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カンナビノイド成分の抗認知症作用
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概要
カンナビジオール(CBD)は、麻に含まれるカンナビノイドの一つ。
麻(カンナビスサティバ)には400種類以上の化学物質が含まれそのうち約70種類がカンナビノイドであり、CBDとTHCが主要な生理活性作用をもつカンナビノイド。CBDは大麻にはほとんど含まれないが大麻樹脂には多く含まれる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3797438/
カンナビジオール(CBD)の多彩な標的
CBDの多くの薬理効果、生理学的な働きのいくつかは、エンドカンナビノイドシステム内の標的だけでは完全に説明できない。
CBDは抗炎症作用、抗酸化プロファイルを伴う神経保護効果、ミトコンドリア機能、セロトニン受容体を介した抗うつ作用など、複数の標的への直接的作用を有する可能性がある。
www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2018.00482/full
CB1、CB2受容体パーシャルアゴニスト
カンナビジオールは、CB1、CB2受容体のパーシャルアゴニスト
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2219532/
CBDにはTHCのような向精神作用や依存、耐性作用がなく、THCのネガティブな効果に対抗する作用があることがCBDの保護効果を調べる研究で示されている。(ただし高用量のCBDはTHCの効果を増強する可能性がある)
www.drugandalcoholdependence.com/article/S0376-8716(16)30133-8/abstract
パイロット研究において、THCによる海馬ボリュームの損失をCBDが防ぐことが示された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22716143/
GPR55受容体のアンタゴニスト
GPR55は炎症性腸疾患患者で上昇しており、この阻害は胃腸の炎症を減少させる可能性がある。
GPR55は初期段階での癌を促進する潜在的な可能性があり、GPR55活性阻害は、大腸がん、乳がん、膵臓がん、脳がんに対する抗腫瘍効果をもたらす可能性がある。
www.leafly.com/news/science-tech/health-benefits-cbd-on-g-protein-coupled-receptor-55
てんかん発作治療としてのGPR55標的
n.neurology.org/content/90/15_Supplement/P2.277
5-HT1Aのパーシャルアゴニスト
CBD投与によるマウスの急速な抗不安症状は、CBDによって誘発された5-HT1A受容体の活性を媒介する。
www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0028390815302136
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2697769/
PPARγアゴニスト
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4882496/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17704824
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3579248/
FABPの阻害作用
CBDおよびTHCは、げっ歯類の研究ではアナンダミドをの分解酵素であるFAAHの阻害作用を示すことから、CBDの摂取はアナンダミドの効果を高める(または維持する)と考えられていた。
しかし、CBDはヒトFAAH酵素作用を阻害しない。CBDはFAAH酵素ではなく、アナンダミド輸送タンパク質の脂肪酸結合タンパク質(FABP)を阻害することにより、間接的にFAAHの分解を阻害しアナンダミドを上昇させることを示している。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25666611
CBDの効果
幅広い効能
CBDの効能には、慢性疼痛、不安、抑うつ、睡眠障害などの一般的な病気から炎症の緩和におよび、潜在的には癌などへの治療応用も期待されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19729208
オピオイド分泌作用
CBDは、ミュー、デルタオピオイド受容体のアロステリックモジュレーターであることが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16489449
抗酸化作用
CBD、THCなどのカンナビノイドは、αトコフェロールやアスコルビン酸よりも強い抗酸化能力を有する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC20965/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18282652
アルツハイマー病
ADマウスへの長期的なCBD投与は、社会的認知障害の発症を予防したが、アミロイドβ蓄積、酸化的損傷とは関連していなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25024347
エピディオレックス
医薬グレードのCBDオイル。てんかん薬としてFDAの承認を受けている。
THC(9-テトラヒドロカンナビノール)
9-テトラヒドロカンナビノール
THCの向精神作用
THCは、向精神作用があることが知られており、CB1受容体の活性化を介してドーパミン放出を間接的に増加させることで報酬系を刺激する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22908200
ドーパミンニューロンはGABA(B)受容体の活性化によって阻害される。カンナビノイドのCB1受容体への結合はGABA放出が抑制され、ドーパミンニューロンの脱抑制を引き起こしドーパミン分泌を高める。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3405830/
THC暴露による脳(内側側頭部領域)の形態への影響
www.tandfonline.com/doi/abs/10.3109/10826084.2010.482443?journalCode=isum20
THCとCBDの関係
THCとCBDの組み合わせ治療
THC、CBD、THC / CBD組み合わせの研究のメタアナリシスによる比較では、多発性硬化症患者においてTHC/CBDの組み合わせ治療が、中程度の品質の証拠を示した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26103030/
CBDとTHCの比率
疫学研究では、思春期の大麻使用はその後の統合失調症発症リスク因子となることが示されており、CBD濃度に対するTHC濃度の比率が精神病のリスクを示すようである。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26903403/
また一部のデータではCBDとTHCの比率が依存症のリスクに関与する可能性があることが示唆されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25162899/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24345517/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21592732/
CBDの含有量が高い大麻は、CBDの含有量が低い大麻よりも中毒を発症するリスクが低いと研究者により結論付けられている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20428110/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3797438/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30232407
10倍のCBD
CBDは、THCと組み合わせることでアルツハイマー病への治療効果を最大化させる可能性がある。 比率については論争中だが、THCの副作用を防ぐにはCBDが10倍以上必要であると報告されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5289988/
CBD:THC比率(参考)
アルツハイマー病 薬理学的効果
アセチルコリンの増加
THCはアセチルコリンエステラーゼの競合的阻害作用を示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2562334/
アルツハイマー病 臨床研究
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6200872/
激越・動揺に対する改善効果
大麻の主要化学物質であるTHCと類似する活性作用をもつ合成カンナビノイド(ナビロン)の二重盲検クロスオーバー試験 39人のアルツハイマー病患者への投与は、短縮版MMSE、動揺スコア(CMAI)、攻撃性スコア(NPI-NH)などで有意な改善を示した。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31182351
動揺・興奮に対する安全な治療介入
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31338476
夜間の興奮を鎮める
非盲検パイロット研究 概日リズム障害、行動障害に苦しむ認知症末期のアルツハイマー病患者5名へのドロナビノール2.5mg/日の投与。 夜間の運動活動の減少をベースラインと比べ有意にもたらした。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16521031/
食欲不振への改善効果
食欲不振のアルツハイマー病患者15名への合成THC(ドロナビノール)投与 プラセボ対照クロスオーバー試験 投与中の食欲不振の改善および体重の増加。
副作用には多幸感、傾眠、疲労が含まれていたが治療の中止には至らなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9309469/
二重盲検無作為化プラセボ対照試験 軽度から中程度の認知症患者24名プラセボ26名への低用量THC投与
1日4.5 mg(1.5mg×3)の経口THCは神経精神症状(NPS)に有益性を示さなかったが忍容性は良好であった。より高用量の投与が必要とされるかもしれない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25972490/
グリシン受容体の増強
THCおよび、内因性のアナンダミドはグリシン受容体の効果を直接増強する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16332990
CBN(カンナビノール)
カンナビノールは、THCの代謝物であり、CB1受容体へパーシャルアゴニストとして作用し、CB2受容体に対してより高い親和性がある。(THCよりは低い)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1140243
5人の男性への投与では、カンナビノールはTHCと異なりめまいや眠気、陶酔作用を感じることはなかった。CBNのTHCとの併用投与ではTHCのいくつかの心理的効果をわずかに増加させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1221432