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アクアポリン4(AQP4)
アクアポリンとは
アクアポリンとは、細胞膜への水の通過を調節するタンパク質。
水分子を高速で輸送する能力をもち、イオンチャネルの中でも最速、最大で秒間10億以上の水分子を輸送する。
H20は通過させるが、水素イオン(H+)は通さない、などといった特徴をもつ。
同定されているアクアポリンは14種類
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2923372/
AQP4の役割
中枢神経系では主にAQP1、4,9が発現しており、その中でもAQP4がもっとも多く発現している。
AQP4は、アストロサイトにおいて水分子の輸送、細胞接着、脳の可塑性、アミロイドβクリアランス、神経栄養因子などと関連しており、「脳のアクアポリン」とも呼ばれる。
n.neurology.org/content/69/24/2266
脳血管疾患とAQP4
アストロサイトに存在するアクアポリンが脳の廃棄物除去に重要な役割を担っている。アクアポリン(AQP)は受動浸透圧、水圧勾配によって水、溶質、イオンを細胞膜を横切って双方向に輸送することができる。(拡散輸送よりも特異的、大容量)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27529222
アルツハイマー病患者のAQP4発現
AQP4のいびつな発現
60歳未満の健常者ではAQP4は均一に分布、60~85歳のアルツハイマー病患者ではAQP4は皮質のアストロサイトにまばらに発現が増強、特に深部皮質層。
AQP4の喪失によりアミロイドβが蓄積し、より多くのAQP4が失われるという悪循環(フィードフォワードサイクル)の可能性。
www.alzforum.org/news/research-news/dearth-water-channels-sign-glymphatic-breakdown-alzheimers
アルツハイマー病患者ではAQP4の不均一性が問題?
AQP4のアップレギュレーション
老人斑周辺でのAQP4発現
アミロイドβ40が沈着した老人斑周辺ではAQP4が増強して発現、神経変性疾患が進行するにつれAQP4発現が増加。
www.bri.niigata-u.ac.jp/files/2413/3669/5281/23.pdf
アルツハイマー病でのAQP4受容体アップレギュレーション
アルツハイマー病ではAQP4受容体の発現が増強を示している。これはおそらく恒常性維持による適応によってアップレギュレーションされている。
2型糖尿病でもAQP4はアップレギュレーションされており、アストロサイトが膨張
メトホルミンはアストロサイトの膨張を予防し、血管新生を促進する。AQP4受容体発現の減少は神経保護作用をもつ。
ピロキシカム(NSAIDs)はAQP4の強力な調節因子
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4033263/
過剰発現では脳浮腫リスク
AQP4の過剰発現は、脳浮腫に関与している。AQP4の抑制が脳浮腫の標的治療として研究されているが、抑制すると今度は血管性浮腫につながる可能性がでてくる。
content.iospress.com/articles/journal-of-alzheimers-disease/jad150949
脳虚血がAQP4をアップレギュレートし、BBBの透過性を高め、脳浮腫を誘発する。
p38シグナル伝達経路を介した、AQP4のダウンレギュレーションによって、虚血発作後のアストロサイトのアポトーシスを減少させ、BBBの漏出を防ぎ保護する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25100404
AQP4の発症寄与メカニズム
アルツハイマー病におけるAQP4の役割
1 AQP4は、アストロサイトのカルシウムシグナリングおよびカリウム恒常性に影響する。
2 AQP4は、間質液のβアミロイドおよびグルタミン酸の移動とクリアランスに関連している。
3 AQP4反応性アストログリオーシスは神経炎症のメカニズムを調節する。
4 AQP4は、神経栄養因子産生に影響をおよぼしてアルツハイマー病の病因に関与する可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28714415
脳の可塑性
AQP4とGLP-1の深い関係
AQP4欠乏は、皮質アストロサイトのGLT-1発現とグルタミン酸の取り込みを下方制御することが実証されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17074507
AQP4欠損はGLT-1を介して扁桃体のシナプス可塑性への影響を介して、連想恐怖記憶、学習と記憶を損なう可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20236948
アストロサイトでGLT-1発現をアップレギュレーションできるセフトリアキソン(βラクタム系抗生物質)はGLT-1発現のアップレギュレーションによりシナプス可塑性障害を回復させることが示されている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17363173
AQP4欠乏が、モルヒネの反復曝露によって引き起こされるGLT-1発現と細胞外グルタミン酸クリアランスの減少を抑制する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23051665
カルシウムシグナル伝達
アストロサイトのカルシウム恒常性が失われると、アルツハイマー病のような多くの脳障害を引き起こす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15379606
アストロサイトのカルシウム(Ca2+)シグナル伝達経路においてグルタミン酸が過剰に分泌されると、細胞内カルシウムレベルが増加し、細胞内のカスケード応答により神経細胞死を引き起こすことが知られている。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25228013
AQP4の欠乏は、アストロサイト内のカルシウムシグナル伝達を妨害する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3021020/
アミロイドクリアランス
アミロイドβ沈着によるAQP4の下方制御
アミロイドβの沈着は、アストロサイトのAQP4発現を変化させる可能性がある。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25082552
AQP4の下方制御は、アミロイドβプラーク形成の後期の段階で生じるようである。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21891870
LRP1
AQP4の欠乏は、LRP-1を下方制御し、アミロイドβの取り込み減少させることにより、アストロサイト活性を低下させる。
AQP4はLRP1のアップレギュレーションとアミロイドβクリアランスに重要な役割を果たす。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22365952
AQP4欠損動物では、間質溶質のクリアランスが70%減少する。
AQP4遺伝子が欠損したマウスでは、アミロイドβのクリアランスは55%減少する。
AQP4 一塩基多型
AQP4遺伝子変異が脳内のアミロイドβ蓄積に影響をおよぼす!
睡眠潜伏期 rs491148、rs9951307、rs7135406、rs3875089、rs151246
持続時間 rs72878776、rs491148、rs2339214
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29479071
rs9951307およびrs3875089は認知機能の低下に関連
rs3763040およびrs3763043はアルツハイマー病診断後のより迅速な認知低下に関連する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29067342
AQP4を増加させる化合物・要因
水
スルフォラファン(ブロッコリー)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16211562
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5880051/
メラトニン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28351378
アスタキサンチン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27581370
ジンセノサイドRb1
アクアポリン4の発現を増強
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25573543
タカトウダイ
Euphorbia pekinensis(TDEP)の根
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28335427
ゲニステイン
(豆類、コーヒーなどに含まれるイソフラボンの一種)
ロタウイルス複製を阻害し、AQP4発現をアップレギュレートする。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25877820
フルオキセチン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4735422/
低酸素症
www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0024320517305374
妊娠
www.fasebj.org/doi/abs/10.1096/fj.04-1901hyp
バルサルタン
ビスフェノールA
ゲンタマイシン
GABA-A受容体
www.jbc.org/content/290/7/4343.long
ステロイドホルモン
エストロゲン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15772982
プロゲステロン
プロゲステロン投与は外傷性脳損傷ラットのAQP4発現に影響を与える。その効果は脳領域によって異なった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16445913
運動
自発的運動
自発的な運動はBBBの透過性には影響を与えなかったが、グリンパティック系のクリアランス効率を加速させた。
AQP4発現が増加し、アストロサイトのAQP4局在化が解消され分布が再編成された。(in vivo)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28579942
運動はAQP4を増やすだけではなく、局在化の解消可能性もある。
糖尿病による妨害
糖尿病によって低下したAQP4は運動で逆転させることはできなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26032744
エリスロポエチン
europepmc.org/abstract/med/15053948
エリスロポエチンの脳損傷保護効果
www.pnas.org/content/106/5/1602
てんかん性海馬でのエリスロポエチン過剰発現
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14748563
炎症性サイトカイン
AQP4が炎症誘発性サイトカインによって星状細胞においてアップレギュレートされる。この効果はNF-κBシグナル伝達を介して仲介される。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23322320
AQP4の発現は、炎症性サイトカインの分泌と関連している。
jneuroinflammation.biomedcentral.com/articles/10.1186/1742-2094-9-279
AQP4の日内変動
脳の水分量は低下するとシナプス間隙が狭くなるため神経伝達物質は活発に働く、そのため日中はAQP4は減少していることで認知活動が効率的に機能する。
夜間は老廃物を排出するために脳内の水分量が必要であることから、AQP4は増加する必要がある。
AQP4を減少させる化合物
水銀
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18167118
塩化メチル水銀
www.jstage.jst.go.jp/article/jts/37/4/37_749/_article/-char/ja/
メトホルミン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27648126
レスベラトロール
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26458999
ケルセチン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24952278
ヘスペリジン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24952278
EGCG
アクアポリン-4(AQP4)およびグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)発現レベルを有意に阻害
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26557015
クルクミン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26997983
ジンセノサイドRg1
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24462216
カルバクロール(オレガノ)
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24051341
プエラリン(プエラリア・ミリフィカに含まれる)
AQP1およびAQP4 発現およびNF-κBシグナル伝達経路のダウンレギュレーション
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27643664
リハビリテーション訓練
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26279808
ピロキシカム
イソテトラドン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27064690/
AQP1
AQP1は、上皮細胞の脈絡業で発現するアクアポリン、CSF形成の役割を果たす。アルツハイマー病患者ではAQP1が高発現している。
PPAR-γ活性化剤、ロシグリタゾン
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28259952
クルクミン クルクミンはAQP1の減少はさせなかった。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26119880
ジンセノサイドRg3 AQPを阻害
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22426160
エストラジオールはAQP1とAQP4と拮抗して阻害する。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21092735
カロリー制限 AQP1が減少
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23703297
AQP4とCx43のバランス?
APQ9
エネルギー代謝、脳、肝臓、白血球で発現。視神経にも関与。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4016637/