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カンナビノイド受容体の抗アルツハイマー病作用
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概要
医療大麻の歴史
大麻は娯楽用途のマリファナとしてよく知られているが、人類の歴史においては医療用途として長く使われてきた。最初の記録は5000年前の古代中国にまで遡ることができる。そこでは、麻の抽出物が痙攣や痛みの緩和に使用されてきた。
当初、カンナビノイド(麻に含まれる化学物質の総称)は親油性の性質から、細胞膜を破壊することにより生物学的効果を発揮すると考えられていた。
しかし、大麻研究の父と呼ばれるラファエル・メコーラムによりTHCやCBDの化学構造が明らかになり、1990年代には体内でもカンナビノイドノイドが自然に備わっていることが発見され、カンナビノイドの医療応用研究の進展へとつながる。
大麻の効果は、抗炎症、痛み止め、抗けいれん薬、嘔吐を防ぐ用途など広く医療用途として文書化されているが、向精神作用を有することから多くの国では規制されており、臨床的な証拠も不足している。
自然界のカンナビノイド
自然界では驚くほど多くの動植物の特定の分子化合物が、カンナビノイド受容体、分解酵素、合成酵素への作用を介して体内に備わるエンドカンナビノイドシステム(ECS)に影響をあたえる。これらの分子化合物を「カンナビミメティック」と呼ぶ。様々なカンナビミメティックの化学構造は異なるが、共通してECSに作用する能力がある。
※一般に麻に含まれるカンナビノイドは「フィトカンナビノイド」と呼ぶ。
ペッパー、クルクミン、ケンフェロールなどもECSに作用する能力があるが、多くのカンナビミメティック植物は食べることができない。
最初のエンドカンナビノイドは5億年以上前に、バイラテリアン動物にCB1様受容体が出現した。いくつかの古い植物もアラキドン酸とアナンダミドを生産できたが、高等植物ではこの能力は失われてしまっている。
おそらくエンドカンナビノイドはCB受容体を発現する捕食者に対する防御反応として、一部の動植物が産生したのであろう。
ヒト・哺乳類のECSは非常に複雑なメカニズムを備えているが、哺乳類、ヒトの時代に自然環境・生存条件が異なる地域への大移動が頻繁に行われれたことから、エンドカンナビノイドシステムの進化がピークに達し、ECSの複雑な仕組みと分布が形成されたものと推測される。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30877436
エンドカンナビノイド・システム(ECS)
ECS=Endocannabinoid System / eCBシステム 内因性カンナビノイドシステム
脳を含むヒトの体内では、カンナビノイド受容体、カンナビノイド受容体を刺激するエンドカンナビノイド、そしてそれらの物質の合成や分解に関わる酵素が一体となってカンナビノイドシステムが形成されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21507493/
ECSと関連する受容体
- CB1受容体
- CB2受容体
- GRP55
- TRPV1
- TRPA1
- PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)
エンドカンナビノイド(eCB)
- AEA(アナンダミド)
- 2-AG
- 2-アラキドニルグリセリルエーテル(2-AGE)
- ビロダミン(virodhamine)
- N-アラキドノイルドーパミン(NADA)
ECSの役割
ユニバーサルレギュレーター
カンナビノイド受容体は、神経細胞から免疫細胞まであらゆる場所に豊富に存在し、広範囲の影響を及ぼす。エンドカンナビノイドシステム(ECS)は脳、内分泌、免疫系を含むヒトの恒常性を維持する上で重要な役割を果たしている。
神経調節システム
エンドカンナビノイドシステム(ECS)は、中枢神経系の発達、シナプス可塑性、環境や内因性の刺激に対する応答など神経調節システムの役割も果たしている。
CB1受容体が最も豊富に存在し、CB2受容体、一過性受容体電位型チャネル(TRP)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)もECSに関与する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4789136/
ストレス応答
内因性カンナビノイドシステムは、ほぼ全ての病気に対して局所的に反応する仕組みが備わっている。CB1受容体、CB2受容体の発現を、病気やストレスへ応答として、さまざまに変化させる。
この変化が保護的または不適応的である場合には、ECSが魅力的な治療標的となる。
しかし、外部からのカンナビノイドの投与は、カンナビノイド受容体が病気などで局所的に増加する場合は、その外因性カンナビノイドの効果を選択的に増強させることができる。このことはカンナビノイド投与による治療利益と副作用のトレードオフ比率を変化させるかもしれない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21752875/
免疫調節
免疫系内でのカンナビノイド受容体発現の「階層」
B細胞>ナチュラルキラー細胞>単球>好中球> CD8白血球> CD4白血球
発現レベルは細胞への刺激、活性化状態にも依存する。
カンナビノイドの4つの免疫抑制特性
- アポトーシスの誘導
- 細胞増殖の阻害
- サイトカインおよびケモカイン産生の阻害
- 制御性T細胞の誘導(T-reg )
europepmc.org/abstract/med/19457575
ミトコンドリア機能の調節
ECSは、酸化還元反応を介してミトコンドリア機能を調節する。CB1受容体が活性酸素種を増加させ、対照的にCB2受容体はROSを低下させる。
アナンダミドはミトコンドリア機能の抑制に役割を果たす。ミトコンドリアはアナンダミドを分解するためにアナンダミド分解酵素であるFAAHを様々な場所に備えている。
royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rstb.2011.0393
GABA受容体との独自関係
CB2受容体の活性はGABA濃度を増加させるが、CB1受容体の活性は、GABAが阻害される。ECSはこの二つの受容体の特性によりGABAと相互作用を示す。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22025726
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18615144
アミロイドクリアランスの増強
CB受容体アゴニストは、脳からのアミロイドクリアランスを有意に増強することが示されている。カンナビノイドシステムはCB1受容体を介して、LRP1発現の増加と血液脳関門への影響により、アミロイドβクリアランスを増加させた。
アミロイドβ42の産生酵素であるβセクレターゼ発現も抑制した。カンナビノイドシステムはおそらくその他の経路への影響も含めた複数の経路を介してアミロイドβを排出し低減させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23831388
タウタンパク質過剰リン酸化の阻害
カンナビジオール(CBD)はアミロイドβ刺激神経細胞のタウタンパク質の過剰リン酸化を阻害することが実証された。CBDの効果は、Wnt /-カテニン経路の活性を介したGSK3の阻害作用であると考えられる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16389547
神経炎症への保護効果
エンドカンナビノイドシステムによるサイトカイン、ROS、プロスタグランジンの減少、グリア細胞の活性化の阻害によりアルツハイマー病の神経炎症を軽減することが可能である。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18040807
www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2017.00069/full
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16364651
PPAR発現の増加
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4882496/
リソソームの安定化
生理的濃度のカンナビノイドは、アミロイドβ媒介のリソソーム不安定化を防ぎ、完全性を向上させる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20923768
CB1受容体(カンナビノイド受容体タイプ1)
カンナビノイド受容体にはCB1受容体とCB2受容体の二つの受容体が発見されており、CB1受容体は主に中枢神経系に広く存在し、CB2受容体は主に免疫系に存在する。
CB1受容体は1988年に発見され、エンドカンナビノイドシステムにも注目が集まり、その後の医療への応用研究も活発となった。
CB1受容体の分布
CB1受容体は、中枢神経系、特に皮質、大脳基底核、海馬、小脳に豊富に存在する。
最も高い発現領域は、嗅球、海馬、大脳基底核、小脳。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16596779/
逆行性シグナル伝達
活性化されたCB1受容体は、電位依存性Ca2+チャンネルの阻害によりシナプスCa2+流入を減少させ、cAMP/PKA経路を阻害する二つの方法で神経伝達物質の放出を抑制する。
CB1受容体の役割
CB1受容体は主に食欲、学習と記憶、不安、うつ病、統合失調症、脳卒中、多発性硬化症、神経変性、てんかん、中毒を含む、中枢神経活動と障害のさまざまな側面に関与している。
腸管作用
CB1受容体は胃腸管(GI)にも見いだされ、腸神経系、腸内分泌細胞、免疫細胞、腸細胞を含む腸粘膜の非神経細胞の両方に豊富に存在する。
胃腸管でのCB1受容体の役割は、消化管の蠕動運動、胃酸、体液、神経伝達物質、ホルモンの分泌、腸上皮の透過性を調節など。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20117132/
CB1受容体は、視床下部への作用を介して食欲をコントロールし、消化管からの代謝とエネルギーバランスを調節する。
CB1受容体の神経保護メカニズム
GABA・グルタミン酸阻害による神経保護
CB1受容体の活性化は、シナプス前終末からのGABAおよびグルタミン酸放出を阻害することが見いだされている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11152748/
CB1受容体を欠損させた動物ではHPA軸の調節不全が引き起こされており、CB1受容体は、刺激による興奮毒性に対する神経保護効果の役割を果たすことが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21150911/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23108541/
Ca2+流入の阻害効果
BDNF発現の増加
CB1受容体の活性はBDNF発現の増加に部分的に関与する。
onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1460-9568.2004.03285.x
二重盲検無作為化プラセボ対照試験 健康な被験者14名と、大麻を軽く吸う被験者9名へのTHC静脈投与では、健康な対照グループでのみ血清BDNFを上昇させた。大麻のライトユーザーではベースラインにおいてより低いBDNFレベルをもっており、投与によってもBDNFの上昇は示されなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18807247/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2791800/figure/F2/
NMDA毒性の保護
CB1受容体はNMDA受容体に結合して、グルタミン酸によって誘導されるNOの生成と亜鉛の動員を減らす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23600761/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16299067/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5877694/
オートファジーの促進(リソソームの完全性)
細胞内のCB1受容体は、リソソームおよび後期エンドソームに存在する。生理的濃度のカンナビノイドはリソソームの安定性と完全性を高める。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18267983/
しかし、高濃度のTHCはCB1受容体の活性によりリソソーム透過性を増加させ、神経毒性効果をもたらしうる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18248609/
MAPK経路
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2931573/
CB1受容体アゴニストによる不安、うつ病などの副作用
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19285266
アルツハイマー病
薬理学実験では、アルツハイマー病脳でCB1受容体発現が著しく減少することが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15728830/
より具体的には、CB1、CB2タンパク質のニトロ化が強化されており、アルツハイマー病脳のミクログリア活性化領域で増強されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15728830
しかし、CB1レベルの低下は、アルツハイマー病の分子マーカーや認知状態とは相関していなかった。興味深いことにCB2Rの発現レベルはアミロイドβAβ42レベルおよび老人斑スコアと相関していた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22763024
補償応答によるCB1受容体の初期増加
CB1受容体密度は早期アルツハイマー病で増加し、後期疾患段階で減少することが明らかになった。初期でのCB1受容体密度の増加はシナプス障害に対する補償応答である可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22222721
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24946872
アミロイドβ毒性の保護
CB1受容体の活性化は、細胞モデルの実験でアミロイドβ誘発性の神経毒性を防ぐことが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18446159/
アルツハイマー病動物モデルにおけるCB1受容体の活性化は、アミロイドβ毒性対して神経保護作用を発揮し、記憶障害、認知障害を軽減する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22508047/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22451318/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16732431/
パーキンソン病
パーキンソン病 CB1受容体の光と影
FAAH阻害剤とCB1Rアンタゴニストの両方がパーキンソン病モデルの運動症状を緩和することが示されている。
パーキンソン病の実験モデルでは大脳基底核でCB1受容体のアップレギュレーションが観察されている、一方異なる研究では内因性カンナビノイドシステムの低下も報告されており、CB1受容体を標的とする治療には慎重さがもとめられる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18446159/
動物モデル、臨床研究において、CB1受容体アンタゴニストがパーキンソン病症状およびレボドーパ誘発性ジスキネジアの治療に対して有用性が示唆されるのに対し、CB1受容体アゴニストはレボドパ誘発性ジスキネジアを減少させることに意義があることを示唆する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12550742/
CB2受容体(カンナビノイド受容体タイプ2)
CB2受容体は、1993年にケンブリッジの研究グループによってクローン化された。
元「末梢CBR」
CB2受容体は当初中枢神経系では観察されなかったため「末梢CBR」と呼ばれていた。実際はCB1と比較して低いレベルではあるが中枢神経系でわずかに発現している。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16224028/
CB2受容体は、免疫抑制、アポトーシスの誘導、細胞遊走の誘導などさまざまな調節機能に関与する。
ヒトで独自進化?
CB2受容体はCB1受容体と比較して、ヒトとげっ歯類で大きな種差がある。
CB2受容体は二種類のアイソフォームが同定されており、一つは主に精巣と脳の報酬領域で低レベルで発現しており、もう一つは、主に脾臓に存在し、脳内では低レベルに発現する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19496827/
CB2受容体の神経保護作用
CB2受容体アゴニストは、ニューロンの神経学的回復につながることが、実験動物で示されている。CB2受容体は、神経損傷、神経炎症など特定の病的状態の下では、いくつかの神経細胞で発現されるようであり、補償応答を示している可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19357281/
GABA-A受容体
CB2受容体の慢性的阻害は、GABA(A)受容体と関連するマウスの不安行動を誘発する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21838753
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28100744
cAMP/PKA経路の阻害
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12037135
アルツハイマー病治療標的
CB2受容体の選択的発現
CB2受容体は、アルツハイマー病脳の神経炎プラークと関連するアストロサイト、ミクログリアで選択的に過剰発現している。CB1受容体発現には変化がない。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14657172/
空間記憶障害・神経変性の改善
CB2受容体アゴニストは、ラットの空間記憶障害と神経変性を減少させた。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30500552
CB2ノックアウトマウスでは、可用性アミロイドβおよびプラークの沈着が有意に増加することが示された。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3883962/
その他の受容体
GPR55
GPR55は、カンナビノイドリガンドに対する明確な応答からCB3受容体候補とされている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19233486
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20166924
GPR55受容体は、炎症および痛みに対する治療標的となりうる可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18502582
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19306092
TRPV1
TRPチャネル、特にカプサイシンによって活性化されるTRPV1は、アナンダミドによっても活性化されうる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18204441/
TRPA1
カンナビノイド受容体の間接的活性化
カンナビスサティバに含まれるカンナビクロメン(CBC)は、TRPA1を活性化し、内因性カンナビノイドの不活性化を阻害する。CBCの大腸炎保護効果
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3632250/
PPAR
エンドカンナビノイド、エンドカンナビノイド様化合物、フィトカンナビノイド、合成カンナビノイドリガンドがPPARに結合して活性化するという証拠は蓄積されている。
onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/wmts.73
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4882496/
アナンダミド(AEA)
別名:N-アラキドノイルエタノールアミン、アナンダマイド
アナンダミドとは、内因性のカンナビノイド受容体リガンドであり、サンスクリットのアーナンダ(法悦、歓喜の意)とアミドを合わせた造語。
アナンダミドは、疼痛刺激の制御を操作することに関わる重要なカンナビノイドであり、脳な麻薬物質のひとつとして考えられている。
記憶に直接影響を与える神経細胞間の短期的接続や切断する機能も備えており、身体の痛みだけではなく心理的な不快感も和らげる。
CB1受容体パーシャルアゴニスト
アナンダミドは、CB1に弱く作用するパーシャルアゴニスト。CB2にも作用するが非常に弱く、ほとんど不活性である。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15148260/
アンタゴニスト様作用の可能性
そのためアナンダミドは、受容体発現が低いまたは受容体のシグナル伝達経路への作用が弱い場合、アゴニストの効果に拮抗する可能性がある。
AEAのTRPV1を介した2-AG抑制
アナンダミドは、TRPV1に対してはフルアゴニストであり、高用量ではTRPV1の活性化により線条体での2-AG生合成と生理学的効果を負に調節することが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18204441/
PPAR-αの活性
神経保護
2-AGとAEA は、DNAの断片化とカスパーゼ-3活性化によるアミロイドβ誘導性の神経毒性を防ぐ。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16732431
Notchシグナル伝達
神経新生、シナプス可塑性、長期記憶に重要な役割を果たすNotchシグナル伝達。アミロイドβ、神経変性によってNotchシグナル伝達は減少し、Notch変異マウスでは空間認識障害が観察される。
アナンダミドはCB1受容体を介して、Notch1シグナル伝達関連成分の発現の増加により、神経変性により減少したNotchシグナル伝達を回復させることができる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19853579
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16921404
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12906797
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22891244
代謝
4つの合成経路
アナンダミドの合成は複数の経路(4つのルート)で生じることが提案されている。おそらく脳の領域によって合成経路は異なる。
- NAPE-PLD
- NAPE-ホスホリパーゼC(PLC)に続くホスファターゼ
- ホスホリパーゼBによるアシル基の二重加水分解
- ABHD4に続くGDE1による加水分解
アナンダミドの分解
中枢神経系におけるアナンダミドの分解は、主に脂肪酸アミノヒドロラーゼ(FAAH)酵素によって行われる。
- 脂肪酸アミノヒドロラーゼ(FAAH)
- プロスタミド(COX-2の酸化作用を介する)
- N-アシルエタノールアミン加水分解酸アミダーゼ(NAAA)
アナンダミドの増強
COX-2阻害
プロスタミドはシクロオキシゲナーゼ(COX-2)によって代謝されるため、COX-2阻害剤は、アナンダミドを増強する可能性がある。
ドーパミンD2受容体刺激によるAEA増加
ドーパミンD2受容体の刺激は、線条体のアナンダミドレベルを増加させる。(D1、D5ではなかった)これは、内因性カンナビノイドとドーパミン作動性システムとの間には機能的相互作用があることを示唆する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10204543/
FAAH阻害剤
FAAH阻害剤はECSを介した治療薬候補のひとつ。FAAHはアナンダミドの細胞への取り込みに関わる。そのため、FAAH阻害剤はアナンダミドの分解を減少させ効果を増強させるがアナンダミドの細胞への取り込みを減少させることで効果の低下ももたらす。(結果、アナンダミドの生理学的効果を長引かせることができる)
ナツメグ
www.fasebj.org/doi/abs/10.1096/fasebj.31.1_supplement.lb581
大豆イソフラボンゲニステイン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17325653/
レッドクローバー(ビオカニンA)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2931556/
ケンフェロール
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2538700/
黒胡椒
pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.jafc.7b02979
アルツハイマー病
アナンダミドは、アミロイドβペプチドの神経毒性を防ぐ。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12384227/
2-AG(2-ラキドノイルグリセロール)
2-AGは、人体で最も一般的なエンドカンナビノイド。免疫抑制を通じて抗炎症効果に大きな役割を果たすようである。脳神経細胞のCB1受容体に結合すると、精神活性作用としても機能する。
CB1、CB2フルアゴニスト
2-AGはCB1、CB2の両方に強く作用するフルアゴニスト
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23108541/
2-AGは脂質合成における重要な代謝中間体であり、プロスタグランジン合成におけるアラキドン酸の主要な供給源としても機能する。そのため、2-AGの合成および分解は、カンナビノイドシステムとは直接関連しないその他の生理病理学的プロセスに影響を与える可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22021672/
2-AG合成
2-AGの合成は、そのほとんどが、DAGリパーゼ(DAGL)αまたはβによってジアシルグリセロール(DAG)から生成される。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24102242/
2-AGの分解
- モノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)
- α/βドメインヒドロラーゼ6(ABHD6)
- α/βドメインヒドロラーゼ12(ABHD12)
2-AGはCOX-2によっても酸化、FAAHによっても加水分解される。
MGL酵素および阻害剤が重要な治療標的とされている。
アルツハイマー病
神経保護
アミロイドβの急性投与は、脳内の2AG放出を増加させ、ニューロンを保護することから、内因性の2AGが神経保護に重要なこ役割を果たしていることを示唆する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16732431
SSI(スローセルフインヒビション)
内因性カンナビノイドの中でも特に2-AGは、スローセルフインヒビション(SSI)と呼ばれる、プロセスを通じてニューロンの興奮性を直接抑制することができる。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15372034/
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19074027/
その他のカンナビノイド
2-アラキドニルグリセリルエーテル(2-AGE)
en.wikipedia.org/wiki/2-Arachidonyl_glyceryl_ether
ビロダミン(virodhamine)
en.wikipedia.org/wiki/Virodhamine
N-アラキドノイルドーパミン(NADA)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11042139