
英語タイトル:『Tragedy and Hope:A History of the World in Our Time』Carroll Quigley 1966
日本語タイトル:『悲劇と希望:現代世界の歴史』キャロル・クィグリー 1966年
目次
- 序章:世界情勢における西洋文明 / Western Civilization In Its World Setting
- 第1章:1914年までの西洋文明 / Western Civilization to 1914
- 第2章:1917年までのロシア帝国 / The Russian Empire to 1917
- 第3章:緩衝地帯 / The Buffer Fringe
- 第4章:第一次世界大戦、1914-1918年 / The First World War, 1914-1918
- 第5章:ヴェルサイユ体制と「正常化」への回帰、1919-1929年 / The Versailles System and the Return to “Normalcy”, 1919-1929
- 第6章:金融、商業政策、および経済活動、1897-1947年 / Finance, Commercial Policy, and Business Activity, 1897-1947
- 第7章:国際社会主義とソビエトの挑戦 / International Socialism and the Soviet Challenge
- 第8章:カイゼルからヒトラーへ、ドイツ1913-1945年 / Germany From Kaiser to Hitler, 1913-1945
- 第9章:イギリス:宥和政策の背景、1900-1939年 / Britain:The Background To Appeasement, 1900-1939
- 第10章:変容する経済パターン / Changing Economic Patterns
- 第11章:宥和政策 / The Policy of Appeasement
- 第12章:ヨーロッパの分裂、1937-1939年 / The Distruption of Europe, 1937-1939
- 第13章:第二次世界大戦:侵略の波、1939-1941年 / World War II:The Tide of Aggression, 1939-1941
- 第14章:第二次世界大戦:侵略の退潮、1941-1945年 / World War II:The Ebb of Aggression, 1941-1945
- 第15章:新時代 / The New Age
- 第16章:核競争と冷戦:アメリカの原子力優位、1945-1950年 / Nuclear Rivalry and the Cold War:American Atomic Supremacy, 1945-1950
- 第17章:核競争と冷戦:水爆競争、1950-1957年 / Nuclear Rivalry and the Cold War:The Race for the H-Bomb, 1950-1957
- 第18章:新時代、1957-1964年 / The New Era, 1957-1964
- 第19章:悲劇と希望:展望の中の未来 / Tragedy and Hope:The Future in Perspective
本書の概要:
短い解説:
本書は、1890年代半ばから1960年代半ばにかけての世界史、特に西洋文明の興隆と危機を、政治、経済、軍事、社会、思想の複合的視点から包括的に分析することを目的とする。専門家だけでなく、現代世界の成り立ちを深く理解したい一般読者をも対象とした文明論的歴史書である。
著者について:
著者キャロル・クィグリー(1910-1977年)は、アメリカの歴史学者でジョージタウン大学教授を務めた。西洋文明史の大家として知られ、ビル・クリントン元大統領など多くの政治家・学者に影響を与えた。本書では、国際金融資本や秘密結社などの非公式ネットワークを含む、歴史を動かす「機関」と「組織」の役割に着目する独自の分析視点を提示する。膨大な一次資料と自身の体験に基づく実証的な記述が特徴である。
テーマ解説
- 主要テーマ:西洋文明の危機と再生 [20世紀における西洋文明の内部崩壊のプロセスと、そこからの再生の可能性を探る]
- 新規性:組織ネットワーク史観 [国家やイデオロギーだけでなく、銀行、企業、学会、秘密結社などの国際的なネットワークが歴史形成に果たした役割を重視する]
- 興味深い知見:拡大と統合のパターン [歴史は単なる偶然の積み重ねではなく、文明の「拡大」と「統合」を繰り返す一定のパターンに沿って展開するとの見解]
キーワード解説(1~3つ)
- 悲劇と希望:[人類が自ら招いた戦争や混乱という「悲劇」と、それを乗り越えより良い社会を築くための「希望」が歴史の両輪であるという著者の史観]
- 金融資本ネットワーク:[19世紀後半から台頭した国際的な銀行家グループのネットワークが、世界経済や国際政治に決定的な影響力を持ったとする分析]
- 武器技術の差:[西洋が世界を支配できた根本的要因を、軍事技術、特に火器の性能差に求める独自の軍事史観]
3分要約
本書『悲劇と希望』は、19世紀末から20世紀半ばにかけての西洋文明の劇的な軌跡を描く大歴史書である。著者クィグリーは、歴史を単なる事件の年表的羅列ではなく、文明という有機体の「拡大」と「統合」のプロセスとして捉える。その視点から、西洋文明が如何に頂点を極め、そして二度にわたる世界大戦という「悲劇」を通じて自壊の危機に瀕したかを分析する。
物語は、西洋文明が世界を圧倒的な力で覆い尽くした19世紀末の光景から始まる。その成功の基盤は、産業力、科学技術、そして特に「武器技術の差」にあった。しかし、その覇権の頂点で、西洋世界内部には深刻な亀裂が生じていた。英独の激しい覇権争い、大国主義的な国民国家の台頭、資本主義の不安定性、そして社会主義という新たなイデオロギーの挑戦である。これらの緊張は、第一次世界大戦という未曾有の破壊をもたらし、ヨーロッパ中心の世界秩序は根本から揺らいだ。
戦後のヴェルサイユ体制は脆弱な基盤の上に築かれた。クィグリーは、この時期の国際関係を理解する上で、ロンドンとニューヨークを中心とした国際金融ネットワークの役割を重視する。このネットワークは世界経済の復興と安定を図ったが、1929年の世界大恐慌はその努力を水泡に帰した。経済の崩壊は政治の極端化を招き、一方でファシズムとナチズムが台頭し、他方でスターリン体制下のソ連が独自の道を歩み始める。
著者は、第二次世界大戦への道筋を、英仏による「宥和政策」の失敗として詳細に検証する。ヒトラーのドイツに対する過剰な譲歩が、かえって侵略の野望を膨らませ、より大規模な戦争を招いたというのである。第二次世界大戦は、西洋文明内部の最終的な破壊戦争であったと同時に、その主導権がヨーロッパから米ソという二つの「側縁」大国に移行する画期となった。
戦後世界は、核兵器を背景とした米ソの冷戦という新たな対立構造に規定された。クィグリーは核兵器の登場が国際政治の根本 logic を変えたことを強調する。全面戦争は自殺行為となったため、代理戦争、イデオロギー戦、そして恐怖の均衡(バランス・オブ・テラー)を通じた競争が支配的となった。しかし、1960年代前半に至り、著者は一定の「希望」を見いだす。米ソ間ですら不完全ながらも共存の模索が始まり、核戦争の回避という最低限の合意が形成されつつあった。さらに、欧州統合の動きや脱植民地化の進展は、国民国家中心の古い秩序を超える新たな可能性を示唆していた。
結論においてクィグリーは、西洋文明は確かに深刻な危機に直面したが、完全に滅びたわけではないと論じる。むしろ、この「悲劇」の体験から、人類はより包括的で平和な世界秩序を構築するための「希望」の種を学んだのである。歴史は終わっておらず、人類の未来は、過去の過ちから学び、新たな統合の道を選択するか否かにかかっている。
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