
『国家なき人生:政府なしでより豊かで幸せで平和な生活を送る方法』ドミニク・フリスビー 2013年
『Life After the State: Why We Don’t Need Government』Dominic Frisby 2013
各章の要約
プロローグ:なぜキューバの父親は皆、娘が売春婦になることを望んだのか
著者が1990年代のキューバを訪問した体験から始まる。政府統制経済下で、教授や医師のような高学歴者よりもタクシー運転手や売春婦の方が多くの収入を得られる歪んだ状況を目撃した。自由な交換を制限する政府介入がいかに意図しない結果を生み、社会を歪めるかを示す実例として提示している。
第1章 ヨーロッパで最も起業家精神豊かな都市がどのように最も病んだ都市になったか
グラスゴーが18-19世紀に世界の造船業の半分を担う繁栄した都市から、20-21世紀には英国のヘロイン首都、殺人首都へと転落した経緯を描く。第一次大戦以降の政府介入の拡大、社会主義政策、福祉制度の拡張が経済活力を奪い、依存文化を生み出した。政府の「助け」が実際には社会を破綻させる原因となった。
第2章 ミスター・ロス、ミスター・ゲイン、ミス・ダウト
フレデリック・バスティアの「壊れた窓の誤謬」を用いて、政府支出の隠れたコストを説明する。補助金や刺激策は表面的には恩恵者(ミスター・ゲイン)を生み出すが、その費用を負担する見えない犠牲者(ミスター・ロス、ミス・ダウト)が存在する。政府介入は常に「見えないコスト」を伴い、富を一方から他方へ移転させるだけで、全体の富を増やさない。
第3章 その名を言ってはならない自由
人類の進歩は交換によって可能になったとし、自由市場こそが最も効率的で公正なシステムだと主張する。現在の「資本主義」は実際には政府介入に満ちた「縁故資本主義」であり、真の自由市場ではない。自然法に基づく自由な交換こそが、全ての参加者に利益をもたらし、人類の進歩を促進すると論じている。利己心も自由市場では社会全体の利益につながる。
第4章 なぜあなたの家族は小さくなっているのか:語られざる真実
西洋諸国で家族規模が縮小している主因は経済的理由だと分析する。政府の税制と福祉制度が、働く中産階級から資金を取り上げて福祉受給者に移転する構造を作り出している。この結果、税金を払う層は子どもを持つ余裕がなくなり、福祉受給者は経済的制約なく子どもを持てる逆転現象が生じている。政府介入が家族構成を人為的に歪めていると指摘している。
第5章 彼らが教えない本質的な歴史
富裕層と貧困層の格差拡大は政府の貨幣制度に起因すると主張する。貨幣の歴史を古代から現代まで辿り、金本位制から政府発行の不換紙幣への移行が問題の根源である。ニュートンが確立した金本位制が英国の繁栄をもたらしたが、20世紀の戦争により各国が金本位制を離脱し、政府が貨幣をコントロールするようになった。
第6章 無の約束
1971年のニクソン・ショック以降、世界の通貨は「何の約束でもない約束」となった。現在の法定通貨は政府の法律と信用のみに基づいており、金などの実物資産に裏付けられていない。この信用貨幣制度では政府と銀行が無制限に貨幣を創造でき、それがインフレーションと富の格差拡大の原因となっている。
第7章 お金はいかに盗みか
新しい貨幣が創造される過程で、政府や銀行など貨幣創造に近い者が利益を得る一方、一般市民の購買力が奪われる仕組みを詳しく解説する。「カンティロン効果」により、新規貨幣の恩恵を最初に受ける者と最後に受ける者の間で富の移転が生じる。この隠れた税金が中産階級を貧困化させ、若者世代を借金漬けにしている。
第8章 歴史上最大の殺人者
政府による貨幣コントロールが戦争を可能にしている。戦争は現金ベースでは不可能で、政府が貨幣を印刷したり赤字支出したりする能力があってこそ実行できる。貨幣と国家を分離すれば戦争の規模は大幅に制限され、より平和な世界が実現する。スターリンの大量虐殺なども政府の貨幣権力と関連付けられる。
第9章 なぜ金属は国家に対する鎧なのか
金やその他の金属を貨幣として使用することの利点を説明する。金属は政府がコントロールできない独立した貨幣であり、政府の権力を制限する。金は数千年にわたって購買力を維持してきた実績があり、インフレーションから富を守る手段となる。デジタル決済技術により現代でも金属ベースの貨幣システムは実用可能だ。
第10章 私たち全員を救える鉄道の分岐点
現在の貨幣独占を終わらせる具体的方法を提案する。政府は法定通貨法を緩和し、金、銀、ビットコインなど代替通貨の自由な競争を認めるべきだ。また部分準備銀行制度を終わらせ、預金者に自分の資金の所有権を返すべきだ。これらの改革により政府と銀行の特権が除去され、真の自由市場が実現する。
第11章 私たちの不道徳な税制度
現在の税制は複雑すぎ、不公平で、生産性を罰している。所得税は労働に対する罰金であり、生産的活動を阻害している。代替案として15%のフラット税を提案し、最終的には土地価値税(LVT)によってすべての税を置き換えるべきである。LVTは「不労所得」に課税し、労働や生産には課税しない公正な制度である。
第12章 国民保健病気
NHS(国民保健サービス)は高コストで非効率的だと批判する。政府提供の医療は顧客(患者)ではなく供給者(医師、病院)の利益を優先する構造になっている。19世紀の友愛組合のような市場ベースの医療制度の方が安価で効果的だった。政府介入が医療費を押し上げ、質を低下させている。
第13章 国家:あなたの最初の息の世話
出産が病院から家庭へ移るべきである。統計的に家庭出産の方が安全で、満足度も高く、費用も安い。病院出産では不必要な医療介入が多く、自然な出産プロセスを阻害している。これも政府介入が自然で健康的なプロセスを人工的で危険なものに変えた例である。
第14章 教育は必要ないのか?
政府教育は高コストで標準化されており、個性や創造性を抑制していると批判する。19世紀には政府介入なしに識字率が向上していた。ホームスクーリングされた子どもたちの方が学業成績が良く、社会性も高い。真の教育は学習者の態度と実体験にかかっており、強制的な学校教育は学習意欲を削ぐものである。
第15章 キャベツを売るのに27,000語
法制度が過度に複雑になっていることを批判する。EUのキャベツ販売規則が26,911語もあることを例に、過剰な規制が取引の障壁となっている。薬物法を例に、政府の法的介入がしばしば意図した問題を解決するどころか悪化させることを示している。法律は5年で失効し、継続には再投票が必要な制度を提案している。
第16章 なぜ貧しい人々と絶滅危惧種は国家を恐れるべきか
環境問題や貧困問題の解決には政府ではなく自由市場が必要だと主張する。私有財産権の確立が環境保護につながり、自由な交換が貧困解決の鍵である。政府の介入や援助はしばしば逆効果をもたらし、アフリカなどでは交換の障壁となっている。技術革新と自由な取引こそが真の解決策である。
第17章 ゴミ捨て場がスラムドッグ・ミリオネア街になった経緯
インドのダラヴィ・スラムを自由市場の成功例として描く。政府の規制や干渉なしに、100万人が1平方マイルの土地で85%の雇用率を達成し、年間10億ドルの経済を創出している。リサイクル率80%を誇り、宗教的対立もない。極貧の人々でも自由な交換の機会があれば、生産的で誇り高いコミュニティを築けることを示している。
第18章 なぜ欧州連合は愚行の教訓なのか
歴史的に小さな国家の方が繁栄し革新的だったる。大きな中央集権的組織であるEUは柔軟性と競争力を欠いている。豊かな国々のリストは小国が占めており、これは偶然ではない。権力の分散と小規模な政府こそが繁栄の鍵であり、EUのような巨大な官僚機構は衰退を招く。
第19章 思いやりの独占
政府が慈善と思いやりを独占している。自発的な寄付と相互扶助の方が効果的で効率的だが、政府の高い税負担がそれを阻害している。政府なしでも人々は自然に助け合い、コミュニティで問題を解決できる。強制的な再分配よりも自発的な慈善の方が、与える側と受ける側両方の尊厳を保つ。
第20章 国家なき人生で注目すべき34のこと
政府なき社会の理想的な姿を34項目で描く。富と権力の分散、書類仕事の減少、貿易の自由化、税負担の軽減、戦争の減少、教育の多様化、医療費の低下、住宅の手頃価格化、家族の絆の強化、個人の責任感の向上などが実現される。結果として史上最も繁栄し、平和で、調和の取れた社会が誕生するだろう。
目次
- プロローグ:なぜキューバの父親は皆、娘が売春婦になることを望んだのか / Why Every Cuban Father Wanted His Daughter to Be a Hooker
第I部 怪物の台頭 / The Rise of the Monster
- 第1章 ヨーロッパで最も起業家精神豊かな都市がどのように最も病んだ都市になったか / How the Most Entrepreneurial City in Europe Became Its Sickest
- 第2章 ミスター・ロス、ミスター・ゲイン、ミス・ダウト / Mr Loss, Mr Gain and Miss Doubt
- 第3章 その名を言ってはならない自由 / The Freedom That Dare Not Speak Its Name
- 第4章 なぜあなたの家族は小さくなっているのか:語られざる真実 / Why Your Family Is Getting Smaller: The Unspoken Truth
第II部 お金と税:なぜあなたは1%になれないのか / Money and Tax: Why You’ll Never Be One of the 1%
- 第5章 彼らが教えない本質的な歴史 / The Essential History They Never Teach You
- 第6章 無の約束 / A Promise of Nothing
- 第7章 お金はいかに盗みか / How Money Is Theft
- 第8章 歴史上最大の殺人者 / The Biggest Murderer in History
- 第9章 なぜ金属は国家に対する鎧なのか / Why Metal Is Armour Against the State
- 第10章 私たち全員を救える鉄道の分岐点 / The Points on the Railway That Can Save Us All
- 第11章 私たちの不道徳な税制度 / Our Immoral System of Tax
第III部 国家の柱? / Pillars of the State?
- 第12章 国民保健病気 / National Health Sickness
- 第13章 国家:あなたの最初の息の世話 / The State: Looking After Your First Breath
- 第14章 教育は必要ないのか? / We Don’t Need No Education?
- 第15章 キャベツを売るのに27,000語 / 27,000 Words to Sell a Cabbage
第IV部 国家なき人生に向けて / Towards Life After the State
- 第16章 なぜ貧しい人々と絶滅危惧種は国家を恐れるべきか / Why the Poor and Endangered Should Fear the State
- 第17章 ゴミ捨て場がスラムドッグ・ミリオネア街になった経緯 / How a Rubbish Tip Became Slumdog Millionaires’ Row
- 第18章 なぜ欧州連合は愚行の教訓なのか / Why the European Union Is a Lesson in Folly
- 第19章 思いやりの独占 / A Monopoly on Compassion
- 第20章 国家なき人生で注目すべき34のこと / 34 Things to Look for in Life After the State
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