチウムの一般的な摂取源は湧き水、穀類、野菜。
地域によって飲料水に含まれるリチウム濃度の差が大きい。
そのため、リチウムの少ない地域では自殺率が有意に高いという研究報告もある!
自殺のような交絡因子の多い事象で自殺率に影響を与えるというのは非常に興味深い。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4063497/
リチウム不足
水道水に含まれるリチウムは地域性によるが、逆浸透膜浄水器(強力に不純物を除去する浄水器)などを使った水や、その水によって作られた食品ばかりを食べていても、リチウム不足になる可能性がある。
リチウムの重要な標的
・GSK-3β (グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3β)
・IMP (イノシトールモノホスファターゼ)
・Akt (Akt /β-アレスチン2)
・リチウムはGSK-3α、βの両者を直接的、間接的に阻害する。
・Bcl-2をアップレギュレートし、グルタミン産誘導のp53、Baxを抑制。
・リチウムは二価のマグネシウムの補因子として、広範囲の酵素を阻害することができる。
・リチウムのオートファジー誘導は、IMPaseの阻害による。
アルツハイマー病のGSK仮説
GSK-3βの阻害が、リチウムの主要なアルツハイマー神経保護効果
リチウムの神経保護効果
BDNFのサポートによる神経保護
リチウムの神経保護効果が発揮するには、BDNFの発現が必要!
リチウム自体にもBDNF増強作用があるが、BDNFをノックアウトしたマウスではリチウムを投与しても神経保護効果は見られなかった。
リチウムの神経保護効果はHSP70、Bcl-2のアップレギュレーション、p53のダウンレギュレーションによってもたらされている可能性が高い。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3073119/#b61
研究
GSK-3阻害剤、BDNF、NT-3を合成、放出の促進、神経新生の強力な刺激効果
認知症関連研究
リチウムを投与されていた人は、有意に認知症発症率が低かった。
リチウムは脳梗塞容積、カスパーゼ3活性、アポトーシス細胞を減少させる。
GSK-3αのAPPのプロセシング関与し、阻害することでアミロイドβ産生を減少させる。
認知能力の改善・タウの減少
二重盲検ランダム化試験 軽度の認知障害をもつ高齢者の認知能力が低用量のリチウムで改善された。
脳脊髄液内のタウ減少が、認知症の注意喚起課題の良いスコアと有意に関連していた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21525519
認知機能低下の抑制(メタアナリシス)
メタ分析 アルツハイマー病患者へのリチウム使用 プラセボ群と比べ認知低下を有意に減少
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26402004
content.iospress.com/articles/journal-of-alzheimers-disease/jad150437
MMSEスコアの改善
リチウムを軽度アルツハイマー病患者へマイクロドース投与(300μg=0.3mg)
対照群と比べて投与後3ヶ月後にMMSEスコアに有意差が生じ、徐々に増加していった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22746245
摂取量
低用量、高用量で効果が変わるリチウム
・高用量リチウム(約2mM)
mTORを活性化して、オートファジーをダウンレギュレートする。
・低用量リチウム(約0.8mM)
IMPase阻害、オートファジーをアップレギュレートする。
臨床研究から推定される推奨維持量は0.3mg~1mgあたり。
空腹時または夕食後
サプリメント
メモリープロテクトはオロチン酸リチウムだけでなく、脳細胞の成長を促進するコロストリニン/Colostrininも含まれる。