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概要
はじめに:ジャグリングとは何か?
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジャグリング
ジャグリング(お手玉)は一般的には大道芸、見世物として認知されているが、一方でスポーツとしてのジャグリング、芸術としてのジャグリング、純粋なホビー、数学的利用、子供の情操教育、瞑想の一種、セラピー的な用途など、それを行う人によって様々な色彩を見せることは日本ではまだあまり知られていない。
ジャグリングについて記述されたサイト、書籍、動画は数多くあるが、ジャグリングとは何か、ということを的確に表現されていると感じたことは一度もない。そのことがまさにジャグリングの特質を表しているのかもしれない。
カテゴリーとしてのジャグリング
これはジャグリングという言葉が固有の競技や活動をさすというよりも、物体を器用に扱うホビーの類という、固有名詞というよりはカテゴリーに近い概念であることとも関係する。
例えば野球のボールをサッカーボールに変えて、バットを刀に変えれば、それをもはや野球と呼んでよいのかどうかわからなくなる。
しかし、ジャグリングがそれをボールの代わりにナイフやサッカーボールを使ったとしても、ジャグリングであることには1mmも変わりない。むしろあたかも生命の世界のようにジャグリングの世界はどんどんと創発的に拡張されていく。
ジャグリングの核にある数学的普遍性
少々余談だが、仮に、地球外生命体が存在したとして、そして地球人と同様にスポーツを行っているとした場合、それはどういうものだろうか。地球人が行うスポーツと類似するようなものはあるだろうか。
想像に過ぎないが、重力と投げる腕のようなものさえ存在すらなら、ある程度の確率でジャグリングと言えるようなスポーツは宇宙のどこにでも存在するのではないだろうか。条件によっては重力さえ必要ないかもしれない。
一方、一般的なスポーツ、例えば野球やテニスなどは、野球っぽい、テニスっぽいものは存在するかもしれないが、それらはおそらくクリケットやバトミントンにも類似する可能性もある。そうなるとそのスポーツとしての特異性は失われてしまい、いわゆる我々が野球とみなせるものを宇宙人が行っている確率は限りなく低いだろう。
このことは、ジャグリングは単にカテゴリー的な広い定義をもつというだけではなく、数学的本質に依存する普遍性の高い活動であることとも関連する。
1000年後にも残るアクティビティ?
これは時間スケールを拡張した場合にも言える、ジャグリングは野球やサッカーと比べれば明らかにマイナーなスポーツだが、歴史的に見ればあらゆるスポーツという扱いではなかったかもしれないが、他をしのいで長く行われてきた人類の代表的な活動のひとつでもある。
1000年後に人類がまだ生き残っているとして、今現在行われているスポーツのどれが残っているだろうか。自分なら間違いなく野球やサッカーではなく、円盤投げや囲碁などシンプルな活動が2000年以上続いてきたように、ジャグリングも続いていくことに賭けるだろう。
話が広がりすぎて収集がつかなくなるので、余談話はこれぐらいで^^; この記事では主に、ジャグリングの利点・有益な効果を主観的意見も含めつつ拾い集めてみた。
1. 実はむずかしくない・柔軟なレベル設定
Do three things well, not ten things badly.
「3つのことを上手くこなすんだ、下手な10じゃない。」
ひとつは3つのボールを使わなければジャグリングとは呼べないという誤解。これはレベル設定の問題もあるが、ジャグリングの実践も練習も1個から始めていく。さらに下記の動画にあるようにスカーフを利用するなど、より簡単な方法が多く存在する。
2つ目の誤解は3つのボールはむずかしいという思い込み、3ボールは世間的に思われているほどには難しくはない。一般成人、子供であればどれほど不器用な人間でも練習を重ねることでほぼ全員できるようになる。
知的障害のある子にジャグリングを辛抱強く教えたことがあるが、一ヶ月後に3つのジャグリングができるようになったこともある。(普通は3日ぐらいで達成できる)
65歳以上の高齢者であっても練習することで6キャッチ(定義上のキャッチ数)は、95%の高齢者が達成できる。40秒以上の長時間ジャグリングも約50%の高齢者が3ヶ月の練習で達成している。
高齢者のジャグリング成功率
健康な高齢者 男性20人、女性24人 50~67歳(平均年齢59歳) 3ヶ月の練習
- 23%(10人) 60秒以上のジャグリング
- 34%(15人) 40~60秒のジャグリング
- 36%(16人) 数ラウンドのジャグリング
- 4%(2人) 1~2ラウンド(3~6キャッチ)
- 2%(1人) 2ボールのみ
https://www.jneurosci.org/content/28/28/7031
世界一簡単なジャグリング練習方法
世界記録保持者が教えるもっともダラけたジャグリングの学び方
2. 高齢者・障害者に優しいスポーツ
膝を故障していたり、歩くこと自体難しい人でも座りながらジャグリングを行うことができる。関節にストレスを与えないため、高齢者に好ましいシニアフィットネスとなる。
88歳のジャグラー
(現在は90歳)
失敗するのは簡単だ。なぜなら常に重力があるからだ、常にだ。
私は12歳の時にジャグリングを始めた。それは76年前のことだ。
そして今でもジャグリングをしている。
始めた頃のジャグリングはこんな感じだった。そして少しずつ上達していった。
身体的バランスは、長い人生において生産性、生きる楽しさ、そしてお互いに気楽でいられる関係の礎だ。
https://www.pbs.org/video/juggle-brain-mr-rogers-xiiqso/
3. 場所を選ばない有酸素運動
速歩散歩並の消費カロリー
ジャグリングの消費カロリーは時間あたり約280kcalで、速歩と同程度の運動効果がある。特筆すべきは、狭い室内でも実践できる数少ない有酸素運動であることである。これは、現代の都市生活において極めて重要な利点となっている。
ベッドやソファーでもできる有酸素運動はジャグリングだけだろう。
4. ポータビリティー:どこでも持ち運べる
ポータビリティー
専用の道具を必要とせず、身近な物(靴下、テニスボールなど)で代用できることは、ジャグリングの大きな特徴である。費用対効果の面で見ても、他のスポーツや趣味と比較して極めて経済的である。
ポケットに入り、どこへでも持ち運べる。出張先で、旅先で、ビーチや山頂で石ころや木切れを拾って行うことができるのもジャグリングならでは。
5. 瞑想:スキマ時間の気晴らし
コーヒーブレイク・エクササイズ

公園や施設などでもジャグリングが禁止されることは通常なく、場所さえあれば会社の休憩時間に5分だけ行うとい利便性がある。
本当に忙しい時ってあるだろう。そういう時になんとかできたわずかな自由時間に、音楽を聞きながらジャグリングをするとリラックスできるんだ。即座に気分を落ち着かせることができる。
6. 経済的:自作してしまおう
ジャグリングボールは専用ボールである必要はない。100円ショップで販売されているボール、自作、スカーフ、靴下を丸めるだけでもできる。実際、3ボールの練習であれば、簡単な手作りと専用ボールで上達や投げやすさにには、ほとんど違いがなく、あえて言えばその大きな違いは耐久性と気分の違いくらいだ。
複雑な技や5ボールまでいくと、ジャグリングボールとして作られた専用品がより投げやすさを体感することもあるが、ジャグリング専用ボールは1000円程度、最高級のものでも2000円×ボールの数。数年間使用できることを考えれば、一般的な趣味の費用としては破格の部類に入るだろう。
お米とソックスを利用したジャグリングボールの作り方
風船を使ったジャグリングボールの作り方
テニスボールを使ったジャグリングボールの作り方
7. 創造性:ほとんど無限の未開拓領域
誰もが世界記録を目指せる
ジャグリングはその自由度の高さから、様々なスタイルをほとんど無限に生み出すことができる。
ジャグリングの革新的組み合わせの歴史
スポーツとの組み合わせ
ランニングジャグリング(ジョグリング)
1980年代から記録が始まった最も確立された組み合わせの一つである。1984年、マイケル・カプスト氏がニューヨークマラソンで3ボールジャグリングをしながら完走して以来、この分野は急速に発展した。
現在の主要記録:
- マラソン(3ボール): 2時間50分9秒(2007年、ミッチェル・サンダース)
- 100m走(3ボール): 13.8秒(2018年、ザイン・ガルシア)
- 5km走(5ボール): 27分6秒(2009年、トーマス・プラー)
サイクリングジャグリング
1990年代から競技として確立。片手運転での3ボールカスケードの持続時間記録は現在1時間23分に達している。
音楽との融合
ピアノジャグリング
2006年、ドイツのピアニスト、トーマス・デーゲンハルトによって確立。ピアノ演奏中の3ボールジャグリングで、バッハの「インベンション」全曲演奏という記録を達成している。
ドラムジャグリング
1990年代、スティーブ・マクピーク氏によって確立。ドラム演奏とジャグリングの融合は、パーカッション演奏の新しい表現方法として注目を集めている。
アクロバットとの融合
一輪車ジャグリング
サーカスの伝統芸として長い歴史を持つが、1970年代以降、競技としても確立。現在では一輪車上での7ボールジャグリングや、ジラフ一輪車(高さ2m以上)での演技など、様々な記録カテゴリーが存在する。
バランス系との組み合わせ
ローラーボーラー(円筒上でのバランス)やスラックライン(綱渡り)との組み合わせは、1990年代以降に競技として確立された。これらは高度なバランス感覚と集中力を要する新しいジャンルを生み出している。
水中・水上での展開
水中ジャグリング
2010年代に入って記録挑戦が活発化。水深2mでの3ボールカスケード45秒(2015年、アレクサンダー・クリッペル)など、独自の記録カテゴリーを確立している。
サーフィンジャグリング
2000年代後半から発展し、波乗り中の3ボールジャグリング持続時間や技の複雑さを競うカテゴリーが確立されている。
テクノロジーとの融合
LEDジャグリング
1990年代後半から発展し、プログラマブルLEDボールによる新しい表現方法を確立。パターンプログラミング競技や音楽同期LEDジャグリングなど、テクノロジーを活用した新しいカテゴリーを生み出している。
モーションキャプチャー活用
2010年代から研究が本格化し、最適化された動作パターンの記録や3次元軌道の精密制御など、科学的アプローチによる新しい記録カテゴリーが確立されている。
教育・療育での活用
特別支援教育での展開
1990年代から研究が進み、自閉症スペクトラム児童の協調運動訓練やADHD児童の集中力向上プログラムなど、教育的価値を持つ新しい活用方法が確立されている。
今後の展望
これまでの発展から、以下のような傾向が見えてくる:
- 1. テクノロジーの進化に伴う新しい可能性の開拓
- 2. 既存のスポーツや芸術との融合による表現の多様化
- 3. 教育・医療分野での実践的活用の拡大
特に注目すべきは、これらの組み合わせが単なる記録や演出効果を超えて、社会的な価値を生み出している点である。例えば、教育分野での活用は、運動機能の向上だけでなく、集中力や社会性の発達にも貢献している。
このように、ナンバーズ(どれだけ多くの個数を投げられるか)などの王道的な世界記録はオリンピック並かそれ以上に難しいかもしれないが、その他の競技と組み合わせたり、ニッチな技を開発すれば、非公式な世界レベルまたは日本初の記録や技をもつことも、可能だ。
ジャグリングは、想像力と創造力で無限にオリジナルなスタイルを生み出す可能性を秘めいている。
8. エンターテイメント:世界中の人をいつでもどこでも喜ばせる
ゴルフを学んでも、それを披露して人の目を楽しませることはできなくもないだろうが、限られた上手な人が限られた興味を持つ人に限られた条件(ゴルフコースなど)においてのみ成立するだろう。
ジャグリングは、ジャグリングをやっている人口が少ないということもあり、3ボールといくつかのパターンができるようになれば、パーティーなどで披露して誰にでも喜んでもらえる。
ジャグリングを見たことがない人でも、直感的にその面白さを理解できるのが強み。
数学者で大道芸人のピーター・フランクルさん(56)は、旅に出る時はジャグリング用のボールと一緒だ。
ソマリア人難民キャンプで華麗な技を見せ、喝采かっさいを浴びた。
「みんな目を大きくして楽しんでくれた」と笑う。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20100218-OYTEW55507/
ボールがなくても、投げれる物体が3つあればどこでも!
9. コミュニケーション:緊密な目標の共有
緊密な目標のシェア
2人以上で行うジャグリングは「空中にボールを維持する」という目標を共有している。共同で行うジャグリングは、他者から可視化されているため、グループで作業するときに起こる個人の手抜きや、努力不足、惰性的な参加などのソーシャルローフィングが起こりにくい。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4462642/
ジャグリングをする有名人
- チャーリー・チャップリン
- ジャスティン・ビーバー
- ボブ・ディラン
- ポール・サイモン&ガーファンクル
- ジャコ・パストリアス
- トム・ハンクス
- デニス・ホッパー
- スティーブ・マーティン
10. 哲学:人生を学ぶ
ジャグリングとは「投げる」ことと「受け取る」ことのバランスだ。
ジャグリングとはバランスを整えるための朝食であり、人生のバランスのとり方を教えてくれる。
どのジャグリングというとみな3ボールから始めようとする。でもそれは間違っている。
ボールのスロー(投げる)を祝福しドロップ(落下)を抱擁してあげてください。
もしボールを落としたのなら、何が起きたのかよく観察してください。そこには常にゴールに到達するためのヒントが隠されています。観察するだけではなく耳を澄まして聞いてみてください。
自分には不可能だと思っていたけけど、できるようになった最初のトリックのことをよく憶えている。それは3ボールのミルズメスという技だったけど、最初は動きがぎこちないし必死感がある代物だったけど、でもとにかくできたんだ。
自分には不可能だと思っていた技ができるようになるという経験はとても大きかった。
その時からぼくのボキャブラリーから「不可能」という言葉は取り除かれたんだ。
もし誰か他の人ができるなら、自分にもできるはずだと。
<中略>
ボールを落としていないのなら、何も新しいことを学んでいない。
このことは、人生のある側面においても翻訳できる学びだと思う。
もし、あなたが誰かに「あなたの人生を完全に変えてしまった本は何?」と尋ねたとすると、多分聖書だとか、コーラン、バガヴァッド・ギータ、そんな答えが返ってくるかもしれない。
私の人生の一冊は「完全に不器用な人のためのジャグリング」(Juggling for the Complete Klutz)だったの。
ジャグリングは時間さえかければ、私が学べるすべての学びたいことを教えてくれたわ。

結論:未来に続く活動として
1000年後の人類の活動を予測することは難しいが、ジャグリングは、その普遍性と本質的な価値ゆえに、継続される可能性が高い活動の一つといえるだろう。それは、単純でありながら深い奥行きを持つ活動であり、人類の身体能力と創造性の証として、世代を超えて受け継がれていく価値がある。
