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鉄欠乏 10の間接的リスク(認知症・神経変性疾患)

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はじめに

鉄は地球上のすべての生物にとって不可欠な元素。鉄過剰、鉄欠乏のいずれも疾患に関与しており鉄はヒトにとっても「諸刃の剣」の金属元素として知られている。

そして、様々な神経変性疾患関連研究が、脳内の鉄過剰によって疾患リスクが上昇することを示している。正確には鉄代謝の恒常性に問題があると言うべきかもしれないが、これまでの治療研究の多くは脳からの鉄の除去を目指すものが主流だった。

現在でも鉄キレートは鉄と関連した神経変性疾患治療の主要候補の一つだが、鉄恒常性を調節する因子をターゲットとした研究(ヘプシジン、フェロポーチン、トランスフェリン等)も行われている。

一方で鉄過剰ではなく鉄欠乏は、中枢神経系における鉄問題から離れると、リコード法で掲げられている36の穴で例えられる発症寄与因子のうちのいくつかの代謝障害へ影響をおよぼしうる。

そこで、あらためて神経変性疾患と関連しうる鉄欠乏リスクをピックアップしてみた。

鉄の基本的な役割

エネルギー産生の中核

鉄のミトコンドリアが行う酸化還元反応、電子伝達系に大きな役割をもっており、二価鉄、三価鉄を切り替えることによって電子を受け取ったり、供与することができる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28154410/

DNAの合成と修復

鉄はまた、鉄と硫黄が結合したクラスターによってDNAの複製、修復のプロセスに関与する酵素の活性を促進する。

酸素の輸送

また、ヘモグロビンとミオグロビンの成分であり、生物の酸素と二酸化炭素の輸送に関わる。

鉄の脳における役割

脳は鉄を多く必要とする組織であり、脳内の多くの重要な生理学的活動に鉄は関わる。

脳の発達には鉄は欠かせず、鉄欠乏は不可逆的な発達の遅れを引き起こす。

鉄はミエリンの合成、神経伝達物質合成および代謝に関与するだけではなく、神経細胞の代謝能力の維持にも重要な役割を果たす。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7519659/

健康な人の脳内では、鉄代謝は脳内の恒常性を維持するが、鉄代謝のバランスが崩れると脳機能にさまざまな影響をおよぼす。

鉄はアルツハイマー病患者の老人斑で増加しており、この鉄とアミロイドβの共局在が疾患の発症を促進することが示されている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27748454/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/13109530/

アルツハイマー病発症の寄与因子

脳内の鉄含有量は年齢とともに徐々に増加する。またアルツハイマー病においても脳内の鉄が有意に増加していることがMRIによって見出されている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29722955/

鉄の代謝障害が老齢期アルツハイマー病の重要な原因であると一部の研究者たちで考えられてきた。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19195795/

これまでの鉄に関する様々な発見から、鉄がアルツハイマー病発症に重要な役割を果たすことが研究者たちによって認識されている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7617191/

パーキンソン病

血清鉄増加によるパーキンソン病リスクの減少

疫学研究では血清鉄の増加はパーキンソン病リスクを減らす。

保護効果の仕組みは不明だが、鉄はチロシンヒドロキシラーゼの重要な補因子であり、ドーパミン合成に必要なため、鉄欠乏はニューロンの酵素、受容体の機能低下、ドーパミン作動性の機能低下に寄与する可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3672214/

パーキンソン病における鉄関連遺伝子のプール解析 トランスフェリンとの関連

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24121126

パーキンソン病の鉄恒常性の変化 セルロプラスミン遺伝子、トランスフェリン遺伝子、

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26000822

鉄代謝と恒常性に関わる遺伝子

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3643980/

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症、死後の脳組織には健常者より銅が少なく鉄が多かった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25024342

鉄欠乏と疾患リスク

神経成長リスク

幼児や子供の鉄の少ない食事は脳の鉄濃度を枯渇させ脳の発達を遅らせる可能性がある。

鉄補充により可逆的に正常化させることができるが、動物実験での鉄欠乏は、線条体のドーパミン代謝、ミエリン産生への影響と変化はその後残り続けることが示されている。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12704220/

乳児期の鉄欠乏性貧血は髄鞘形成を変化させる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12538778/

発展途上国で見られる鉄欠乏症

pediatrics.aappublications.org/content/126/5/1040.long

うつ病・不安

乳児期の慢性的な重度の鉄欠乏は、鉄補給による治療後10年が経過しても不安、うつ病、社会的行動、注意力などの関して問題が多い。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10742372

鉄欠乏は、ラットの脳のドーパミン受容体を減少させ、有意な活動低下、不安行動の増加を示す。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12191838/

集団ベース研究 鉄欠乏症は、小児、青年の気分障害、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、および発達障害を含む精神障害のリスクを高める。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3680022/

免疫機能の低下

鉄欠乏症は、リンパ球を産生する器官や免疫細胞の機能低下と関連する。

ミエロペルオキシダーゼ

ミエロペルオキシダーゼは、おもに好中球に存在し殺菌能によって真菌感染、バクテリア感染の生体防御に深く関わる。

鉄欠乏によるミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性の減少

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/217216

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23624305

アルツハイマー病患者における血漿MPO濃度の増加

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24217274

セリアック病

セリアック病と診断された24人の子供では軽度の鉄欠乏症が観察された。グルテンフリー食事療法で治療されるセリアック病患者に鉄欠乏はしばしば見られ、彼らにはいくらかの鉄を必要とする。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1545552/pdf/archdisch00793-0051.pdf

無症候性セリアック病

無症候性セリアック病は鉄欠乏性貧血の頻繁な原因である

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7732338?access_num=7732338&link_type=MED&sso-checked=true&dopt=Abstract

小児、成人の両方の無症候性セリアック病患者で見られる鉄欠乏性貧血

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10086653

腸粘膜の吸収不良

セリアック病では、鉄の取り込みに重要なタンパク質の発現が低下している。また十二指腸粘膜表面の吸収面積の減少により鉄吸収が低下している可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4541375/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3098394/

セリアック病の鉄欠乏貧血・葉酸、B12欠乏も関連する。

www.bloodjournal.org/content/109/2/412?sso-checked=true

腸内細菌叢

鉄不足はアレルギー疾患発症リスクの増加と関連している。

pubs.rsc.org/en/content/articlehtml/2017/mt/c7mt00241f

鉄の補給は有益な腸内微生物の代謝産物濃度を高め、腸の健康に寄与し得る。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=24555487

甲状腺機能の低下

甲状腺ホルモンの代謝に必要な微量元素 ヨウ素、鉄、セレン、亜鉛

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12487769

ネパールに住む子どもたちでは、トランスフェリン飽和度と甲状腺機能低下に有意な負の相関が示された。

thyroidresearchjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13044-016-0031-0

鉄とヨウ素の同時補給

ヨウ素単独投与よりも、ヨウ素と鉄を併用して投与することによりより大きな甲状腺機能への影響を示す。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20172476

鉄欠乏はヘム依存性甲状腺ペルオキシダーゼの活性を低下させることにより甲状腺ホルモン合成を損なう。鉄補給によりヨウ素補給の効果を増加させることができる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12487769

T4→T3の変換・体温の低下

鉄欠乏対象者は、温かい温浴から28度の水浴に切り替えた際に、正常なヘモグロビンレベルをもつ被験者と比べより低い口腔内温度の低下(0.2度 vs 0.9度)を示し、高い血漿ノルエピネフリン濃度を示した。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6703092

鉄欠乏ラットは、4度の温度にさらされると低体温になり、過剰なカテコールアミン反応を示す。しかしT3を注射したラットでは低体温を示さなかった。(T4注射では低体温を示した)これは鉄欠乏がT4からT3への変換を妨げることが、低体温の原因である可能性がある。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7435650

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7070226

鉛中毒の悪化

鉛中毒はヘムの生合成を鉛曝露のレベルと期間に依存して妨げる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6999974

世界の多くの地域の子供たち幼児で、鉄欠乏症と鉛中毒が一般的であり、この2つの問題は組み合わさることで重症型の貧血を生じる。疫学研究

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15325155

www.sciencedirect.com/science/article/pii/S002234768480949X

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1508857/

都市部の就学児童では、より高い食事からの鉄摂取により血中の鉛レベルが低いことと関連する。横断的研究

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8680621

鉛精錬所付近に住む子供の高い血中鉛と貧血

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/993916

酸素運搬能力の低下(脳卒中)

集団ベース研究 貧血患者の半分を占める鉄欠乏性貧血、先進国では2~5%、そのほとんどが無症候性であるため、潜在的にはより高い可能性がある。

酸素運搬能力の低下

虚血性脳卒中の危険因子として鉄欠乏性貧血が増加する。血中のヘモグロビンレベルの低下が組織への酸素運搬を低下させるという説明が考えられる。

血小板の増加

その他の可能な作用機序は、鉄欠乏の結果二次的に血小板が増加することによるもの。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3857285/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8659486/

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15497026

身体能力・作業量の低下

作業量の低下

鉄欠乏は心拍数を増加させ同じ仕事料に対して10%の高いエネルギー消費を必要とする。

生産性に関わる仕事では、120g/Lのカットオフポイントによって作業量が4~5%減少する。

academic.oup.com/jn/article/131/2/676S/4686866

高齢者への鉄補給は、身体作業能力を男性で4%、女性で12%増加させた。

onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.0954-6820.1970.tb08052.x

持久パフォーマンスの上昇

鉄欠乏ラットではそうではないラットよりも高い骨格筋酸化酵素を持久運動でより良いパフォーマンスを可能にすることを示唆する。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2994490

鉄欠乏ラットでは、鉄を含まない酸化酵素活性の増加と関連して持久力を大幅に増加させ、心臓血管を改善し、肝臓の参加能力を上昇させる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3403467

乳酸応答の増加

若齢ラットの鉄欠乏食は運動による乳酸応答、筋肉疲労を高め、疲労感が生じやすくなる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6264804

鉄欠乏性貧血患者への鉄投与は運動後の血中乳酸塩がプラセボ未投与群よりも有意に低かった。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1099895

疲労感の増加

二重盲検無作為化プラセボ対照試験 51%が血清フェリチン20μg/L以下の女性への鉄剤投与 一ヶ月後の披露レベルは鉄投与群で有意に減少(13%vs29%)

サブグループ解析によりフェリチン濃度が50μg以下の女性への経口補給だけが改善を示すことが示された。

www.bmj.com/content/326/7399/1124

ebm.bmj.com/content/18/4/e31

過去二年間に鉄欠乏症を報告したオーストラリアの中年女性では、身体的、精神的指標によるスコアが有意に低く、幸福度、疲労感との関連性が示された。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11190004

血清フェリチンレベル50μg未満の鉄欠乏性非貧血女性への鉄補給は、原因不明の疲労感をプラセボ群よりも有意に大きく減少させる。(50% vs 19%)

www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3414597/

www.bloodjournal.org/content/118/12/3222.long?sso-checked=true

ミトコンドリア

鉄欠乏はコハク酸デヒドロゲナーゼ(SDH)への影響を及ぼしうる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4023819

慢性的な鉄欠乏は、その頻度に依存して、海馬ニューロンのミトコンドリア産生が減少し、ミトコンドリアのサイズを縮小させる。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30523068

ヘリコバクター・ピロリ菌

ピロリ菌に感染した子供では鉄欠乏性貧血の割合が健康な子供よりも40%高い。

ピロリ菌の根絶は、胃粘膜からの失血を防ぎ鉄欠乏貧血を防ぐ。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19786202

寄生虫感染

腸内寄生虫感染症の成人患者は、腸内での失血により鉄を失う。

www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19879568

鉄分欠乏のサイン

  • 疲労感
  • 肌色
  • 息切れ
  • 頭痛
  • 動機
  • 髪・肌の乾燥、損傷
  • 舌の腫れ、痛み
  • 足がむずむずする
  • 曲がった爪、爪が脆い