ビタミンB1(チアミン・ベンフォチアミン)
ビタミンB1、チアミン/Tiamine、スルブチアミン/Sulbutiamine、ベンフォチアミン/Benfotiamine
概要
チアミン欠乏症によるウェルニッケ脳症が有名
チアミンが欠乏のウェルニッケ・コルサコフ症候群では多くの脳領域で20~30%のグルコース代謝が減少する。
アルツハイマー病発症がチアミン欠乏によるグルコース代謝の減少と関連付けられている場合、チアミン補充によって逆転する可能性がある。
脳は体重の2%にすぎないが、体内に取り入れたグルコースの20%を脳に使用する。この脳の高い代謝速度は、チアミン欠乏による脳の感受性を説明することができる。
脳のグルコースは脳のエネルギー源としだけではなく、グルタミン酸、アセチルコリンを含む複数の神経伝達物質合成のための基質を提供するという独特の役割をもつ。
チアミンの役割
チアミンは、アミロイドおよびプリオンへの結合など多くの役割をもつ。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21848803/
アセチルコリン、ノルエピネフリンの放出、抗酸化剤としても作用する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6466354/
チアミンは、複数のミトコンドリア酵素に結合し細胞質とミトコンドリアの相互作用を変更することができることが研究で報告されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26212886/
チアミン欠乏
ADマウスでは、チアミン欠乏がアルツハイマー病と類似する記憶障害を引き起こす。(アセチルコリンの減少、グルタミン酸の過剰放出、空間記憶の機能障害、プラーク形成等)
チアミンの減少は、記憶障害、神経炎プラーク、過剰リン酸化タウによるアルツハイマー病理を引き起こす可能性がある。大量のチアミンはアルツハイマー病の病状を緩和させる。
アルツハイマー病患者の多くはチアミン欠乏を示唆する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9570639/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3395256/
3つのチアミン依存性酵素
トランスケトラーゼ、PDHC、KGDHC
3つのチアミン依存性酵素の活性はアルツハイマー病患者では低下する。
KGDHCは、TCAサイクルにおける律速段階であることが多い。
チアミン欠乏原因
先進国では純粋な食事からの栄養不足によるチアミン欠乏は考えにくい。しかし、例えばグルテン感受性はチアミン吸収を妨げる可能性があり、消化管機能などの障害によりチアミン欠乏症がひこ起こされる可能性がある。
肥満手術もチアミン欠乏を引き起こすことがある。
チアミン欠乏症は多くの疾患においても生じる。
ウェルニッケ・コルサコフ症候群、癌患者、腎臓機能障害をもつ糖尿病患者
多くの薬剤によってもチアミン欠乏症は起こりうる。
制酸薬、抗不整脈薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗感染薬、抗精神病薬、バルビツレート、抗腫瘍薬、強心薬、避妊薬、ジクロロアセテート、利尿薬、ホルモン、抗高血圧薬の各々のいくつかの化合物、緩下剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、プロトンポンプ阻害剤、鎮静剤、覚醒剤
ベンフォチアミン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18549472/
ベンフォチアミンの投与により、用量依存的にマウスの空間記憶を増加。脳皮質領域のアミロイドプラークおよびリン酸化タウレベルを効果的に減少させた。
この効果はチアミンとは無関係であり、GSKへの作用によって起こる可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20385653/
チアミンを外因的に投与しても治療効果に乏しい。他の化合物ソルブタミド、ベンフォチアミン、フルスルチアミンは、チアミンの効果を5~10倍高め、数時間の維持が可能となる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4846521/
アルツハイマー病
パイロット研究 一日3gのチアミン塩酸塩をアルツハイマー病の可能性をもつ11人の患者へ投与。MMSEによる全体的な認知評価はナイアシンアミド投与のプラセボ軍よりも高かったが行動評価は有意に改善しなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2969232/
二重盲検長期投与試験 3g/日投与 プラセボ郡とチアミン投与群の間に試験スコアの有意差は見られなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1986730/
3~8g/日の経口投与 アルツハイマー型認知症において軽度の有益な効果があることを示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8251051/
チアミン100mg/日の経口投与 12週間のオープンラベル試験においてアルツハイマー病患者に軽度の有益な効果が示された。軽度の障害を有する被験者のみ認知機能の改善を示した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8815393/
無作為化二重盲検試験 スルブチアミン+ドネペジル郡でエピソード記憶が改善した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17675917/
サプリメント
チアミン
通常摂取量 100~300mgを一日2回