軸索・ミエリン阻害因子 Nogo
Nogoの役割
ミエリン再生阻害因子 Nogo
Nogoは、発見された当初、軸索が損傷した際の神経再生を妨げるミエリン関連阻害因子として報告された。
中枢神経系において最も強力なミエリン神経突起の伸長を阻害する因子の一つであると考えられており、Nogoの阻害または制御による軸索再生治療への期待がかけられている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3360853
Nogo-A (Nogo-66・Δ20)
Nogo-A、Nogo-B、Nogo-Cの3つのアイソフォームが存在し、それぞれのアイソフォームにNogo-66ドメインを含む。Nogo-AにのみΔ20ドメインが含まれており、この2つのドメインが軸索伸長阻害作用をもつと考えられている。
Nogo-66と、Δ20のどちらが主要な阻害作用を有するかは研究、議論の段階にあるが、一般的にはNogo-66ドメインが阻害作用をもつものと考えられている。
Nogo-A受容体
Nogo-Aは異なるシグナル伝達経路を介して、三つの異なるのNogo-A受容体(NgR1、S1PR2、PirB細胞)に結合することによって、ニューロン再生および可塑性の阻害効果を発揮する。
アルツハイマー進行と関与する報告のあるRhoA / ROCK経路は、3つの受容体の共通のシグナル伝達経路であり、その経路の活性化は、微小管、細胞骨格の不安定化をもたらすことが示されている。
シナプス可塑性の制御
Nogo-Aは、軸索伸長を阻害するだけではなく、発達中の樹状突起の分枝化、オリゴデンドロサイトのミエリン形成を調節し、成人脳における長期抑制(LTP)、短期記憶形成を制御する。Nogo-Aはシナプス可塑性、細胞遊走、可塑性、幹細胞の生存と増殖を一生を通じて増殖させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4590229/
阻害によるBDNF・VEGFの上昇
Nogo-Aの阻害によって、脳由来神経栄養因子(BDNF)や血管内皮細胞増殖因子、増殖関連タンパク質などがアップレギュレーションされる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15619232
Nogo-Aの分布
Nogo-Aは中枢神経の神経細胞、オリゴデンドロサイトの両方に豊富に発現している。
特に海馬、脊髄運動ニューロン、後根神経節細胞において高レベルに発現している。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25554426
Nogoと神経変性疾患
アルツハイマー病
アルツハイマー病ラットでは、Nogo-Aのアップレギュレーションとダウンレギュレーションの両方が病理学的な変化と関連する。
エストロゲンはNogo-AおよびNogo受容体発現を正常化する可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6495534/
ALS患者の高いNogo-A
Nogo-Aは、ALS患者の重症度と相関してALS患者の筋肉で発現する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4590229/
パーキンソン病 Nogo-Aの神経保護作用
黒質中のドーパミン作動性ニューロンの50%が Nogo-Aを共発現する。
Nogo-Aを発現するドーパミン作動性ニューロンは、病変による影響を受けにくい。
パーキンソン病ラットモデルにおいて、Nogo-Aの発現は喪失している。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25554426
外傷性脳損傷
外傷性脳損傷直後のマウスNogo-66受容体の薬理学的阻害は、認知機能を損なう
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20486800/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3579383/
未解明のNogo-A作用
抗Nogo-A免疫療法は、脳卒中ラットの認知能力を改善するが、海馬ニューロンの構造的変化とは相関しなかった。異なる未解明のメカニズムが回復に関与している可能性が高い。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20035795/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5067305/
Nogo-Aの阻害
エクササイズ
運動トレーニングは、Nogo-A/NgR1、Rho-A経路の阻害を介した軸索リモデリングの促進により脳梗塞後の機能改善と関連する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26135366
緑茶ポリフェノール
低濃度のEGCGはNogo-66の神経突起伸長阻害活性および成長円錐崩壊活性の両方を防止できることが示された。H2O2は、67LRを迂回してNogo-Aが誘導するシグナル伝達経路を遮断し得ることを示唆する。
Nogo-Aの下流シグナル伝達に関与するタンパク質のうち、RhoAは酸化還元感受性標的の1つ。EGCGによるH202を介してRho-Aを阻害し、それによってNogo-A作用を遮断する方法があり得る。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4870900/
ダイゼイン/大豆イソフラボン
ダイゼインは、MAGの神経突起伸長阻害活性から神経細胞を保護することのできる大豆イソフラボンの一種。海馬細胞をMAGに曝露する前にダイゼインで前処理すると、その神経刺激阻害作用が妨げられin vivoで神経突起形成を効果的に促進する。
ダイゼインはまた血液脳関門を通過することができる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20071539
ブチルフタリド(セロリ)
cyberleninka.org/article/n/1314870
エストロゲン
フルオキセチン
フルオキセチン投与は成体ラットの視覚皮質の神経周囲網、Nogo受容体の発言を減少させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30641674
エフェドリン
エフェドリンの使用は、低酸素性虚血性脳損傷(HIBD)後のNogo-Aおよびシナプトフィジンの発現レベルを正常化した。
insights.ovid.com/nrgr/201001010/01300535-201001010-00008
中国漢方 スイフカン/Sui fukang
www.hindawi.com/journals/ecam/2012/528482/
en.cnki.com.cn/Article_en/CJFDTOTAL-ZSFX200902015.htm
中国漢方 福建錠/Fujian Tablet
ラットの投与によるNogo-A発現の抑制
en.cnki.com.cn/Article_en/CJFDTOTAL-ZGSD201002008.htm
www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnins.2018.00888/full
ROCK阻害剤
Nogo-A/Nogo-A受容体の下流シグナル分子のひとつ。
いくつかの報告はRho-A / ROCK経路がアルツハイマー病への進行に関与していることを強調している。
PKC活性化剤
Nogo-A/Nogo-A受容体の下流シグナル分子のひとつ。