新型インフルエンザ等対策政府行動計画(令和6年4月 24 日時点案)

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新型インフルエンザ等対策政府行動計画

(令和6年4月 24 日時点案)

令和6年○月○日

概要

はじめに

【今般の新型インフルエンザ等対策政府行動計画改定の目的】

2020 年1月に我が国で最初の新型コロナウイルス感染症1(以下「新型コロナ」という。)の感染者が確認されて以降、新型コロナの感染が拡大する中で、我が国の国民の生命及び健康が脅かされ、国民生活及び社会経済活動は大きく影響を受けることとなった。この未曽有の感染症危機において、次々と変化する事象に対し、国民はもとより、政治、行政、医療関係者、事業者など、国を挙げての取組が進められてきた。

今般の新型インフルエンザ等対策政府行動計画(以下「政府行動計画」という。)の改定は、新型コロナで明らかとなった課題や、これまでの関連する法改正等も踏まえ、新型コロナウイルスや新型インフルエンザ以外も含めた幅広い感染症による危機に対応できる社会を目指すものである。

本政府行動計画に基づき、感染症危機に対する平時の備えに万全を期すとともに、有事においては、感染症の特性や科学的知見を踏まえ、迅速かつ着実に必要な対策を実施していく。

【政府行動計画の改定概要】

政府行動計画は、感染症有事に際して迅速に対処を行うため、予め有事の際の対応策を整理し、平時の備えの充実を図るものである。有事に際しては、政府行動計画の様々な対策の選択肢を参考に、基本的対処方針(新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成 24 年法律第 31 号。以下「特措法」という。)第18 条第1項に規定する基本的対処方針をいう。以下同じ。)を作成し、対応を行っていくこととなる。

従前の政府行動計画は、2013 年に策定されたものだが、今般、初めてとなる抜本改正を行う。具体的には、

  • 新型コロナの対応(以下「新型コロナ対応」という。)の経験やその間に行われた関係法令等の整備
  • 内閣感染症危機管理統括庁(以下「統括庁」という。)や国立健康危機管理研究機構2(Japan Institute for Health Security)(以下「JIHS」という。)の設置等を通じた感染症危機対応への体制整備

1 病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(2020 年1月に、中華人民共和国から世界保健機関(WHO)に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。
2 JIHS 設立までの間、本文書における「JIHS」に関する記載は、機構設立前に相当する業務を行う「国立感染症研究所」若しくは「国立国際医療研究センター」又は「国立感染症研究所及び国立国際医療研究センター」に読み替えるものとする。

  • 国及び都道府県の総合調整権限及び指示権限の創設・拡充によるガバナンス強化などを踏まえ、各種の対策を抜本的に拡充し、具体化している。また、対象とする疾患についても、新型インフルエンザや新型コロナ以外の幅広い呼吸器感染症を念頭に置くこととした上で、記載を3期(準備期、初動期、対応期)に分け、特に準備期の取組を充実させている。

また、対策項目をこれまでの6項目から 13 項目に拡充させ、新型コロナ対応で課題となった項目を独立させ、記載の充実を図る。感染が長期化する可能性も踏まえ、複数の感染拡大の波への対応や、ワクチンや治療薬の普及等に応じた対策の機動的な切替えについても明確化する。

さらに、実効性を確保するため、実施状況のフォローアップや定期的な改定を行うとともに、国・都道府県等の多様な主体の参画による実践的な訓練を実施することとする。

本政府行動計画の構成と主な内容

【本政府行動計画全体の構成】

本政府行動計画は、以下の基本的な構成により改定するものである。

  • 第1部として、感染症危機の経緯と状況認識や特措法の考え方、政府行動計画の位置付け等を記載する「新型インフルエンザ等対策特別措置法と政府行動計画」
  • 第2部として、新型インフルエンザ等対策の総論的な考え方や留意事項を示す「新型インフルエンザ等対策の実施に関する基本的な方針」
  •  第3部として、新型インフルエンザ等対策における各対策項目の考え方や具体的な取組内容を示した「新型インフルエンザ等対策の各対策項目の考え方及び取組」

【第1部 過去の感染症危機を踏まえた政府行動計画の目的】

第1部では、我が国における感染症危機の経験や現在の感染症危機を取り巻く状況を整理しつつ、これまでに行ってきた新型インフルエンザ等対策の制度的枠組みの改善という観点から概観している。その上で、政府行動計画の改定を通じて、「感染症危機に対応できる平時からの体制作り」、「国民生活及び社会経済活動への影響の軽減」、「基本的人権の尊重」といった目標を実現し、感染症危機に強くてしなやかに対応できる社会を目指す。

【第2部 新型インフルエンザ等対策の目的や基本的な考え方】

第2部では、新型インフルエンザ等対策の目的や基本的な考え方について整理している。

同部第1章では、第1節及び第2節において、新型インフルエンザ等対策の目的や考え方を総論的に整理し、基本的な戦略として、感染拡大防止と国民生活及び国民経済に与える影響の最小化という2つの主たる目的を掲げている。

同章第3節では、新型インフルエンザ等の発生の段階について、より中長期 的な対応となることも想定して、準備期、初動期、対応期という3つの時期区 分を設定し、時期ごとに対策の考え方や方針が変遷していくことを示している。

具体的には、準備期において、有事に想定される対策を迅速かつ的確に講じるために必要な訓練や人材育成、DX(デジタル・トランスフォーメーション) を活用した情報収集・分析とリスク評価の体制構築、協定の締結による医療提供体制・検査体制等の整備、ワクチンや治療薬等の研究開発、生産・確保、供給といった体制の構築・強化を重点的に行う。

初動期においては、国内外における感染症情報の発生を覚知して以降、水際対策3、サーベイランス等による情報収集と、その分析を踏まえたリスク評価を行うとともに、得られた知見に関する情報提供・共有、双方向的なリスクコミュニケーション4、ワクチンや治療薬等の研究開発の開始といった取組を極めて迅速に行っていく。

新型インフルエンザ等対策本部(以下「政府対策本部」という。)が設置され、基本的対処方針が策定されて以降の対応期において、新型インフルエンザ等の発生の初期段階では、病原体の性状について限られた知見しか得られていない中で、諸外国における感染動向等も考慮しつつ、まずは封じ込めを念頭に対応する。このため、準備期に締結した協定に基づき、医療提供体制・検査体制を拡充しつつ、必要な検査を通じた患者や濃厚接触者等への対応とまん延防止対策により、確保している医療提供体制で対応可能な範囲に感染拡大を抑制する。その後は、基本的に新型インフルエンザ等の特徴や病原体の性状、医療提供体制等を勘案しつつリスク評価を行い、これに合わせて、とるべき対策を柔軟に変化させていく。特に、ワクチンや治療薬等により対応力が高まる段階では、水際対策やまん延防止対策等の国民生活及び社会経済活動に大きく影響を与えるものについて、リスク評価に応じて縮小等の検討を進めていくとともに、関係機関における実施体制についても、縮小の検討を随時行っていく。

3 水際対策は、あくまでも国内への病原体の侵入をできる限り遅らせる効果を期待して行われるものであり、病原体の国内侵入を完全に防ぐための対策ではない。

4 リスクコミュニケーションとは、個人、機関、集団間での情報や意見のやりとりを通じて、リスク情報とその見方の共有を目指す活動であり、適切なリスク対応(必要な情報に基づく意思決定・行動変容・信頼構築等)のため、多様な関与者の相互作用等を重視した概念。

同章第4節及び第5節においては、新型インフルエンザ等対策の留意事項として、平時の備えを充実するほか、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを踏まえ対策を切り替えるという方針を示している。また、第3部に記載している各対策を実現していくための国、地方公共団体、医療機関、指定(地方)公共機関、事業者、国民等の役割を明確化している。

(5つの横断的な視点)

第2部第2章では、新型インフルエンザ等対策の対策項目を 13 に分け、それぞれの基本理念と目標に加え、以下のような複数の対策項目に共通する横断的な視点から、どのような取組が求められるかを整理している。

Ⅰ. 人材育成

平時から中長期的な視野による感染症危機管理人材の育成を目的とし、専門性の高い人材の育成、感染症危機管理人材の裾野を広げる取組として、より幅広い対象(危機管理部門や広報部門)に対する訓練や研修、地域の対策のリーダーシップの担い手や感染症対策の中核となる保健所職員といった地域での人材の確保・育成に取り組む。

Ⅱ. 国と地方公共団体等との連携

感染症危機対応では、国が基本的方針を策定し、地方公共団体は関係法令に基づく実務を担うといった適切な役割分担が重要である。このため、平時から国と地方公共団体等の連携体制を構築し、感染症に関するデータや情報の円滑な共有、分析等を行う。また、国から地方公共団体への情報発信の工夫により、地方公共団体から住民・事業者等へ適切な情報提供を行うとともに、平時から意見交換や訓練を実施し、連携体制を不断に強化する。

また、地方公共団体の境界を越えた人の移動や感染の広がり等があることから、新型インフルエンザ等の発生時は都道府県間の連携、都道府県と市町村との連携、保健所間の連携も重要であり、こうした地方公共団体間の広域的な連携についても平時から積極的に取り組み、準備を行う。

Ⅲ. DX の推進

感染症危機対応においては、DX の推進や技術革新による対応能力の強化が重要となる。このため、国と地方、行政と医療機関の情報収集・共有・分析基盤の整備、保健所や医療機関等の事務負担軽減による対応能力の強化、予防接種事務のデジタル化や標準化による全国ネットワークの構築、電子カルテの標準化等の医療 DX の推進を行うとともに、将来的には、電子カルテと発生届の連携、臨床情報の研究開発への活用に取り組む。

Ⅳ. 研究開発への支援

感染症危機対応の初期段階から研究開発や臨床研究等を推進し、ワクチン、診断薬及び治療薬の早期実用化につなげることが重要である。このため、平 時から、有事における研究開発につながるよう、医療機関や研究機関、製薬 企業等のネットワークを構築し、企業等の研究開発を支援する。また、初期 段階から国が中心となり、疫学・臨床情報等を収集し、関係機関での臨床研 究・研究開発に活用する。

Ⅴ. 国際的な連携

感染症危機は国境を越えてグローバルに広がることから、対応に当たって は国際的な連携が不可欠となる。国際社会の一員として積極的役割を果たし、国境を越えて拡大する感染症に対処する。具体的には、国際機関や外国政府、研究機関等と連携し、平時の情報収集(新興感染症等の発生動向把握や初発 事例の探知)や、有事の情報収集(機動的な水際対策の実施、研究開発への 活用)を行う。

(政府行動計画の実効性を高めるための JIHS の役割)

第2部第3章では、本政府行動計画の実効性を高めるための取組等を記載しており、第1節において、JIHS が果たす役割として、以下のようなものを掲げている。

  •  JIHS と地方衛生研究所等が平時から協働・連携し、感染症情報のネットワークを更に密なものとし、必要な情報収集やそれに基づくリスク評価等を行うこと
  •  政府に対する科学的知見及び助言を行うとともに、国民等に分かりやすい情報提供・共有を行うこと
  •  臨床研究等のネットワークのハブとなり国内における研究開発を推進すること
  •  人材育成や、国際機関や外国の公衆衛生機関等との国際連携を推進すること

(EBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング)の考え方に基づく政策の推進)

第2部第3章第2節では、本政府行動計画の実効性確保のため、平時及び有事を通じて EBPM の考え方に基づく政策の推進を行うことが必要であり、その前提として、適切なデータを収集し、分析できる体制が重要である。

また、多様な主体の参画による実践的な訓練の実施、毎年度の定期的なフォローアップの実施やおおむね6年ごとに改定を行う。

【第3部 新型インフルエンザ等対策の 13 の対策項目の考え方及び取組】

第3部では、第2部第2章において整理した 13 の対策項目の基本理念と目標を達成するために求められる具体的な取組について、準備期、初動期、対応期に分けて記載している。

(第1章 実施体制)

準備期から、国、地方公共団体、JIHS、研究機関、医療機関等の多様な主体が相互に連携し、国際的にも協調することにより、実効的な対策を講じる体制を確保する。また、平時における人材確保・育成や実践的な訓練による対応力強化、有事には政府対策本部を中心に基本的対処方針に基づき的確な政策判断を行う。また、国による必要な財政上の措置や地方債の発行による財源の確保を行う。

JIHS は、統括庁や厚生労働省からの科学的知見の求めへの対応や調査研究等の有事における健康危機対応を想定した平時の体制を構築するとともに、感染症有事の際に迅速な対応が可能となる体制を構築する。

(第2章 情報収集・分析)

JIHS を中心とした感染症インテリジェンス5体制を構築し、国内外の関係機関や専門家とのネットワークを形成し、維持・向上させるとともに、迅速な情報収集・分析に向けて DX を推進する。また、感染症対策の判断に際しては、感染症、医療の状況の包括的なリスク評価を行うとともに、国民生活及び社会経済活動の状況を把握する。

(第3章 サーベイランス)

関係機関との連携強化を含む感染症サーベイランス体制の整備や電子カルテと発生届の連携に向けた検討などの DX の推進を図るとともに、準備期から継続的に感染症サーベイランスを実施する。有事には速やかに当該感染症に対する疑似症サーベイランス6を開始するなど、状況に応じた感染症サーベイランスを実施する。

5 感染症インテリジェンスとは、感染症による公衆衛生リスクを探知、評価し、予防や制御方法を決定するため、あらゆる情報源から感染症に関するデータを体系的かつ包括的に収集、分析、解釈し、政策上の意思決定及び実務上の判断に活用可能な情報(インテリジェンス)として提供する活動を指す。

6 感染症法第 14 条第1項及び第2項の規定に基づく疑似症サーベイランスであり、都道府県から指定を受けた指定届出機関の管理者により、五類感染症の患者(無症状病原体保有者を含む。)若しくは二類感染症、三類感染症、四類感染症若しくは五類感染症の疑似症等の患者を診断し、又は五類感染症により死亡した者の死体を検案したときに届けられるもの。

(第4章 情報提供・共有、リスクコミュニケーション)

感染症危機下において、情報の錯綜、偏見・差別等の発生、偽・誤情報の流布のおそれがあることから、感染症対策を効果的に行うため、可能な限り双方向のコミュニケーションを通じて、リスク情報とその見方の共有等を進めることで、国民等が適切に判断し行動できるようにすることが重要である。このため、平時から、感染症等に関する普及啓発、リスクコミュニケーション体制の整備、情報提供・共有の方法の整理等を実施する。

(第5章 水際対策)

国内への新型インフルエンザ等の病原体の侵入や感染拡大のスピードをできる限り遅らせ、医療提供体制等の確保等の時間を確保するため、検査、隔離、停留、宿泊施設等での待機要請や健康監視などの水際対策を講じる。その際、病原体の特徴等の状況を踏まえ、対策の有効性や対策が国民生活及び社会経済活動に与える影響を総合的に勘案し実施する。新たな情報の取得や状況の進展に応じて、必要性の低下した対策については、縮小・中止する等見直しを行う。

(第6章 まん延防止)

医療提供体制を拡充しつつ、治療を要する患者数をその範囲内に収めるため、まん延防止対策により感染拡大のスピードやピークを抑制することが重要で ある。このため、医療ひっ迫時には、リスク評価に基づき総合的に判断し、必 要に応じて、特措法に基づく新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置(以 下「まん延防止等重点措置」という。)及び新型インフルエンザ等緊急事態措 置(以下「緊急事態措置」という。)等を含め、強度の高い措置を講じる。こ れらの措置を行う場合の勘案事項の整理を進めるとともに、状況の変化に応じ て柔軟かつ機動的に対策を切り替えていくことで、国民生活及び社会経済活動 への影響の軽減を図る。

(第7章 ワクチン)

準備期から、「ワクチン開発・生産体制強化戦略」(2021 年6月1日閣議決定)に基づき、重点感染症7を対象としたワクチンの研究開発を推進し、研究開発の基盤を強化する。重点感染症を対象としたワクチンの研究開発を平時から

7 重点感染症は、公衆衛生危機管理において、救命、流行の抑制、社会活動の維持等、危機への医療的な対抗手段となる重要性の高い医薬品等(MCM)の利用可能性を確保することが必要な感染症で、厚生労働省において指定されたものを指す。将来の新型インフルエンザ等の発生時における対策の基盤とするため、平時においては、重点感染症を対象とした医薬品等の対策を実施する。

推進し、研究開発の基盤を強化する。有事に国内外で開発されたワクチンを確保し、迅速に接種を進めるための体制整備を行う。予防接種事務のデジタル化やリスクコミュニケーションを推進する。

(第8章 医療)

準備期から、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成 10 年法律第 114 号。以下「感染症法」という。)に基づく予防計画及び医療法(昭和 23 年法律第 205 号)に基づく医療計画に基づき、医療措置協定の締結等を通じて医療提供体制の整備を行い、初動期以降に迅速な医療提供体制の確保を実現できるよう準備を進める。有事において医療がひっ迫した場合、通常医療との両立を念頭に置きつつ、国や都道府県が人材派遣や患者搬送を調整しサージキャパシティの確保を行う。

(第9章 治療薬・治療法)

重点感染症を対象とした治療薬の研究開発を平時から推進し、研究開発の基盤を強化する。有事に治療薬を確保し、治療法を確立するため、研究開発、臨床試験、薬事承認、製造、流通、投与、予後の情報収集及び対応までを含む一貫した対策・支援を実施する。

(第 10 章 検査)

必要な者に適時の検査を実施することで、患者の早期発見、流行状況の的確な把握等を行い、適切な医療提供や、対策の的確な実施・機動的な切り替えを行う。平時には機器や資材の確保、発生直後より早期の検査立ち上げ、流行初期以降では病原体や検査の特性を踏まえた検査実施の方針の柔軟な変更を行う。

(第 11 章 保健)

地域の感染状況や医療機関の稼働状況等に応じた対策を実施するため、感染 症危機時の中核となる存在である保健所及び地方衛生研究所等において、検査、積極的疫学調査、入院調整、健康観察、生活支援等を行う。また、感染拡大時 における業務負荷の急増に備え、平時からの体制構築、有事に優先的に取り組 むべき業務の整理、ICT の活用等を通じた業務効率化・省力化を行う。

(第 12 章 物資)

医療機関を始めとした必要な機関において、感染症対策物資等8が十分に確保できるよう、準備期から、需給状況の確認や備蓄の推進を行う。初動期、対応期においては、準備期に形成した仕組みに基づき円滑な感染症対策物資等の生産要請や指示を実施するなど、供給が滞らないような対策を講じる。

(第 13 章 国民生活及び国民経済の安定の確保)

有事に生じうる国民生活及び社会経済活動への影響を踏まえ、事業継続等のために事業者や国民に必要な準備を行うよう準備期から働きかける。また、有事においては、まん延防止等重点措置や緊急事態措置を始めとしたまん延防止対策による心身への影響を考慮した対策、生活支援を要する者への支援等を行う。

【本政府行動計画に基づく感染症危機の対応力向上に向けて】

本政府行動計画に基づき、都道府県行動計画や指定公共機関における業務計画等についても改定が進められていく。これら関連する計画が全体として機能することが、新型インフルエンザ等対策を迅速かつ効果的に講じる上で非常に重要である。政府は、これら関連する計画の策定に関連して必要な支援を行うとともに、地方公共団体等を始めとした関係機関との訓練やフォローアップなどを通じて本政府行動計画等の実効性を高め、我が国全体としての感染症危機への対応力の向上に向けて一丸となって取り組むこととする。

8 感染症法第 53 条の 16 第1項に規定する医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第1項に規定する医薬品)、医療機器(同条第4項に規定する医療機器)、個人防護具(着用することによって病原体等に曝露(ばくろ)することを防止するための個人用の道具)、その他の物資並びにこれらの物資の生産に必要不可欠であると認められる物資及び資材。

目次

  • 第1部 新型インフルエンザ等対策特別措置法と政府行動計画 . – 16 –
    • 第1章 新型インフルエンザ等対策特別措置法の意義等 . – 16
      • 第1節 感染症危機を取り巻く状況 – 16
      • 第2節 新型インフルエンザ等対策特別措置法の制定 . – 17
      • 第3節 政府の感染症危機管理の体制 – 19
    • 第2章 政府行動計画の作成と感染症危機対応 . – 20
      • 第1節 政府行動計画の作成 . – 20
      • 第2節 新型コロナウイルス感染症対応での経験 . – 21
      • 第3節 政府行動計画改定の目的 . – 22
  • 第2部 新型インフルエンザ等対策の実施に関する基本的な方針 . – 23
    • 第1章 新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等 . – 23
      • 第1節 新型インフルエンザ等対策の目的及び基本的な戦略 . – 23
      • 第2節 新型インフルエンザ等対策の基本的な考え方 . – 24
      • 第3節 様々な感染症に幅広く対応できるシナリオ . – 27
        • (1) 有事のシナリオの考え方 . – 27
        • (2) 感染症危機における有事のシナリオ(時期ごとの対応の大きな流れ) . – 27
      • 第4節 新型インフルエンザ等対策実施上の留意事項 . – 30
        • (1) 平時の備えの整理や拡充 . – 30
        • (2) 感染拡大防止と社会経済活動のバランスを踏まえた対策の切替え . – 31
        • (3) 基本的人権の尊重 . – 32
        • (4) 危機管理としての特措法の性格 – 32
        • (5) 関係機関相互の連携協力の確保 – 33
        • (6) 感染症危機下の災害対応 . – 33
        • (7) 記録の作成や保存 . – 33
      • 第5節 対策推進のための役割分担 – 34
        • (1) 国の役割 – 34
        • (2) 地方公共団体の役割 – 34
        • (3) 医療機関の役割 . – 36
        • (4) 指定(地方)公共機関の役割 – 36
        • (5) 登録事業者 – 36
        • (6) 一般の事業者 . – 36
        • (7) 国民 . – 37
    • 第2章 新型インフルエンザ等対策の対策項目と横断的視点 – 38
      • 第1節 政府行動計画における対策項目等 . – 38
      • (1) 政府行動計画の主な対策項目 . – 38 –
      • (2) 対策項目ごとの基本理念と目標 – 38
      • (3) 複数の対策項目に共通する横断的な視点 – 44
    • 第3章 政府行動計画の実効性を確保するための取組等 . – 52
      • 第1節 国立健康危機管理研究機構(JIHS)の果たす役割 – 52
        • (1) 地方衛生研究所等や諸外国とのネットワークを活用した情報収集に基づく
        • リスク評価 – 52
        • (2) 科学的知見の迅速な提供、対策の助言と分かりやすい情報提供・共有 . – 52
        • (3) 研究開発及び臨床研究等のネットワークのハブの役割 . – 53
        • (4) 人材育成 – 53
        • (5) 国際連携 – 54
      • 第2節 政府行動計画等の実効性確保 – 55
        • (1) EBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング)の考え方に基づく政
        • 策の推進 – 55
        • (2) 新型インフルエンザ等への備えの機運(モメンタム)の維持 – 55
        • (3) 多様な主体の参画による実践的な訓練の実施 . – 55
        • (4) 定期的なフォローアップと必要な見直し – 55
        • (5) 都道府県行動計画及び市町村行動計画等 – 56
        • (6) 指定(地方)公共機関業務計画 – 56
    • 第3部 新型インフルエンザ等対策の各対策項目の考え方及び取組 . – 57
      • 第1章 実施体制 – 57
        • 第1節 準備期 – 57
        • 第2節 初動期 – 62
        • 第3節 対応期 – 65
      • 第2章 情報収集・分析 . – 72
        • 第1節 準備期 – 72
        • 第2節 初動期 – 75
        • 第3節 対応期 – 77
      • 第3章 サーベイランス . – 79
        • 第1節 準備期 – 79
        • 第2節 初動期 – 82
        • 第3節 対応期 – 84
      • 第4章 情報提供・共有、リスクコミュニケーション . – 86
        • 第1節 準備期 – 86
        • 第2節 初動期 – 89
        • 第3節 対応期 – 92
      • 第5章 水際対策 . – 96 –
        • 第1節 準備期 – 96
        • 第2節 初動期 – 98
        • 第3節 対応期 . – 104
      • 第6章 まん延防止. – 106
        • 第1節 準備期 . – 106
        • 第2節 初動期 . – 108
        • 第3節 対応期 . – 109
      • 第7章 ワクチン . – 116
        • 第1節 準備期 . – 116
        • 第2節 初動期 . – 126
        • 第3節 対応期 . – 131
      • 第8章 医療 . – 136
        • 第1節 準備期 . – 136
        • 第2節 初動期 . – 141
        • 第3節 対応期 . – 143
      • 第9章 治療薬・治療法 . – 150
        • 第1節 準備期 . – 150
        • 第2節 初動期 . – 155
        • 第3節 対応期 . – 159
      • 第 10章 検査 . – 164
        • 第1節 準備期 . – 164
        • 第2節 初動期 . – 169
        • 第3節 対応期 . – 172
      • 第 11章 保健 . – 175
        • 第1節 準備期 . – 175
        • 第2節 初動期 . – 181
        • 第3節 対応期 . – 184
      • 第 12章 物資 . – 192
        • 第1節 準備期 . – 192
        • 第2節 初動期 . – 195
        • 第3節 対応期 . – 197
      • 第13 章 国民生活及び国民経済の安定の確保 . – 200
        • 第1節 準備期 . – 200
        • 第2節 初動期 . – 203
        • 第3節 対応期 . – 205
    • 用語集 . – 212 –

新型インフルエンザ等対策特別措置法の意義等

第1部 新型インフルエンザ等対策特別措置法と政府行動計画

第1章 新型インフルエンザ等対策特別措置法の意義等

第1節 感染症危機を取り巻く状況

近年、地球規模での開発の進展により、開発途上国等における都市化や人口密度の増加、未知のウイルス等の宿主となっている動物との接触機会の拡大が進んでおり、未知の感染症との接点が増大している。さらに、グローバル化により各国との往来が飛躍的に拡大しており、こうした未知の感染症が発生した場合には、時を置かずして世界中に拡散するおそれも大きくなっている。

これまでも重症急性呼吸器症候群(SARS)やジカウイルス感染症等の感染拡大が発生し、さらには 2020 年以降新型コロナが世界的な大流行(パンデミック)を引き起こすなど、新興感染症等は国際的な脅威となっている。引き続き世界が新興感染症等の発生のおそれに直面していることや、感染症危機が広がりやすい状況に置かれていることを改めて認識する必要がある。

しかし、こうした新興感染症等の発生時期を正確に予知することは困難であり、また、発生そのものを阻止することは不可能である。このため、平時から感染症危機に備え、より万全な体制を整えることが重要である。

また、パンデミックを引き起こす病原体として人獣共通感染症であるものも想定される。パンデミックを予防するためにも、「ワンヘルス」の考え方により、ヒトの病気等に着目するだけでなく、ヒト、動物及び環境の分野横断的な取組が求められる。ワンヘルス・アプローチ9の推進により、人獣共通感染症に対応することも重要な観点である。

このほか、既知の感染症であっても、特定の種類の抗微生物薬が効きにくくなる又は効かなくなる薬剤耐性(AMR)を獲得することにより、将来的な感染拡大によるリスクが増大するものもある。こうした AMR 対策の推進など、日頃からの着実な取組により、将来的な感染拡大によるリスクを軽減していく観点も重要である。

9 人間及び動物の健康並びに環境に関する分野横断的な課題に対し、関係者が連携してその解決に向けて取り組むこと。

新型インフルエンザ等対策特別措置法の意義等

第2節 新型インフルエンザ等対策特別措置法の制定

新型インフルエンザは、毎年流行を繰り返してきたインフルエンザウイルスとウイルスの抗原性が大きく異なる新型のウイルスが出現することにより、およそ 10 年から 40 年の周期で発生している。ほとんどの人が新型のウイルスに対する免疫を獲得していないため、パンデミックとなり、大きな健康被害とこれに伴う社会的影響をもたらすことが懸念されている。

また、コロナウイルスのような既知の病原体であっても、ウイルスの変異等によりほとんどの人が免疫を獲得していない新型のウイルスが出現すれば、パンデミックになることが懸念される。

さらに、未知の感染症である新感染症についても、その感染性10の高さから社会的影響が大きいものが発生する可能性がある。

これらの感染症が発生した場合には、国家の危機管理として対応する必要がある。

特措法は、病原性11が高い新型インフルエンザ等感染症、同様に危険性のあ る指定感染症及び新感染症が発生した場合に、国民の生命及び健康を保護し、国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることを目的に、国、地方公共団体、指定公共機関、事業者等の責務、新型インフルエンザ等の発生 時における措置、まん延防止等重点措置及び緊急事態措置等の特別の措置を定 めたものであり、感染症法等と相まって、国全体としての万全の態勢を整備し、新型インフルエンザ等対策の強化を図るものである。

特措法の対象となる新型インフルエンザ等12は、国民の大部分が現在その免疫を獲得していないこと等から、全国的かつ急速にまん延し、かつ、病状の程度が重篤となるおそれがあり、また、国民生活及び国民経済に重大な影響を及ぼすおそれがあるものであり、具体的には、

① 新型インフルエンザ等感染症13

② 指定感染症14(当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、全国的かつ急速なまん延のおそれがあるもの)

10 「感染性」は、学術的には「病原体が対象に感染する能力とその程度」のことを指す用語であるが、本文書においては、分かりやすさの観点から、「病原体が対象に感染する能力とその程度及び感染者から次の対象へ感染が伝播する能力とその程度」のことを指す言葉として用いている。学術的には、「感染者から次の対象へ感染が伝播する能力とその程度」を指す用語として「伝播性」が使用される
11 「病原性」は、学術的には「病原体が病気を引き起こす性質」のことを指す用語であるが、本文書においては、分かりやすさの観点から、「病原体が病気を引き起こす性質および病原体による病気の重篤度」を指す言葉として用いている。学術的に「病気を引き起こす性質」と「病気の重篤度」を区別する必要がある場合は、「病気の重篤度」を指す用語として「毒力」が使用される
12 特措法第2条第1号
13 感染症法第6条第7項
14 感染症法第6条第8項

新型インフルエンザ等対策特別措置法の意義等

③ 新感染症15(全国的かつ急速なまん延のおそれがあるもの) である(特措法第2条)。

15 感染症法第6条第9項

新型インフルエンザ等対策特別措置法の意義等

第3節 政府の感染症危機管理の体制

次の感染症危機に対応する政府の司令塔機能を強化するため、内閣法(昭和22 年法律第5号)を改正し、2023 年9月に内閣官房に統括庁を設置した。統括庁は、感染症対応に係る関係省庁に対する総合調整を平時から有事まで一貫して統括する組織である。

あわせて、感染症対応能力を強化するため、同月に厚生労働省に感染症対策部を設置した。

さらに、国立健康危機管理研究機構法(令和5年法律第 46 号)に基づき、統括庁や厚生労働省に質の高い科学的知見を提供する新たな専門家組織とし て、国立感染症研究所と国立研究開発法人国立国際医療研究センターを統合し、感染症等の情報分析・研究・危機対応、人材育成、国際協力、医療提供等を一 体的・包括的に行う組織として、2025 年4月に JIHS を設置することとしている。

政府の感染症危機管理の体制として、統括庁を司令塔組織とし、厚生労働省を始めとする関係省庁との一体的な対応を確保し、JIHS から感染症危機管理に係る科学的知見の提供を受ける体制を整備する。

また、国は政府行動計画や基本的対処方針の作成又は変更に当たっては、あらかじめ新型インフルエンザ等対策推進会議16(以下「推進会議」という。)の意見を聴かなければならない17。

16 特措法第 70 条の2の2に規定する新型インフルエンザ等対策推進会議をいう
17 特措法第6条第5項、第 18 条4項、第 70 条の3第1項

政府行動計画の作成と感染症危機対応

第2章 政府行動計画の作成と感染症危機対応

第1節 政府行動計画の作成

特措法が制定される以前からも、我が国では、新型インフルエンザに係る対策に取り組んでいた。2005 年には、「世界保健機関(WHO)世界インフルエンザ事前対策計画18」に準じて、「新型インフルエンザ対策行動計画」を作成して以来、数次の部分的な改定を行った。

2009 年の新型インフルエンザ(A/H1N1)対応の経験を経て、病原性の高い新型インフルエンザが発生し、まん延する場合に備えるため、2011 年に新型インフルエンザ対策行動計画を改定した。あわせて、新型インフルエンザ(A/H1N1) 対応の教訓等19を踏まえつつ、対策の実効性をより高めるための法制の検討を 重ね、2012 年4月に、特措法が制定された。

2013 年には、特措法第6条第1項の規定に基づき、「新型インフルエンザ等対策有識者会議中間とりまとめ」(2013 年2月7日)を踏まえ、政府行動計画を作成した。

政府行動計画は、新型インフルエンザ等対策の実施に関する基本的な方針や国が実施する措置等を示すとともに、都道府県が都道府県行動計画を、指定公共機関が業務計画を作成する際の基準となるべき事項等を定めており、特定の感染症や過去の事例のみを前提とするのではなく、新型インフルエンザや新型コロナ以外の新たな呼吸器感染症等が流行する可能性を想定しつつ、発生した新型インフルエンザ等の特性を踏まえ、様々な状況で対応できるよう、対策の選択肢を示すものである。

なお、新型インフルエンザ等に関する最新の科学的な知見、新型インフルエンザ等対策の経験や訓練等を通じた改善等を踏まえて、国は、定期的な検討を行い、適時適切に政府行動計画の変更を行うものとする。

18 “WHO Global Influenza Preparedness Plan” 2005 年WHO ガイダンス文書
19 新型インフルエンザ(A/H1N1)対策の検証結果は、2010 年 6 月、厚生労働省新型インフルエンザ

(A/H1N1)対策総括会議報告書として取りまとめられた。

政府行動計画の作成と感染症危機対応

第2節 新型コロナウイルス感染症対応での経験

2019 年 12 月末、中国武漢市で原因不明の肺炎が集団発生し、2020 年1月には我が国でも新型コロナの感染者が確認された。

その後、同月には閣議決定による政府対策本部(新型コロナウイルス感染症対策本部)が設置され、同年2月には新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の立ち上げや「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」の決定等が行われた。同年3月には特措法が改正され、新型コロナを特措法の適用対象とし、特措法に基づく政府対策本部の設置、基本的対処方針の策定が行われるなど、特措法に基づき政府を挙げて取り組む体制が整えられた。

その後、特措法に基づく新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の発出、医療提供体制の強化、予備費による緊急対応策や補正予算による対策、まん延防止等重点措置の創設等の特措法改正、変異株への対応、ワクチン接種の実施、行動制限の緩和など、ウイルスの特性や状況の変化に応じて、国家の危機管理として新型コロナ対応が行われた。

そして、国内感染者の確認から3年余り経過した 2023 年5月8日、新型コロナを感染症法上の5類感染症に位置付けることとし、同日に政府対策本部及び基本的対処方針が廃止された。

今般、3年超にわたって特措法に基づき新型コロナ対応が行われたが、この経験を通じて強く認識されたことは、感染症危機が、社会のあらゆる場面に影響し、国民の生命及び健康への大きな脅威であるだけでなく、経済や社会生活を始めとする国民生活の安定にも大きな脅威となるものであったことである。

感染症危機の影響を受ける範囲についても、新型コロナ対応では、全ての国 民が、様々な立場や場面で当事者として感染症危機と向き合うこととなった。この間の経験は、感染症によって引き起こされるパンデミックに対し、国家の危機管理として社会全体で対応する必要があることを改めて浮き彫りにした。そして、感染症危機は、決して新型コロナ対応で終わったわけではなく、次なる感染症危機は将来必ず到来するものである。

政府行動計画の作成と感染症危機対応

第3節 政府行動計画改定の目的

政府行動計画の改定は、実際の感染症危機対応で把握された課題を踏まえ、次の感染症危機でより万全な対応を行うことを目指して対策の充実等を図るために行うものである。

2023 年9月から推進会議において新型コロナ対応を振り返り、課題を整理した20ところ、

(1) 平時の備えの不足
(2) 変化する状況への柔軟かつ機動的な対応
(3) 情報発信

が主な課題として挙げられた。

こうした新型コロナ対応の経験やその課題を踏まえ、次なる感染症危機対応を行うに当たっては、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを踏まえた、感染症危機に強くてしなやかに対応できる社会を目指すことが必要である。

こうした社会を目指すためには、

① 感染症危機に対応できる平時からの体制作り

② 国民生活及び社会経済活動への影響の軽減

③ 基本的人権の尊重

の3つの目標を実現する必要がある。

これらの目標を実現できるよう、政府行動計画を全面改定するものである。

20 新型インフルエンザ等対策推進会議において、2023 年 12 月に「新型インフルエンザ等対策政府行動計画の改定に向けた意見」として取りまとめられた

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

第2部  新型インフルエンザ等対策の実施に関する基本的な方針

第1章 新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

第1節 新型インフルエンザ等対策の目的及び基本的な戦略

新型インフルエンザ等の発生時期を正確に予知することは困難であり、また、その発生そのものを阻止することは不可能である。また、世界中のどこかで新 型インフルエンザ等が発生すれば、我が国への侵入も避けられないと考えられ る。病原性が高くまん延のおそれのある新型インフルエンザ等が発生すれば、国民の生命や健康、経済全体にも大きな影響を与えかねない。新型インフルエ ンザ等については、長期的には、国民の多くがり患するおそれがあるものであ るが、患者の発生が一定の期間に偏ってしまった場合は、医療提供体制のキャ パシティを超えてしまうということを念頭に置きつつ、新型インフルエンザ等 対策を国家の危機管理に関わる重要な課題と位置付け、次の2点を主たる目的 として対策を講じていく必要がある21。

(1) 感染拡大を可能な限り抑制し、国民の生命及び健康を保護する。

・ 感染拡大を抑えて、流行のピークを遅らせ、医療提供体制の整備やワクチン製造等のための時間を確保する。

・ 流行のピーク時の患者数等をなるべく少なくして医療提供体制への負荷を軽減するとともに、医療提供体制の強化を図ることで、患者数等が医療提供体制のキャパシティを超えないようにすることにより、治療が必要な患者が適切な医療を受けられるようにする。

・ 適切な医療の提供により、重症者数や死亡者数を減らす。

(2) 国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにする。

・ 感染拡大防止と社会経済活動のバランスを踏まえた対策の切替えを円滑に行うことにより、国民生活及び社会経済活動への影響を軽減する。

・ 国民生活及び国民経済の安定を確保する。

・ 地域での感染対策等により、欠勤者等の数を減らす。

・ 事業継続計画の作成や実施等により、医療の提供の業務又は国民生活及び国民経済の安定に寄与する業務の維持に努める。

21 特措法第1条

新型インフルエンザ等対策の目的及び

実施に関する基本的な考え方等

第2節 新型インフルエンザ等対策の基本的な考え方

新型インフルエンザ等対策は、発生の段階や状況の変化に応じて柔軟に対応していく必要があることを念頭に置かなければならない。過去の新型インフルエンザや新型コロナのパンデミックの経験等を踏まえると、特定の事例に偏重して準備を行うことは、大きなリスクを背負うことになりかねない。政府行動計画は、特定の感染症や過去の事例のみを前提とするのではなく、新型インフルエンザや新型コロナ以外の新たな呼吸器感染症等が流行する可能性を想定しつつ、発生した新型インフルエンザ等の特性を踏まえ、様々な状況で対応できるよう、対策の選択肢を示すものである。

我が国においては、科学的知見及び各国の対策も踏まえ、我が国の地理的な条件、大都市への人口集中、少子高齢化、交通機関の発達度等の社会状況、医療提供体制、受診行動の特徴等の国民性も考慮しつつ、各種対策を総合的かつ効果的に組み合わせてバランスのとれた戦略を目指すこととする。その上で、新型インフルエンザ等の発生前から流行が終息するまでの状況に応じて、次の点を柱とする一連の流れを持った戦略を確立する。(具体的な対策については、第3部の新型インフルエンザ等対策の各対策項目の考え方及び取組において記載する。)

なお、実際に新型インフルエンザ等が発生した際には、病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、流行の状況、地域の特性、その他の状況を踏まえ、人権への配慮や、対策の有効性、実行可能性及び対策そのものが国民生活及び国民経済に与える影響等を総合的に勘案し、本政府行動計画等で記載するものの中から、実施すべき対策を選択し決定する。

• 発生前の段階(準備期)では、水際対策の実施体制の構築、地域における医療提供体制の整備や抗インフルエンザウイルス薬等の備蓄、ワクチンや治療薬等の研究開発と供給体制の整備、国民に対する啓発や政府・企業による事業継続計画等の策定、DX の推進や人材育成、実践的な訓練の実施による対応体制の定期的な点検及び改善等、新型インフルエンザ等の発生に備えた事前の準備を周到に行っておくことが重要である。

• 国内で発生した場合を含め世界で新型インフルエンザ等に位置付けられる可能性がある感染症が発生した段階(初動期)では、直ちに初動対応の体制に切り替える。

新型インフルエンザ等に位置付けられる可能性がある感染症が海外で発生した場合は、病原体の国内への侵入を完全に防ぐことは困難であるということを前提として対策を策定することが必要である。海外で発生している段階で、国内の万全の体制を構築するためには、我が国が島国である特性をいかし、検疫措置の強化等により、病原体の国内侵入や感染拡大のスピードをできる限り遅らせることが重要である。

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

• 国内の発生当初の封じ込めを念頭に対応する時期(対応期)では、患者の入院措置や抗インフルエンザウイルス薬等による治療、感染リスクのある者の外出自粛やその者に対する抗インフルエンザウイルス薬の予防投与の検討、病原性に応じては、不要不急の外出の自粛要請や施設の使用制限等を行い、感染拡大のスピードをできる限り抑えることを目的とした各般の対策を講ずる。

• なお、国内外の発生当初等の病原性や感染性等に関する情報が限られている場合には、過去の知見等も踏まえ、病原性や感染性等が高い場合のリスクを想定し、強力な対策を実施するが、常に新しい情報を収集・分析し、対策の必要性を評価し、更なる情報が得られ次第、適切な対策へと切り替えることとする。また、状況の進展に応じて、必要性の低下した対策についてはその縮小や中止を図るなど見直しを行うこととする。

• 国内で感染が拡大し、病原体の性状等に応じて対応する時期(対応期)では、国、地方公共団体、事業者等は相互に連携して、医療提供体制の確保や国民生活及び国民経済の維持のために最大限の努力を行う必要があるが、社会の緊張が高まり、変化する状況に対策が必ずしも適合しなくなることも含め様々な事態が生じることが想定される。したがって、あらかじめ想定したとおりにいかないことが考えられ、社会の状況を把握し、状況に応じて臨機応変に対処していくことが求められる。

• 地域の実情等に応じて、都道府県や関係省庁が政府対策本部と協議の上、柔軟に対策を講じることができるようにし、医療機関を含めた現場が動きやすくなるような配慮や工夫を行う。

• その後、ワクチンや治療薬等により対応力が高まる時期(対応期)では、科学的知見の集積、検査や医療提供体制の整備、ワクチンや治療薬の普及等の状況の変化等に合わせて、適切なタイミングで、柔軟かつ機動的に対策を切り替える。

• 最終的には、流行が終息し、特措法によらない基本的な感染症対策に移行する時期を迎える。

国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある新型インフルエンザ等への対策は、不要不急の外出の自粛要請、施設の使用制限等の要請、各事業者における業務縮小等による接触機会の抑制など医療対応以外の感染対策と、ワクチンや治療薬等を含めた医療対応を組み合わせて総合的に行うことが必要である。

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

特に、医療対応以外の感染対策については、社会全体で取り組むことにより効果が期待されるものであり、全ての事業者が自発的に職場における感染予防に取り組むことはもちろん、感染拡大を防止する観点から、継続する重要業務を絞り込むなどの対策を実施することについて積極的に検討することが重要である。

事業者の従業員のり患等により、一定期間、事業者のサービス提供水準が相当程度低下する可能性があることについて周知し、国民の理解を得るための呼び掛けを行うことも必要である。

また、新型インフルエンザ等のまん延による医療提供体制の限界や社会的混乱を回避するためには、国、都道府県、市町村(特別区を含む。以下同じ。) 及び指定(地方)公共機関による対策だけでは限界があり、事業者や国民一人一人が、感染予防や感染拡大防止のための適切な行動や備蓄等の準備を行うことが必要である。新型インフルエンザ等対策は、日頃からの手洗いなど、季節性インフルエンザ等呼吸器感染症に対する対策が基本となる。特に、ワクチンや治療薬が無い可能性が高い新興感染症が発生した場合は、公衆衛生対策がより重要である。

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

第3節 様々な感染症に幅広く対応できるシナリオ

(1) 有事のシナリオの考え方

過去に流行した新型インフルエンザや新型コロナ以外の呼吸器感染症も念頭に、中長期的に複数の感染の波が生じることも想定し、幅広く対応できるシナリオとするため、以下の①から④までの考え方を踏まえて、有事のシナリオを想定する。

① 特定の感染症や過去の事例のみを前提とするのではなく、新型インフルエンザや新型コロナ以外の新たな呼吸器感染症等が流行する可能性を想定しつつ、病原体の性状に応じた対策等についても考慮する。

② 病原体について限られた知見しか明らかになっていない発生初期には、感染拡大防止を徹底し、早期の終息を目標とする。

③ 科学的知見の集積による病原体の性状の把握、検査や医療提供体制の整備、ワクチンや治療薬の普及等の状況の変化や社会経済等の状況に合わせて、適 切なタイミングで、柔軟かつ機動的に対策を切り替えることを基本とする。

④ 病原体の変異による病原性や感染性の変化及びこれらに伴う感染拡大の繰り返しや対策の長期化の場合も織り込んだ想定とする。

また、シナリオの想定に当たっては、病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)のリスク評価の大括りの分類を設け、それぞれのケースにおける対応の典型的な考え方を示す22。その上で、柔軟な対応が可能となるよう、対策の切替えについては第3部の新型インフルエンザ等対策の各対策項目の考え方及び取組の部分で具体的な対策内容の記載を行う。

新型インフルエンザ等対策の各対策項目については、予防や準備等事前準備の部分(準備期)と、発生後の対応のための部分(初動期及び対応期)に大きく分けた構成とする。

(2) 感染症危機における有事のシナリオ(時期ごとの対応の大きな流れ) 具体的には、前述の(1)の有事のシナリオの考え方も踏まえ、感染症の特性、感染症危機の長期化、状況の変化等に応じて幅広く対応するため、初動期及び対応期を、対策の柔軟かつ機動的な切替えに資するよう以下のように区分し、有事のシナリオを想定する。時期ごとの対応の特徴も踏まえ、感染症危機対応を行う。
22 リスク評価の大括りの分類とそれぞれのケースにおける対応について、例としてまん延防止であれば、第3部第6章第3節を参照

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

◦ 初動期(A)

感染症の急速なまん延及びその可能性のある事態を探知して以降、政府対 策本部が設置されて基本的対処方針が定められ、これが実行されるまでの間、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)を明らかに しつつ、感染拡大のスピードをできる限り抑えて、感染拡大に対する準備を 行う時間を確保するため、新型インフルエンザ等の特徴や事態の推移に応じ て迅速かつ柔軟に対応する。

対応期については、以下の B から D までの時期に区分する。

  • 封じ込めを念頭に対応する時期(B)
  • 病原体の性状等に応じて対応する時期(C-1)
  • ワクチンや治療薬等により対応力が高まる時期(C-2)
  • 特措法によらない基本的な感染症対策に移行する時期(D)

◦ 対応期:封じ込めを念頭に対応する時期(B)

政府対策本部の設置後、国内での新型インフルエンザ等の発生の初期段階では、病原体の性状について限られた知見しか得られていない中で、諸外国における感染動向等も考慮しつつ、まずは封じ込めを念頭に対応する(この段階で新型インフルエンザであることが判明した場合は、抗インフルエンザウイルス薬やプレパンデミックワクチン等の対応を開始し、検査・診療により感染拡大防止を図ることができる可能性があることに留意)。

その後の感染拡大が進んだ時期については、対策の切替えの観点から、以下のように区分する。

◦ 対応期:病原体の性状等に応じて対応する時期(C-1)

感染の封じ込めが困難な場合は、知見の集積により明らかになる病原体の性状等を踏まえたリスク評価に基づき、感染拡大のスピードや潜伏期間等を考慮しつつ確保された医療提供体制で対応できるレベルに感染拡大の波(スピードやピーク等)を抑制するべく、感染拡大防止措置等を講じることを検討する。

◦ 対応期:ワクチンや治療薬等により対応力が高まる時期(C-2)

ワクチンや治療薬の普及等により、新型インフルエンザ等への対応力が高まることを踏まえて、科学的知見に基づき対策を柔軟かつ機動的に切り替える(ただし、病原体の変異により対策を強化させる必要が生じる可能性も考慮)。

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

◦ 対応期:特措法によらない基本的な感染症対策に移行する時期(D)

最終的に、ワクチンの普及等による集団の免疫の向上、病原体の変異及び新型インフルエンザ等への対応力が一定水準を上回ることにより特措法によらない基本的な感染症対策(出口)に移行する。

この初動期から対応期までの時期ごとの感染症危機対応の大きな流れに基づき、第3部の新型インフルエンザ等対策の各対策項目の考え方及び取組の部分において、それぞれの時期に必要となる対策の選択肢を定める。

特に、対応期の「病原体の性状等に応じて対応する時期」(C-1)においては、病原性や感染性等の観点からリスク評価の大まかな分類を行った上で、それぞれの分類に応じ各対策項目の具体的な内容を定める。また、病原性や感染性等の観点からのリスク評価の大まかな分類に応じた対策を定めるに当たっては、複数の感染の波への対応や対策の長期化、病原性や感染性の変化の可能性を考慮して定める。

また、対応期の「ワクチンや治療薬等により対応力が高まる時期」(C-2)については、ワクチンや治療薬の有無や開発の状況等によっては、こうした時期が到来せずに、対応期の「特措法によらない基本的な感染症対策に移行する時期」(D)を迎えることも想定される。

さらに、感染や重症化しやすいグループが特にこども23や若者、高齢者の場合に必要な措置等については、社会や医療提供体制等に与える影響が異なることから、準備や介入の在り方も変化することに留意しつつ対策を定める。

23 本政府行動計画では、「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針~こどもまんなか社会を目指すこども家庭庁の創設~」(2021 年(令和3年)12 月 21 日閣議決定)に倣い、法令上の用語等を除き、「こども」という表記を使用する

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

第4節 新型インフルエンザ等対策実施上の留意事項

国、都道府県、市町村又は指定(地方)公共機関は、新型インフルエンザ等の発生時やその準備段階に、特措法その他の法令、本政府行動計画及びそれぞれの行動計画又は業務計画に基づき、相互に連携協力し、新型インフルエンザ等対策の的確かつ迅速な実施に万全を期す。この場合において、次の点に留意する。

(1) 平時の備えの整理や拡充

感染症危機への対応には平時からの体制作りが重要である。このため、以下の(ア)から(オ)までの取組により、平時の備えの充実を進め、訓練により迅速な初動体制を確立することを可能とするとともに、情報収集・共有、分析の基盤となる DX の推進等を行う。

(ア) 新型インフルエンザ等発生時に行うべき対策の共有とその準備の整理将来に必ず起こり得る新型インフルエンザ等の発生時に行うべき対策を関係者間で共有しながら、その実施のために必要となる準備を行う。

(イ) 初発の感染事例の探知能力の向上と迅速な初動の体制整備

初動対応については、未知の感染症が発生した場合や新型インフルエンザ等が国内で発生した場合も含め様々なシナリオを想定し、初発の探知能力を向上させるとともに、初発の感染事例を探知した後速やかに政府として初動対応に動き出せるように体制整備を進める。

(ウ) 関係者や国民への普及啓発と訓練等を通じた不断の点検や改善

感染症危機は必ず起こり得るものであるとの認識を広く感染症対策に携わる関係者や国民に持ってもらうとともに、次の感染症危機への備えをより万全なものとするために、多様なシナリオや実施主体による訓練の実施等を通じて、平時の備えについて不断の点検や改善を行う。

(エ) 医療提供体制、検査体制、ワクチンや診断薬及び治療薬などの研究開発体制、リスクコミュニケーションなどの備え

感染症法や医療法等の制度改正による医療提供体制等の平時からの備えの充実を始め、有事の際の速やかな対応が可能となるよう、検査体制の整備、ワクチンや診断薬及び治療薬等の研究開発体制、リスクコミュニケーション等について平時からの取組を進める。

(オ) 負担軽減や情報の有効活用、国と地方公共団体の連携等のための DX の推進や人材育成等

保健所等の負担軽減、医療関連情報の有効活用、国と地方公共団体の連携の円滑化等を図るための DX の推進のほか、人材育成、国と地方公共団体の連携、研究開発への支援、国際的な連携等複数の対策項目に共通する横断的な視点を念頭に取組を進める。

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

(2) 感染拡大防止と社会経済活動のバランスを踏まえた対策の切替え

対策に当たっては、バランスを踏まえた対策と適切な情報提供・共有により 国民生活及び社会経済活動への影響を軽減させるとともに、身体的、精神的及 び社会的に健康であることを確保することが重要である。このため、以下の(ア) から(オ)までの取組により、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを踏ま えた対策の切替えを円滑に行い、国民の生命及び健康の保護と国民生活及び社 会経済活動に及ぼす影響が最小となるよう対策を講じる。

(ア) 可能な限り科学的根拠に基づいた対策の切替え

対策の切替えに当たっては、病原体の性状、発生状況も含めたリスク評価を考慮する。可能な限り科学的な根拠に基づき対応するため、平時からこうしたデータの収集の仕組みや適時適切なリスク評価の仕組みを構築する。

(イ) 医療提供体制と国民生活及び社会経済への影響を踏まえた感染拡大防止措置

有事には予防計画及び医療計画に基づき医療提供体制の速やかな拡充を図りつつ、医療提供体制で対応できるレベルに感染拡大のスピードやピークを抑制することが重要である。リスク評価に基づき、このレベルを超える可能性がある場合等には、適時適切に感染拡大防止措置等を講じる。その際、影響を受ける国民や事業者を含め、国民生活や社会経済等に与える影響にも十分留意する。

(ウ) 状況の変化に基づく柔軟かつ機動的な対策の切替え

科学的知見の集積による病原体の性状の把握、検査や医療提供体制の整備、ワクチンや治療薬の普及等の状況の変化や社会経済等の状況に合わせて、適切なタイミングで、柔軟かつ機動的に対策を切り替えることを基本として対応する。あわせて、対策の切替えの判断の指標や考慮要素について可能な範囲で具体的に事前に定める。

(エ) 対策項目ごとの時期区分

柔軟な対応が可能となるよう、対策の切替え時期については、リスク評価等に応じて、個別の対策項目ごとに具体的な対策内容を記載し、必要に応じて個々の対策の切替えのタイミングの目安等を示す。

(オ) 国民の理解や協力を得るための情報提供・共有

対策に当たっては、国民の理解や協力が最も重要である。このため、平

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

時から感染症や感染対策の基本的な知識を、学校教育の現場を始め様々な場面を活用して普及し、こどもを含め様々な年代の国民の理解を深めるための分かりやすい情報提供・共有が必要である。こうした取組により、可能な限り科学的根拠に基づいた情報提供・共有により、適切な判断や行動を促せるようにする。特に、まん延防止等重点措置や緊急事態措置等強い行動制限を伴う対策を講じる場合には、対策の影響を受ける国民や事業者の状況も踏まえ、対策の内容とその科学的根拠を分かりやすく発信し、説明する。

(3) 基本的人権の尊重

国、都道府県及び市町村は、新型インフルエンザ等対策の実施に当たっては、基本的人権を尊重することとし、特措法による要請や行動制限等の実施に当たって、国民の自由と権利に制限を加える場合は、その制限は当該新型インフルエンザ等対策を実施するため必要最小限のものとする24。

具体的には、新型インフルエンザ等対策の実施に当たって、法令の根拠があることを前提として、リスクコミュニケーションの観点からも、国民に対して十分説明し、理解を得ることを基本とする。

ひぼうまた、感染者やその家族、医療関係者に対する誹謗中傷等の新型インフルエンザ等についての偏見・差別は、これらの方々への人権侵害であり、あってはならないものである。これらの偏見・差別は、患者の受診行動を妨げ、感染拡大の抑制を遅らせる原因となる可能性がある。また、新型インフルエンザ等に対応する医療従事者等の人員の士気の維持の観点等からも、防止すべき課題である。

さらに、新型インフルエンザ等対策の実施に当たっては、より影響を受けがちである社会的弱者への配慮に留意する。感染症危機に当たっても国民の安心を確保し、新型インフルエンザ等による社会の分断が生じないよう取り組む。

(4) 危機管理としての特措法の性格

特措法は、感染症有事における危機管理のための制度であって、緊急事態に備えて様々な措置を講じることができるよう制度設計されている。しかし、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症や新感染症が発生したとしても、病原性の程度や、ワクチンや治療薬等の対策が有効であること等により、まん延防止等重点措置や緊急事態措置を講ずる必要がないこともあり得ると考えられ、どのような場合にもこれらの措置を講じるものではないことに留意する。

24 特措法第5条

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

(5) 関係機関相互の連携協力の確保

政府対策本部、都道府県対策本部25、市町村対策本部26は、相互に緊密な連携を図りつつ、新型インフルエンザ等対策を総合的に推進する。

都道府県対策本部長から政府対策本部長に対して、又は市町村対策本部長から都道府県対策本部長に対して、新型インフルエンザ等対策に関する総合調整を行うよう要請があった場合には、政府対策本部長又は都道府県対策本部長はその要請の趣旨を尊重し、必要がある場合には速やかに所要の総合調整を行う27。

(6) 感染症危機下の災害対応

国は、感染症危機下の災害対応についても想定し、平時から防災備蓄や医療 提供体制の強化等を進め、市町村を中心に避難所施設の確保等を進めることや、都道府県及び市町村において、自宅療養者等の避難のための情報共有等の連携 体制を整えること等を進める。感染症危機下で地震等の災害が発生した場合に は、国は、都道府県及び市町村と連携し、発生地域における状況を適切に把握 するとともに、都道府県及び市町村は、必要に応じ、避難所における感染症対 策の強化や、自宅療養者等への情報共有、避難の支援等を速やかに行う。

(7) 記録の作成や保存

国、都道府県及び市町村は、新型インフルエンザ等が発生した段階で、政府対策本部、都道府県対策本部及び市町村対策本部における新型インフルエンザ等対策の実施に係る記録を作成し、保存し、公表する。

25 特措法第 23 条
26 特措法第 34 条
27 特措法第 24 条第4項及び第 36 条第2項

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

第5節 対策推進のための役割分担

(1) 国の役割

国は、新型インフルエンザ等が発生したときは、自ら新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施し、地方公共団体及び指定(地方)公共機関が実施する新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に支援することにより、国全体として万全の態勢を整備する責務を有する28。また、国は WHO 等の国際機関や諸外国との国際的な連携を確保し、対策に取り組む。

また、国は、新型インフルエンザ等及びこれに係るワクチンその他の医薬品の調査や研究の推進に努める29とともに、新型インフルエンザ等に関する調査及び研究に係る国際協力の推進に努める30。国は、こうした取組等を通じ、新型インフルエンザ等の発生時におけるワクチン、診断薬、治療薬等の早期の開発や確保に向けた対策を推進する。

新型インフルエンザ等の発生前は、国は政府行動計画に基づき、準備期に位置付けられた新型インフルエンザ等対策を着実に実施するとともに、定期的な訓練等により新型インフルエンザ等対策の点検及び改善に努める。

また、国は、「新型インフルエンザ等対策閣僚会議」及び閣僚会議を補佐する「新型インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議」(以下「関係省庁対策会議」という。)の枠組みを通じ、政府一体となった取組を総合的に推進する。指定行政機関は、政府行動計画等を踏まえ、相互に連携を図りつつ、新型イ ンフルエンザ等が発生した場合の所管行政分野における発生段階に応じた具体的な対応をあらかじめ決定しておく。

国は、新型インフルエンザ等の発生時には、政府対策本部の下で基本的対処方針を決定し、対策を強力に推進する。

その際、国は、推進会議等の意見を聴きつつ、対策を進める。また、国民等や事業者等の理解や協力を得て対策を行うため、感染症や感染対策に関する基本的な情報の提供・共有を行う。

(2) 地方公共団体の役割

地方公共団体は、新型インフルエンザ等が発生したときは、基本的対処方針に基づき、自らの区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施し、区域において関係機関が実施する新型インフルエンザ等対策を総合的に推進する責務を有する31。

28 特措法第3条第1項
29 特措法第3条第2項
30 特措法第3条第3項
31 特措法第3条第4項

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

【都道府県】

都道府県は、特措法及び感染症法に基づく措置の実施主体としての中心的な役割を担っており、基本的対処方針に基づき、地域における医療提供体制の確保やまん延防止に関し的確な判断と対応が求められる。

このため、平時において医療機関との間に病床確保、発熱外来、自宅療養者等への医療の提供、後方支援又は医療人材派遣に関する協定を締結し、医療提供体制を整備することや、民間検査機関又は医療機関と平時に検査等措置協定を締結し、検査体制を構築するなど、医療提供体制、保健所、検査及び宿泊療養等の対応能力について、計画的に準備を行う。これにより、感染症有事の際には、迅速に体制を移行し、感染症対策を実行する。

こうした取組においては、都道府県は、保健所を設置する市及び特別区(以下「保健所設置市等」という。)、感染症指定医療機関32等で構成される都道府県連携協議会等を通じ、予防計画や医療計画等について協議を行うことが重要である。また、予防計画に基づく取組状況を毎年国に報告し、進捗確認を行う。これらにより、平時から関係者が一体となって、医療提供体制の整備や新型インフルエンザ等のまん延を防止していくための取組を実施し、PDCA サイクルに基づき改善を図る。

【市町村】

市町村は、住民に最も近い行政単位であり、住民に対するワクチンの接種や、住民の生活支援、新型インフルエンザ等発生時の要援護者への支援に関し、基本的対処方針に基づき、的確に対策を実施することが求められる。対策の実施に当たっては、都道府県や近隣の市町村と緊密な連携を図る。

なお、保健所設置市等については、感染症法においては、まん延防止に関し、都道府県に準じた役割を果たすことが求められていることから、保健所や検査等の対応能力について計画的に準備を行うとともに、予防計画に基づく取組状況を毎年国に報告し、進捗確認を行う。また、感染症有事の際には、迅速に体制を移行し、感染症対策を実行する。

都道府県と保健所設置市等(以下「都道府県等」という。)は、まん延防止等に関する協議を行い、新型インフルエンザ等の発生前から連携を図っておく33。

32 感染症法第6条 12 項に規定する感染症指定医療機関のうち、政府行動計画上では「特定感染症指定医療機関」、「第一種感染症指定医療機関」及び「第二種感染症指定医療機関」に限るものとする
33 平時においては、以下のような方策を講じることが必要である

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

(3) 医療機関の役割

新型インフルエンザ等による健康被害を最小限にとどめる観点から、医療機関は、新型インフルエンザ等の発生前から、地域における医療提供体制の確保のため、都道府県と医療措置協定を締結し、院内感染対策の研修、訓練や個人防護具を始めとした必要となる感染症対策物資等の確保等を推進することが求められる。また、新型インフルエンザ等患者の診療体制を含めた、業務継続計画の策定及び都道府県連携協議会等を活用した地域の関係機関との連携を進めることが重要である。

新型インフルエンザ等の発生時には、感染症医療及び通常医療の提供体制を確保するため、医療機関は、医療措置協定に基づき、都道府県からの要請に応じて、病床確保、発熱外来、自宅療養者等への医療の提供、後方支援又は医療人材の派遣を行う。

(4) 指定(地方)公共機関の役割

指定(地方)公共機関は、新型インフルエンザ等が発生したときは、特措法に基づき34、新型インフルエンザ等対策を実施する責務を有する。

(5) 登録事業者

特措法第 28 条に規定する特定接種の対象となる医療の提供の業務又は国民生活及び国民経済の安定に寄与する業務を行う事業者については、新型インフルエンザ等の発生時においても最低限の国民生活を維持する観点から、それぞれの社会的使命を果たすことができるよう、新型インフルエンザ等の発生前から、職場における感染対策の実施や重要業務の事業継続などの準備を積極的に行うことが重要である。

新型インフルエンザ等の発生時には、その活動を継続するよう努める35。

(6) 一般の事業者

事業者については、新型インフルエンザ等の発生時に備えて、職場における

  • 都道府県行動計画を作成する際に、他の地方公共団体と関係がある事項を定めるときは、他の地方公共団体の意見を聴く(特措法第7条第3項)など、特措法に定められる連携方策を確実に実施すること。

また、都道府県行動計画案の作成の際、あらかじめ学識経験者の意見を聴く(特措法第7条第8項) ための場を設けるに当たって、市町村の代表者の参加など、特措法上の連携方策以外にも都道府県と県内の保健所設置市等が連携して対策を講じるための方策もある。

  • 県内の保健所設置市等も含めた他の地方公共団体と共同での訓練の実施に努めること(特措法第 12 条第1項)。

34 特措法第3条第5項
35 特措法第4条第3項

新型インフルエンザ等対策の目的及び実施に関する基本的な考え方等

感染対策を行うことが求められる。

国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれのある新型インフルエンザ等の発生時には、感染防止の観点から、一部の事業を縮小することが必要な場合も想定される。特に多数の者が集まる事業を行う者については、感染防止のための措置の徹底が求められる36ため、平時からマスクや消毒薬等の衛生用品等の備蓄を行うように努めるなど、対策を行う必要がある。

(7) 国民

新型インフルエンザ等の発生前から、新型インフルエンザ等に関する情報や発生時にとるべき行動等その対策に関する知識を得るとともに、基本的感染対策(換気、マスク着用等の咳エチケット、手洗い、人混みを避ける等)等の個人レベルでの感染対策を実践するよう努める。また、新型インフルエンザ等の発生時に備えて、個人レベルにおいてもマスクや消毒薬等の衛生用品、食料品や生活必需品等の備蓄を行うよう努める。

新型インフルエンザ等の発生時には、発生の状況や予防接種など実施されている対策等についての情報を得て、感染拡大を抑えるための個人レベルでの対策を実施するよう努める37。

36 特措法第4条第1項及び第2項
37 特措法第4条第1項

第2章 新型インフルエンザ等対策の対策項目と横断的視点

第1節 政府行動計画における対策項目等

(1) 政府行動計画の主な対策項目

本政府行動計画は、新型インフルエンザ等対策の2つの主たる目的である

「感染拡大を可能な限り抑制し、国民の生命及び健康を保護する」こと及び「国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにする」ことを達成するための戦略を実現する具体的な対策を定めるものである。

それぞれの対策の切替えのタイミングを示し、地方公共団体や関係機関等においても分かりやすく、取り組みやすいようにするため、以下の 13 項目を政府行動計画の主な対策項目とする。

① 実施体制

② 情報収集・分析

③ サーベイランス

④ 情報提供・共有、リスクコミュニケーション

⑤ 水際対策

⑥ まん延防止

⑦ ワクチン

⑧ 医療

⑨ 治療薬・治療法

⑩ 検査

⑪ 保健

⑫ 物資

⑬ 国民生活及び国民経済の安定の確保

(2) 対策項目ごとの基本理念と目標

本政府行動計画の主な対策項目である 13 項目は、新型インフルエンザ等対策の主たる目的の実現に当たって、それぞれの項目が関連し合っていることから、一連の対策として実施される必要がある。そのため、以下に示すそれぞれの項目の基本理念と目標を把握し、対策の全体像や相互の連携を意識しながら対策を行うことが重要である。

① 実施体制

感染症危機は国民の生命及び健康、国民生活や国民経済に広く大きな被害を及ぼすことから、国家の危機管理の問題として取り組む必要がある。国、地方公共団体、JIHS、研究機関、医療機関等の多様な主体が相互に連携を図るとともに、国は、外国政府及び国際機関とも協調しながら、実効的な対策を講じていくことが重要である。

そのため、新型インフルエンザ等の発生前から、関係機関間において緊密な連携を維持しつつ、人材の確保・育成や実践的な訓練等を通じて対応能力を高めておく必要がある。新型インフルエンザ等の発生時に、平時における準備を基に、迅速な情報収集・分析及びとリスク評価を行い、的確な政策判断と実行につなげていくことで、感染拡大を可能な限り抑制し、国民の生命及び健康を保護し、国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにする。

② 情報収集・分析

感染拡大防止を目的としつつ、状況に応じて国民生活及び国民経済との両立を見据えた政策上の意思決定に資するよう、体系的かつ包括的に情報収集・分析及びリスク評価を行うことが重要である。

そのため、新型インフルエンザ等の発生前から、効率的な情報の収集・分析や提供の体制を整備するとともに、定期的な情報収集・分析や有事に備えた情報の整理・把握手段の確保を行う。新型インフルエンザ等の発生時には、感染症、医療の状況等の情報収集・分析及びリスク評価を実施するとともに、国民生活及び国民経済に関する情報等を収集し、リスク評価を踏まえた判断に際し考慮することで感染症対策と社会経済活動の両立を見据えた対策の判断につなげられるようにする。

③ サーベイランス

感染症危機管理上の判断に資するよう、新型インフルエンザ等の早期探知、発生動向の把握及びリスク評価を迅速かつ適切に行うことが重要である。

そのため、新型インフルエンザ等の発生前からサーベイランス体制の構築やシステムの整備を行うとともに、感染症の発生動向の把握等、平時のサーベイランスを実施する。新型インフルエンザ等の発生時には、有事の感染症サーベイランスの実施及びリスク評価を実施し、感染症対策の強化又は緩和の判断につなげられるようにする。

④ 情報提供・共有、リスクコミュニケーション

さくそう

感染症危機下においては、様々な情報が錯綜しやすく、不安とともに、偏見・差別等が発生したり、いわゆるフェイクニュースや真偽不明の誤った情報等(以下「偽・誤情報」という。)が流布したりするおそれがある。こうした中で、各種対策を効果的に行うためには、迅速に正しい情報を提供するとともに、可能な限り双方向のコミュニケーションを行い、国民等、地方公共団体、医療機関、事業者等とのリスク情報とその見方の共有等を通じ、国民等が適切に判断・行動できるようにすることが重要である。

このため、平時から、国は国民等の新型インフルエンザ等に対する意識を把握し、感染症危機に対する理解を深めるとともに、想定される事態に備え、リスクコミュニケーションの在り方を体系的に整理し、体制整備や取組を進める必要がある。

⑤ 水際対策

海外で新型インフルエンザ等が発生した場合は、病原体の国内侵入を完全に防ぐことは困難であることを前提としつつ、新型インフルエンザ等の特徴や海外における感染拡大の状況等を踏まえ、迅速に検疫措置の強化や入国制限等の水際対策を実施することにより、国内への新型インフルエンザ等の病原体の侵入をできる限り遅らせ、国内の医療提供体制等の確保等の感染症危機管理への対策に対応する準備のための時間を確保する。また、帰国を希望する在外邦人の円滑な帰国を実現する。

検疫措置の強化や入国制限等の水際対策の決定に当たっては、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等) 、その他の状況を踏まえ、患者等の人権への配慮や、対策の有効性、実行可能性及び対策そのものが国民生活及び社会経済活動に与える影響を総合的に勘案し、その内容を検討し、実施する。

なお、新型インフルエンザ等の発生当初等の病原性や感染性等に関する情報が限られている場合には、過去の知見等も踏まえ、病原性や感染性等が高い場合のリスクを想定し、強力な水際対策を実施する必要があるが、常に新しい情報を収集し、対策の必要性を評価し、更なる情報が得られ次第、適切な対策へと切り替える。また、状況の進展に応じて、必要性の低下した水際対策について、実施方法の変更、縮小や中止等の見直しを行うことが重要である。

⑥ まん延防止

新型インフルエンザ等の拡大を可能な限り抑制し、健康被害を最小限にとどめるとともに、国民生活及び社会経済活動への影響を最小化することを目的とする。適切な医療の提供等と併せて、必要に応じてまん延防止対策を講じることで、感染拡大のスピードやピークを抑制し、治療を要する患者数を医療提供体制が対応可能な範囲内に収めることにつなげることが重要である。特に、有効な治療薬がない場合や、予防接種が実施されるまでの間は、公衆衛生学的観点から実施するまん延防止対策は重要な施策である。このため、病原体の性状等を踏まえたリスク評価を適時適切に行い、強化された医療提供体制においても医療がひっ迫する水準の大規模な感染拡大が生じるおそれのある場合には、特措法に基づき、必要と考えられる地域・期間等において、迅速にまん延防止等重点措置の実施や緊急事態措置を行う。

一方で、特措法第5条において、国民の自由と権利に制限を加える場合、その制限は新型インフルエンザ等対策を実施するため必要最小限のものとするとされていることや、まん延防止対策が社会経済活動に大きな影響を与える面があることを踏まえ、対策の効果と影響とを総合的に勘案し、新型インフルエンザ等の病原性や感染性等に関する情報やワクチン及び治療薬の開発や普及等の状況の変化に応じて、実施しているまん延防止対策の縮小や中止等の見直しを機動的に行うことが重要である。

⑦ ワクチン

ワクチンの接種により、個人の感染や発症、重症化を防ぐことで、国民の健康を守るとともに、受診患者数を減少させ、入院患者数や重症者数を抑え、医療提供体制が対応可能な範囲内に収めることは、新型インフルエンザ等による健康被害や社会経済活動への影響を最小限にとどめることにつながる。そのため、新型インフルエンザ等の発生時に安全で有効なワクチンを迅速に供給するために、「ワクチン開発・生産体制強化戦略」に基づき、平時から、緊急時におけるワクチンの迅速な開発・供給を可能にするために必要な施策に取り組んでいくことが重要である。また、国、都道府県及び市町村は、医療機関や事業者、関係団体等とともに平時から接種の具体的な体制や実施方法について準備をしておく必要がある。

新型インフルエンザ等の発生時には、我が国における開発・生産はもとより、外国からの輸入、外国で開発された製品の国内生産等の全ての手段を通じて、安全で有効なワクチンの迅速な供給を行うとともに、接種に当たっても、事前の計画を踏まえつつ、新型インフルエンザ等に関する新たな知見を踏まえた柔軟な運用を行う。

⑧ 医療

新型インフルエンザ等が発生した場合は、全国的かつ急速にまん延し、かつ国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあることから、医療の提供は、健康被害を最小限にとどめ、国民が安心して生活を送るという目的を達成する上で、不可欠な要素である。また、健康被害を最小限にとどめることは、社会経済活動への影響を最小限にとどめることにもつながる。

感染症危機において、感染症医療及びその他の通常医療の双方のひっ迫を

防ぎ、医療の提供を滞りなく継続するために、平時から、予防計画及び医療計画に基づき、有事に関係機関が連携して感染症医療を提供できる体制を整備し、研修・訓練等を通じてこれを強化する。有事には、通常医療との両立を念頭に置きつつ、感染症医療の提供体制を確保し、病原性や感染性等に応じて変化する状況に機動的かつ柔軟に対応することで、国民の生命及び健康を守る。

⑨ 治療薬・治療法

新型インフルエンザ等が発生した場合は、全国的かつ急速にまん延し、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあることから、健康被害や社会経済活動への影響を最小限にとどめる上で、医療の提供が不可欠な要素であり、治療薬・治療法が重要な役割を担っている。

新型インフルエンザ等の発生時に治療薬・治療法を早期に実用化し、患者へ提供可能とすることが重要であり、平時から、大学等の研究機関や製薬企業等の研究開発力向上のための施策を講じ、人材の育成・確保や技術の維持向上を図るとともに、治療薬の開発が必要な感染症(重点感染症)に対する情報収集や分析を行い、未知の感染症も念頭においた研究開発を推進する。新型インフルエンザ等の発生時に、平時に整備した研究開発体制を活用し、速やかに治療薬の実用化に向けた取組を実施する。

また、新型インフルエンザ等の発生時に治療薬の安定的な供給を確保し、迅速に必要な患者に投与できるよう、平時から製造能力の強化等を図るとともに、医療機関や薬局へ円滑に流通させる体制を整理し、新型インフルエンザ等の発生時に速やかに体制が構築できるよう必要な準備・訓練等を行う。

⑩ 検査

新型インフルエンザ等発生時における検査の目的は、患者の早期発見によ るまん延防止、患者を診断し早期に治療につなげること及び流行の実態を把 握することである。また、検査の適切な実施は、まん延防止対策の適切な検 討及び実施や、柔軟かつ機動的な対策の切替えのためにも重要である。さら に、検査が必要な者が必要なときに迅速に検査を受けることができることは、新型インフルエンザ等による個人及び社会への影響を最小限にとどめるこ とや、まん延防止と社会経済活動の両立にも寄与しうる。

このため、新型インフルエンザ等の発生時に必要な検査が円滑に実施される必要があり、平時から検査機器の維持及び検査物資の確保や人材の確保を含めた準備を着実に進めること及び新型インフルエンザ等の発生当初から研究開発や検査拡充等の体制を迅速に整備することが重要である。また、状況の変化に合せて、病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)や検査の特性等を踏まえ、リスク評価に基づき検査実施の方針を適時にかつ柔軟に変更し、検査体制を見直していくことが重要である。

⑪ 保健

新型インフルエンザ等の発生状況は地域によって異なり、都道府県等は、地域の感染状況や医療提供体制の状況等に応じた対策を実施し、住民の生命及び健康を守る必要がある。その際、住民への情報提供・共有、リスクコミュニケーションを適切に行い、地域の理解や協力を得ることが重要である。

また、都道府県は、市町村の区域を越えたまん延の防止に向け、新型インフルエンザ等の発生時における総合調整権限や指示権限の行使を想定しつつ、平時から都道府県連携協議会等の活用等を通じて主体的に対策を講じる必要がある。

都道府県等が効果的な新型インフルエンザ等対策を実施するため、保健所及び地方衛生研究所等は、検査の実施及びその結果分析並びに積極的疫学調査による接触者の探索や感染源の推定を通じ、患者の発生動向の把握から都道府県等に対する情報提供・共有まで重要な役割を担う。

保健所及び地方衛生研究所等は、新型インフルエンザ等の感染が拡大した場合は、多数の新型インフルエンザ等患者が発生し、積極的疫学調査、健康観察、検査結果の分析等の業務負荷の急増が想定される。このため、都道府県等は、平時から情報収集体制や人員体制の構築、新型インフルエンザ等発生時に優先的に取り組むべき業務の整理、ICT の活用等を通じた業務効率化・省力化を行う必要があり、これらの取組に資するよう国が必要な支援を行うことにより、全国一体となって地域における新型インフルエンザ等対策を推進する。

⑫ 物 資

新型インフルエンザ等が発生した場合は、全国的かつ急速にまん延するおそれがあり、感染症対策物資等の急激な利用の増加が見込まれる。感染症対策物資等の不足により、検疫、医療、検査等の円滑な実施が滞り、国民の生命及び健康への影響が生じることを防ぐことが重要である。このため、感染症対策物資等が医療機関を始めとする関係機関で十分に確保されるよう、平時から備蓄等の推進や円滑な供給に向けた対策等を講じることが重要である。

平時から医療機関等における感染症対策物資等の備蓄等を推進するとともに、感染症対策物資等の需給状況の把握及び新型インフルエンザ等発生時における生産要請等のために必要な体制を整備する。

新型インフルエンザ等発生時に、感染症対策物資等の需給状況の把握を行い、不足が懸念される場合等には、必要に応じて感染症対策物資等の供給量の増加を図るための生産要請等を行い、医療機関等で必要な感染症対策物資等が確保されるよう取り組む。

さらに、これらの取組を実施してもなお個人防護具が不足する場合は、国 は医療機関等に対し必要な個人防護具の配布を行う等、更なる対策を講ずる。

⑬ 国民生活及び国民経済の安定の確保

新型インフルエンザ等発生時には、国民の生命及び健康に被害が及ぶとともに、国民生活及び社会経済活動に大きな影響が及ぶ可能性がある。このため、国及び地方公共団体は新型インフルエンザ等発生時に備え、事業者や国民等に必要な準備を行うことを勧奨する。また、指定(地方)公共機関は、業務計画の策定等の必要な準備を行う。

新型インフルエンザ等発生時には、国及び地方公共団体は、国民生活及び社会経済活動の安定の確保に必要な対策や支援を行う。また、事業者や国民等は、平時の準備を基に、自ら事業継続や感染防止に努める。

(3) 複数の対策項目に共通する横断的な視点

新型インフルエンザ等対策の実効性を向上させるため、以下のⅠからⅤまでの視点は、複数の対策項目に共通して考慮すべき事項である。それぞれ考慮すべき内容は以下のとおりである。

Ⅰ. 人材育成

Ⅱ. 国と地方公共団体との連携

Ⅲ. DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進Ⅳ. 研究開発への支援

Ⅴ. 国際的な連携

Ⅰ. 人材育成

感染症危機管理の対応能力を向上させるためには、平時から、中長期的な視野に立って感染症危機管理に係る人材育成を継続的に行うことが不可欠である。

その際には、専門性の特に高い人材の育成を進めるとともに、多くの人が感染症危機管理に携わる可能性があることも踏まえて、より幅広い人材を対象とした訓練や研修等を通じ人材育成を行い、感染症危機対応を行う人材の裾野を広げる取組を行うことが重要である。

また、将来の感染症危機において地域の対策のリーダーシップをとることができる人材を確保することも重要である。

特に、感染症対策に関して専門的な知見を有し、情報収集や対応策の検討を担い、さらには感染症研究や感染症対策の現場においても活躍できる人材を育成し、確保することは極めて重要である。

こうした人材の育成については、JIHS が厚生労働省の委託を受けて実施している「実地疫学専門家養成コース(FETP)」等が重要な役割を果たしている。新型コロナ対応を踏まえてコースの内容の充実等を図りながら、地方公共団体からのより幅広い参加を募っていくことが期待される。

また、厚生労働省の「感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム38」等感染症に関する臨床及び疫学的知識、公衆衛生対応能力、国際調整能力等、総合的な知識や能力を持った感染症危機管理の専門家を継続的に育成することも重要である。

こうした人材の育成や確保を図る観点からも、感染症危機管理に知見を有する専門人材の平時における配置の在り方等キャリア形成の支援についても検討が必要である。

都道府県等においても、「実地疫学専門家養成コース(FETP)」等の取組やこうしたコースの修了者等も活用しつつ、感染症対策を始め公衆衛生や疫学の専門家などの養成を地域で進め、キャリア形成を支援するほか、地方公共団体における感染症対策の中核となる保健所等の人材の確保及び育成やキャリア形成の支援を行うことが重要である。

このほか、リスクコミュニケーションを含め、感染症対応業務に関する研修及び訓練の実施、地方衛生研究所等の感染症対策への平時からの関与を強めることや、新型インフルエンザ等の発生時における全庁での対応体制の構築のための研修や訓練等の取組、日頃からの感染症対応部門と危機管理部門との連携や連動等が求められる。

加えて、災害発生時や感染症まん延時に派遣される災害・感染症医療業務従事者(DMAT、DPAT 先遣隊及び災害支援ナース)について、医療法における位置付けが設けられたことも踏まえて、新型インフルエンザ等の発生時における医療提供体制の強化の一環として、人員の確保等に継続的に取り組む必要がある。

また、あわせて、新型インフルエンザ等の発生時等に地域の保健師等の専

38 「IDES」とは、Infectious Disease Emergency Specialist の略称であり、国内外の感染症危機管理に対応できる人材を養成するためのプログラム。国内外の感染症の知識、行政能力(マネジメント) 及び国際的な対応能力の習得を図る

門職が保健所等の業務を支援する仕組みである「IHEAT39」について地域保健法(昭和 22 年法律第 101 号)における位置付けが設けられたことを踏まえて、支援を行う IHEAT 要員40の確保や育成等にも継続的に取り組む必要がある。

新型コロナ対応の経験を有する者の知見を、他の職員にも共有する機会を設け、できる限り幅広い体制で新型インフルエンザ等に対応できるように備えることも重要である。災害対応等における全庁体制など、近接領域でのノウハウや知見の活用も行いながら、必要な研修及び訓練や人材育成を進めることにも取り組むべきである。

また、地域の医療機関等においても、地方公共団体や関係団体等による訓練や研修等により、感染症を専門とする医師や看護師等の医療職、病原体分析や治療薬、ワクチン等の研究開発に従事する研究者及び臨床研究を推進できる人材の育成等、新型インフルエンザ等への対応能力を向上させ、幅広い対応体制を構築するための人材育成を平時から進めることが期待される。

Ⅱ. 国と地方公共団体との連携

新型インフルエンザ等の対応に当たって、地方公共団体の役割は極めて重要である。国と地方公共団体との適切な役割分担の下、国が基本的な方針を定め、それを基に、都道府県は感染症法や特措法等に基づく措置の実施主体として中心的な役割を担い、感染拡大防止や医療提供体制の確保を始めとした多岐にわたる対策の実施を地域の実情に応じて行う。また、市町村は住民に最も近い行政単位として予防接種や住民の生活支援等の役割が期待されている。

新型インフルエンザ等への備えをより万全なものとするためには、国と地方公共団体の連携体制を平時から整えておくことが不可欠である。さらに、新型インフルエンザ等への対応では地方公共団体の境界を越えた人の移動や感染の広がり等があることから、新型インフルエンザ等の発生時は都道府県間の連携、都道府県と市町村との連携、保健所間の連携も重要であり、こうした地方公共団体間の広域的な連携についても平時から積極的に取り組み、準備を行うことが重要である。

特に規模の小さい市町村では単独で対応が難しい人材育成等の平時の備えについては、平時からの地方公共団体間の広域的な連携による取組、都道府県や国による支援等を行うことが求められる。

39 「IHEAT」とは、Infectious disease Health Emergency Assistance Team の略称であり、感染症法に基づき新型インフルエンザ等感染症等に係る発生等の公表が行われた場合その他の健康危機が発生した場合において外部の専門職を有効に活用することを目的とし、健康危機発生時に地域における保健師等の専門職が保健所等の業務を支援する仕組み
40 地域保健法第 21 条に規定する業務支援員を言う。以下同じ

新型インフルエンザ等の発生の初期段階からの迅速な対応を可能にするためには、新型インフルエンザ等に関するデータや情報の円滑な収集や共有・分析等が感染症危機の際に可能となることが求められる。このため、平時から国と都道府県等の連携体制やネットワークの構築に努める。

また、地方公共団体が新型インフルエンザ等の発生時に住民、事業者、関係機関等に対して適切な情報提供・共有を行うため、国から地方公共団体に対しできる限り分かりやすい形で情報提供・共有を行う。次の感染症危機に備えて、国から地方公共団体への情報提供・共有等について事務負担の軽減や分かりやすさの向上等の観点から、方法等の工夫を検討する。

新型インフルエンザ等対策に当たっては、平時から国と地方公共団体の意見交換を進め、新型インフルエンザ等の発生時における新型インフルエンザ等対策の立案及び実施に当たって、対策の現場を担う地方公共団体との対話を行い、地方公共団体の意見を適切に反映させることが重要である。また、国と地方公共団体が共同して訓練等を行い、連携体制を不断に確認及び改善していくことが重要である。

Ⅲ. DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進

① DX の推進

近年取組が進みつつある DX は、迅速な新型インフルエンザ等の発生状況等の把握、関係者間でのリアルタイムな情報共有を可能とし、業務負担の軽減や関係者の連携強化が期待できるほか、研究開発への利用等データの利活用の促進により新型インフルエンザ等への対応能力の向上に大きな可能性を持っている。

例えば、新型コロナ対応においては、急激な感染拡大に伴い、感染症法に基づく発生届の届出数が増え、保健所職員の入力業務等の負担が著しく増加した。このため、2020 年から「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」により、医療機関から発生届のオンライン提出ができるよう整備した。また、患者本人による自身の健康状態のオンライン報告も可能としたことで、保健所職員等の健康観察業務等の負担が軽減された。このほか、医療機関等情報支援システム(G-MIS)による全国の医療機関における病床の使用状況、感染症対策物資等の確保状況等の一元的な把握や、検疫現場でのシステムによる入国者情報の取得や入国後の健康監視等の対応を行う等、業務の効率化とともに、情報収集の迅速性の確保に努めた。

新型コロナ対応を踏まえ、新型インフルエンザ等の感染症危機管理の対

応能力を向上させていくことを目指し、感染症危機対応に備えた DX を推進していくことが不可欠である。

DX 推進の取組として、接種対象者の特定や接種記録の管理等予防接種事務のデジタル化及び標準化による全国ネットワークの構築、電子カルテ情報の標準化等を進めていくとともに、国と地方公共団体、各地方公共団体間、行政機関と医療機関との間の情報収集・共有、分析の基盤を整備していくことが重要である。また、国及び JIHS は、ワクチンや治療薬等の研究開発の基盤構築のための臨床情報の収集に当たっては、個人情報やプライバシーの保護に留意しつつも、電子カルテから情報を抽出する体制を構築する等、治療薬の研究開発や治療法の確立に資する整備を行っていく。これらのほか、医療機関における発生届に係る入力業務の負担軽減等を図るため、電子カルテと発生届の連携に向けて検討を進める。

さらに、DX 推進に必要となる、人材の育成、データ管理の在り方の検討を進めるとともに、収集された情報の利活用の促進に向けた課題の整理や検討を進める。

② その他の新技術

新型コロナ対応においては、ワクチンにおける技術革新や、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた感染経路などのシミュレーション、携帯電話データ等を用いた人流データの分析、スマートフォンの近接通信機能(Bluetooth)を利用した陽性者との接触を通知するアプリケーションの開発等、これまで感染症対策に十分用いられていなかった新たな技術を用いた取組が試みられた。これらのほか、従前よりポリオウイルスで活用していた下水サーベイランスについても、新型コロナ対策への活用が試みられた。近年、新たな技術を用いた医薬品開発や生成 AI 等技術革新がなされている。新型インフルエンザ等対策においては、新型コロナ対応での取組も含め、新技術の社会実装も念頭に対応を検討することが極めて重要である。

Ⅳ. 研究開発への支援

新型コロナ対応での技術革新や新技術の社会実装の代表的なものとしては、ワクチンにおける技術革新が挙げられる。今般の新型コロナ対策で用いられたワクチンには、従来からの技術である不活化ワクチンだけでなく、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンやウイルスベクターワクチン、組換えタンパクワクチン等多様な新規モダリティを用いたワクチンの開発が迅速に進められ、使用された。さらに、治験の実施方法や承認プロセスの工夫により世界中で極めて短い期間でワクチンが実用化された。これにより、ワクチン開発に成功した国々や速やかにワクチンを導入することができた国や地域では大規模な接種が進められ、重症化予防等の効果により、対策に当たって大きな役割を果たした。

このように、新型インフルエンザ等の発生時に、初期の段階から研究開発や臨床研究等を進めることで、有効性及び安全性の確保されたワクチン、診断薬及び治療薬等の早期の開発につなげることは、新型インフルエンザ等への対応能力を高める観点から極めて重要である。

平時から技術開発を進め、正確かつ短時間に検査可能な診断薬、感染拡大 後の検査需要拡大に対応できる検査機器及び検査試薬、迅速検査キット等に よる検査能力の強化や、治療薬・治療法の早期の普及によって、多くの地域 の医療機関での対応が可能となる。感染拡大防止や医療提供体制の強化には、治療薬や診断薬の早期の実用化に向けた研究開発が重要な役割を担ってい る。

また、ワクチンの普及による重症化予防等の効果も新型インフルエンザ等への対策上重要であり、早期のワクチンの実用化に向けても研究開発が重要な役割を担っている。

さらに、ワクチン、診断薬及び治療薬等の普及により、検査体制や医療提供体制の充実、免疫の獲得等が進むことで、国民の生命及び健康の保護がより一層図られることとなる。その結果、こうした状況の変化に合わせた適切なタイミングで、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを踏まえた対策の切替えを行うことができる。

このように、新型インフルエンザ等対策において、研究開発の推進は、対策全体に大きな影響を与える重要なものである。一方で、新型インフルエンザ等の発生時の迅速な研究開発には平時からの取組が不可欠である。平時には、こうした感染症危機対応医薬品41については需要が見込めない場合があり、市場の予見可能性が乏しく、製薬関連企業が開発投資を行い、実用化に至るまでには多くの課題がある。ワクチン、診断薬及び治療薬等の研究開発について平時からの促進と新型インフルエンザ等発生時における迅速な対応が可能となるよう、市場の予見可能性を高め、製薬関連企業が開発に乗り出しやすくするため長期かつ継続的な研究支援体制の構築及び研究開発や治験に係る専門人材の育成を含め、支援策について整理する。

「ワクチン開発・生産体制強化戦略」に基づき重点的な取組が進められているワクチンだけでなく、診断薬や治療薬についても、新型インフルエンザ等対策に重要な役割を担っていることから、研究開発の一層の推進が必要である。

41 感染症危機管理において、救命、流行の抑制、社会活動の維持等、危機への医療的な対抗手段となる重要性の高い医薬品や医療機器等を指す

こうした研究開発には、早期の段階で収集された疫学情報や臨床情報等が活用されることも重要である。このためにも、JIHS を中心として、臨床研究を行う医療機関、関連する学会、大学等の研究機関、製薬関連企業など様々な関係者との連携を推進することや、さらには海外の研究機関等との国際的な連携が重要であることに留意して取り組む。

Ⅴ. 国際的な連携

① 新型インフルエンザ等への対応での国際的な連携の重要性

新型インフルエンザ等の情報収集や対応に当たっては、国際的な連携の重要性がますます増していることに留意が必要である。

WHO などの国際機関における感染症危機対応の国際的な枠組みの動向にも目配りが必要である。

特に、感染症対策では、各国が積極的に貢献し、国際社会の一員としての役割を果たすことが、国境を越えて拡大する感染症に立ち向かう国際社会の利益となるのみならず、自国における感染症への対応を有利にするものである。我が国が先進諸国と連携を図り、また、開発途上国への国際協力等を通じて国際社会へ貢献するための施策を講じていくことが重要である。

また、研究開発の観点からも国際的な連携は欠かせないものである。国際社会においては、新型インフルエンザ等の発生後速やかにワクチン、診断薬及び治療薬等を迅速に開発するための国際連携の取組が行われている。国際的な連携を行いながら迅速な研究開発を可能とし、こうした国際連携による取組が円滑に進められるよう、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第 145 号。以下「薬機法」という。)を始めとする関連法令等に基づく手続の簡素化や迅速化等の余地がないかを検討することも求められる。

② 国際的な連携の取組

新型インフルエンザ等は、国境を越えてグローバルに広がるものであり、対応に当たっては国際的な連携が不可欠である。

新型インフルエンザ等の発生に備えるためには、平素から、WHO を始めとする国際機関との連携や諸外国の研究機関等との連携により、新興感染症等の発生動向の把握に努めるとともに、初発事例の探知能力の向上を図ることが重要である。

新型インフルエンザ等の発生時には、特に発生初期の国際的な連携による情報収集が重要な役割を担っている。我が国からも国際的な情報発信に適切に取り組むことが必要である。機動的な水際対策の実施と状況に応じた対策の緩和を講じるためにも、発生した新型インフルエンザ等のリスク評価や諸外国の動向の把握等が重要となる。

ワクチン、診断薬及び治療薬の研究開発についても、諸外国の研究機関等との国際的な連携が重要である。

新型インフルエンザ等への対応では、開発途上国の支援等の国際協力への貢献も我が国として役割を果たすべき重要な観点であり、国際機関等による国際的な取組にも参画していくことが求められる。

こうした国際的な連携を強化するためにも、感染症対策を含む国際保健人材の養成や確保についても、中長期的な取組に努める。

政府行動計画の実効性を確保するための取組等

第3章 政府行動計画の実効性を確保するための取組等 第1節 国立健康危機管理研究機構(JIHS)の果たす役割次の感染症危機への備えをより万全にしていく中で、重要な役割を担うのが、JIHS である。JIHS は科学的知見を統括庁及び厚生労働省に報告することが法律上も規定42されているが、新型インフルエンザ等対策において JIHS には以下の役割が期待される。

(1) 地方衛生研究所等や諸外国とのネットワークを活用した情報収集に基づくリスク評価

新型インフルエンザ等対策の基礎となるのは、当該新型インフルエンザ等の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)等を把握し、それに基づくリスク評価を行うことである。

新興感染症等は未知の部分も多く、必ずしも十分な科学的知見が発生当初から得られるとは限らず、一定の不確実性を伴うものである。対策を進める中で徐々にその性状等が明らかになってくる等暫定的な仮説を検証しながら対策を講じていかざるを得ない、「作動中の科学」としての側面を有していることに留意する必要がある。

その上で、新型インフルエンザ等対策の基礎となるリスク評価を的確に行うことが重要である。そのためには、平時から情報収集・分析やリスク評価を行うための体制を構築し運用することが不可欠である。

こうした体制の構築のため、感染症インテリジェンスにおけるハブとしての役割を担う JIHS を中心に、サーベイランスや情報収集・分析の体制の強化、諸外国の研究機関等や医療機関、大学等に加え、地方衛生研究所等の地方公共団体との協働や連携により、感染症情報のネットワークを更に密なものとし、初発事例の探知能力の向上やリスク評価能力の向上に努めることが期待される。

(2) 科学的知見の迅速な提供、対策の助言と分かりやすい情報提供・共有 科学的知見の迅速な提供や科学的根拠に基づいた対策の助言の場面でも、JIHS には、重要な役割が期待される。

特に新型インフルエンザ等の発生初期には、事例の集積を通じ、病原体の性状や感染経路等を分析し、リスク評価に基づき、新型インフルエンザ等対策の内容の検討、症例定義や効果的な検査方法等につなげることは重要な役割である。新型インフルエンザ等対策を進めていく中で状況の変化も含めてリスク評価を継続的に行い、対策の切替えにつなげていくために、政府に対し必要な助言を行うことも重要な役割である。

42 国立健康危機管理研究機構法第 23 条第5号

政府行動計画の実効性を確保するための取組等

こうした役割として、いわゆる「First Few Hundred Studies(FF100)」のように、新型インフルエンザ等の発生時の最初期に症例定義に合致した数百症例程度から平時から実施しているサーベイランスでは得られない知見を迅速に収集するための臨床及び疫学調査を実施し、得られた対策に必要な知見を国や都道府県等の関係機関及び国民等に還元することが期待される。このような調査や分析等を行う体制の整備も重要である。また、感染やワクチン接種による免疫獲得状況のモニタリングを実施することも必要である。

また、新型インフルエンザ等の患者の治療を率先して行った経験、他の感染症指定医療機関等の治療経験や調査研究から知見を得て、新型インフルエンザ等の診療指針や検査方法の指針等を作成し、これらの知見の提供により、各地域における医療提供体制の構築等を支援することも重要な役割である。

さらに、国民の理解の促進や不安の軽減に資するよう、収集した情報や病原体のリスク評価、治療法等、新型インフルエンザ等の対策等について、分かりやすく情報提供・共有を行っていくことも期待される。

このほか、感染経路等のシミュレーションや人流データの分析等新たな技術革新や既存技術の新型インフルエンザ等対策への活用についても、研究を進めることが期待される。

(3) 研究開発及び臨床研究等のネットワークのハブの役割

JIHS は、初動期からの臨床研究や、海外の研究機関等とのネットワーク及び国内の研究機関や製薬企業とのネットワーク等も活用したワクチン、診断薬及び治療薬の速やかな研究開発を自ら行うとともに、国内における研究開発の支援を行うことが期待されており、「新興・再興感染症データバンク事業(REBIND)」の拡充等の推進や研究開発及び臨床研究等に係るネットワークのハブの役割を果たしていくことが必要となる。

このため、JIHS が研究開発及び臨床研究等のネットワークのハブ機能を発揮できるよう、新型インフルエンザ等対策に関わる分野で必要となる研究の方向性に関して JIHS から国への提案等ができる仕組みを設けること等も含め、必要な体制や予算の確保について検討する必要がある。

(4) 人材育成

新型インフルエンザ等への対応能力を向上させるためには、専門的な人材育成が重要であり、JIHS が行う人材育成の取組への期待は大きい。このため、JIHS は、感染症に対応する公衆衛生人材、医療人材、病原体分析や研究開発政府行動計画の実効性を確保するための取組等を推進できる人材等の専門人材の養成を大学等の関係機関と連携して推進する。また、JIHS が厚生労働省の委託を受けて現在行っている「実地疫学専門家養成コース(FETP)」を始め、地方公共団体等で疫学調査やリスク評価、公衆衛生対応の中核となる人材を育成する JIHS の機能の更なる充実強化が特に求められる。このほか、例えば、検査の精度管理や感染症に係るリスクコミュニケーション等、JIHS の有する専門的知見を活かした新型インフルエンザ等への対応能力向上への貢献や、新型インフルエンザ等発生時にリーダーとなる人材等を育成するための更なる貢献が強く期待される。

また、新型インフルエンザ等に係る医療や臨床研究を推進できる専門人材の養成も、JIHS の重要な役割として更なる充実強化が求められる。

(5) 国際連携

JIHS は、WHO 等の国際機関、米国 CDC 等の諸外国の公衆衛生機関等からの必要な情報の一元的な集約及び管理やその分析やリスク評価を行う体制を強化する。諸外国の大学や研究機関との連携や国際的な感染症情報ネットワークの構築により、新興感染症等の早期探知やリスク評価能力の向上や研究開発体制の強化を行うことが求められる。

政府行動計画の実効性を確保するための取組等

第2節 政府行動計画等の実効性確保

(1) EBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング)の考え方に基づく政策の推進

政府行動計画等の実効性を確保して、新型インフルエンザ等への対応をより万全なものとするためには、新型インフルエンザ等対策の各取組について、できる限り具体的かつ計画的なものとすることが重要である。

感染拡大防止と社会経済活動のバランスを踏まえた対策の切替えに当たっての対応時はもとより、平時から有事までを通じて、政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータを活用する EBPM の考え方に基づいて政策を実施する。その前提として、適切なデータの収集とその分析ができる体制が重要である。

(2) 新型インフルエンザ等への備えの機運(モメンタム)の維持

政府行動計画は新型インフルエンザ等への平時の備えをより万全なものにするための手段であり、政府行動計画が改定された後も、継続して備えの体制を維持及び向上させていくことが不可欠である。

新型インフルエンザ等は、いつ起こるか予想できず、いつ起きてもおかしくないものである。このため、自然災害等への備えと同様に、日頃からの備えと意識を高める取組を継続的に行うことが重要である。

地方公共団体や国民等が幅広く対応に関係した新型コロナの経験を踏まえ、新型インフルエンザ等への備えの充実につながるよう、訓練や研修、啓発活動等の取組を通じて、平時から新型インフルエンザ等への備えを充実させる機運(モメンタム)の維持を図る。

(3) 多様な主体の参画による実践的な訓練の実施

「訓練でできないことは、実際もできない」というのは災害に限らず、新型インフルエンザ等への対応にも当てはまる。訓練の実施により、平時の備えについて不断の点検や改善につなげていくことが極めて重要である。国及び地方公共団体は、訓練の実施やそれに基づく点検や改善が関係機関で継続的に取り組まれるよう、働きかけを行う。

(4) 定期的なフォローアップと必要な見直し

訓練の実施等により得られた改善点や、医療法に基づく医療計画や感染症法に基づく予防計画の定期的な見直し等による制度の充実、新興感染症等について新たに得られた知見等、状況の変化に合わせて、本政府行動計画やガイドライン等の関連文書について、必要な見直しを行うことが重要である。

政府行動計画の実効性を確保するための取組等

こうした観点から、本政府行動計画やガイドライン等の関連文書に基づく取組や新型インフルエンザ等対策に係る人材育成や人材確保の取組について、推進会議等の意見も聴きながら、毎年度定期的なフォローアップと取組状況の見える化を統括庁を中心に行う。

定期的なフォローアップを通じた取組の改善等に加え、国内外の新興感染症等の発生の状況やそれらへの対応状況、予防計画や医療計画を始めとする新型インフルエンザ等への対応に関連する諸制度の見直し状況等も踏まえ、おおむね6年ごとに本政府行動計画の改定について、必要な検討を行い、その結果に基づき、所要の措置を講ずるものとする。

なお、新型インフルエンザ等が発生し、感染症危機管理の実際の対応が行われた場合は、上記の期間にかかわらず、その対応経験を基に本政府行動計画等の見直しを行う。

(5) 都道府県行動計画及び市町村行動計画等

政府行動計画の改定を踏まえて、都道府県や市町村での新型インフルエンザ等への備えをより万全なものとするために、都道府県及び市町村においても行動計画の見直しを行う。

国は、都道府県や市町村の行動計画の見直しに当たって、地方公共団体との連携を深める観点から、統括庁を中心に、行動計画の充実に資する情報の提供等を行う。

さらに、平時からの新型インフルエンザ等対策の取組について、統括庁から都道府県や市町村に対して、平時からの対策の充実に資する情報の提供や好事例の横展開、必要な研修等に係る情報を提供する等、都道府県や市町村の取組への支援を充実させる。

(6) 指定(地方)公共機関業務計画

指定(地方)公共機関においても、新型コロナ対応を振り返りつつ、新型インフルエンザ等への備えをより万全なものにする観点から、確実な業務継続のために必要な取組を検討する。こうした検討の結果や DX の推進やテレワークの普及状況等の状況も踏まえながら業務計画の必要な見直しを行う。

第3部 新型インフルエンザ等対策の各対策項目の考え方及び取組

第1章 実施体制

第1節 準備期

(1) 目的

新型インフルエンザ等が国内外で発生し又はその疑いがある場合は、事態を的確に把握し、政府一体となった取組を推進することが重要である。そのため、あらかじめ、関係機関の役割を整理するとともに、有事の際に機能する指揮命令系統等の構築と拡張可能な組織体制の編成及び確認、それぞれの役割を実現するための人員の調整、縮小可能な業務の整理等を行う。また、研修や訓練を通じた課題の発見や改善、練度の向上等を図るとともに、定期的な会議の開催等を通じて関係機関間の連携を強化する。

(2) 所要の対応

1-1 政府行動計画の見直し

国は、特措法の規定に基づき、あらかじめ新型インフルエンザ等対策推進会議の意見を聴いた上で43、必要に応じて新型インフルエンザ等の発生に備えた政府行動計画を見直していく。(統括庁、その他全省庁)

1-2 実践的な訓練の実施

国、JIHS、都道府県、市町村、指定(地方)公共機関及び医療機関は、政府行動計画の内容を踏まえ、新型インフルエンザ等の発生に備えた実践的な訓練を実施する。(統括庁、厚生労働省、その他全省庁)

1-3 国等の体制整備・強化

① 国は、新型インフルエンザ等の発生時において強化・拡充すべき業務を実施するために必要な人員体制等の確保及び有事においても維持すべき業務の継続を図り、国における取組体制を整備・強化するため、中央省庁業務継続計画の改定等を進める。(統括庁、その他全省庁)

② 国及び JIHS は、新型インフルエンザ等対策に携わる専門人材、行政官等について、キャリア形成の支援等を行いながら、訓練や養成等を推進する。(統括庁、その他全省庁)

③ 国は、準備期における取組の進捗状況等について、推進会議に報告し、改善すべき点について意見を聴く等 PDCA サイクルにより取組を進めていく。(統括庁、関係省庁)

43 特措法第6条第5項及び第 70 条の3第1号

④ 国及び JIHS は、有事において迅速に情報提供・共有し、助言を得ることができるよう、医療、公衆衛生、社会経済等の感染症危機管理に関連する分野の専門家と平時から連携を強化する。(統括庁、厚生労働省)

⑤ 国として一体的・整合的ないわゆるワンボイス44での情報提供・共有を行うことができるよう、記者会見を担当する広報担当官を置くことを含め必要な体制を整備するとともに、関係省庁がワンボイスで行う情報提供・共有の方法等を整理する。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

⑥ JIHS は、平時から、国と連携して、国民等に対し、感染症に関する基本的な情報や感染症の発生状況等の情報、新型インフルエンザ等に関する情報やその対策等について、分かりやすく情報提供・共有を行う。(厚生労働省、統括庁)

⑦ 国及び JIHS は、情報共有等を平時から定期的に行うなど、緊密に連携しながら、新型インフルエンザ等の発生時に迅速に対応できるよう必要な準備を行う。(統括庁、厚生労働省)

⑧ JIHS は、統括庁や厚生労働省からの科学的知見の求めへの対応や調査研究等の有事における健康危機対応を想定した平時の体制を構築するとともに、感染症有事の際に迅速な対応が可能となる体制を構築する。(統括庁、厚生労働省)

⑨ 国は、感染症危機管理における情報収集・分析について、国内外の関係者と連携し、利用可能なあらゆる情報源から体系的かつ包括的に収集・分析、解釈し、政策上の意思決定及び実務上の判断に活用可能な情報を入手する体制を構築する。(統括庁、厚生労働省、その他全省庁)

1-4 地方公共団体等の行動計画等の作成や体制整備・強化

① 都道府県、市町村及び指定(地方)公共機関は、それぞれ都道府県行動計画、市町村行動計画、指定(地方)公共機関における業務計画を作成・変更し、国は当該計画の作成・変更を支援する。都道府県は、都道府県行動計画を作成・変更する際には、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴く45。(統括庁、厚生労働省、業所管省庁)

② 都道府県及び市町村は、新型インフルエンザ等の発生時において強化・拡充すべき業務を実施するために必要な人員等の確保及び平時から維持すべき業務の継続を図るため、業務継続計画を作成・変更し、国は当該業務継続計画の作成・変更を支援する。都道府県の業務継続計画については、管内の保健所等や市町村の業務継続計画との整合性にも配慮しながら作成する。(統括庁、厚生労働省)

44 ワンボイスの原則とは、スポークスパーソンを一人に限定することではなく、危機管理を担う多様な情報源からであっても一貫した情報提供・共有をすること
45 特措法第7条第3項

③ 都道府県は、特措法の定めのほか、都道府県対策本部に関し、必要な事項を条例で定める46。(統括庁)

④ 都道府県は、新型インフルエンザ等発生時における全庁での対応体制の構築のため、研修や訓練等の実施を行うとともに、感染症対応部門と危機管理部門との連携強化や役割分担に関する調整を行う。(統括庁)

⑤ 都道府県、市町村、指定(地方)公共機関及び医療機関等は、新型インフルエンザ等対策に携わる医療従事者や専門人材、行政官等の養成等を行う。特に、都道府県等は、国や JIHS、都道府県の研修等を積極的に活用しつつ、地域の感染症対策の中核となる保健所や地方衛生研究所等の人材の確保や育成に努める。国及び JIHS は、これらの人材確保や育成の取組を支援する。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

⑥ 国は、新型インフルエンザ等対策に必要な施設・設備の整備等について、都道府県等の取組を支援する。(厚生労働省、関係省庁)

1-5 国及び地方公共団体等の連携の強化

① 国、都道府県、市町村及び指定(地方)公共機関は、相互に連携し、新型インフルエンザ等の発生に備え、平時からの情報共有、連携体制の確認、訓練を実施する。(統括庁、その他全省庁)

② 国、都道府県、市町村及び指定(地方)公共機関は、新型インフルエンザ等の発生に備え、国内の業界団体や関連する学会等の関係機関と情報交換等を始めとした連携体制を構築する。(統括庁、厚生労働省、業所管省庁)

③ 国は、都道府県が警察、消防機関、海上保安機関、自衛隊等と連携を進めるための必要な支援を行う。(警察庁、消防庁、厚生労働省、海上保安庁、防衛省)

④ 都道府県は、感染症法に基づき、管内の保健所設置市等により構成される都道府県連携協議会を組織し、同協議会等を活用し47、入院調整の方法や医療人材の確保、保健所体制、検査体制や検査実施方針、情報共有の在り方等について協議する。その協議結果及び国が定める基本指針48等を踏まえた予防計画を策定・変更する。なお、予防計画を策定・変更する際には、特措法に基づき都道府県等が作成する行動計画、医療法に基づく医療計画及び地域保健対策の推進に関する基本的な指針に基づく健康危機対処計画と整合性をとる49。(厚生労働省)

46 特措法第 26 条
47 感染症法第 10 条の2第1項
48 感染症法第9条及び第 10 条第1項

⑤ 都道府県は、第3節(対応期)3-1-5 に記載している特定新型インフルエンザ等対策の代行や応援の具体的な運用方法について、市町村と事前に調整し、着実な準備を進める。(統括庁、厚生労働省)

⑥ 都道府県は、感染症対策の事前の体制整備や人材確保等の観点から必要がある場合には、市町村や医療機関、感染症試験研究等機関50等の民間機関に対して総合調整権限を行使し51、着実な準備を進める。(厚生労働省)

1-6 国際的な連携体制の整備・強化

① 国及び JIHS は、新型インフルエンザ等の発生時に国際機関や外国政府等と速やかに情報共有できる体制を整備する。(厚生労働省、農林水産省、文部科学省、環境省、外務省)

② 国及び JIHS は、ワクチン、診断薬及び治療薬等の開発等に関する国際連携の取組による連携・協力体制に参画する。(健康・医療戦略推進事務局、外務省、厚生労働省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

③ 国及び JIHS は、医療従事者や専門人材、行政官等の人材育成のために、外国政府や国際機関等との間で、研修員受入れ、専門人材派遣、現地における研修等を行う。(外務省、厚生労働省、農林水産省、文部科学省)

④ 国及び JIHS は、新型インフルエンザ等の発生を想定した外国政府や国際機関等との共同訓練を実施する。(統括庁、外務省、厚生労働省、農林水産省)

⑤ 国及び JIHS は、新型インフルエンザ等発生時に、国際機関又は発生国からの要請に応じて職員を派遣できるよう、疫学、検査、臨床、家畜衛生等からなる海外派遣専門人材チームを編成する。(外務省、厚生労働省、農林水産省、環境省)

⑥ JIHS は、大学等の関係機関と連携し、国際的な連携強化を含む調査研究を実施し、国はこれを支援する。(厚生労働省、農林水産省、文部科学省、環境省)

⑦ JIHS は、新型インフルエンザ等が発生した場合に、迅速に情報収集や検体の提供等が受けられるよう他国の研究機関等を含めた関係機関との連携体制を構築する。(厚生労働省)

49 感染症法第 10 条第8項及び第 17 項
50 感染症法第 15 条第 16 項に定める感染症の治療の方法の研究、病原体等の検査その他の感染症に関する試験研究又は検査を行う機関をいう
51 感染症法第 63 条の3第1項

⑧ 国は、野生動物や家きん等に由来する新型インフルエンザ等の発生を予防するため、ワンヘルス・アプローチの考え方に基づき、国際的な人獣共通感染症の予防・防疫に係る取組等を推進する。(外務省、厚生労働省、農林水産省、環境省)

第2節 初動期

(1) 目的

新型インフルエンザ等が国内外で発生し又はその疑いがある場合には、国家の危機管理として事態を的確に把握するとともに、国民の生命及び健康を守るため、緊急かつ総合的な対応を行う必要がある。そのため、準備期における検討等に基づき、必要に応じて新型インフルエンザ等対策閣僚会議や関係省庁対策会議を開催し、国及び関係機関における対策の実施体制を強化し、初動期における新型インフルエンザ等対策を迅速に実施する。

(2) 所要の対応

2-1 新型インフルエンザ等の発生の疑いを把握した場合の措置

① 国は、国内外で新型インフルエンザ等の発生の疑いがある場合には、関係省庁等間で情報共有を行うとともに、必要に応じて、国際保健規則(IHR) に基づき、WHO に通報する。(統括庁、外務省、厚生労働省、その他全省庁)

② 国及び JIHS は、国内外における発生動向等に関する情報収集・分析を強化し、効果的かつ迅速に実施するとともに、速やかにリスク評価を行い、その結果を共有する。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

③ 内閣感染症危機管理監は、事態に応じ、関係省庁と緊急協議を行うとともに、事態に関する情報を内閣総理大臣に報告し、必要な指示を受ける。内閣危機管理監は、感染症に係る危機管理の対応が必要な事態が生じた場合には、臨時に命を受け、統括庁に協力する52。(統括庁等内閣官房、厚生労働省)

④ 国は、速やかに関係省庁対策会議又は必要に応じ、新型インフルエンザ等対策閣僚会議を開催し、情報の集約、共有及び分析を行い、政府の初動対処方針について協議し、決定する。(統括庁、その他全省庁)

⑤ 国は、必要に応じて、関係省庁対策会議や新型インフルエンザ等対策閣僚会議に JIHS を出席させ、把握している科学的知見等の意見を述べさせる。(統括庁、厚生労働省)

2-2 新型インフルエンザ等の発生が確認された場合の措置

① WHO が急速にまん延するおそれのある新たな感染症の発生を公表(PHEIC 宣言等)する等新型インフルエンザ等の発生が確認された場合には、国は、直ちに関係部局及び関係省庁等間での情報共有を行う。また、感染症の発生動向や、状況の推移に応じ必要となる感染症法、検疫法(昭和 26 年法律第 201 号)及び特措法上の措置を的確に実施するため、各法律の適用対象の類型のいずれに該当するかの検討を行い、必要となる政令の改正等を実施する。厚生労働大臣は、新型インフルエンザ等が発生したと認めたときは、速やかにその旨を公表する53とともに、内閣総理大臣に報告する54。

52 内閣法第 15 条第3項

(統括庁、外務省、厚生労働省)

② 上記の報告があったときは、り患した場合の症状の程度が季節性インフルエンザとおおむね同程度以下と認められる場合を除き、内閣総理大臣は閣議にかけて、政府対策本部を設置し、当該政府対策本部の名称並びに設置場所及び期間を国会に報告するとともに、公示する55。

都道府県は、直ちに都道府県対策本部を設置する56。あわせて、市町村は、必要に応じて、対策本部を設置することを検討し、新型インフルエンザ等対策に係る措置の準備を進める。(統括庁、厚生労働省)

③ 国は、必要に応じて準備期にあらかじめ指定した各省庁の幹部職員を統括庁の兼務とすることや、その他の職員についても統括庁に参集させることにより、統括庁の体制強化を図るとともに、新型インフルエンザ等対策における政府の一体性の確保を図る。(統括庁)

④ 国は、政府対策本部の設置に併せて、感染症対策の実務の中核を担う厚生労働省の体制を強化するため、同省内外から応援職員を招集し、新型インフルエンザ等対策の実施体制を迅速に構築する。(厚生労働省、その他全省庁)

⑤ 国は、必要に応じて、政府対策本部に JIHS を出席させ、把握している科学的知見等の意見を述べさせる57。(統括庁、厚生労働省)

⑥ 国は、JIHS 等から提供される知見も踏まえつつ、推進会議の意見を聴いた上で(緊急を要する場合で意見を聴くいとまがないときを除く。以下基本的対処方針の策定・変更に際して推進会議の意見を聴く場合について同じ。)、政府行動計画に基づいて基本的対処方針を決定し、直ちに公示し、周知を図る58。(統括庁、厚生労働省、その他全省庁)

⑦ 国、都道府県及び市町村は、必要に応じて、第1節(準備期)1-3 及び1-4 を踏まえ、必要な人員体制の強化が可能となるよう、全庁的な対応を進める。(統括庁、厚生労働省、その他全省庁)

⑧ 国は、り患した場合の病状の程度が季節性インフルエンザと同程度以下

53 感染症法第 44 条の2第1項、第 44 条の7第1項、第 44 条の 10 第1項
54 特措法第 14 条
55 特措法第 15 条第2項
56 特措法第 22 条第1項
57 特措法第 16 条第8項
58 特措法第 18 条第4項及び第5項

と認められる新型インフルエンザ等が発生したと判断される場合には、感染症法等に基づく基本的な感染症対策を実施する。(厚生労働省、関係省庁)

2-3 国際的な連携体制の強化

① 国は、国際機関又は発生国からの要請に応じ、準備期における検討に基づき編成した海外派遣専門人材チームの派遣を検討する。(外務省、厚生労働省、農林水産省)

② 国は、発生国に対し WHO が行う支援への協力を行う。(厚生労働省、関係省庁)

③ 国は、WHO、国際獣疫事務局(WOAH)等における病原体の同定・解析、症例定義に関して協力を行い、情報共有等を行う。(厚生労働省、外務省、文部科学省、農林水産省)

④ JIHS は、迅速に情報収集を行い、検体の提供等が受けられるよう、連携関係にある他国の研究機関等と協力を進める。(厚生労働省)

2-4 迅速な対策の実施に必要な予算の確保

国は、新型インフルエンザ等の発生及びその可能性がある事態を認知した際には、必要となる予算を迅速に確保し、速やかに対策を実施する。都道府県及び市町村における機動的かつ効果的な対策の実施のため、国は、都道府県及び市町村への財政支援59について迅速に検討し、所要の措置を講ずるとともに、都道府県及び市町村は、必要に応じて、対策に要する経費について地方債を発行する60ことを検討し、所要の準備を行う。(統括庁、総務省、厚生労働省、関係省庁)

59 特措法第 69 条、第 69 条の2第1項、第 70 条第1項及び第2項
60 特措法第 70 条の2第1項。なお、新型インフルエンザ等の発生によりその財政運営に特に著しい支障が生じ、又は生ずるおそれがあるものとして総務大臣が指定する市町村は、都道府県等以外でも地方債を発行することが可能

第3節 対応期

(1) 目的

初動期に引き続き、病原体の性状等に応じて、国内での新型インフルエンザ等の発生から、特措法によらない基本的な感染症対策に移行し、終息するまで途中の病原体の変異も含め長期間にわたる対応も想定されることから、国及び関係機関における対策の実施体制を持続可能なものとすることが重要である。

感染症危機の状況並びに国民生活及び国民経済の状況や、各対策の実施状況に応じて柔軟に対策の実施体制を整備し、見直すとともに、特に医療のひっ迫、病原体の変異及びワクチンや治療薬・治療法の開発・確立等大きな状況の変化があった場合に、柔軟かつ機動的に対策を切り替えることで、可能な限り早期に少ない影響で感染症危機に対応することを目指す。

(2) 所要の対応

3-1. 基本となる実施体制の在り方

政府対策本部設置後においては、速やかに以下の実施体制をとる。

3-1-1 対策の実施体制

① 国及び JIHS は、感染症の特徴に関する情報、感染状況や医療提供体制のひっ迫状況、国民生活・社会経済活動に関する情報等を継続的に共有する。また、国は、必要に応じて、推進会議の意見を聴いて基本的対処方針を変更し、これを公示した上で、基本的対処方針に基づき、適切な新型インフルエンザ等対策を実施する。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

② 都道府県は、保健所や地方衛生研究所等とも連携し、地域の感染状況について一元的に情報を把握する部局を定めるなどの体制を整備した上で、当該部局等の収集した情報とリスク評価を踏まえて、地域の実情に応じた適切な新型インフルエンザ等対策を実施する。(統括庁、厚生労働省)

③ JIHS は、統括庁や厚生労働省が求める感染症の特性に関する情報を始めとした科学的知見を迅速に提供するため、迅速な意思決定や情報分析が可能な組織体系に移行する。(統括庁、厚生労働省)

④ 国及び都道府県は、新型インフルエンザ等対策に携わる職員の心身への影響を考慮し、必要な対策を講ずる。(全省庁)

3-1-2 国による総合調整及び指示

① 国は、新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、基本的対処方針に基づき、都道府県及び指定公共機関に対し、新型インフルエンザ等対策に関する総合調整を行う61。新型インフルエンザ等のまん延により、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるにもかかわらず、当該総合調整に基づく所要の措置が実施されず、都道府県及び指定公共機関における緊急かつ一体的な対策が行われる必要がある等新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、その必要な限度において国は必要な指示を行う62。

当該総合調整及び指示は、地方公共団体等における新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施することにより、他の地方公共団体や全国へのまん延を防止することを目的として実施されるものである。例えば、地方公共団体間で、施設の使用制限や営業時間の短縮等の措置の実施の方針が異なり、全国的な感染拡大の防止を実効的に行う観点から当該地方公共団体において一体的な対策を講じる必要がある場合等に行われることが考えられる。(統括庁)

② 国は、感染症法に基づき、都道府県の区域を越えて人材確保又は移送を行う必要がある場合等において、都道府県、医療機関その他の関係機関に対して、まん延防止のために必要な措置に関する総合調整を行う63。あわせて、都道府県が感染症法等に定める事務の管理等を適切に行わない場合において、全国的かつ急速なまん延を防止するため特に必要があると認めるときは、国は必要な指示を行う64。

なお、国は、都道府県が行う新感染症に係る事務に関し必要な指示をしようとする際には、あらかじめ厚生科学審議会の意見を聴く65。ただし、緊急を要する場合には、指示した措置について、厚生科学審議会へ速やかに報告する66。(厚生労働省)

3-1-3 都道府県による総合調整

① 都道府県は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するために必要があると認めるときは、当該都道府県及び関係市町村並びに関係指定(地方)公共機関が実施する当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策に関する総合調整等を行う67。(統括庁、厚生労働省)

61 特措法第 20 条第1項
62 特措法第 20 条第3項。なお、指定公共機関に対する指示は、緊急事態宣言時のみ可能である(特措法第 33 条第1項)
63 感染症法第 44 条の5第1項又は第 51 条の4第1項
64 感染症法第 51 条の5第1項又は第 63 条の2第1項若しくは第2項
65 感染症法第 51 条の5第2項
66 感染症法第 51 条の5第3項
67 特措法第 24 条第1項

② また、都道府県は、感染症法に基づき、新型インフルエンザ等の発生を予防し、又はまん延を防止するため必要があると認めるときは、市町村、医療機関、感染症試験研究等機関その他の関係機関に対し、感染症法に定める入院勧告又は入院措置その他のこれらの者が実施する措置に関し必要な総合調整を行う68。あわせて、都道府県は、新型インフルエンザ等の発生予防又はまん延防止のため緊急の必要があると認めるときは、保健所設置市等に対し、感染症法に定める入院勧告又は入院措置に関し必要な指示を出すことができる69。(厚生労働省)

3-1-4 政府現地対策本部の設置

国は、発生の状況により、発生の初期の段階における都道府県に対する専門的調査支援のために必要があると認めるときは、政府現地対策本部を設置する70。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

3-1-5 職員の派遣、応援への対応

① 国は、地方公共団体から職員の派遣要請があった場合又は指定(地方) 公共機関から応援を求められた場合は、特措法に基づく対応を検討し、所要の措置をとる71。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

② 都道府県は、その区域に係る特定新型インフルエンザ等対策(特措法第2条第2号に規定する特定新型インフルエンザ等対策をいう。以下同じ。) を実施するため必要があると認めるときは、他の都道府県に応援を求める

72。(統括庁、厚生労働省)

③ 都道府県は、感染症対応に一定の知見があり感染者の入院等の判断や入院調整を行う医師や看護師等が不足する場合等には、必要に応じて、他の都道府県に対して、当該医療関係者の確保に係る応援を求める73。(厚生労働省)

④ 市町村は、新型インフルエンザ等のまん延により当該市町村がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなったと認めるときは、当該市町村の属する都道府県に対し、特定新型インフルエンザ等対策の事務の代行

68 感染症法第 63 条の3第1項
69 感染症法第 63 条の4
70 特措法第 16 条第8項
71 特措法第 26 条の6及び第 26 条の7
72 特措法第 26 条の3第1項
73 感染症法第 44 条の4の2

74を要請し、当該都道府県はこれに対応する75。(統括庁、厚生労働省)

⑤ 市町村は、その区域に係る特定新型インフルエンザ等対策を実施するため必要があると認めるときは、他の市町村又は当該市町村の属する都道府県に対して応援を求める76。当該都道府県は、正当な理由がない限り応援の求めに応ずるものとする77。(統括庁、厚生労働省)

3-1-6 国際的な連携体制の強化

① 国は、症例の定義や実施された措置を含む国内発生情報のうち、国際保健規則(IHR)で通報が義務付けられている内容について、遅滞なく WHO へ通報する。(厚生労働省)

② 国は、国際機関や外国政府等との間で、ワクチン、診断薬及び治療薬等の開発等に関する連携、協力を行う。(厚生労働省、関係省庁)

3-1-7 必要な財政上の措置

① 国は、新型インフルエンザ等対策の実施に要する費用に対して、必要な財政上の措置を講ずる78。(統括庁、総務省、厚生労働省、関係省庁)

② 都道府県及び市町村は、国からの財政支援を有効に活用するとともに、必要に応じて地方債を発行して財源を確保79し、必要な対策を実施する。

(統括庁、総務省)

3-2 まん延防止等重点措置及び緊急事態措置の検討等について

まん延防止等重点措置及び緊急事態措置の実施に係る手続等については、以下のとおりとする。なお、これらの措置の実施に係る考え方等については、第6章(「まん延防止」)の記載内容を参照する。

3-2-1 まん延防止等重点措置の公示

3-2-1-1 まん延防止等重点措置の公示までの手続等

国は、国内で発生した新型インフルエンザ等の状況又は都道府県対策本部長からの要請等も踏まえ、推進会議の意見を聴き、基本的対処方針を変更するとともに、まん延防止等重点措置の公示等を行う80。(統括庁、厚生労働省、その他全省庁)

74 特措法第 26 条の2第1項
75 特措法第 26 条の2第2項
76 特措法第 26 条の3第2項及び第 26 条の4
77 特措法第 26 条の4
78 特措法第 69 条、第 69 条の2第1項、第 70 条第1項及び第2項
79 特措法第 70 条の2第1項。なお、新型インフルエンザ等の発生によりその財政運営に特に著しい支障が生じ、又は生ずるおそれがあるものとして総務大臣が指定する市町村は、都道府県等以外でも地方債を発行することが可能

まん延防止等重点措置の公示は、新型インフルエンザ等が国内で発生し、都道府県の特定の区域において感染が拡大し、国民生活及び国民経済に甚大 な影響を及ぼすおそれがあり、当該区域における新型インフルエンザ等のま ん延を防止するため、まん延防止等重点措置を集中的に実施する必要がある 事態が発生した旨を示すものである。まん延防止等重点措置の実施の手続は、以下のとおりである。

3-2-1-1-1 関係情報の報告

国及び JIHS は、準備期及び初動期から実施している国内外からの情報を収集し分析する体制について、その時々の必要性に応じて、その情報収集・分析の方法や体制を柔軟に変化させ、専門家等の意見も聴きつつ、リスク評価を行い、まん延防止等重点措置の実施の判断に必要な関係情報を政府対策本部長に報告する。(統括庁、厚生労働省、その他全省庁)

3-2-1-1-2 新型インフルエンザ等対策推進会議への意見聴取

政府対策本部長は、まん延防止等重点措置の実施に関する重要な事項を定めるため、基本的対処方針の変更について、推進会議の意見を聴く81。(統括庁、厚生労働省)

3-2-1-1-3 まん延防止等重点措置の決定

政府対策本部長は、まん延防止等重点措置を実施することを決定する。あわせて、基本的対処方針の変更に関する推進会議の意見を踏まえ、変更案を決定する。(統括庁、厚生労働省)

3-2-1-1-4.公示等

政府対策本部長は、まん延防止等重点措置の公示を行うとともに、基本的対処方針を変更する。(統括庁)

3-2-1-2 期間及び区域の指定

国は、まん延防止等重点措置を実施すべき期間及び区域を公示する82。また、公示する区域については、発生区域の存在する都道府県を指定する。ただし、人の流れ等を踏まえ柔軟な区域設定が可能であることにも留意する。

80 特措法第 31 条の4第1項
81 特措法第 18 条第5項
82 特措法第 31 条の8第1項

(統括庁)

3-2-1-3 都道府県による要請又は命令

都道府県は、まん延防止等重点措置として、営業時間の変更その他の必要な措置を講ずる要請又は命令を行うに当たっては、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴く83。(統括庁)

3-2-1-4 まん延防止等重点措置を実施する必要のある事態の終了

国は、まん延防止等重点措置を実施する必要がなくなったと認めるときは、推進会議の意見を聴いて、速やかにまん延防止等重点措置を集中的に実施す る必要のある事態が終了した旨を公示する。(統括庁、厚生労働省、その他 全省庁)

3-2-2 新型インフルエンザ等緊急事態宣言の手順及び手続

新型インフルエンザ等緊急事態宣言(以下「緊急事態宣言」という。)は、緊急事態措置を講じなければ、医療提供の限界を超えてしまい、国民の生命及び健康を保護できず、社会混乱を招くおそれが生じる事態であることを示すものである。緊急事態宣言を行うまでの手続、期間や区域の公示及び解除の手続等については、上記 3-2-1 のまん延防止等重点措置の手続と同様であるが、異なる点は以下のとおりである。

① 政府対策本部長は、緊急事態宣言を行った旨を国会に報告する。また、政府対策本部長は、緊急事態措置の必要がなくなった場合は、解除宣言を行い、国会に報告する84。(統括庁)

② 市町村は、緊急事態宣言がなされた場合は、市町村行動計画に基づき、直ちに、市町村対策本部を設置する85。市町村対策本部長は、当該市町村の区域に係る緊急事態措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、緊急事態措置に関する総合調整を行う。(統括庁)

3-3 特措法によらない基本的な感染症対策への移行期の体制

3-3-1 政府対策本部の廃止

国は、新型インフルエンザ等にり患した場合の病状の程度が、季節性インフルエンザにり患した場合の病状の程度に比しておおむね同程度以下であることが明らかとなったとき、又は感染症法に基づき、国民の大部分が免疫を獲得したこと等により新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症と認められなくなった旨の公表がされたとき、若しくは感染症法に基づき、新感染症に対し、感染症法に定める措置を適用するために定める政令が廃止されたときに、推進会議の意見を聴いて、政府対策本部を廃止し、その旨を国会に報告するとともに、公示する86。(統括庁、厚生労働省、その他全省庁)

83 特措法第 31 条の8第4項
84 特措法第 32 条第5項
85 特措法第 34 条第1項

3-3-2 都道府県対策本部の廃止

都道府県は、政府対策本部が廃止されたときは、遅滞なく都道府県対策本部を廃止する87。(統括庁)

86 特措法第 21 条第1項及び第2項
87 特措法第 25 条

第2章 情報収集・分析

第1節 準備期

(1) 目的

感染症危機管理において、新型インフルエンザ等による公衆衛生上のリスクの把握や評価、感染症予防や平時の準備、新型インフルエンザ等の発生の早期探知、発生後の対応等の新型インフルエンザ等対策の決定を行う上では、情報収集・分析が重要な基礎となる。

情報収集・分析では、新型インフルエンザ等対策の決定に寄与するため、感染症インテリジェンスの取組として、利用可能なあらゆる情報源から体系的かつ包括的に感染症に関する情報を収集・分析し、リスク評価を行い、政策上の意思決定及び実務上の判断に資する情報を提供する。

情報収集・分析の対象となる情報としては、国内外の感染症の発生状況や対応状況、感染症サーベイランス等から得られた国内の疫学情報、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、臨床像に関する情報等のほか、医療提供体制や人流、国民生活及び国民経済に関する情報、社会的影響を含む感染症流行のリスクに関する情報が挙げられる。

平時には、定期的に行う情報収集・分析に加えて、情報内容の整理や把握手段の確保を行うなど、有事に向けた準備を行う。

なお、感染症サーベイランス等については、次章「サーベイランス」にて具体的に記載する。

(2) 所要の対応1-1. 実施体制

① 国は、平時から感染症に関する情報収集・分析の目的を JIHS 等と共有した上で連携し、感染症インテリジェンスに資する国内外からの情報を収集・分析し、リスク評価を行う体制(以下「感染症インテリジェンス体制」という。)を整備する。また、国内外の関係機関や専門家等との交流や往来を深める等、人的・組織的ネットワークの形成や維持・向上に努める。

特に、感染症インテリジェンスに資する情報収集・分析の結果が有事の際に迅速かつ効率的に集約されるよう、平時から国内外の関係機関等との人的・組織的な関係性を築き、連携体制の強化を図る。

例えば、二国間及び多国間における感染症情報の共有等の協働の枠組み

(WHO、世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)や日中韓保健大臣会合等)による連携、在外公館及び独立行政法人国際協力機構(JICA)等の様々な関係機関との連携等により情報を収集・分析できる体制を構築する。(厚生労働省、外務省、文部科学省)

② 在外公館及び検疫所は、感染症に関する情報を得た場合には速やかにこれらの機関を所管する省庁の関係部局へ報告する。(厚生労働省、外務省)

③ 国は、情報収集・分析の結果のうち、必要なものについては、JIHS や都道府県等、地方衛生研究所等を始めとする関係機関に速やかに共有するよう努める。(厚生労働省)

④ 国、JIHS 及び都道府県等は、有事に備え、積極的疫学調査や臨床研究に資する情報の収集について、平時から体制を整備する。(厚生労働省)

⑤ 国及び JIHS は、国民生活及び国民経済に関する情報や社会的影響等の収集・分析に備え、収集すべき情報の整理や収集・分析方法の研究を行う等、平時から準備を行う。(統括庁、関係省庁)

1-2 平時に行う情報収集・分析

国は、JIHS を中心として構築した感染症インテリジェンス体制により、効率的に国内外の情報収集・分析及びリスク評価を行い、これらを活用し、政策上の意思決定及び実務上の判断を行う。情報収集・分析に当たっては、国は、JIHS と連携し、平時から外国政府、国際機関、海外の大学や研究機関、海外感染症専門人材、在外公館及び国内外の関係機関等との人的・組織的ネットワークを活用する。(厚生労働省、外務省、文部科学省)

1-3 訓練

国は、都道府県等及び JIHS 等と連携し、新型インフルエンザ等の発生を想定した訓練等を通じて、情報収集・分析の実施体制の運用状況等の確認を行う。(厚生労働省、外務省)

1-4 人員の確保

国は、情報収集・分析の円滑な実施のため、JIHS 等と連携し、平時において、多様な背景の専門性(公衆衛生や疫学、データサイエンス等)を有する感染症専門人材の育成や人員確保、活用及び有事に向けた訓練等を行うとともに、有事に必要な人員規模と専門性を確認し、配員調整等を行う。(厚生労働省、外務省、文部科学省)

1-5 DX の推進

国及び JIHS は、平時から迅速に情報収集・分析を行うため、情報入力の自動化・省力化や情報の一元化、データベース連携等の DX を推進する。

例えば、ワクチンや治療薬等の研究開発の基盤構築のための臨床情報の収集に当たっては、電子カルテから情報を抽出する体制を構築する等、ワクチンや治療薬等の研究開発や治療法の確立に資する整備を行っていく。

これらのほか、医療機関における感染症法に基づく発生届に係る入力業務 の負担軽減等を図るため、電子カルテと発生届の連携に向けて検討を進める。

(厚生労働省)

1-6 情報漏えい等への対策

国は、国内外の感染症サーベイランス等から得られた公表前の国内の疫学情報、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)等の機微情報の漏えい等への対策のため、情報セキュリティの強化や事案が発生した場合の対応手順について整理する。整理に当たっては、情報連携等を行っている関係機関等とも対応手順を調整するよう留意する。(厚生労働省、外務省、文部科学省)

第2節 初動期

(1) 目的

初動期には、新たな感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感 受性等)に関する情報の収集・分析及びリスク評価を迅速に行う必要がある。感染症インテリジェンス体制を強化し、早期に探知された新たな感染症に関 する情報の確認や初期段階でのリスク評価を速やかに行い、感染症危機管理上の意思決定等に資する情報収集・分析を行う。

(2) 所要の対応2-1. 実施体制

国は、JIHS と連携し、新型インフルエンザ等が発生した場合は、速やかに感染症インテリジェンス体制を強化し、当該感染症に関する情報収集・分析及びリスク評価の体制を確立する。(厚生労働省、外務省、文部科学省)

2-2.リスク評価

2-2-1 情報収集・分析に基づくリスク評価

① 国及び JIHS は、新たな感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、国内での発生状況、臨床像に関する情報、公衆衛生・医療等への影響について分析し、包括的なリスク評価を行う。リスク評価に当たっては、都道府県等や国際機関、研究機関、在外公館、検疫所等からの情報、学術論文等の情報、現地での派遣調査による情報、医療提供体制や人流等の感染症のリスクに関する情報等の情報収集・分析に基づき、リスク評価を実施する。(厚生労働省)

② 国及び都道府県等は、リスク評価等を踏まえ、医療提供体制、検査体制、保健所等の各体制について、速やかに有事の体制に移行することを判断するとともに、必要な準備を行う。(厚生労働省)

③ 国及び JIHS は、国民生活及び国民経済に関する情報や社会的影響等についても情報収集を行い、感染症危機が国民生活及び国民経済等に及ぼす影響を早期に分析することを目指す。(統括庁、関係省庁)

2-2-2 リスク評価体制の強化

① 国及び JIHS は、都道府県等と連携し、必要な情報を効率的かつ効果的に収集・分析を行うため、感染症インテリジェンス体制を強化し、継続的なリスク評価を実施する。(厚生労働省)

② また、有事の際に、感染症インテリジェンスに資する情報を効率的に集約できるよう、準備期に構築した人的・組織的ネットワークを最大限に活用し、迅速かつ継続的に情報収集・分析を行う。(厚生労働省)

③ 国は、準備期から実施する取組に加えて、流行国・地域への派遣調査や有事に国際機関や諸外国政府等が開催する会議や調査等への参加等により、積極的に発生初期段階での情報の収集・分析を行い、初期段階でのリスク評価を行う。

さらに、情報収集・分析の方法について、国民等に分かりやすく情報を提供・共有する。(厚生労働省、外務省)

2-2-3 リスク評価に基づく感染症対策の判断及び実施

国は、都道府県等及び JIHS と連携し、リスク評価に基づき、感染症対策を迅速に判断し、実施する。(厚生労働省)

2-3 情報収集・分析から得られた情報や対策の共有

国は、新たな感染症が発生した場合は、国内外からの情報収集・分析から得られた情報や対策について、都道府県等に共有するとともに、国民等に迅速に提供・共有する。(厚生労働省、統括庁、外務省、文部科学省)

第3節 対応期

(1) 目的

強化された感染症インテリジェンス体制により、感染拡大の防止を目的に、新型インフルエンザ等に関する情報収集・分析及びリスク評価を行い、新型インフルエンザ等対策の決定等に資する情報収集・分析を行う。

また、新型インフルエンザ等の発生状況に応じ、感染拡大防止と国民生活及び国民経済との両立を見据えた対策の柔軟かつ機動的な切替え等の意思決定に資するよう、リスク評価を継続的に実施する。

特に、対応期には、まん延防止等重点措置や緊急事態措置の実施等の判断を要する可能性があることから、医療提供体制や人流等の感染症のリスクに関する情報、国民生活及び国民経済に関する情報や社会的影響等については情報収集・分析を強化する。

(2) 所要の対応3-1. 実施体制

国は、JIHS と連携し、新型インフルエンザ等に関する速やかな情報収集・分析及びリスク評価を実施できるよう、感染症インテリジェンス体制を強化する。

また、感染症危機の経過、状況の変化やこれらを踏まえた政策上の意思決定及び実務上の判断の必要性に応じ、情報収集・分析の方法や実施体制を柔軟に見直す。(厚生労働省、外務省、文部科学省)

3-2.リスク評価

3-2-1 情報収集・分析に基づくリスク評価

① 国及び都道府県等は、JIHS と連携し、新型インフルエンザ等の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、国内での発生状況、臨床像に関する情報等について分析し、包括的なリスク評価を行う。リスク評価に当たっては、国際機関及び研究機関等の情報や、検疫所、JIHS、都道府県等からの報告及び積極的疫学調査等により得られた結果等の情報収集・分析に基づき、リスク評価を実施する。

この際、感染症危機の経過、状況の変化やこれらを踏まえた政策上の意思決定及び実務上の判断の必要性に応じた包括的なリスク評価を実施する。(厚生労働省)

② 国及び JIHS は、リスク評価に基づく感染症対策の判断に当たっては、国民生活及び国民経済に関する情報や社会的影響についても、必要な情報を収集し、考慮する。(統括庁、関係省庁)

3-2-2 リスク評価に基づく情報収集・分析手法の検討及び実施

① 国は、都道府県等及び JIHS と連携し、リスク評価に基づき、感染症インテリジェンス体制を強化し、引き続き活用する。(厚生労働省)

② また、有事の際に、感染症インテリジェンスに資する情報を効率的に集約できるよう、準備期及び初動期に構築した人的・組織的なネットワークを最大限に活用し、迅速かつ継続的に情報収集・分析を行う。(厚生労働省)

③ 有事に国際機関や諸外国政府等が開催する会議や調査等への参加等により、積極的に情報の収集・分析を行い、リスク評価を行う。(厚生労働省、外務省)

④ 特に、国内における感染が拡大した際に、まん延防止等重点措置や緊急事態措置を実施する場合に備え、国民生活及び国民経済に関する分析を強化し、感染症危機が国民生活及び国民経済等に及ぼす影響を把握する。(統括庁、関係省庁)

⑤ まん延防止等重点措置や緊急事態措置の実施等に関する分析結果について都道府県等に提供するとともに、国民等に分かりやすく情報を提供・共有する。(厚生労働省、統括庁)

3-2-3 リスク評価に基づく感染症対策の判断及び実施

国は、都道府県等及び JIHS と連携し、リスク評価に基づき、感染症対策を迅速に判断し、実施する。また、流行状況やリスク評価に基づき、柔軟かつ機動的に感染症対策を見直し、切り替える。(厚生労働省)

3-3 情報収集・分析から得られた情報や対策の共有

国は、国内外からの情報収集・分析から得られた情報や対策について、都道府県等に共有するとともに、国民等に迅速に提供・共有する。(厚生労働省、統括庁、外務省、文部科学省)

第3章 サーベイランス

第1節 準備期

(1) 目的

政府行動計画でいう「サーベイランス」とは、新型インフルエンザ等の発生時に患者の発生動向や海外からの病原体の流入等を体系的かつ統一的な手法で、持続的かつ重層的に収集・分析し、感染症の予防と対策に迅速に還元する感染症サーベイランス等の取組をいう。

感染症有事に、発生の早期探知を行い、情報収集・分析及びリスク評価を迅速に行うことが重要である。そのためには、平時から感染症サーベイランスの実施体制を構築し、システム等を整備することが必要である。

このため、平時から感染症サーベイランスシステム88やあらゆる情報源の活用により、感染症の異常な発生を早期に探知するとともに、各地域の新型インフルエンザ等の発生状況、患者の発生動向の推移、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、臨床像等の情報を収集する。これらの情報を踏まえ、リスク評価や感染症危機管理上の意思決定につなげる。

(2) 所要の対応1-1. 実施体制

① 国は、平時から感染症の発生動向等を、都道府県等が把握できるよう、定点医療機関からの患者報告や、JIHS や地方衛生研究所等からの病原体の検出状況やゲノム情報等の報告がなされる体制を整備する。

また、国は、JIHS と連携し、国内における新型インフルエンザ等の発生等を早期に探知することを目的に、海外における感染症の発生動向等に関する情報を集約・分析する。(厚生労働省)

② 国は、都道府県等からの報告と JIHS によるリスク評価に基づき、速やかに有事の感染症サーベイランスの実施体制に移行できるよう、平時から必要な準備を行う。(厚生労働省)

③ 国及び JIHS は、平時から都道府県等への感染症サーベイランスに係る技術的な指導及び支援や人材育成を実施するとともに、訓練等を通じて有事における都道府県等の感染症サーベイランスの実施体制について評価・検証を行う。(厚生労働省)

④ 国は、JIHS と連携して、感染症インテリジェンスで得た知見を踏まえて、有事において迅速かつ効率的な感染症サーベイランスの実施体制を構築できるよう、国内の民間検査機関を含む関係機関及び外国政府、国際機関(WHO、WOAH、国連食糧農業機関(FAO)等)等と、平時から情報共有や意見交換を行う。(厚生労働省)

88 感染症法第 12 条や第 14 条等の規定に基づき届出された情報等を集計・還元するために活用されているシステムであり、新型コロナ対応で活用した健康観察機能も有している

1-2 平時に行う感染症サーベイランス

① 国及び都道府県等は、平時から、季節性インフルエンザや新型コロナ等の急性呼吸器感染症について、届出対象となる医療機関における患者の発生動向や入院患者の発生動向等の複数の情報源から全国的な流行状況を把握する。(厚生労働省)

② 国及び都道府県等は、ワンヘルス・アプローチの考え方に基づき、JIHS、家畜保健衛生所、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、国立研究開発法人国立環境研究所等と連携し、家きんや豚及び野生動物のインフルエンザウイルス等の保有状況を把握し、新型インフルエンザ等の発生を監視する。

また、医療機関から鳥インフルエンザ等の動物由来インフルエンザに感染したおそれのある者について保健所に情報提供があった場合には、関係者間で情報共有を速やかに行う体制を整備する。(厚生労働省、農林水産省、環境省)

③ 国は、都道府県等及び JIHS 等と連携し、新型インフルエンザ等の発生を想定した訓練等を通じ、感染症サーベイランスシステムを活用した疑似症サーベイランスによる新型インフルエンザ等の早期探知の運用の習熟を行う。

また、国は、感染症サーベイランスシステムの管理及び改善を行う。(厚生労働省)

1-3 人材育成及び研修の実施

国は、JIHS 及び都道府県等と連携し、感染症サーベイランスに関係する人材の育成と確保のため、有事に必要となる人員規模をあらかじめ検討した上で、担当者の研修を実施する。(厚生労働省)

1-4 DX の推進

国及び JIHS は、平時から、感染症流行に関する情報を効率的かつ迅速に収集するとともに、有事における迅速な感染症危機管理上の判断及び重症度等の感染症対策に資する情報収集が可能となるよう、DX を推進する。例えば、医療機関における感染症法に基づく発生届に係る入力業務の負担軽減等を図るため、電子カルテと発生届の連携に向けて検討を進める。

また、国は、都道府県等における効果的な感染症対策の実施に資するよう、定期的に感染症サーベイランスシステム等のシステムの改善を行う。(厚生労働省)

1-5 分析結果の共有

国は、JIHS と連携し、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、ゲノム情報、臨床像等の情報等サーベイランスの分析結果を都道府県等に迅速に共有するとともに、分析結果に基づく正確な情報を国民等に分かりやすく提供・共有する。(厚生労働省)

第2節 初動期

(1) 目的

国内外における感染症有事(疑い事案を含む。)の発生の際に、発生初期の段階から各地域の感染症の発生状況や発生動向の推移を迅速かつ的確に把握し、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、臨床像等に関する情報の収集を迅速に行う必要がある。

初動期では、感染症サーベイランスの実施体制を強化し、早期に探知された新型インフルエンザ等に関する情報の確認を行い、リスク評価や感染症危機管理上の意思決定につなげる。

(2) 所要の対応2-1. 実施体制

国は、JIHS と連携し、新型インフルエンザ等の発生時に、初期段階のリスク評価に基づき、有事の感染症サーベイランスの実施体制への移行について判断し、実施体制の整備を進める。

また、国は、WHO、WOAH 等における病原体の同定・解析、症例定義に関して協力を行い、情報共有等を行う。(厚生労働省、外務省、文部科学省、農林水産省)

2-2.リスク評価

2-2-1 有事の感染症サーベイランス89の開始

国は、都道府県等、JIHS 及び関係機関と連携し、準備期から実施している感染症サーベイランスを継続するとともに、新たな感染症の発生を探知した場合には、速やかに疑似症の症例定義を行い、当該感染症に対する疑似症サーベイランス90を開始する。また、国は、都道府県等、JIHS 及び関係機関と連携し、新型インフルエンザ等の患者の全数把握を始めとする患者発生サーベイランス等の強化により、患者の発生動向等の迅速かつ的確な把握を強化する。

また、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、臨床像や治療効果、国民の抗体保有状況等の必要な知見を得るため、入院者数や重症者数の収集(入院サーベイランス)及び病原体サーベイランスを行う等有事の感染症サーベイランスを開始する。

89 有事の感染症サーベイランスにおいても、新たな感染症に対し、症例定義に基づき患者の発生動向(患者発生サーベイランス)、入院者数、重症者数の収集(入院サーベイランス)、ウイルスゲノム情報の収集(ゲノムサーベイランス)など複数のサーベイランスを実施する
90 感染症法第 14 条第7項及び第8項に基づく疑似症サーベイランスであり、厚生労働大臣から通知を受けた、当該都道府県が管轄する区域内に所在する病院又は診療所の医師により、二類感染症、三類感染症、四類感染症又は五類感染症の疑似症感染症等で当該感染症にかかった場合の病状の程度が重篤であるものが発生したとき等に、当該感染症の患者を診断し、又は当該感染症により死亡した者の死体を検案したときに届けられるもの

新型インフルエンザ等に感染したおそれのある者から採取した検体を地方衛生研究所等において、亜型等の同定を行い、JIHS は、それを確認する。

(厚生労働省、農林水産省、環境省)

2-2-2 リスク評価に基づく感染症サーベイランスの実施体制の強化

国及び JIHS は、感染症サーベイランスで収集した情報や感染症インテリジェンスで得た知見等に基づき、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、臨床像等について分析を行う。これらを踏まえた初期段階でのリスク評価に基づき、感染症サーベイランスの実施体制の強化等の必要性の評価を行う。(厚生労働省)

2-2-3 リスク評価に基づく感染症対策の判断及び実施

国は、都道府県等及び JIHS と連携し、感染症サーベイランスで収集した情報等を踏まえた初期段階でのリスク評価に基づき、感染症対策を迅速に判断し、実施する。(厚生労働省)

2-3 感染症サーベイランスから得られた情報の共有

国は、都道府県等及び JIHS と連携し、国内の感染症の発生状況等を迅速に把握し、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、ゲノム情報、臨床像等の情報を含め都道府県等に共有するとともに、感染症の発生状況等や感染症対策に関する情報を、国民等へ迅速に提供・共有する。

(厚生労働省)

第3節 対応期

(1) 目的

強化された有事の感染症サーベイランスの実施体制により、各地域の新型インフルエンザ等の発生状況や発生動向の推移、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、臨床像や治療効果、国民の抗体保有状況等に関する情報を収集し、リスク評価や感染症危機管理上の意思決定につなげる。

また、新型インフルエンザ等の発生状況に応じ、適切な感染症サーベイランスの実施体制の検討や見直しを行う。

(2) 所要の対応3-1. 実施体制

国は、JIHS と連携し、新型インフルエンザ等に関する情報収集を迅速に実施できるよう、リスク評価に基づき、有事の感染症サーベイランスの実施体制を整備する。

また、新型インフルエンザ等の発生状況に応じ、感染症サーベイランスの実施方法の必要な見直しを行い、適切な感染症サーベイランスの実施体制の検討や見直しを行う。(厚生労働省)

3-2.リスク評価

3-2-1 有事の感染症サーベイランスの実施

国は、都道府県等及び JIHS と連携し、新型インフルエンザ等の特徴や患者の臨床像等の情報を把握するため、退院等の届出91の提出を求める。また、国は、都道府県等、JIHS 及び関係機関と連携し、国内の新型インフルエンザ等の発生状況や発生動向の推移、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、臨床像等について、流行状況に応じたサーベイランスを実施する。

なお、国内の患者数が増加し、新型インフルエンザ等の特徴や患者の臨床像等の情報や科学的知見が蓄積された時点では、患者の全数把握は、その意義が低下するとともに、都道府県等や医療現場の負担も過大となる。

このため、医療機関からの患者報告による定点把握でも感染動向の把握が可能となった際には、国は、患者数の増加に伴う医療機関や保健所等の業務負担も考慮し、患者の全数把握の必要性を再評価し、定点把握を含めた適切 な感染症サーベイランスの実施体制を検討し、適切な時期に移行を実施する。

91 感染症法第 44 条の3の6に基づく新型インフルエンザ等感染症の患者及び第 50 条の7に基づく新感染症の所見がある者の退院等の届出であり、厚生労働省令で定める感染症指定医療機関の医師によ り、新型インフルエンザ等感染症の患者及び新感染症の所見がある者が退院し、又は死亡したとき に、当該感染症指定医療機関の所在地を管轄する都道府県及び厚生労働省に届けられるもの

都道府県等は、国が実施する感染症サーベイランスのほか、必要に応じ、地域の感染動向等に応じて、独自に判断して感染症サーベイランスを実施する。(厚生労働省、農林水産省、環境省)

3-2-2 リスク評価に基づくサーベイランス手法の検討及び実施

国は、JIHS と連携し、感染症の特徴及び流行状況を踏まえたリスク評価に基づき、全国的な感染症サーベイランスの強化の必要性、感染症サーベイランスの対象及び届出対象者の重点化や効率化等の必要性の評価を行う。初動期以降も、必要に応じて、疫学調査や厚生労働科学研究等により、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、臨床像等について評価を行い、必要な対応や見直しを実施する。(厚生労働省)

3-2-3 リスク評価に基づく感染症対策の判断及び実施

国は、都道府県等及び JIHS と連携し、感染症サーベイランスで収集した情報等を踏まえたリスク評価に基づく感染症対策を迅速に判断及び実施する。また、流行状況やリスク評価に基づき、柔軟かつ機動的に感染症対策を切り替える。(厚生労働省)

3-3 感染症サーベイランスから得られた情報の共有

国は、都道府県等及び JIHS と連携し、感染症サーベイランスにより国内の新型インフルエンザ等の発生状況等を迅速に把握し、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、ゲノム情報、臨床像等の情報を含め都道府県等に共有するとともに、国民等へ新型インフルエンザ等の発生状況等について迅速に提供・共有する。

特に、新型インフルエンザ等対策の強化又は緩和を行う場合等の対応においては、リスク評価に基づく情報を共有し、各種対策への理解・協力を得るため、可能な限り科学的根拠に基づいて国民等に分かりやすく情報を提供・共有する。(厚生労働省)

第4章 情報提供・共有、リスクコミュニケーション

第1節 準備期

(1) 目的

感染症危機下において、対策を効果的に行うためには、国民等、地方公共団体、医療機関、事業者等とのリスク情報とその見方の共有等を通じて、国民等が適切に判断・行動できるようにすることが重要である。このため、平時から、国は国民等の感染症に対する意識を把握し、感染症危機に対する理解を深めるとともに、リスクコミュニケーションの在り方を整理し、体制整備や取組を進める必要がある。

具体的には、国民等が、可能な限り科学的根拠等に基づいて、適切に判断・行動できるよう、平時から普及啓発を含め、感染症対策等について適時に必要な情報提供・共有を行い、感染症に関するリテラシー92を高めるとともに、国による情報提供・共有に対する認知度・信頼度の一層の向上を図る。

また、新型インフルエンザ等が発生した際の円滑な情報提供・共有や、可能な限り双方向のコミュニケーションに基づいたリスクコミュニケーションができるよう、発生状況に応じた国民等への情報提供・共有の項目や手段、情報の受取手の反応や必要としている情報を把握し、更なる情報提供・共有にいかす方法等について整理し、あらかじめ定める。

(2) 所要の対応

1-1 新型インフルエンザ等の発生前における国民等への情報提供・共有

1-1-1 感染症に関する情報提供・共有

国は、平時から JIHS 等と連携して、感染症に関する基本的な情報、基本的な感染対策(換気、マスク着用等の咳エチケット、手洗い、人混みを避ける等)、感染症の発生状況等の情報、新型インフルエンザ等に関する情報や発生時にとるべき行動等その対策等について、国民等の理解を深めるため、各種媒体を利用し、可能な限り多言語で、継続的かつ適時に、分かりやすい情報提供・共有を行う93。これらの取組等を通じ、国による情報提供・共有が有用な情報源として、国民等による認知度・信頼度が一層向上するよう努める。

その際、個人レベルでの感染対策が社会における感染拡大防止にも大きく寄与することについて啓発する。

なお、保育施設や学校、職場等は集団感染が発生する等、地域における感染拡大の起点となりやすいことや、高齢者施設等は重症化リスクが高いと考えられる者の集団感染が発生するおそれがあることから、都道府県及び市町村の保健衛生部局や福祉部局、教育委員会等と連携して、感染症や公衆衛生対策について丁寧に情報提供・共有を行う。また、学校教育の現場を始め、こどもに対する分かりやすい情報提供・共有を行う。(統括庁、文部科学省、厚生労働省、関係省庁)

92 健康に関する医学的・科学的な知識・情報を入手・理解・活用する能力(ヘルスリテラシー)の一環
93 特措法第 13 条第 1 項

1-1-2 偏見・差別等に関する啓発

国は、感染症は誰でも感染する可能性があるもので、感染者やその家族、所属機関、医療従事者等に対する偏見・差別等は、許されるものではなく、法的責任を伴い得ることや、患者が受診行動を控える等感染症対策の妨げにもなること等について啓発する94。これらの取組等を通じ、国による情報提供・共有が有用な情報源として、国民等による認知度・信頼度が一層向上するよう努める。(統括庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、関係省庁)

1-1-3 偽・誤情報に関する啓発

国は、感染症危機下において、偽・誤情報の流布、さらに SNS 等によって増幅されるインフォデミック95の問題が生じ得ることから、AI(人工知能)技術の進展・普及状況等も踏まえつつ、国民等のメディアや情報に関するリテラシーの向上が図られるように、各種媒体を活用した偽・誤情報に関する啓発を行う。(総務省、文部科学省、厚生労働省、関係省庁)

また、例えば、ワクチン接種や治療薬・治療法に関する科学的根拠が不確かな情報等、偽・誤情報の拡散状況等のモニタリングを行い、その状況等を踏まえつつ、科学的知見等に基づいた情報を繰り返し提供・共有する等、国民等が正しい情報を円滑に入手できるよう、適切に対処する。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

これらの取組等を通じ、国による情報提供・共有が有用な情報源として、国民等による認知度・信頼度が一層向上するよう努める。(統括庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、関係省庁)

1-2 新型インフルエンザ等発生時における情報提供・共有体制の整備等国は、情報提供・共有の体制整備等として、以下の取組を行う。

94 特措法第 13 条第 2 項
95 信頼性の高い情報とそうではない情報が入り混じって不安や恐怖と共に急激に拡散され、社会に混乱をもたらす状況

1-2-1 迅速かつ一体的な情報提供・共有の体制整備

① 国は、新型インフルエンザ等の発生状況に応じて国民等へ情報提供・共有する内容について整理する。また、国民等が必要な情報を入手できるよう、高齢者、こども、日本語能力が十分でない外国人、視覚や聴覚等が不自由な方等への適切な配慮をしつつ、情報提供・共有する媒体や方法について整理する。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

② 国として一体的かつ整合的ないわゆるワンボイスでの情報提供・共有を行うことができるよう、記者会見を担当する広報担当官を置くことを含め必要な体制を整備するとともに、関係省庁がワンボイスで行う情報提供・共有の方法等を整理する。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

③ 国は、新型インフルエンザ等発生時に、地方公共団体や業界団体等を通じた情報提供・共有を円滑に行うことができるよう、あらかじめ双方向の情報提供・共有の在り方を整理する。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

④ 国は、個人情報やプライバシーの保護に留意しつつ、感染症対策に必要な情報提供・共有を行うため、感染症の発生状況等に関する公表基準等に関し、地方公共団体における具体的な対応の目安となりやすいよう、感染症の特性等に応じて必要な見直しを行いつつ、関係法令等の解釈や運用の一層の明確化や周知を図る。(厚生労働省)

⑤ 平時から、在京大使館等との連携体制の構築に努めつつ、国際的な情報提供・共有を適切に行う。(外務省、統括庁、厚生労働省、関係省庁)

1-2-2 双方向のコミュニケーションの体制整備や取組の推進

① 国は、可能な限り双方向のコミュニケーションに基づいたリスクコミュ ニケーションを適切に行うことができるよう、偽・誤情報の拡散状況等の モニタリングを含め、情報の受取手の反応や必要としている情報を把握し、更なる情報提供・共有にいかす方法等を整理し、必要な体制を整備する。

(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

② 国は、新型インフルエンザ等発生時に、国民等からの相談に応じるため、国のコールセンター等が設置できるよう準備する。また、都道府県及び市 町村に対し、コールセンター等が設置できるように準備するよう要請する。

(厚生労働省、関係省庁)

③ 国は、国民等が理解しやすい情報提供・共有を行うため、アンケート調 査等を始め、リスクコミュニケーションの研究や取組を推進するとともに、職員に対する研修を実施し、手法の充実や改善に努める。(統括庁、厚生 労働省、関係省庁)

第2節 初動期

(1) 目的

新型インフルエンザ等の発生又は発生の疑いを踏まえ、感染拡大に備えて、国民等に新型インフルエンザ等の特性や対策等についての状況に応じた的確な情報提供・共有を行い、準備を促す必要がある。

具体的には、国民等が、可能な限り科学的根拠等に基づいて、適切に判断・行動できるよう、国民等の関心事項等を踏まえつつ、その時点で把握している科学的根拠等に基づいた正確な情報について、当該感染症に関する全体像が分かるよう、迅速に分かりやすく提供・共有する。

その際、可能な限り双方向のコミュニケーションに基づいたリスクコミュニケーションを行うよう努める。また、感染者等に対する偏見・差別等は許されず、感染症対策の妨げにもなること等について情報提供・共有するとともに、偽・誤情報の拡散状況等を踏まえ、その時点で得られた科学的知見等に基づく情報を繰り返し提供・共有する等、国民等の不安の解消等に努める。

(2) 所要の対応

国は、JIHS 等から提供された、その時点で把握している科学的知見等に基づき、新型インフルエンザ等の特性、国内外における発生状況、有効な感染防止対策等について、当該感染症に関する全体像が分かるよう、国民等に対し、以下のとおり情報提供・共有する。

2-1 迅速かつ一体的な情報提供・共有

① 国は、国民等が情報を受け取る媒体やその受け止めが千差万別であることから、準備期にあらかじめ定めた方法等を踏まえ、利用可能なあらゆる情報媒体を整備・活用し、上記の情報について、迅速かつ一体的に情報提供・共有を行う。

その際、個人レベルでの感染対策が社会における感染拡大防止にも大きく寄与することを含めて、行動変容に資する啓発を進めるとともに、冷静な対応を促すメッセージを発出するよう努める。

また、国民等が必要な情報を入手できるよう、高齢者、こども、日本語能力が十分でない外国人、視覚や聴覚等が不自由な方等への適切な配慮をしつつ、理解しやすい内容や方法での情報提供・共有を行う。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

② 国は、国民等の情報収集の利便性向上のため、関係省庁、地方公共団体、指定(地方)公共機関の情報等について、必要に応じて、集約の上、総覧できるサイトを立ち上げる。(統括庁)

③ JIHS は、国と連携して、国民等に対し、感染症の特性や発生状況等の科学的知見等について、分かりやすく情報提供・共有を行う。(厚生労働省)

④ 国は、準備期にあらかじめ整理された情報提供・共有の在り方を踏まえ、地方公共団体や業界団体等を通じた情報提供・共有を行う。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

⑤ 国は、個人情報やプライバシーの保護に留意しつつ、感染症対策に必要な情報提供・共有を行うため、新型インフルエンザ等の発生状況等に関する公表基準等に関し、地方公共団体における具体的な対応の目安となりやすいよう、改めて、感染症の特性等に応じて必要な見直しを行いつつ、関係法令等の解釈や運用の明確化や周知を行う。(厚生労働省)

⑥ 国は、国際的な情報提供・共有を適切に行う。(外務省、統括庁、厚生労働省、関係省庁)

2-2 双方向のコミュニケーションの実施

① 国は、感染症対策を円滑に進めていく上で、関係者の理解や協力を得る ことが重要であることから、一方向の情報提供だけでなく、SNS の動向やコールセンター等に寄せられた意見等の把握、アンケート調査等を通じて、情報の受取手の反応や関心を把握し、可能な限り双方向のコミュニケーシ ョンに基づくリスクコミュニケーションを行うよう努める。(統括庁、厚 生労働省)

② 国は、ホームページ掲載用や都道府県及び市町村向けの Q&A 等を作成するとともに、コールセンター等を立ち上げる。コールセンター等に寄せられた質問事項等から、国民等の関心事項等を整理し、Q&A 等に反映するとともに、関係省庁で共有し、情報提供・共有に反映する。(厚生労働省、関係省庁)

③ 国は、都道府県及び市町村に対し、オンライン等により Q&A を配布するとともに、コールセンター等の設置を要請する。(厚生労働省、関係省庁)

2-3 偏見・差別等や偽・誤情報への対応

国は、感染症は誰でも感染する可能性があるもので、感染者や医療従事者 等に対する偏見・差別等は、許されるものではなく、法的責任を伴い得るこ とや、患者が受診行動を控える等感染症対策の妨げにもなること等について、その状況等を踏まえつつ、適切に情報提供・共有する。あわせて、偏見・差 別等に関する国、地方公共団体及び NPO 等の各種相談窓口に関する情報を整理し、国民等に周知する。(統括庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、関係 省庁)

また、例えば、ワクチン接種や治療薬・治療法に関する科学的根拠が不確かな情報等、偽・誤情報の拡散状況等のモニタリングを行い、その状況等を踏まえつつ、その時点で得られた科学的知見等に基づく情報を繰り返し提供・共有する等、国民等が正しい情報を円滑に入手できるよう、適切に対処する。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

偏見・差別等や偽・誤情報への対策として、国は SNS 等のプラットフォーム事業者が行う取組に対して必要な要請や協力等を行う。(統括庁、総務省、法務省、厚生労働省、関係省庁)

第3節 対応期

(1) 目的

感染症危機において、対策を効果的に行うためには、リスク情報とその見方の共有等を通じて、国民等が適切に判断や行動できるようにすることが重要である。このため、国は、国民等の関心事項等を踏まえつつ、対策に対する国民等の理解を深め、リスク低減のパートナーとして、適切な行動につながるよう促す必要がある。

具体的には、国民等が、可能な限り科学的根拠等に基づいて、適切に判断・行動できるよう、国民等の関心事項等を踏まえつつ、その時点で把握している科学的根拠等に基づいた正確な情報について、迅速に分かりやすく提供・共有する。

その際、可能な限り双方向のコミュニケーションに基づいたリスクコミュニケーションを行うよう努める。また、個人レベルでの感染対策が社会における感染拡大防止にも大きく寄与することや、感染者等に対する偏見・差別等は許されず、感染症対策の妨げにもなること等について情報提供・共有するとともに、偽・誤情報の拡散状況等を踏まえ、その時点で得られた科学的知見等に基づく情報を繰り返し提供・共有する等、国民等の不安の解消等に努める。

(2) 所要の対応

国は、JIHS 等から提供された、その時点で把握している科学的知見等に基づき、国内外の新型インフルエンザ等の発生状況、感染拡大防止措置等の対策等について、対策の決定プロセスや理由(どのような科学的知見等を考慮してどのように判断がなされたのか等)、実施主体等を明確にしながら、国内の関係機関を含む国民等に対し、以下のとおり情報提供・共有を行う。

3-1 基本的方針

3-1-1 迅速かつ一体的な情報提供・共有

① 国は、国民等が情報を受け取る媒体やその受け止めが千差万別であることから、準備期にあらかじめ定めた方法等を踏まえ、利用可能なあらゆる情報媒体を整備・活用し、上記の情報について、迅速かつ一体的に情報提供・共有を行う。

その際、個人レベルでの感染対策が社会における感染拡大防止にも大きく寄与することを含めて、行動変容に資する啓発を進めるとともに、冷静な対応を促すメッセージを発出するよう努める。

また、国民等が必要な情報を入手できるよう、高齢者、こども、日本語能力が十分でない外国人、視覚や聴覚等が不自由な方等への適切な配慮をしつつ、理解しやすい内容や方法での情報提供・共有を行う。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

② 国は、国民等の情報収集の利便性向上のため、関係省庁、地方公共団体、指定(地方)公共機関の情報等について、必要に応じて、集約の上、総覧できるサイトを運営する。(統括庁)

③ JIHS は、国と連携して、国民等に対し、感染症の特性や発生状況等の科学的知見等について、分かりやすく情報提供・共有を行う。(厚生労働省)

④ 国は、準備期にあらかじめ整理された情報提供・共有の在り方を踏まえ、地方公共団体や業界団体等を通じた情報提供・共有を行う。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

⑤ 国は、個人情報やプライバシーの保護に留意しつつ、感染症対策に必要な情報提供・共有を行うため、新型インフルエンザ等の発生状況等に関する公表基準等に関し、地方公共団体における具体的な対応の目安となりやすいよう、改めて、感染症の特性等に応じて必要な見直しを行いつつ、関係法令等の解釈や運用の明確化や周知を行う。(厚生労働省)

⑥ 国は、国際的な情報提供・共有を適切に行う。(外務省、統括庁、厚生労働省、関係省庁)

3-1-2 双方向のコミュニケーションの実施

① 国は、感染症対策を円滑に進めていく上で、関係者の理解や協力を得る ことが重要であることから、一方向の情報提供だけでなく、SNS の動向やコールセンター等に寄せられた意見等の把握、アンケート調査等を通じて、情報の受取手の反応や関心を把握し、可能な限り双方向のコミュニケーシ ョンを行うよう努める。(統括庁、厚生労働省)

② 国は、ホームページ掲載用や都道府県及び市町村向けの Q&A 等を改定するとともに、コールセンター等の体制を強化する。コールセンター等に寄せられた質問事項等から、国民や事業者等の関心事項等を整理し、Q&A 等に反映するとともに、関係省庁で共有し、情報提供・共有に反映する。(厚生労働省、関係省庁)

③ 国は、都道府県及び市町村に対し、オンライン等により Q&A の改定版を配布するとともに、コールセンター等の継続を要請する。(厚生労働省、関係省庁)

3-1-3 偏見・差別等や偽・誤情報への対応

国は、感染症は誰でも感染する可能性があるもので、感染者や医療従事者等に対する偏見・差別等は、許されるものではなく、法的責任を伴い得ることや、患者が受診行動を控える等感染症対策の妨げにもなること等について、その状況等を踏まえつつ、適切に情報提供・共有する。あわせて、偏見・差 別等に関する国、地方公共団体及び NPO 等の各種相談窓口に関する情報を整理し、国民等に周知する。(統括庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、関係 省庁)

また、例えば、ワクチン接種や治療薬・治療法に関する科学的根拠が不確かな情報等、偽・誤情報の拡散状況等のモニタリングを行い、その状況等を踏まえつつ、その時点で得られた科学的知見等に基づく情報を繰り返し提供・共有する等、国民等が正しい情報を円滑に入手できるよう、適切に対処する。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

偏見・差別等や偽・誤情報への対策として、国は SNS 等のプラットフォーム事業者が行う取組に対して必要な要請・協力等を行う。(統括庁、総務省、法務省、厚生労働省、関係省庁)

3-2 リスク評価に基づく方針の決定・見直し

病原体の性状等が明らかになった状況に応じて、以下のとおり対応する。

3-2-1 封じ込めを念頭に対応する時期

国内での新型インフルエンザ等の発生の初期段階には、封じ込めを念頭に、感染拡大防止を徹底することが考えられる。その際、国民等の感染拡大防止 措置に対する理解・協力を得るため、病原体の性状等について限られた知見 しか把握していない場合は、その旨を含め、政策判断の根拠を丁寧に説明す る。また、国民等の不安が高まり、感染者等に対する偏見・差別等が助長さ れる可能性があることから、国は、改めて、偏見・差別等が許されないこと や感染症対策の妨げにもなること、また、個人レベルでの感染対策が社会に おける感染拡大防止にも大きく寄与すること、国が国民等に不要不急の外出 や県境を越えた移動等の自粛を求める際には、それらの行動制限が早期の感 染拡大防止に必要なものであること、事業者においても速やかな感染拡大防 止対策の取組が早期の感染拡大防止に必要であること等について、可能な限 り科学的根拠等に基づいて分かりやすく説明を行う。(厚生労働省、統括庁、 関係省庁)

3-2-2 病原体の性状等に応じて対応する時期

3-2-2-1 病原体の性状等を踏まえたリスク評価に基づく対策の説明

病原体の性状等を踏まえたリスク評価の分類に基づき、感染拡大防止措置等が見直されることが考えられる。その際、国民等が適切に対応できるよう、その時点で把握している科学的知見等に基づく感染拡大防止措置等について、従前からの変更点や変更理由等を含め、分かりやすく説明を行う。(厚生労働省、統括庁、関係省庁)

3-2-2-2 こどもや若者、高齢者等が重症化しやすい場合の対策の説明

病原体の性状等を踏まえたリスク評価や影響の大きい年齢層に応じて、特措法に基づく措置の強度や国民等への協力要請の方法が異なり得ることから、当該対策を実施する理由等について、可能な限り科学的根拠等に基づいて分かりやすく説明を行う。その際、特に影響の大きい年齢層に対し、重点的に、可能な限り双方向のリスクコミュニケーションを行いつつ、リスク情報とその見方の共有等を通じ、当該対策について、理解・協力を得る。(厚生労働省、統括庁、関係省庁)

3-2-3 特措法によらない基本的な感染症対策への移行期

ワクチンの普及等による集団の免疫の向上、病原体の変異及び新型インフルエンザ等への対応力が一定水準を上回ることにより、特措法によらない基本的な感染症対策へと移行していく段階では、平時への移行に伴い留意すべき点(医療提供体制や感染対策の見直し等)について、丁寧に情報提供・共有を行う。また、個人の判断に委ねる感染症対策に移行することに不安を感じる層がいることが考えられるため、可能な限り双方向のリスクコミュニケーションを行いつつ、リスク情報とその見方の共有等を通じ、当該対策について、理解・協力を得る。順次、広報体制の縮小等を行う。(厚生労働省、統括庁、関係省庁)

第5章 水際対策

第1節 準備期

(1) 目的

平時から水際対策に係る体制整備や研修及び訓練を行うとともに、水際対策の実施に必要な物資及び施設の確保やシステムの整備を行うことにより、海外で新型インフルエンザ等が発生した場合に円滑かつ迅速な水際対策を講じる。

また、海外において感染症情報の収集・提供体制を整備することにより、海外で新型インフルエンザ等が発生した場合に、在外邦人や出国予定者に向けて適時適切な情報提供・共有を行う。

(2) 所要の対応

1-1 水際対策の実施に関する体制の整備

① 国は、水際対策関係者に対し、新型インフルエンザ等に関する基礎的知識の習得のための研修や検疫措置の強化に対応する人材の育成のための研修を行うとともに、水際対策の実効性を高めるため、関係機関との合同実施も含めた訓練を行う。(統括庁、出入国在留管理庁、外務省、財務省、厚生労働省、国土交通省)

② 国は、個人防護具等の備蓄、施設確保及び検査実施能力に係る目標値を定め、定期的にこれらの状況を確認(モニタリング)する。(厚生労働省、出入国在留管理庁、財務省)

③ 国は、検疫法に基づく隔離、停留や施設待機で用いる医療機関、宿泊施設や搬送機関と協定等を締結するとともに、円滑に入院等を行うことができるよう都道府県等との連携体制を構築する。

なお、当該協定は、毎年適切に内容を確認し、必要に応じ更新する。(厚生労働省)

④ 国は、新型インフルエンザ等に対する検疫所における PCR 検査等の検査の実施体制を整備するとともに、必要に応じて最寄りの地方衛生研究所等や民間検査会社に PCR 検査等の検査を依頼できるよう、必要に応じて協定を締結する等協力体制を構築する。(厚生労働省)

⑤ 国は、帰国者等による質問票の入力、帰国者等の健康監視等や都道府県等への情報共有等を円滑に行う上で必要なシステムを整備し、随時更新する。(厚生労働省、デジタル庁)

⑥ 国は、新型インフルエンザ等の発生に備え、帰国者等の検疫措置の強化、検疫飛行場及び検疫港の集約化、船舶・航空機の運航制限の要請、入国制限、査証制限等の水際対策の実施に係る体制整備を進める。(厚生労働省、出入国在留管理庁、外務省、国土交通省)

1-2 在外邦人や出国予定者への情報提供・共有に関する体制の整備

① 国は、諸外国・地域(特に日本各地との定期便による交流がある国・地域)における新型インフルエンザ等の感染状況や水際対策に係る情報を収集する体制を構築する。(厚生労働省、外務省)

② 国は、在外邦人や出国予定者に対し、収集した情報を分かりやすく提供・共有し、注意喚起を行う体制を構築する。(厚生労働省、外務省)

1-3 地方公共団体等との連携

国は、検疫法の規定に基づく協定を締結する96に当たり、医療機関や都道府県と連携するとともに、有事に備えた訓練の実施を通じて、平時から医療機関や都道府県等との連携を強化する。(厚生労働省)

96 検疫法第 23 条の4

第2節 初動期

(1) 目的

病原体の国内侵入を完全に防ぐことは困難であるということを前提としつつ、新型インフルエンザ等の特徴や海外における感染拡大の状況等を踏まえ、迅速に水際対策の内容を検討し、実施することにより、国内への新型インフルエンザ等の病原体の侵入や感染拡大のスピードをできる限り遅らせ、国内の医療提供体制等の確保等の感染症危機への対策に対する準備を行う時間を確保する。

なお、発生当初等の感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)に関する情報が限られている場合には、過去の知見等も踏まえ、病原性、感染性等が高い場合のリスクを想定し、強力な水際対策を実施する必要があるが、常に新しい情報を収集し97、対策の必要性を評価し、更なる情報が得られ次第、適切な対策へと切り替える。また、状況の進展に応じて、水際対策の見直しを行う。

(2) 所要の対応

2-1 新型インフルエンザ等の発生初期の対応

① 国は、新型インフルエンザ等の発生が疑われる場合には、発生国・地域又は発生国・地域から第三国(発生国・地域以外の国・地域をいう。以下同じ。)を経由して我が国へ来航する船舶・航空機について、船舶・航空会社等の協力を得ながら、出発地、搭乗者数、国籍ごとの帰国者等数等の情報を収集する。(出入国在留管理庁、国土交通省)

② 国は、主要国及び発生国・地域の発生状況や水際対策についての情報収集を行う。(厚生労働省、外務省)

③ 国は、新型インフルエンザ等の発生が疑われる場合には、WHO が急速にまん延するおそれのある新たな感染症の発生を公表(PHEIC 宣言等)する前であっても、帰国者等への質問票の配布等98により、発生国・地域での滞在の有無や健康状態等を確認し、帰国・入国時の患者等の発見に努める。また、発生国・地域から第三国経由で帰国・入国する者に対し、船舶・航空会社等の協力を得ながら、質問票の配布に加えて旅券の出国証印の確認を実施する等、発生国・地域での滞在の有無を把握し、検疫の効果を高める。(厚生労働省、出入国在留管理庁、国土交通省)

④ 国は、入国審査や税関において、新型インフルエンザ等に感染したおそれのある者を発見した場合は、直ちに検疫所に通報し指示を仰ぎ、検疫手続に差し戻す99。(出入国在留管理庁、財務省)

97 検疫において実施する陽性者への診察や健康監視等によって得られる、陽性者の感染症発症時期や症状の推移等に関する情報も、当該感染症の知見を得る上で重要である
98 検疫法第 12 条

⑤ 国は、有症状者(発熱、咳等、健康状態に何らかの異状を呈している者をいう。以下同じ。)が搭乗手続をしようとした場合には、必要に応じて搭乗拒否を行うよう、船舶・航空会社等に要請する。(厚生労働省、国土交通省)

⑥ 国は、船内又は機内において有症状者を発見した場合に、船内又は機内における必要な感染症対策を講じるよう、船舶・航空会社等に対応を要請する。(厚生労働省、国土交通省)

⑦ 国は、全ての帰国者等に対し船舶・航空会社等の協力を得ながら、帰国・入国後に発症した場合の留意事項を記載した健康カードの配布等により帰国・入国後の患者の発見に努める。(厚生労働省)

⑧ 国は、在外邦人や出国予定者に対し、収集した情報を分かりやすく提供・共有し、注意喚起を行う。(厚生労働省、外務省)

⑨ 国は、新型インフルエンザ等の発生が疑われる場合には、WHO による急速にまん延するおそれのある新たな感染症の発生の公表(PHEIC 宣言等) 等の有無にかかわらず、感染症危険情報を発出し、在外邦人や出国予定者に対し、不要不急の渡航の中止等の注意喚起を行う。発生国・地域の状況等を総合的に勘案し、渡航中止勧告や退避勧告を検討する。(外務省)

⑩ 国は、事業者に対し、必要に応じ、発生国・地域への出張を避けるよう要請する。また、国は、関係省庁や現地政府からの情報収集を行いつつ、海外駐在員や海外出張者がいる事業者に対し、必要に応じ、速やかに帰国させるよう要請する。(業所管省庁)

⑪ 国は、水際対策関係者に対して、必要に応じて、個人防護具の着用、特定接種、患者からウイルスの曝露を受けた場合の抗ウイルス薬の予防投与等の必要な感染対策を講じる。(厚生労働省、出入国在留管理庁、財務省)

2-2 新型インフルエンザ等の検疫法上の類型の決定等100

国は、当該感染症が、検疫法上の感染症の類型のいずれかに該当するかの検討を行い、必要に応じて感染症の政令指定を行う。(厚生労働省)

2-3 検疫措置の強化

① 国は、検疫を実施する港及び空港内の待機・検査等のスペースや動線の確保等について、港又は空港管理会社等と調整し、検疫措置の環境整備を行う。(厚生労働省、国土交通省)

99 検疫法第 23 条の6
100 検疫法第 2 条、第 34 条、第 34 条の2

② 国は、JIHS と連携し、PCR 検査等の検査を実施するための技術的検証を行い、検疫所が保有する検査機器が活用できる体制を整備する(第1節(準備期)1-1④で協力体制を構築した地方衛生研究所等や民間検査会社を含む。)。(厚生労働省)

③ 国は、隔離・停留や宿泊施設での待機要請の対象となる者を収容・待機させる施設や搬送手段を第1節(準備期)1-1③の協定等に基づき確保する。(厚生労働省)

④ 国は、検疫対象者が増加して、停留施設の不足により停留の実施が困難であると認められる場合には、特定検疫港及び特定検疫飛行場(以下「特定検疫港等」という。)101の周辺の施設の管理者の同意を得て当該施設を使用することを原則とし、その管理者が正当な理由なく同意を行わない場合は、当該施設の特措法に基づく使用102を検討する。(厚生労働省)

⑤ 国は、診察、検査、隔離、停留、宿泊施設や居宅等での待機要請及び健康監視等を実施する。その対象範囲について、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、当該発生国・地域の感染状況、検査実施能力、医療機関や宿泊施設の確保状況等を踏まえ、決定し、実施する。

(統括庁、厚生労働省)

⑥ 国は、検査の結果、陽性者については、隔離103(医療機関)、宿泊施設での待機要請104を実施する。(厚生労働省)

⑦ 国は、陰性者や検査対象外の者については、上記⑤により定めた対象範囲に従って、医療機関又は宿泊施設での停留105、宿泊施設又は居宅等での待機要請106、健康監視107を実施する。なお、検査での陽性者の状況や発生国・地域の感染状況等に応じて、停留、待機要請及び健康監視の対象者の範囲を変更する。(厚生労働省)

⑧ 国は、居宅等待機者については、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)を踏まえ、居宅等への移動108に関し公共交通機関の不使用を要請する。(厚生労働省)

⑨ 国は、当該感染症について、無症状病原体保有者からの感染が見られる場合は、当該感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性)等を踏まえ、上記⑤から⑦までの検疫体制の強化を図る。(厚生労働省)

101 特措法第 29 条
102 特措法第 29 条
103 検疫法第 14 条第1項第1号及び第 15 条第1項
104 検疫法第 14 条第1項第3号及び第 16 条の2第1項
105 検疫法第 14 条第1項第2号及び第 16 条第2項
106 検疫法第 14 条第1項第3号及び第 16 条の2第2項
107 検疫法第 18 条第4項
108 検疫法第 14 条第1項第3号及び第 16 条の2第2項

⑩ 国は、検疫法に基づく検疫感染症の発生又はまん延を防止するための指示及び居宅等での待機指示や外出していないことの報告徴収等水際対策を徹底するための措置109並びに水際対策への協力が得られない者に対する措置の実施を検討する。また、これらの措置を含めた水際対策の内容を広く国内外に周知する。(厚生労働省)

⑪ 国は、検疫措置を適切に行うため、海外における発生状況、船舶・航空機の運航状況、検疫体制の確保状況を踏まえ、特定検疫港等110を定め集約化を図る。(厚生労働省、国土交通省)

⑫ 国は、検疫措置の強化に伴い、検疫実施空港・港及びその周辺において必要に応じた警戒活動等を行い、また、警戒活動等を行うよう都道府県警察等を指導又は調整する。(警察庁、海上保安庁)

2-4 入国制限等

① 国は、WHO や諸外国の動向も踏まえつつ、感染症の特徴や病原体の性状(病原性、感染性、薬剤感受性等)、発生国・地域の感染状況等を勘案して、上陸拒否対象国・地域の指定及び同国・地域からの外国人の入国の原則停止等について、政府対策本部で決定する。(統括庁、出入国在留管理庁、外務省、厚生労働省)

② 国は、外国人の入国の原則停止等の政府対策本部決定に基づき、指定された上陸拒否対象国・地域に滞在歴のある外国人について、出入国管理及び難民認定法(昭和 26 年政令第 319 号。以下「入管法」という。)第5条第1項第 14 号111に該当するものとして上陸を拒否する。(出入国在留管理庁、外務省、厚生労働省)

③ 国は、海外の感染状況や検疫体制等に応じ、帰国を希望する在外邦人の 数にも留意しつつ入国者総数の上限数を設定し、入国者総数の管理を行う。具体的には、下記⑤の船舶・航空機の運航の制限等により実施する。(統 括庁、出入国在留管理庁、外務省、厚生労働省、国土交通省)

④ 国は、外国人の入国の原則停止等の政府対策本部決定に基づき、必要な査証制限112(発給済み査証の効力停止、査証審査の厳格化、査証免除措置の一時停止等)を行う。(外務省)

⑤ 国は、検疫体制等を踏まえ新型インフルエンザ等の国内への侵入を防止するため必要な場合には、船舶・航空会社に対し、発生国・地域から発航又は来航する船舶・航空機の運航の制限113を要請する。(統括庁、出入国在留管理庁、外務省、厚生労働