アロマセラピーの医学的改善効果 認知症

アロマオイルの医療効果と使用方法(認知症予防・アルツハイマー)

視覚は理性であり、触覚は本能であり、嗅覚は直感である。

メイソン・クーリー

はじめに

まず最初に免責事項をお読みください。

概要

アロマセラピーの臨床研究数

エンッセンシャルオイル、アロマセラピーについての医療文献を調べてみた。

アロマセラピーの流行とともに、2000年代降、アロマオイルについての研究は急増したものの、臨床研究の数はそれほど多くあるわけではない。

PubMed全体でアロマセラピー(aroma therapy )で検索すると1190件ヒット

認知症(dementia)を加えると85件

アルツハイマー(alzheimer)で29件

しかし、臨床試験が行われたもので検索すると認知症で17件、アルツハイマーでは6件、、

その中からさらに信頼性の高い研究だけを抜き出すと、アロマセラピーについての情報は非常に限られたものになる。

謎がまだまだ多いアロマの効果

また、ほとんどのアロマオイルは、数十種類の薬効をもつ複合的な化合物のため、主要な成分の作用機序や因子は推定されているが、よくわかっていない未知の成分もあり、それらがどう作用しているかよくわからない。

おまけに、アロマセラピーの臨床結果のバラつき方にも不可解な点があり、まだ全体的な知識理解ができていない、というかアロマの成分や、嗅覚の情報処理システムにもまだ謎な点が多い。

漢方・ハーブもそうだが、主要な標的分子への作用とは別に、複合的な働きによる効果があるのではないかと推測される。

標的型の医学研究になじまないアロマセラピー

先に感想を述べてしまうと、この記事では文献を網羅的に取り上げているものの、「このアロマオイルに含まれる◯◯成分が◯◯の経路を刺激し◯◯に効果を及ぼす」という、単一標的型思考はアロマセラピーのもつ基本思想にはなじまない印象をもった。

それは研究の意味が無いというわけではけしてない。むしろ逆で、研究を読み解いていくことで、アロマセラピーが元々もっていた本質的な治癒の力というものが、現代のライフスタイルの中で削げ落とされてしまっていることに気がつくようなところがある。

研究の成果から間接的に読み取れることを、伝統的な知恵と柔軟に組み合わせていくことで、アロマセラピーが単なる流行に終わらず、長期政権となる可能性もあるのではないか、と思っている。

嗅覚の仕組み

嗅覚は鼻腔奥にある嗅細胞が、化学物質を受け取り電気信号に変換して脳に伝えられることで生じる感覚

関連画像

gc.sfc.keio.ac.jp/class/2005_14453/slides/12/index_46.html

味覚との比較で言うと、味覚が直接対象に触れなければならないのに対して、嗅覚は遠くからでも受け取ることができる。遠隔性のある感覚器官

食べ物が腐敗していないか、そもそも目の前にあるものが食べれるものなのか、など味覚の偵察係でもある。

また、嗅覚から血のつながった母親、父親、子どもの違いも識別することもできる! ※義理の子どもの違いや、異母兄弟は嗅覚によっては検出できない。

嗅覚受容体数

ヒトの嗅覚受容体は347種類

※一種類の嗅覚受容体に一種類の物質が結合するわけではなく、類似する複数の分子化合物が1つの嗅覚受容体に結合することもあれば、1つの分子化合物が複数の嗅覚受容体に結合することもある。

※ちなみに、最も嗅覚受容体の種類が多い動物はアフリカゾウの1948個 イヌは811個とゾウ倍差で負けている。

人間の嗅覚は、匂いに敏感でない人でも8000万種類の香りの区別が可能!

匂いに敏感な人は、1000兆種類の香り!を区別することができる。(本当か?)

www.sciencemag.org/news/2014/03/human-nose-can-detect-trillion-smells

嗅覚領

gc.sfc.keio.ac.jp/class/2005_14453/slides/12/index_46嗅覚.html

脳の嗅覚領

嗅球、前梨状皮質、扁桃核内側部、眼窩前頭皮質外側部、視床内側核、眼窩前頭皮質中央部、

匂いの種類によって、脳内の応答する場所が異なる!

嗅細胞の寿命は20~30日

嗅覚受容神経は4000万個 (ミエリン鞘を持っていない)

ja.wikipedia.org/wiki/%E5%97%85%E8%A6%9A

匂いと記憶

gc.sfc.keio.ac.jp/class/2005_14453/slides/12/index_46嗅覚.html

嗅覚系は、脳の、他の感覚器ではアクセスできない感情を司る中心部位に直接アクセスできる、単純な神経回路をもつ進化的に古い感覚器である

プルースト効果

視覚や聴覚に比べて、嗅覚は記憶をより強く呼び起こすことがわかっている。

嗅覚刺激が時間的、空間的な文脈の条件付けと関わっている可能性がある。また、嗅覚によって活性化される梨状皮質は恐怖学習と関わっているともされている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK55967/

www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK55967/

嗅覚の無意識の影響

洗剤の香りに曝露された謙譲な参加者は、臭いの認識をしていないにも関わらず、食事環境をより清潔に保つ行動が見出された。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16137254


無意識的な嗅覚と意識的な嗅覚では単語の符号化情報処理が異なる可能性

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12421654

嗅覚処理は新皮質に小スペースが割り当てられており、意識的な臭いの嗅ぎ分けなどのトレーニングは、脳の機能的な変化に影響を与える可能性があるかも。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3814809/

嗅覚関連部位とアルツハイマー病

「嗅覚 海馬 ac.jp」の画像検索結果

www.artsci.kyushu-u.ac.jp/~okamoto/lab-content.html

嗅内皮質(嗅内野)

※嗅内皮質と嗅内野は同義語

アルツハイマー病で最初に神経細胞死が起きるのは、嗅内皮質である。(海馬ではない)

嗅内皮質という名前は紛らわしいのだが、実は、嗅覚に直接的に関わる脳部位ではない。しかし匂いの符号化に関わる嗅球と接しているため、嗅覚からの刺激の一経路として関わっている

そういったことから嗅内皮質の細胞喪失が、嗅覚機能の障害につながると考えられている。

まだ嗅内皮質の役割はよく分かっていない面もあるのだが、知られている役割としては、海馬からの入出力のゲートとしてエピソード記憶の機能にも関与しているらしい。

なぜ嗅内皮質がアルツハイマー病患者において、最初に障害を受けるのかもよくわかっていない。

また、正確には、マイネルト基底核、青斑核、嗅内皮質の3つ神経細胞がほぼ同等に衰えていくのだが、最新の知見ではマイネルト基底核、青斑核のどちらかが、嗅内皮質に先行して変性・脱落していくのではないかといった研究もある。

嗅内皮質で神経細胞が死ぬことで、信号の受け取りや送り出しができなくなり、その神経細胞死が海馬にも及ぶ。海馬での近時記憶が作られにくくなり、記憶、学習障害を起こすようになる。

これは憶測だが、嗅内皮質の神経細胞死を防ぐことができれば、その他の部位への障害の波及を一定レベル抑制することができるかもしれない。

扁桃体

嗅覚刺激は、嗅内皮質だけでなく、扁桃体、梨状皮質へもダイレクトに刺激が伝わる。

それに対して、他の味覚や視覚、聴覚、触覚による刺激は、すべて、視床、大脳新皮質を経由して刺激が与えられる。

扁桃体はヒトの情動に関わる脳部位であり、アルツハイマー病患者では嗅内皮質に次いで、海馬と並んで神経細胞脱落が起こるところでもある。

視床は、意識と深く関わる情報処理システムであるため、香りを除く四感による刺激は意識されやすいが、香りは主観的な意識に強く感知されずに、大脳へ情動反応を呼び起こすことができる。

そのため、理性的な判断や意識的な気づきがなくても、行動に影響をおよぼす可能性がある。

嗅覚機能の低下

嗅覚能力と認知機能障害

ヒトの認知機能障害は、嗅覚能力の喪失によって反映される。

扁桃体、嗅内皮質、海馬、眼窩前頭皮質

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23769725

発症10年前から始まる機能低下

アルツハイマー病発症の 8~10年前に嗅内皮質、2~4年前に海馬、3年前に扁桃体がに有意な萎縮変化を示す。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25101236

重度のアルツハイマー病患者でも萎縮は続く

扁桃体、嗅内皮質、海馬、の萎縮は、重度のアルツハイマー病患者においても変化が続いている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28459000

(重度に進行した患者であっても、扁桃体、嗅内皮質、海馬をターゲットとした治療は有意義かもしれない)

アロマオイルの臨床研究

総合

アロマテラピーの臨床研究

たぶん、一番有名なアロマセラピーの臨床研究(日本)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20377818

アルツハイマー病患者へ28日間のアロマセラピー(ローズマリー、レモンバーム、ラベンダー、スゥィートオレンジ)により、GBSS-J およびTDASテストスコアで有意な改善を示した。

GBSS-J:知的機能・自発性・感情機能・その他の精神症状 ・運動機能の痴呆行動評価尺度

TDASテスト:ADASをタッチパネル化したテスト

プラセボと嗅覚刺激の相互作用

エッセンシャルオイルの嗅覚刺激は、主観的な注意が相互作用を引き起こし、作業成績に高い影響を及ぼす。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20923005

皮膚への塗布による効果

製品、品質による効果のばらつきがある。

アロマオイル(30%1ml)の腕への塗布では効果が見られたが、噴霧では見られなかった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3827620/

マッサージとの組み合わせ効果

21人の認知症患者の無秩序行動に対して、アロマセラピーとマッサージの組み合わせが(それぞれを単独で用いるよりも)最も行動抑制の効果を示した。

apt.rcpsych.org/content/10/4/296.full

認知症のタイプによっては効果がないかも

中等度から重度の認知症患者15名のアロマテラピー投与

9人に改善が認められ5人には変化が見られず1人は激越行動を示した。

レビー小体型の認知症の患者へのラベンダー使用は有益な効果があまり見られなかった。(Holmes et al, 2001)

抽出物のオイル成分の変化により、アセチルコリンの分泌に影響を与えている可能性がある。

ローズマリー オイル

「rosemary」の画像検索結果

ローズマリー精油に含まれるロスマリン酸が、強力なAChEおよびブチリルコリンエステラーゼ阻害作用をもつとの報告がある。

ローズマリーに含まれるフェノール化合物であるジテルペンが、アルツハイマー病への潜在的な治療効果をもつ可能性。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4749867/

AChE阻害薬と類似する作用機序

Keap1 / Nrf2経路の活性化によるニューロン保護効果

ジテルペンの一種であるカルノシン酸はα-セクレターゼを増強させる作用、βセレクターぜ阻害効果は示されていない。

※ジテルペノイド(カルノシン酸、ロマノール、カルノソール)

ローズマリーに多く含まれる(37%)1,8-シネオール化合物の濃度と、認知課題のパフォーマンスが有意に関連。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤と類似する働きによって認知機能、記憶力が改善されているのではないか。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23983963

認知能力の変化に気が付かない

ローズマリーに含まれる1,8-シネオールへの曝露が、健常者の認知能力と相関する。興味深いことに、自己報告と認知能力の関連には一貫性がない。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3736918/

ナウフーズ エッセンシャルオイル ローズマリー 30ml

アウラカシア エッセンシャルオイル ローズマリー 15ml

朝、昼、活動前に使用

レモンバーム オイル

「lemon balm」の画像検索結果

介護者からの評価の改善

二重盲検プラセボ 介護スタッフによって重度の認知症患者の顔および腕に1日2回塗布、CMAIが有意に改善。

CMAI(Cohen-Mansfield Agitation Inventory)コーエンマンスフィールド焦燥評価票 = 介護者による具体的な症状、行動障害の評価。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12143909

記憶の正確さと落ち着きへの効果

レモンバームの使用量が1600mgにおいて、記憶の正確さおよび、穏やかさに有意な改善を示した。

www.life-enhancement.com/magazine/article/906-can-high-quality-lemon-balm-ease-dementia

ナウフーズ エッセンシャルオイル レモングラス 30ml

アウラカシア エッセンシャルオイル レモンバーム 15ml

朝、昼、活動前に使用

ラベンダー オイル

「lavender」の画像検索結果

ラベンダーの多彩な効果

HSP70発現の可能性

リナロールによる弱いコリン作動性阻害

神経保護、抗酸化活性、

GABA作動性シナプスを調節

脂肪分解と熱生成によるエネルギー消費を低下 → ラットは体重増加

健康な女性の眼窩前頭、後部帯状回、脳幹、視床、小脳のニューロンを増強

in vivo でエストロゲン、抗アンドロゲン活性あり

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3612440/

空間記憶

ラベンダーオイルへの7日間曝露によりラットの空間記憶が改善

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22402245

NMDA受容体の拮抗作用

ラベンダーのもつ抗不安、抗うつ作用は過酸化水素によって生じる神経毒性を調節することによる、NMDA受容体に対する拮抗作用、SERT阻害に起因する可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28579958

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5437114/

投与方法が重要

アロマセラピーによるBPSD症状への治療成績のバラ付きは、治療期間や、オイルの種類、研究集団の違いではなく、明確に投与方法に起因する。精油が嗅覚の近くで塗布されたときには、結果はポジティブであった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27159213

AChE阻害薬と類似するメカニズム

ラベンダーオイルは、酸化ストレスおよびアセチルコリンエステラーゼ阻害調節により、神経保護効果を示しえる。(in vivo)( in vitro)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27558947

リラックス効果

ラベンダーオイルによる、血圧、心拍数、皮膚温度の有意な低下、自律神経の活動を低下させリラックスさせる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22612017

攻撃的な症状の改善

ラベンダーオイルはホホバオイルとの比較で、アルツハイマー病高齢者の感情および攻撃的な行動に有意な影響を示した。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15860944

ナウフーズ エッセンシャルオイル ラベンダー 30ml

アウラカシア エッセンシャルオイル ラベンダー 15ml

夕方、夜、寝る前に使用

オレンジ オイル

「sweet orange oil」の画像検索結果

ナウフーズ エッセンシャルオイル スゥィートオレンジ 30ml

アウラカシア エッセンシャルオイル スゥィートオレンジ 15ml

夕方、夜、寝る前に使用

ペパーミント オイル

「peppermint」の画像検索結果

記憶力の増強

ランダム割付 コグニティブドラッグリサーチ・コンピューター評価システムにより、ペパーミントが有意に記憶力を強化。一方イランイランは記憶力を損なうが処理速度を高めた。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18041606

処理速度の増強

ペパーミントがタイピング作業の総スピード、精度に有意差があることを示した。しかしタイピングの持続力と記憶力は改善しなかった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14738372

※ペパーミントによる記憶力の改善については、有意差を示さなかった研究も多い。

ナウフーズ エッセンシャルオイル ペパーミント 30ml

アウラカシア エッセンシャルオイル ペパーミント 15ml

朝、昼、活動前に使用

セージ(サルビア)オイル

「sage」の画像検索結果

セージの豊富な抗認知症成分

セージはイギリスで記憶力を高める薬として知られ、長い歴史をもつ。

160以上のポリフェノールを含み、その中にはカフェイン酸、ロスマリン酸、サルビアノール酸、サグクマリン、リソスペルミジン酸、セイレン酸およびユナン酸が含まれる。

フラボノイドには、ルテオリン、アピゲニン、ヒスピドリン、ケンペロール、ケルセチンなどが含まれる。

サルビア属の植物には精油が豊富で、α、β-ツヨン、カンファー、1,8-シネオール、α-フムレン、β-カリオフィレンおよびビリジフロロールを含む多数のテルペノイドが豊富。

ジテルペンおよびトリテルペン、(カルノシン酸、ウルソール酸、カルノソールおよびタンシノンの豊富な供給源)

アセチルコリンエステラーゼ阻害作用

ロスマリン酸、カフェ酸、カルノソール、タンシノン、ケルセチンはBDNFを増強

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5318325/

こうしてみると、サルビアは認知機能を高める成分がてんこもり、オイルというか、経口摂取すべきハーブかもしれない。

フロンティアナチュラル セージ(サルビア)リーフ 453g

想起能力

プラセボ二重盲検、クロスオーバー、コグニティブドラッグリサーチのコンピューター評価システムで、健康な若者の瞬間的単語想起を有意に改善した。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12895685

ナウフーズ エッセンシャルオイル クラリーセージ 30ml

 アウラカシア エッセンシャルオイル クラリーセージ 15ml

朝、昼、活動前

ゆず

「yuzu」の画像検索結果

抗ストレス効果

日本代表のアロマ ゆず

ランダム化クロスオーバー ゆずの香りを嗅ぐことで唾液中のクロモグラニンA(ストレスマーカー)が有意に減少

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24742226

エッセンシャルオイル その他

学習・記憶

ベルガモット、フランキンセンス、

集中力、注意力

イランイラン 

マウスの線条体のドーパミン濃度を低下させ、海馬のセロトニン濃度を増加させる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27912874

サンダルウッド

その他

カモミール、ベチバー、ゼラニウム、マンダリン

まとめ・雑感

幸福は香水のようなものである。
人に振りかけると自分にも数滴は必ずかかる。

代謝因子への作用

・アロマオイルセラピーは認知症患者の周辺症状を緩和する非薬物療法として知られているが、理論的には神経保護効果、抗アミロイド効果がある。

・認知機能改善の主な機序は(アリセプトなどAchE阻害剤の作用として知られる)コリン作動性によるものと推定されている。

・ラベンダーはHSP70発現、GABA作動性シナプス調節、NMDA受容体拮抗といった認知機能改善において重要となる抑制系作用がある。弱いコリン阻害作用があるため大量に与え続けるのは良くないだろう。夜に用いるというプロトコルは正しそうだ。

・ローズマリーはKeap1 / Nrf2経路の活性化によるニューロン保護効果、カルノシン酸のα-セクレターゼを増強作用、1,8-シネオールがアセチルコリンエステラーゼ阻害作用をもつ。

主観的な増強効果 プラセボ2.0

重度の認知症患者は嗅覚を消失しているが、それでもアロマセラピーに効果がある!? ある論文では二重盲検ができないことが影響しているかもしれないことが示唆されている。

介護者は匂いがわかってしまうため、その影響が患者に及ぶ!

だからこそ一般的な臨床研究は二重盲検が前提となるのだが、

アロマの拡散能力

副作用の低さ

公共的に許容されている

という特性を考えれば、むしろその諸特性を積極的に活かすべきではなかろうか。

興味深いのは、主観的な改善の感覚と実際の認知機能の改善効果は一致を見せない。にも関わらず、アロマオイルの主観的な認識がアロマオイルの効果を増強させる!?

プラセボ < アロマオイルグループ < アロマオイル+「ポジティブな認識」

と、ポジティブな認識を持つことが、アロマを嗅いだもたないグループよりも大きな改善効果を見せているため単純なプラセボ効果とも言えない。

とりあえずアロマを使用中「アロマが部屋の中に広がっている」「アロマが身体に良い作用をもたらす」というポジティブなイメージをもつことは、アロマの効果を最大化させる上で大事なことのようだ。

プラセボグループの大幅な改善も無視できず、逆手をとって介護者や患者グループへのアロマオイルにより集団へのプラセボ効果を狙うという考え方もできる。

アロマのプラセボ効果は倫理的に許容されやすく、副作用がほとんど見られないのもアロマセラピーのメリット。

噴霧の場合、介護者も含めた集団全員に、まとめて効果を及ぼすことができるという利便性が大きい

一度に多くの人へ作用させることができるのがアロマの特性であり、介護者を含めた集団プラセボによる相互影響効果を安易にプラセボだといって片付けてはいけない。

嗅覚刺激は空間的、時間的な文脈を伴う環境と条件付けされやすいため、環境的なストレスや恐怖のある状況で使用すると、香りが嫌なことと条件付けされて逆効果になってしまう可能性もある。

アロマを使うにあたっては、基本リラックスできるような環境整備がまず先であり、上乗せ効果として考えるべき。

そして介護者にもアロマを使うことで、全体の相乗効果がポジティブな方向へと条件付けされうる。この場合は長期使用によって真の効果を発揮し始めるだろう。

ベストなエッセンシャルオイル

「essential oil」の画像検索結果

・化合物の効能だけを見るなら、ローズマリーがアルツハイマー病患者に一番有用なアロマオイル

・攻撃性のある認知症患者への対応としては、ラベンダーが一番重要なアロマオイル。

・レモンバーム、ペパーミントも他の多くの効能とともに、概日リズムの調整につながりやすく、午前中、活動前に使用することで威力を最大限に発揮するだろう。

・セージ(サルビア)も、ラベンダーとローズマリーが先行してしまって知名度が落ちているが、潜在的にはそれらをしのぐかもしれない。サルビアは経口でも摂るべきハーブと思える。

・スゥイートオレンジは認知機能というよりはリラックス作用、オレンジだけでなく柑橘系全般にストレスを緩和する効果がある。

・日本のゆずもラベンダーと同等の抗うつ、抗不安効果をもつ!意外と盲点だった人も多いのでは?

品質は重要、だが自然物のため、必ずしも同一ブランドだから同じ品質であるとは限らない。

おそらく抽出時期にによっても成分に変動があり、効果に影響する可能性がある。

特にローズマリー、ラベンダーなど、しかし個人的には、この違いをむしろ耐性を防ぐための「積極的な品質の変動」と捉えるほうが賢明であるように思う。

使用方法 まとめ

プラセボグループに比べて有意差をつけている臨床研究では鼻の近く、顔、直接腕などに塗布しているケースが多い。

就寝前のラベンダーであれば、枕に垂らすなど。

「pillow drop essential oil」の画像検索結果

投与量はあまりケチらない方がよさそう。

皮膚へ直接塗布する場合は、キャリアオイルで薄めること。

皮膚吸収による脳への伝達経路、脳活性部位は、嗅覚刺激によるそれとは部分的に異なる。

ディフューザーを使ったエッセンシャルオイルの噴霧では、対照群と比べて有意差に届くレベルでの改善効果にいたっていなケースが多い。

ディフューザーを使う場合は適切な投与量、噴霧する位置や部屋の大きさなどを考慮する必要がある。飲むだけの薬と違って治療域の濃度に達するためのセッティングが重要

アロマペンダントは良い代替案。

「aroma pendant」の画像検索結果

どのオイルを、どの時間帯に使うかは重要。

柑橘系のオイルは光によって酸化しやすいため、遮光冷蔵保存しておく。

長期使用に対する薬物耐性についてはわからなかったが、受容体と作用するのであればずっと使い続けているとダウンレギュレートして効果が薄れる可能性はあるかもしれない。

または(議論のある)ホルミシス効果によって脱感作を起こす可能性もないとは言えない。

嗅覚の感度は嗅覚疲労により低下しやすいため、アロマオイルの種類を定期的に変えてみる、一時的に休止してみる、一日中アロマを漂わせているのではなく、メリハリを設ける、といったことも重要であるように思う。

含有成分の相乗効果が示唆されており、複数のアロマオイルを混合、または使い分けたほうが良い。

手間さえ厭わなければ、例えば同じリラックス系のオレンジとラベンダーのオイルであっても、時間差を設けて使い分けるほうが効果が高いという研究報告がある。

アロマカセラピー

準備

アロマオイルを用意(低品質のものは避ける)

できたら、アロマオイルに対応する実際の植物ハーブも用意

※ラベンダーオイルなら、ラベンダーの鉢植えを買って育てる。

アロマオイルは、それぞれ匂いを直接嗅いで、違和感がないか、好ましいかどうかを介護者と患者の両者がチェック

合わないと思えば使用しない。もしくは他のブランド、他の種類に変える。

アロマオイルは皮膚へ塗布するためにキャリアオイルで希釈する。

キャリアオイルに特に指定はない。

ココナッツオイルはキャリアオイルとして使える。

最大比率 精油 1:キャリアオイル 3

※高齢者、虚弱者であればキャリアオイルに対して精油1~3%からスタート、

タイミング

朝、午前中 

関連画像

または対象者の無気力、アパシーを改善したい場合

ローズマリー2:レモンバーム1

・時々セージ(サルビア)ペパーミントに替えてみる

・皮膚へ塗布した場所が日光を強く浴びる場合は、レモンバームなどのシトラス系のアロマオイルの直接塗布は控える。

・あえて品質は維持したままで、アロマオイルのブランドを変えてみるのもいいかもしれない。(同じ精油でも成分比率が異なる可能性があり、耐性を防いでくれるかも。)

夕方、夜

関連画像

または対象者の過活動、攻撃性を改善したい場合

ラベンダー2:オレンジ系1 

・時々カモミール、マンダリン、ゆずに替えてみる

・マッサージを併用すると相乗作用により大きな安静効果をもつ。

投与方法

介護者が患者にスキンシップをとりながら腕や顔に塗布する。(重要)

大人数、集団、部屋の空間が広すぎない場合はディフューザーなどを使った室内噴霧も併用してみる。噴霧の場合はオイルをあまりケチらないこと。

最後に

アロマの世界だけに嗅覚を向けるのではなく、

淹れたてのコーヒーの匂い

雨が降った後の土の匂い

刈り取ったばかりの草の匂い

世界空間と結びついた匂いを感じ取るだけで、それぞれに応じたシナプス結合が強化され大脳辺縁系が活性化される。

香りを見つける散歩をしてみよう!

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