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もっともシンプルなリコード法介護者のうつ治療
「のぞみはもうありません」
と面と向かって言われ、私は絶句した。ところがその人が言った。
「のぞみはありませんが、光はあります」
なんとすばらしい言葉だと私は感激した。
このように言ってくださったのは、もちろん、新幹線の切符売場の駅員さんである。
河合隼雄
はじめに
介護者の高いうつ病発症率
アルツハイマー病協会によると、3分の1の家族介護者がうつ状態にある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14687259/
親を介護する介護者は一般の人に比べ、うつ病、不安症状を有する率が2倍高い。
配偶者を介護する介護者はうつ病または不安症状を経験する率が6倍高い。
多面的な要因で生じるうつ病
うつ病の原因は諸説あるが、単一の要因によって生じることはったにない。
- 遺伝子
- ホルモンバランスの崩れ
- 環境汚染
- 特定の薬物
- 持病の影響
- 家族を亡くす経験
- 性格的影響
- 子供の頃の身体的精神的虐待
、など、いくつか要因が、複合的にうつ病の発症に影響をあたえている可能性が高い。
うつ病の根底にある代謝バランスの崩れ
またうつ病の症状のほとんどは、その根底に代謝バランスの崩れが存在する。症状としてのうつ病はその兆候というよりも、すでに身体のリズムやバランスを失ってしまった後の末期の病態であると考えたほうが正しいだろう。
死別や暴力などの出来事としてのうつの原因も、それがなかなか回復しない場合、身体的な問題が根底にある可能性がある。そして、そのことが当事者によって認識されることはほとんどない。
介護の比類のない苦しさ
人間は短期間だけ親切になることは容易である
河合隼雄
介護の苦しみだけではない
介護する家族は、介護だけによって時間とネルギーを消耗し苦しむわけではない。
- 仕事への影響
- 介護離職
- 経済的問題
- 医療、介護に関連する事務手続きの煩雑さ
- 腰を痛めたりの身体的疲労
- 睡眠不足
- 慢性疲労
- 趣味を楽しむ時間の剥奪、友人と過ごす時間の縮小
- 兄弟や家族との喧嘩や葛藤
、など多くの余剰な苦しみが加わる。
認知症の介護とは長い葬式
より悲しいのは、自分の人生において自分をもっともよく知る人物(ある意味では自分以上に自分のことを知っている唯一の人)が、精神的、肉体的に日々衰えていくことを、毎日目にしていかなければならないことだ。
老化とは異なる認知症の狂気
さらに認知症の大きな誤解のひとつは、徐々に脳は衰えていくというものだろう。個人差はあるものの、認知症において脳の機能は均等に衰えてくれるわけではなく、正常さと狂気が入り混じった状況が、特に中期においてピークに達する。
異常さと退屈さの二極
理不尽な怒りを向けられ、徘徊をし、世間的に恥ずかしい思いをして心が動揺し、そして一方の極では同じセリフを何年にもわたって聞き続けたりというひどい退屈さが待ち構えている。
入所後も続く介護者のストレス
施設に預ければ、ストレスから開放されると思う人もいるかもしれない。
しかし、本院が施設に入所後感じる孤独感や監視的な状況などを家族が察した場合、家族が罪悪感を覚え、それまでと違う種類のストレスを感じることがままある。
本人を施設に預けるという決定をしてしまったことに、後になって強いストレスを感じてしまい、うつ状態が続くケースもけして少なくない。
亡くなっても終わらない悲嘆
一般的には病状が改善する可能性はないと信じられており、そのことにあまり目を向けないようにして、ただ日々進行する状況を耐え忍ぶしかなく、その行き着く先は死である。
早く死んでほしいと思う介護者もいるかもしれない。または本人が亡くなれば、ストレスは消え去ると想定してしまっている人もいるだろう。
しかし、実際に死なれると、それまでの長い介護と献身によって、自分でも知らない間に負の感情も含め当人に対して強く感情的に巻き込まれており、亡くなった後であっても深い喪失感にさいなまれる人も少なくない。
配偶者を失って3年が経過しても、介護者のうつ病、孤独感が続いていることも研究で判明している。
www.caregiver.org/caregiver-depression-silent-health-crisis
うつ病への誤解
昔から(私は)健康優良児って言われてて、頭痛薬さえ飲んだもののないような薬に頼らず生きてきた人間だったんですよね。
自分でも自分がうつ病になるっていうことが信じられなかったんですよね
丸岡いずみ
多くの人のうつ病に対する最大の誤解は、うつ病は心理的な問題が主要な原因だと思っていることだろう。
うつ病は心理的な事象ではない
例えばうつ病と関連すると言われる、
閉経、出産、PMS、甲状腺疾患、鉄欠乏、ビタミンD合成の欠乏、亜鉛不足、オメガ3脂肪酸の栄養不足、遺伝子リスク(家族でうつ病歴がある)、日光の不足、脳卒中、心臓発作、がん、甲状腺機能低下症、特定の薬の服薬など
は、すべてうつ病を引き起こす可能性がある要因だが、それらはすべて心理的な事象とはまったく関係がない。
「精神的な弱さだ」という大きな勘違い
うつは気の持ちようだという誤解が、多くの人がうつ病を恥ずかしい、精神的な弱さだと思い違いをしてしまった結果、治療を試みずにうつを悪化させてしまっている。特に男性は道に迷って人に道を聞く程度のことでさえためらうほどだ。うつについて人に頼るなどもってのほか、となってしまうところに落とし穴がある。
ちなみに、うつ病(大鬱性障害(MDD))は世界で11億人! 介護者ではない一般人であっても100人の内16~20人はうつ病を経験をすると言われている。認知症介護者は軽いうつを含めると半数を超える。これは明らかに心理的な問題ではなく社会的な問題である。そして環境的な問題でもある。
うつを経験したことがない人ほど、心の問題だけで捉えがちで、精神論、根性論で解決を図ろうとする。精神と神経のメカニズムは深く関連しあっているので、精神論が全く効果がないというわけではないことがまたこの誤解を助長させる。
実は未解明のうつ病メカニズム
遺伝解析によってうつ病の40%は遺伝リスクと関わり、ストレスのかかる環境的要因、心理的ストレスももちろん関与する。
その他内分泌異常、ガン、薬物の影響、HPA軸の機能不全なども要因となりえるが、それらがどう組み合わさってうつ病の発症に至るのか、そしてそれらをどう評価しどう治療を戦略的に組み立てていくのかという点において実はほとんど解明されていない。
そのため、治療者も患者も専門エリアでトライ&エラーを繰り返しているという、恐ろしい状況にある。うつ病治療はまだ暗黒時代と言ってもいいだろう。
自殺を「存在の自由」の最高表現として擁護したドイツの哲学者ショーペンハウエルの悲観論も、もとはと言えば、彼が肝臓を患っていたことと関係があった。
意思決定力そのものを奪ううつ
また、当たり前のことを言うように思われるかもしれないが、われわれの社会は本人の判断と意志があって、初めて多くのサービスを受けたり選択したりすることができる社会構造になっている。
うつ病はその判断力、意志力そのものを歪めてしまう。
そのため、一度ひどいうつに入り込んでしまうと、
- 自分が治療を受けるほど、精神的に悪化しているのかどうかの判断を低く見積もってしまう。(気持ちの問題だと片付ける)
- ネガティブ思考を友人や家族が嫌って、彼らからの助けが得られなくなる、
- 医者とのコミュニケーションが困難になり治療が難しくなる、
- 効果的であるにもかかわらず手間のかかる運動療法や食事療法、認知行動療法へ取り組む熱意を失うなど
など、根本治療への取り組みができなくなり、環境的なデッドロックに陥る可能性がある。
うつの兆候が現れたら、認知症同様、とにかく自分では「ちょっと大げさじゃないか」と思うくらいに早めに早めに対応することが穴にはまらないための鍵になる。
睡眠は絶対に譲ってはいけない命綱
うつ状態の人は確かに辛いんだけれども、今の自分の方がより深く人生を考えられてる満足感があったり、苦しさの裏にある満足感のようなものがあってそこも治りにくくさせてる原因でもあるんです
中野信子
睡眠は重要だという言葉の違和感
睡眠は重要だとよく言われるが、いつもその言葉の軽さに違和感を感じる。地球は重要だとか、空気は重要だとか、家族は重要だ、言われている感覚とでも言えばいいいだろうか。
慢性的な睡眠不足はうつ病の原因となる。睡眠時間は人によっても違うと言われたりもするが、99%の人にとっては一日7~8時間は必要。介護殺人を犯してしまった半分以上の介護者が、裁判所によって睡眠不足が認定されている。だが彼らは自分たちが犯した事に、睡眠不足が関わっていることに気がついていないい
自分はショートスリーパーだという勘違い
自分は短い睡眠でも大丈夫だと思っているだけの人たちも少なからずいる。遺伝的に短い睡眠時間でも大丈夫だとされるショートスリーパーと呼ばれる人たちがいることは確かだ。しかし、そういった人たちの割合は100人に1人以下であり、ほとんどの自称ショートスリーパーは思い込みにすぎない。
睡眠不足とうつ病は双方向的
睡眠不足がうつ病を誘発するだけではなく、うつ病も睡眠不足を招くというように睡眠不足とうつ病は双方向的に増幅しあっている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4318605/
睡眠マネジメント
覚えておくべき重要なことは、介護のために夜間眠れない状況が発生したとしても、実際は睡眠マネジメントが可能であるということ。
例えばスキマ時間を見つけて昼寝をとったり、訪問介護を利用する、ショートステイを利用する、サプリメントや薬物を利用する。光線療法、光のコントロールなど、方法は多くあり、何がなんでも睡眠時間は確保すべき課題。
一晩だけの睡眠不足はあり?
このことに関連して一言加えておくと、持続的な睡眠不足ではなく一晩だけの睡眠不足はうつ病の治療に有益である可能性もある。ただし、このメソッドを用いるのなら徹夜した次の日はいつもの寝床につく時間から大きくずれてはいけない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2403471/
いずれにしても、睡眠をおろそかにしてストレスやうつ状態を改善したいというのは、タバコを止めずにがん治療に必死に取り組もうとしているようなものだ。少なくともうつ病と介護の負のスパイラルを避けたいのなら、睡眠の質と時間の確保は最優先事項にもってくる必要がある。
抗うつ薬は緊急時に使う
だいたい心の問題は、「急がば回れ」の解決法が得策のように思われる。
河合隼雄
小手先騙しの抗うつ薬
標準的な方法に従うなら、心療内科、精神科医のお医者さんと会って、抗うつ薬などの処方してもらうというものなのかもしれない。すでに述べたように、多くのうつ病の原因は複雑であり、SSRIなどの抗うつ薬は、その根底に横たわる複雑なプロセスをすっ飛ばして直接的に対応する対処療法にすぎない。
複雑な要因が横たわる可能性の中で単一の標的があるというセロトニン仮説のもと、その対策ばかりに終始しており、その点において抗アミロイドβ剤を使ってアルツハイマー病を治そうとしているアミロイド仮説とよく似ている。
抗うつ薬が介護うつ治療の第一選択となることへの疑問
対処療法が必ずしも常に間違っていると管理人は考えているわけではない。
ただ介護うつは、一時の心労やストレスではなく、長期的かつ持続的なストレスであり、そこからにげることもできないということは誰も否定しないだろう。
その際に、受容体をいじくる抗うつ薬で当座を凌ぐというのがまっとうな方法と言えるだろうか?(明白に遺伝的な理由がある場合は別)
行動療法を行うための抗うつ薬
ひとつだけ抗うつ薬になんらかの有益な可能性を見るとすれば、抗うつ薬を治療薬として考えるのではなく、行動療法を行うためのモチベーション作りであれば、有用である可能性があるだろう。
また、自殺願望が強く生じているなど緊急性が高い場合のうつも、あまり悠長なことは言ってられない。この場合、重要なのは抗うつ薬を使って改善したから何もしなくて良いと考えるのではなく、抗うつ薬によって一時的に気分を取り戻している間に、睡眠や運動、食事などを行ってしまい、一気にうつを代謝レベルで退治してしまうということだ。
まあ、いわゆる抗うつ薬批判をはじめると、膨大な紙面が必要になり、サイトの趣旨と異なることにエネルギーを費やす必要に迫られてしまいがちだ。またすでに他の多くのお医者さんが現在の抗うつ薬についての問題点を指摘しているため、詳細な批判はそちらに譲りたいと思う。
代表的な抗うつ治療
抗うつ薬
電気痙攣療法(ECT)
以抗うつ薬での失敗、薬を使いたくない、自殺願望が強い場合には、電気けいれん療法(ECT)も選択肢となるかもしれない。効果は一週間以内に見られることが多い。
認知行動療法(CBT)
ネガティブに見てしまう思考パターン、ゆがみを認識して修正することに充填を置いた治療法(16~20セッション)
あらゆる年代の人たちが認知行動療法を利用する証拠が存在し、うつ病の再発予防にも有効。薬の副作用を起こしやすい高齢者にも価値が高い。
対人療法(IPT)
愛着理論からスタートしており、現在面している対人関係の問題に焦点をあてている。
悲嘆、対人関係の紛争、役割の変化、対人関係の問題に重点があてられる。
リコード法は最強の抗うつ根治療法
ぼくが思うに、うつ病から抜け出すのになくてはならないものが四つある。
一に休養、二に薬の助け、三に治したいという自分の気持ち、そうしてもうひとつは、周囲の人の支えだ。
竹脇 無我
リコード法はアルツハイマー病患者の認知機能改善または予防として作られたプログラムだが、特に症状がない健常である人であっても、うつ病を改善しストレスへの抵抗性を養う他の研究成果のアプローチとその多くが類似する。
リコード法では、うつ病がアルツハイマー病発症要因のひとつして考えられており、うつ病への代謝レベルでの治療が含まれるため当たり前といえば当たり前だ。
リコード法を知らないストレスマネジメントの専門家へ、リコード法をそのままうつ病改善プログラムだと言っても通用するといっていいぐらいだ。
つまり、リコード法を理解した介護者は、すでに実質的な抗うつ治療の知識をすでに手に入れてしまっている?!
うつ病とアルツハイマー病の共通するメカニズム
HPA軸の機能不全
うつ病患者の70%でHPA軸の機能不全が見られるており、アルツハイマー病でもHPA軸機能不全が生じているため、リコード法でもHPA軸への取り組みが多く含まれている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23273603
コルチゾールの上昇
心理的ストレスによりHPA軸が活性化されると、グルココルチコイドが血中に放出され唾液や尿中のコルチゾール濃度が上昇する。アルツハイマー病患者では過剰に上昇する場合と、起床前後に上昇しない2つの異常ケースがあるが、うつ病患者でも同様のケースがある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16124836/
慢性炎症
炎症性疾患の患者では大うつ病の発症率が高い傾向がある。
大うつ病患者の3分の1は、末梢炎症性バイオマーカーが上昇を示す。
炎症性メディエーターは、グルタミン酸、モノアミン神経伝達、グルココルチコイド受容体抵抗性など、海馬の神経新生を変化させる。
海馬の萎縮
海馬の萎縮はアルツハイマー病に特異的な病態だと思われがちだが、海馬萎縮はうつ病(MDD)の特徴のひとつでもある。つまり海馬回復への取り組みはうつ病もアルツハイマー病もまったく同じといっていい。
MNDA受容体の過剰活性
NMDA受容体の過剰活性も、うつ病、アルツハイマー病患者両者で見られ、抑制するための標的となっている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24410564/
BDNFの減少
脳由来神経栄養因子BDNFもストレスによって減少し、うつ病に関与することが示唆されていることからBDNFを増加させる方法がうつ病治療で研究されている。アルツハイマー病でBDNFが極めて重要な神経栄養因子であることは言うまでもない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16631126/
GDNFの減少
慢性ストレスへの暴露は、グリア細胞由来神経栄養因子のタンパク質合成を減少させる。
うつ病患者では血清中のGDNFが低いことがわかっている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16191208/
グルタミン酸/GABAの不均衡
リコード法の36の課題のひとつにGABAの機能不全が含まれており、うつ病でも関与していると仮定されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25043733/
ドーパミンニューロンの低下
腹側被蓋野(VTA)でのドーパミンニューロンの脆弱性は抑うつ行動を示すかもしれない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17956738
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23689674
一般的な抗認知症薬であるコリン増強剤は、むしろドーパミンの抑制に働くがリコード法ではコリンだけではなくドーパミンの分泌を高める行動療法、サプリメントも多く含まれている。
免疫システムの機能不全
精神的ストレスが免疫系に重大な影響を与えることが研究によって示唆されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15250815/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22969795/
炎症誘発性サイトカインであるIL1-β、IL-6、可溶性IL-2、TNF-αがうつ病患者において上昇する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21872339/
IL-6はリコード法の炎症性バイオマーカーの一つでもあり、アルツハイマー病患者の炎症をはかるもっとも信頼性の高い指標だ。
リコード法サプリメントは最強の抗うつサプリメント
患者さんがリコード法を実施する場合、生活をともにする多くの介護者の方も、半ば必然的にリコード法のライフスタイルを実践されていると思う。
しかしサプリメントについては、患者さんのものだと思って何も摂っていない方が多いのではなかろうか。
別記事で紹介しているが、リコード法で用いられるサプリメントも、その多くがストレスやうつ病の改善効果をもつ研究が存在する。
うつ病患者では健康なグループと比較して、有意に低いビタミンA、C、Eレベルを有することが観察された。これらのビタミンの補給後患者の不安およびうつ病スコアの有意な減少が観察された。
スタートアップで紹介している一部または多くのサプリメントは、ほとんどの介護者の方にも摂取が望まれると管理人は考えている。
もちろんサプリメントを摂りさえすればストレスの根本解決がつくと考えているわけではない。ただ、うつ病の治療法はアルツハイマー病におけるリコード法同様、非常に多くの方法があり、すべてを紹介することでかえって何をしていいかわからなくなることを危惧している。
サプリメント摂取は運動や食事、認知行動療法に比べれば敷居は低く、もしすでにリコード法を実施しているのであれば、すでに手元にあるサプリメントを介護者の自分も摂取するだけでいい。とはいえ、こんなにたくさんのサプリメントはちょっと、、と考えている人も多いだろう。ましてや自分は認知症ではないのだからと。
一つ言えることは、介護者は普通に食事をしているつもりでも、高い確率で栄養不良であるかもしれないということだ。
アルツハイマー病患者95%以上が栄養失調または栄養失調リスクにあり、機能低下と栄養失調に関連性が見出されている。さらに介護者でも23%で栄養不良、41%で栄養不良リスクが認められた。介護者とアルツハイマー病患者の間では栄養状態に相関関係が見られた。
そして、もし介護者のあなたが患者さんと血でつながっているのであれば、認知症の遺伝リスクを抱えている可能性もあるということだ。けして他人事などではない。
アルサプ、リコード法でも用いられているサプリメントの中から、ストレスやうつ、疲労と関連する文献を以下の記事にまとまてある。
介護者のための抗うつ治療(スタートアップ)
まずは自己評価検査(重要)
まず、うつ病治療に入る前にうつ症状の度合いを自己評価検査を必ず行って、スコアを知っておく。
栄養によるうつ病治療で、抗うつ剤のような即効性を期待してはいけない。
抗うつ剤は犯罪率を減らすために監視カメラを設置しまくるようなものだが、栄養による抗うつ治療は学校で犯罪教育を行うようなものだ。真の成果が出るには一定の時間がかかる。
我々は徐々にゆっくりと変化するものに気づくことができない致命的な欠陥をもった動物だ。そのため自己評価で、数値として把握して改善したかどうかを客観的に理解することは極めて重要になる。
日本語版自己記入式・簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)
うつ病ネット(オンライン)
www.alfresa-pharma.co.jp/general/utsu/self_check/index.html
PDF(プリントアウトして記入する場合)
www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/02.pdf
アルツハッカー 抗うつサプリメント 10
リコード法、アルサプで用いられているサプリメントの中から、特に欠乏がうつ病に寄与する可能性の高いものを絞ってみた。
一般的な食生活においても不足する傾向にあり、うつではない健常者が健康予防目的として摂取しても良いものだ。また、そのほとんどが必須栄養素であるため副作用などのリスクの心配もほとんど不要。
サプリメントに抵抗をもつ方が多いので、優先順位の高いサプリメントを10個に絞っている。
この10個でさえも多いという方は基本の4サプリを利用してほしい。
基本の4サプリ
- 1. ビタミンD3 5000IU 1錠(朝または昼)検査を受けない場合は3~6ヶ月後に2000IUに変更。
太陽をしっかり浴びる生活、夏の季節 → 2000IU
- 2. マグネシウム-L-スレオニン 2錠(夕食後、寝る前、好ましくは空腹時)
- 3. カルノシン酸亜鉛 1~2錠(空腹時、次点で食後いつでも)
- 4. ビタミンBコンプレックス 1~2錠(1日分) (食後いつでも)
食事での栄養不足
- 5. ホエイプロテイン(グラスフェッド) 20~30gを一日二回に分けて摂取 [代替]
ビタミン
- 6. ビタミンC 500~1000mg(食後いつでも)1~2錠
脂質
- 7. DHA・EPA (脂質を含む食事の後)食後各1錠
- 8. ホスファチジルセリン 100~200mg (脂質を含む食事の後)1~2錠
躁うつ・不安
9. リチウム(ライフエクステンション社のメモリープロテクト)1錠(夕食後)
ごく低用量のため躁鬱ではなくとも予防として用いることができる。
睡眠前
10. メラトニン(夜、就寝30分前摂取)0.3~3mg 1錠
うつ病が深刻な場合は、高用量を検討してみる。
ミニマル・ライフスタイル
+朝の散歩
患者さん本人と一緒に散歩をすれば一石二鳥だ。散歩でさえも難しい場合は、ヨガなどの自律神経に作用するような運動をおすすめする。
+朝 光を浴びる
朝 散歩すれば光を自然と浴びることになるが、散歩が難しい場合、何らかの形で太陽の光を見たりすることだけは心がけて欲しい。(夜間光を浴びないようにすることも忘れないよう)概日リズム変動を調節するもっとも大きな要因は特定の波長の光(太陽光はその波長の青色光を含む)を見ることにある。(光受容体を通して視交叉上核へシグナルを送る)
寝る前3時間は食事を摂らない
後書き
アルハカ認知症プログラムの中から安全かつ強力に、うつや不安症状を軽減し、健康にも寄与する可能性の高いものを厳選してみた。本音都市は、もう10種類くらい加えたいのだが、拒否反応が予想されることからあえて10個に絞ってみた。
基本栄養素で構成されているため、ごく稀な例外を除いて、副作用の心配しなくて良いと思う。効果が現れるには一定の時間がかかると見ておこう。変化を感じるには最低2週間、できれば一ヶ月おきにそして3ヶ月は続けてみて、自己記入式 簡易抑うつ症状尺度のテストを定期的に受けること。
1年経過して改善があったことに気づくケースもある。ただし3ヶ月してもスコアに変化がない場合、なにか別の問題が潜んでいると考え検査などで他の障害を特定していくべきだろう。