書籍『大いなる信頼詐欺:コンサルティング産業はいかにして私たちのビジネスを弱体化させ、政府を幼稚化させ、経済を歪めているか』 2023年

欺瞞・真実

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『THE BIG CON: How the Consulting Industry Weakens our Businesses, Infantilizes our Governments and Warps our Economies』Mariana Mazzucato and Rosie Collington (2023)

『THE BIG CON: コンサルティング産業はいかにして私たちのビジネスを弱体化させ、政府を幼稚化させ、経済を歪めているか』マリアナ・マッツカート&ロージー・コリングトン (2023)

目次

  • 序章:ビッグ・コン ― 信頼詐欺 / Introduction: The Big Con – A Confidence Trick
  • 第1章 コンサルティング産業とは何か? / What is the Consulting Industry?
  • 第2章 コンサルティングの起源:簡潔な歴史 / Where Consulting Came From: A Brief History
  • 第3章 アウトソーシングへの転換:コンサルタントによる政府運営と第三の道 / The Outsourcing Turn: Government by Consultancy and the Third Way
  • 第4章 ビッグ・コンという信頼詐欺:コンサルトロジーと経済地代 / The Big Confidence Trick: Consultology and Economic Rents
  • 第5章 リスク回避と報酬の収穫:ビジネスモデル / Evading the Risks, Reaping the Rewards: The Business Model
  • 第6章 組織の幼稚化:政府とビジネス全体で学習が損なわれるとき / Infantilizing Organizations: When Learning Is Undermined Across Government and Business
  • 第7章 衝突する利害:コンサルティングと民主主義 / Colliding Interests: Consultancies and Democracy
  • 第8章 気候変動コンサルティング:存亡の危機? / Climate Consulting: An Existential Threat?
  • 第9章 結論:舵を取るために漕ぐ政府 / Conclusion: A Government That Rows So It Can Steer

本書の概要

短い解説:

本書は、巨大コンサルティング産業が現代資本主義において果たしている構造的な問題を批判的に分析し、その肥大化が企業や政府の能力を空洞化させ、経済や民主主義、気候変動対策に深刻な悪影響を及ぼしていることを明らかにする。政策決定者、ビジネスリーダー、一般市民に向け、コンサル依存からの脱却と、組織内での能力構築の重要性を訴える。

著者について:

マリアナ・マッツカートはユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)教授で、イノベーションと公共価値における経済学を専門とする。UCLに公共価値のためのイノベーション政策研究所(IIPP)を設立し、「起業家国家」論で知られる。政府の積極的な役割と公共目的に基づく経済変革を提唱する。ロージー・コリングトンはIIPPの博士課程学生であり、ガーディアン紙などに執筆するライターでもある。

テーマ解説

  • 主要テーマ:コンサルティング産業の政治的経済学 [巨大コンサルティング企業の台頭とその経済・社会への影響の分析]
  • 新規性:「ビッグ・コン」と「コンサルトロジー」の概念 [コンサル産業が価値創造以上の「経済地代」を抽出する仕組みを理論化]
  • 興味深い知見:組織の「幼稚化」 [アウトソーシングが組織の学習能力と適応能力を永続的に損なうプロセス]

キーワード解説(1~3つ)

  • 経済地代:生産要素が価値創造に対して実際に貢献した分を超えて得られる所得。コンサル産業は提供価値以上の巨額の報酬を得ている。
  • コンサルトロジー:コンサルティング産業が自らの価値を信じ込ませ、巨額の契約を獲得するために用いる実践、手法、言説の体系。
  • 幼稚化:組織が核心的な機能を外部委託し続けることで、内部の知識、スキル、能力(ケイパビリティ)が失われ、自律的に学習し適応する能力が損なわれる状態。

3分要約

本書『THE BIG CON』は、マッキンゼー、BCG、ベインの「ビッグ3」やPwC、デロイト、KPMG、EYの「ビッグ4」に代表される巨大コンサルティング産業が、現代資本主義の欠陥を利用して「経済地代」を搾取し、私たちのビジネス、政府、経済に深刻な害を及ぼしていることを暴く。コンサルティングは専門知識の仲介役として始まったが、今日その産業は空前の規模に膨れ上がり、政府や企業の核心的な機能の戦略策定から運営、実施に至るまで深く関与するようになった。この現象を著者らは「ビッグ・コン」(大いなる信頼詐欺)と名付ける。

この「詐欺」は犯罪ではなく、コンサル産業が、空洞化し自信を失った政府と、短期的な株主価値最大化を迫られる企業を相手に、自らが提供する価値以上の巨額の報酬(経済地代)を獲得する仕組みを指す。その手法(コンサルトロジー)には、トップ大学出身者の採用、難解なフレームワークや「ケース」の活用、学術的な体裁をとったリサーチ機関や出版物の運営などがあり、クライアントに自らの不可欠性と卓越性を信じ込ませる。

コンサルへの過度な依存は、組織に壊滅的な影響をもたらす。政府部門が機能を外部委託し続けると、内部の知識とスキルは失われ、組織は「幼稚化」する。これにより、将来の課題に適応し、学習し、革新する能力が損なわれる。パンデミック対応や気候変動対策のような複雑な問題に対して、政府は自ら「舵を取る」(戦略を立てる)ためにこそ、自ら「漕ぐ」(実行する)能力を保持しなければならないのである。

ビッグ・コンは民主主義をも危うくする。コンサルティング契約は不透明であり、しばしば重大な利益相反を内包する。例えば、気候変動対策を政府に助言する一方で、最大の排出者である化石燃料企業にもサービスを提供する。また、税制立法に関与しながら、同時にクライアントに税回避策を助言する。このような「道路の両側」での活動は、公共の利益よりもコンサル自身の利益や他の大口クライアントの利益を優先させるインセンティブを生み出す。

結論で著者らは、この依存症から脱却し、価値創造経済を構築するための具体的な解決策を提示する。政府は市場の「修正者」ではなく「形成者」としての新しいビジョンと役割を確立し、内部能力への投資を通じてリスクを取る「起業家的な国家」となるべきだと主張する。また、契約には学習と独立性の獲得を組み込み、コンサル企業のクライアント情報の開示を義務付けるなど、透明性を高める改革が必要である。要するに、政府は将来の課題に立ち向かうために、戦略を立てる(舵を取る)能力を維持するためにこそ、実行(漕ぐ)能力を保持しなければならないのである。

各章の要約

序章:ビッグ・コン ― 信頼詐欺

コンサルティング産業は、パンデミック対応から気候戦略まで、現代の巨大課題の核心に関与し、その市場規模は急速に拡大している。しかし、この遍在性は健全ではない。本書が「ビッグ・コン」(大いなる信頼詐欺)と呼ぶ現象は、コンサル産業が、空洞化し自信を失った組織から、提供した価値に見合わない巨額の報酬(経済地代)を搾取する仕組みを指す。これは犯罪ではなく、コンサル産業のビジネスモデルと現代資本主義の欠陥が生み出す構造的問題である。コンサルへの過度な依存は、組織の「学習-by-doing(実践を通じた学習)」を阻害し、組織を「幼稚化」させる。私たちはコンサル依存症から脱却し、政府と企業の内なる能力構築に投資する必要がある。

第1章 コンサルティング産業とは何か?

コンサルティング産業は、ビッグ3、ビッグ4を筆頭とする多国籍企業によって支配されている。COVID-19パンデミックへの各国政府の対応は、コンサルタントへの依存の度合いを如実に示した。フランスや英国などでは、ワクチンロールアウトや検査追跡システムの管理といった中核的な業務にまでコンサルタントが動員され、巨額の契約が結ばれた。この産業のグローバル市場規模は推定7000億~9000億ドルに上り、その収益の大部分は北米と欧州からもたらされている。しかし、収益データだけでは、コンサル産業の経済全体への影響力の広がりは測れない。インドやケニア、インドネシアなどでは、国家経済政策の策定そのものにコンサルタントが深く関与しており、その役割は単なる助言を超えている。

第2章 コンサルティングの起源:簡潔な歴史

コンサルティングの起源は19世紀末の「技術コンサルタント」やフレデリック・テイラーの「科学的管理法」に遡る。しかし、その役割と規模が決定的に変化したのは1980年代、新自由主義(ネオリベラリズム)の台頭とともにである。サッチャー英首相やレーガン米大統領のもとで推進された民営化、行政改革(ニュー・パブリック・マネジメント)は、コンサルティング産業に空前のビジネスチャンスをもたらした。コンサルはこれらの改革の「実行部隊」として機能し、同時にそれらを推進するイデオロギーの「伝達者」ともなった。この流れは第三の道(Third Way)を掲げたクリントン政権やブレア政権においても加速し、政府の役割は「舵を取る」(戦略策定)ことに特化し、「漕ぐ」(サービス提供)ことは民間委託されるという「請負政府」のモデルが確立されていった。

第3章 アウトソーシングへの転換:コンサルタントによる政府運営と第三の道

第三の道の政治のもとで、コンサルへの依存は新たな段階を迎えた。民間財政イニシアチブ(PFI)やプライム・コントラクティング(元請け契約)といった大規模で複雑な請負モデルが導入され、公共サービスのアウトソーシングが大規模化・長期化した。ITの普及に伴う「電子政府」化も、政府のIT機能をコンサルタントやベンダーに委ねる潮流を強めた。2008年の金融危機後、多くの政府が緊縮財政(オーストリティ)を採用すると、管理コスト削減の圧力から公共部門はさらにコンサルへの依存を深めた。英国の建設・サービス請負業者キャリリオンの破綻は、このアウトソーシング・モデルに内在するリスクと、監査とコンサルティングの利益相反という構造的問題を露わにした。

第4章 ビッグ・コンという信頼詐欺:コンサルトロジーと経済地代

コンサル産業の成長を、単にその機能的な価値(知識の仲介、コスト削減)で説明することはできない。むしろ、コンサル産業は「コンサルトロジー」と呼ばれる一連の実践を通じて、クライアントに自らの価値を信じ込ませ、「経済地代」を抽出している。その手法には、トップ大学からの人材採用、「アップ・オア・アウト」のキャリアパスによる広範な「同窓生ネットワーク」の形成、学術的な体裁をとったリサーチ機関や出版物の運営、過去のプロジェクト履歴(ケース)のデータベース化などがある。コンサルは、しばしばクライアント組織内部の政治的駆け引きにおいて、経営陣の既存の決定を正当化する「ゴム印」として利用される。

第5章 リスク回避と報酬の収穫:ビジネスモデル

コンサルティング産業のビジネスモデルの核心は、リスクと報酬の著しい不均衡にある。英国のEU離脱(ブレクジット)は、その複雑さと前例のなさから、コンサルティングにとって格好のビジネスチャンスとなった。政府や企業は不確実性を減らす助言をコンサルに求め、巨額の契約が結ばれた。しかし、コンサルの助言が失敗に終わった場合のリスクのほとんどは、クライアント(そして最終的には市民)が負うことになる。コンサル企業は有限責任パートナーシップなどの形態をとることで、失敗のコストに対する責任を限定している。このリスクと報酬の非対称性(モラル・ハザード)が、コンサル産業による地代の搾取を可能にする土壌となっている。

第6章 組織の幼稚化:政府とビジネス全体で学習が損なわれるとき

コンサルへの大規模なアウトソーシングは、組織から「学習する能力」を奪い、「幼稚化」させる。組織の能力と知識は、内部のリソースと従業員の暗黙知の上に、時間をかけて累積的に発展する動的なものである。スウェーデンの「世界一高価な病院」ニャ・カロリンスカ・ソルナのPFIプロジェクトや、デンマークのデジタル政府化の事例は、外部委託が如何に組織の内部知識を侵食し、将来の適応と革新の能力を損なうかを示す。企業においても、コンサル主導のリストラやダウンサイジングは、長期的なイノベーションの基盤となる組織学習を阻害する。ヴァリーアント制药の破綻は、コンサル流の「株主価値最大化」戦略(研究開発の削減、買収と薬価つり上げ)が、真の価値創造(新薬開発)を如何に損なうかの典型例である。

第7章 衝突する利害:コンサルティングと民主主義

コンサル産業の活動は、民主主義の基盤を侵食する。プエルトリコの債務再建においてマッキンゼーは、緊縮財政と民営化を勧告する一方で、自社の投資部門がプエルトリコの債権を保有するという利益相反に陥っていた。英国では、ビッグ4会計事務所が税制立法の草案に関与した後、その知識を利用して企業に税回避策を助言していた。コンサルは、企業が労働組合との交渉において労働条件の切り下げを正当化するためにも利用される。コンサル契約の不透明性と、コンサルが「道路の両側」で活動することは、公共の利益よりも私的な利益を優先させる構造を生み出し、民主的な説明責任を弱体化させる。

第8章 気候変動コンサルティング:存亡の危機?

気候危機への関心の高まりは、コンサルティング産業にとって新たな「波」となっている。しかし、その関与は必ずしも真の変革をもたらすものではない。オーストラリア政府は、国内の科学研究機関CSIROではなくマッキンゼーを選び、2050年ネット・ゼロ達成計画の策定を委託した。その結果できた計画は、実現性に乏しく、不確実な技術革新と問題のある「オフセット」に過度に依存する内容であった。マッキンゼーは、気候政策を策定する国連機関に助言する一方で、世界有数の汚染企業43社にもサービスを提供するという利益相反がある。ESG(環境・社会・ガバナンス)投資に関するコンサルティングは、実質的な影響よりも「コミットメントの見せかけ」を提供し、政府による本格的な規制を遅らせる「危険な distraction(気散じ)」として機能している。

第9章 結論:舵を取るために漕ぐ政府

コンサル依存症から脱却し、価値創造経済を構築するためには、四つの根本的な改革が必要である。第一に、政府は市場の「修正者」ではなく「形成者」としての新しいビジョンと役割を確立し、内部能力への投資を通じてリスクを取る「起業家的な国家」となること。第二に、公共部門のキャリアの魅力を高め、内なる能力構築に積極的に投資すること。第三に、契約評価に「学習」と「独立性の獲得」を組み込み、単なる取引を超えた価値創造を図ること。第四に、コンサル企業のクライアント情報の開示を義務付け、利益相反のリスクを可視化することである。政府が将来の課題に立ち向かうために、戦略を立てる(舵を取る)能力を維持するためにこそ、実行(漕ぐ)能力を保持しなければならない。


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