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シンバイオティクス・食物乳酸菌の作用
概要
はじめに
世の中には数多くの発酵食品が存在するが、認知機能の改善、低下を防ぐ可能性のある発酵食品にしぼってリストアップしてみた。
用語説明
・プロバイオティクス
腸内フローラのバランスを改善することにより、ヒトに有益な作用をもたらす生きた微生物のこと。
・プレバイオティクス
プロバイオティクスは腸内の有益な微生物をさすのに対して、プレバイオティクスはそういった微生物の餌、栄養源になることで微生物の増殖を促進し健康維持に役立つ食品成分のこと。
シンバイオティクスとは、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたもの。食品由来のプロバイオティクスなどを言う。(キムチ、納豆)
シンバイオティクス(発酵食品)認知機能改善 3つのメカニズム
1 化学的成分の調整
2 HPA軸の阻害
3 神経伝達物質の調整
発酵乳製品
カマンベールチーズ
カマンベールチーズに含まれるオレアミド(オレイン酸から合成される)はミクログリアの食作用によりADマウスのアミロイドβ蓄積を減少させた。
さらに海馬のケモカインおよび、BDNF、GDNF、神経栄養因子が顕著に増加した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25760987
ミクログリア抗炎症活性をもつデヒドロエステール(DHE)はカマンベールチーズのP. candidumによって、産生される。
※ブルーチーズとアスペルギルスのP. RoquefortiはDHEを産生しない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25760331
豆乳
ラクトバチルスプランタルムTWK10(Lactobacillus plantarum)で発酵させた豆乳の血管性認知症モデルラットへの投与は、アセチルコリンエステラーゼの活性を阻害し、一酸化窒素を促進することで、血圧の有意な低下をもたらした。
※発酵豆乳に機能的成分としてウラシルおよびグリセロールが含まれており、これらが血圧の低下作用をもつ。
またTWK10発酵豆乳はPC-12細胞において、H2O2および酸素グルコース欠乏誘導による損傷からの保護効果、抗酸化活性をもつ。
TWK10発酵豆乳の経口投与は、学習能力および記憶力を改善し、高血圧ラットの空間および長期記憶を有意に高めた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27144579/
カルピス
カルピス酸乳は、スキムミルクをラクトバチルスヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)およびサッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発酵させて調製した日本の飲料。
カルピス酸乳ホエイパウダーの経口投与は、スコポラミン誘発性記憶障害およびマウスの物体認識を有意に改善した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24694020/
プロバイオティックラクトバチルスカゼイ株シロタが、有意にストレスの多い健常者の唾液コルチゾールレベルを低下させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26689231/
穀物の発酵食品
テンペ
分析の結果、インドネシア産の発酵大豆製品などテンペの消費量が多い高齢者と記憶改善は正の相関があるが、豆腐とは負の相関性!?を示した。
豆腐が認知症リスクを高める原因はわからないが、エストロゲンが65歳以上の女性の痴呆リスクを増加させることが判明しており、テンペは発酵による高い葉酸濃度をもつことで保護効果をもつ。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18583909/
黒酢
日本の伝統的な米酢である濃縮黒酢は、老化促進P8マウスの脳内の認知機能障害および脳内のアミロイド蓄積を抑制する。もろみ黒酢にも同様の傾向があったが有意差にまでは至らなかった。
濃縮黒酢は、マウスの、熱ショック70kDaのタンパク質1A(HSPA1A)、ミスフォールディングタンパク質、およびその凝集タンパク質を安定化させた。
濃縮黒酢の効果は、HSPA1Aの発現による脳への凝集タンパク蓄積の減少と関連している可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26943920/
植物の根の発酵食品
発酵高麗人参
発酵ツルニンジン(C.lanceolata)の根はスコポラミン誘発性記憶障害マウスの記憶障害を改善した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23935665/
ADマウスにおいて、発酵人参が記憶障害を逆転させ、アミロイドβ42の蓄積を減少させることが実証されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23717163/
発酵高麗人参のADマウスへの投与は、アセチルコリンエステラーゼ活性を阻害し、海馬組織のCREBリン酸化、BDNF発現レベルが有意に増加した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25031604/
発酵にんにく
発酵ニンニク(黒ニンニク)抽出物を、グルタミン酸一ナトリウム曝露ラットへ投与、海馬中のピラミッド細胞の総数および空間記憶が増強された。
グルタミン酸モノナトリウムと発酵黒にんにくの併用投与は、ラットの海馬のCA1領域の空間機能、および錐体ニューロンの総数を変化させる可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25422084/
海馬由来HT22細胞を、発酵させた黄色タマネギ(Allium cepa)抽出物で処理すると、グルタミン酸誘導性の神経毒性が減少した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22504089/
発酵果実・発酵野菜
発酵パパイヤ
AD細胞モデル研究において、発酵パパイヤ調整品が、アミロイドβの神経毒性を有意に低下させうることを示した。
酵母発酵パパイヤの抽出物であるPS-501は、ADマウスの短期および長期記憶障害を有意に逆転させた。
酵母発酵パパイヤの有益な効果は、おそらくマイトジェン活性化プロテインキナーゼ媒介シグナル伝達経路またはバックス/ BCL-2感受性経路によるもの。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20870007/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16962711/
酸化ストレスマーカー8-OHdG の低下
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25944987/
発酵ブドウ酒
発酵したブドウ(ブドウ酒)は(制御性T細胞のバイオマーカー)FoxP3誘導を増加させ、グランザイムBの産生を減少させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22211687/
キムチ
キムチの乳酸菌C29株は、スコポラミン誘発性記憶障害マウスの海馬BDNFおよびリン酸化されたCREB発現を増加させ、記憶障害を改善した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5216880/