英語タイトル:『Ours to Hack and to Own:The Rise of Platform Cooperativism, a New Vision for the Future of Work and a Fairer Internet』Trebor Scholz, Nathan Schneider (eds.) [2016]
日本語タイトル:『オアーズ・トゥ・ハック・アンド・トゥ・オウン:プラットフォーム協同組合主義の台頭―仕事の未来とより公正なインターネットのための新たなビジョン』トレバー・ショルツ、ネイサン・シュナイダー 編 [2016]
目次
- 第一部 肯定すべきもの / Part 1:Something to Say Yes To
- 第1章 これは何であり、何でないか / What This Is and Isn’t About
- 第2章 言葉の意味 / The Meanings of Words
- 第3章 プラットフォーム協同組合主義がいかにネットワークを解放できるか / How Platform Cooperativism Can Unleash the Network
- 第5章 協同組合企業に関する8つの事実 / Eight Facts about Cooperative Enterprise
- 第二部 プラットフォーム資本主義 / Part 2:Platform Capitalism
- 第6章 今こそルネサンス / Renaissance Now
- 第7章 新興空間における旧来の排除 / Old Exclusion in Emergent Spaces
- 第8章 資本主義より悪いもの / Worse Than Capitalism
- 第9章 非「共有」経済はいかに労働者を脅かすか / How the Un-Sharing Economy Threatens Workers
- 第10章 スポンジ・ボブ、なぜもっと働かないの? / SpongeBob, Why Don’t You Work Harder?
- 第11章 オンデマンド経済における携帯可能な評判 / Portable Reputation in the On-Demand Economy
- 第12章 反=脱仲介化への反撃 / Counterantidisintermediation
- 第13章 オープンアクセスからデジタル・コモンズへ / From Open Access to Digital Commons
- 第三部 我々自身のインターネット / Part 3:An Internet of Our Own
- 第14章 協同組合主義の現実主義 / The Realism of Cooperativism
- 第15章 プラットフォーム協同組合のための三つの不可欠な構成要素 / Three Essential Building Blocks for Your Platform Cooperative
- 第16章 プラットフォーム協同組合を始めたいなら… / So You Want to Start a Platform Cooperative…
- 第17章 「協同組合」の意味 / What We Mean When We Say “Cooperative”
- 第18章 異なる種類のスタートアップが可能だ / A Different Kind of Startup Is Possible
- 第19章 ポジティブなプラットフォームのデザイン / Designing Positive Platforms
- 第20章 便利な連帯:プラットフォーム協同組合主義のためのデザイン / Convenient Solidarity:Designing for Platform Cooperativism
- 第21章 プライバシーのためのデザイン / Designing for Privacy
- 第22章 クラウドファンディングがいかに管理責任へと変わるか / How Crowdfunding Becomes Stewardship
- 第23章 分散所有の経済的障壁と推進要因 / Economic Barriers and Enablers of Distributed Ownership
- 第24章 組合にはプラットフォーム・パワーがある / There Is Platform-Power in a Union
- 第25章 低賃金労働者とその地域社会のためのアプリづくり / Making Apps for Low-Wage Workers and Their Neighborhoods
- 第26章 クラウド:本質的に協力的だが、不自然に沈黙させられて / The Crowd:Naturally Cooperative, Unnaturally Silenced
- 第27章 プラットフォームと信頼:評判システムを超えて / Platforms and Trust:Beyond Reputation Systems
- 第28章 なぜプラットフォーム協同組合はオープン協同組合であるべきか / Why Platform Co-ops Should Be Open Co-ops
- 第四部 可能性の条件 / Part 4:Conditions of Possibility
- 第29章 贅沢な協同組合主義を超えて / Beyond Luxury Cooperativism
- 第30章 金は全てのプラットフォームの根源 / Money Is the Root of All Platforms
- 第31章 人々中心のアイデアから人々に力を与える資本へ / From People-Centered Ideas to People-Powered Capital
- 第32章 コード・スクールは協同組合化できるか / Can Code Schools Go Cooperative?
- 第33章 良い仕事のための規範 / A Code for Good Work
- 第34章 あなたのご近所のフレンドリーな技術協同組合に会おう / Meet Your Friendly Neighborhood Tech Co-op
- 第35章 組合・協同組合を通じて人々の所有経済を築く / Building the People’s Ownership Economy through Union Co-ops
- 第36章 プラットフォーム協同組合のための価値論に向けて / Toward a Theory of Value for Platform Cooperatives
- 第37章 デジタル主権のための公共政策 / Public Policies for Digital Sovereignty
- 第38章 共有のために構築された法・ガバナンス構造 / Legal and Governance Structures Built to Share
- 第39章 ブロックチェーンとその落とし穴 / Blockchains and Their Pitfalls
- 第40章 非=協同組合主義 / Non-Cooperativism
本書の概要
短い解説:
本書は、ウーバーやエアビーアンドビーに代表される「シェアリングエコノミー」が実は労働者や利用者から価値を収奪する「プラットフォーム資本主義」であると批判し、それに対する対抗構想として、インターネット上のプラットフォームを利用者自身が所有・管理する「プラットフォーム協同組合主義」の可能性を理論的・実践的に探ることを目的とする。労働運動・協同組合運動・テックコミュニティ・政策立案者など、変革を志す多様な読者に向けたガイドブックである。
著者について:
編者のトレバー・ショルツ(The New School准教授)は「デジタル・レイバー」研究の第一人者として、オンライン労働の搾取的側面を告発してきた。ネイサン・シュナイダー(University of Colorado Boulder准教授)はジャーナリスト・研究者として社会運動や民主的オルタナティブを調査してきた。両者は2014年に概念を提示し、2015年に大規模な国際会議を主催、その成果が本書である。多数の実践家・研究者が寄稿し、多角的な議論を展開する。
テーマ解説
- 主要テーマ:プラットフォーム協同組合主義。既存のプラットフォーム経済を、民主的所有と管理、公平な価値分配を原則とする協同組合モデルへと転換する思想と実践。
- 新規性:長い歴史を持つ協同組合運動と、インターネット技術・ピア生産・ブロックチェーンといった現代的な要素を結びつけ、スケーラブルな経済的オルタナティブとして提示した点。
- 興味深い視点:プラットフォーム資本主義は単なる資本主義の延長ではなく、「ベクトラリズム」という、情報とアルゴリズムを支配する新たな階級による、より悪質な搾取体制であるとする見方。
キーワード解説
- プラットフォーム資本主義:インターネット・プラットフォームを少数の投資家が所有し、利用者(労働者や消費者)のデータと労働から価値を収奪する経済モデル。真の「共有」とは対極にある。
- オープン協同組合主義:協同組合の価値観と、フリー/オープンソースソフトウェアやコモンズベースのピア生産の実践を融合させた概念。閉鎖的・競争的になりがちな従来型協同組合を批判的に発展させる。
- ベクトラリズム:情報の流れ(ベクトル)を支配し、それを私有財産化することで利得を得る新興支配階級。資本家階級をも従属させつつあるとする分析(マッケンジー・ウォーク)。
- デジタル・コモンズ:企業による管理ではなく、コモナー(共有資源の利用者)自身が管理するオンライン上の共有資源領域。オープンアクセス・プラットフォームの限界を超えるもの。
- 評判システムのポリティクス:ウーバー等が信頼構築の中核に据える5段階評価システムは、実際には差別を再生産し、労働者を絶えざる監視と恐怖に晒す「見せかけの民主主義」であり、真の信頼の代替にはならない。
3分要約
本書は、現代の「シェアリングエコノミー」と呼ばれるウーバーやエアビーアンドビー等のビジネスモデルが、実は「プラットフォーム資本主義」という、労働者や地域コミュニティから価値を収奪する新たな搾取形態であると厳しく批判することから始まる。
これらのプラットフォームは、労働者を「個人事業主」として位置づけ社会保障からの切り離しと低賃金を可能にし、アルゴリズムによる管理と評判システムを通じて絶え間ない監視と不安定性をもたらす。
「民主化」や「共有」といった言葉は、消費者の利便性を追求するための巧妙なマーケティングに過ぎず、実際には富と権力の一層の集中を招いている。
このような現状に対する対抗構想として編者らが提示するのが「プラットフォーム協同組合主義」である。
これは、インターネット・プラットフォームを、それを使う労働者や消費者自身が共同で所有し、民主的に管理する協同組合のモデルを指す。
19世紀に遡る協同組合の原則(一人一票の意思決定、利用度に応じた利益配分など)を、現代のデジタル技術と結びつけ、公平で持続可能なオンライン経済を構築しようという運動だ。
本書の第1部・第2部では、既存プラットフォームの問題点を浮き彫りにし、なぜ新たなオルタナティブが必要かを論じる。
第3部では、この構想を具体化するための実践的な知見が集められる。すでに存在するプラットフォーム協同組合の事例(写真家協同のStocksy、ドライバー協同の構想、地域サービス協同のLoconomicsなど)が紹介され、それらをいかにデザインし、資金調達し、ガバナンスを構築するかについて、開発者、法律家、組織者が具体的なアドバイスを提供する。
特に重視されるのは、単なるアイデアではなく、実際に働く人々の声を設計プロセスに組み込み、搾取的なビジネス慣行に埋め込まれた価値観(効率性・収益性至上主義)とは異なる、「ポジティブなプラットフォーム」の設計原則(透明性、プライバシー、スキルアップの機会など)を確立することである。
第4部 では、プラットフォーム協同組合主義が広がるための「生態系」の構築が論じられる。
単独のプラットフォーム開発だけでなく、協同組合を支援する金融モデル(協同組合バンク、クラウドファンディングの新形態)、法制度(Bコーポレーション、組合・協同組合のハイブリッドモデル)、教育プログラム(労働史を組み込んだコードスクール)、そして公共政策(都市によるデータ主権の確立、再公営化との連携)が必要となる。
ブロックチェーン技術は分散型ガバナンスや価値の追跡・分配に有望だが、技術決定論に陥らず、あくまで社会的・政治的な組織化のツールとして位置づけられる。
最終的に本書が示すのは、技術の所有と管理のあり方を問うことが、単なるオンラインサービスの改善ではなく、より広範な経済民主化と社会正義への道筋であるという確信である。
プラットフォーム協同組合主義は、新自由主義的な個人化と収奪に対抗し、連帯と共同所有に基づく「我々自身のインターネット」を構築するための、現実的かつ希望に満ちたプロジェクトなのである。
各章の要約
第一部 肯定すべきもの
第1章 これは何であり、何でないか
本書は、より公正なインターネットのためのガイドブックであり、その方法として協同組合の長い伝統に依拠する。ウーバー等に象徴される「シェアリングエコノミー」の問題は、19世紀の工場での労働闘争と共通する。編者らは、プラットフォームとプロトコルを民主的に所有・管理する「プラットフォーム協同組合主義」という概念を提唱し、2015年の国際会議を経て生まれた本アンソロジーが、この生成中の運動に貢献することを目指す。それは技術的解決策ではなく、金融、法、政策、文化を含む新たなエコシステムを必要とするプロセスである。
第2章 言葉の意味
インターネット文化は「民主化」や「共有」といった重要な言葉の意味を空洞化させてきた。アマゾン・メカニカルタークの労働者たちが「もし我々がプラットフォームを所有していたら?」と夢想したように、真の民主主義と共有は、共同所有と共同統治にある。協同組合は歴史的に市場の失敗に対処し、地域に根ざした富の創造に成功してきた。インターネットを所有し、管理する「オーナーシップのインターネット」へと期待を高め、その意味を再定義する時が来ている。
第3章 プラットフォーム協同組合主義がいかにネットワークを解放できるか
「シェアリングエコノミー」は当初の非商業的価値観を失い、労働者を不安定化させるプラットフォーム資本主義へと変質した。この状況に対する四つのアプローチ(交渉、規制、非市場型ピア生産)に加えて、「プラットフォーム協同組合主義」を提唱する。その二大原則は共同所有と民主的ガバナンスであり、デジタル経済と協同組合運動を結びつける。既存事例(Stocksy、Fairmondo等)を示しつつ、透明性、共同決定、保護的な法制度といった原則を掲げ、単なる反対運動ではなく、技術と協同組合主義の創造的結合を目指す。
第5章 協同組合企業に関する8つの事実
協同組合は市場の失敗に対応し、地域経済を安定させ、通常の企業よりも高い生存率と地域への経済的貢献度を示す。低所得者でも起業の機会を開き、コミュニティの結束を高める。これらは協同組合が単なるビジネスではなく、持続可能な地域発展の手段として有効であることを示す証拠である。
第二部 プラットフォーム資本主義
第6章 今こそルネサンス
現在のデジタル経済は、ルネサンス期に確立された産業資本主義の価値観(中央集権、個人主義、帝国主義)をデジタルツールで増幅したに過ぎない。真のデジタルの精神(手作業、相互接続性)は、中世の職人組合や地域通貨の価値観を復興させる「新たなルネサンス」を可能にする。プラットフォーム協同組合は、価値を収奪する独占企業に対抗し、循環的で持続可能な経済への道筋を示す、そのルネサンスの核心である。
第7章 新興空間における旧来の排除
非営利の協力的なプラットフォーム(タイムバンク、フードスワップ等)に関する調査は、善意の取り組みであっても、階級・人種・ジェンダーに基づく微細な社会的排除と地位争いが生じ、その理念を脅かしうることを明らかにした。参加者は高学歴・白人に偏りがちで、彼らの「ハイカルチャー」が非公式な基準となり、多様性を阻害する。プラットフォーム協同組合が同様の排除を再生産しないためには、創設段階から多様性に配慮した構成と、これらの力動への自覚的対応が不可欠である。
第8章 資本主義より悪いもの
歴史的に、土地の私有化(牧主主義)、次いで労働と工場の私有化(資本主義)という階級関係が展開した。現在、情報のベクトルを私有化する「ベクトラリズム」という第三の階級関係が台頭し、資本をも従属させつつある。その対抗階級は「ハッカー階級」である。プラットフォーム協同組合主義の意義は、労働者とハッカーの利益と経験の接点に位置し、情報の非対称性に基づくベクトラリストの階級権力を解体する政治経済プロジェクトの糸口となりうる点にある。
第9章 非「共有」経済はいかに労働者を脅かすか
米国労働者の賃金は30年間停滞し、非正規労働者(契約社員、フリーランサー等)が急増する「フリーランス社会」が進行している。ウーバーやタスクラビット等のプラットフォームは、労働者を「個人事業主」と位置づけることで、社会保障の負担とリスクを労働者に転嫁し、低賃金と不安定性を固定化する最新の形態である。解決策として、労働時間に比例して企業が拠出する「個人保障口座」による普遍的で携帯可能な安全網の構築を提案する。
第10章 スポンジ・ボブ、なぜもっと働かないの?
資本主義の本質は、資本家が労働者に「なぜもっと働かないのか?」と問うことにある。プラットフォーム資本主義は、進歩(同じ産出に少ない投入)ではなく、単にコストと負担を労働者や社会に転嫁することで競争力を得ている場合が多い。プラットフォーム協同組合主義が広がるためには、個別の優れたアプリ開発だけでなく、「アルゴリズム資本主義の時代の権利章典」(新しい労働権、企業家権、蓄積の制度的枠組み)を求めて組織化し、ルールそのものを変える闘いが必要である。
第11章 オンデマンド経済における携帯可能な評判
オフラインのギグ・エコノミーでは労働者が自らの評判を管理できるが、ウーバー等のプラットフォームでは、労働者の評判は不透明で、修正不能で、携帯性がなく、偏見に満ちている。労働者主導、透明性、異議申し立て手続きを備えた公正な評判システムが必要である。俳優組合SAG-AFTRAのように、複数の雇い主に跨る労働者の権利と評判を保護する既存の労働者組織のモデルから学ぶべきである。
第12章 反=脱仲介化への反撃
初期インターネットは、誰もが生産手段を利用できる「白紙の土地」だった。しかし資本はそれを「組織的植民地化」し、中央集権的なプラットフォーム(ソーシャルメディア、「シェアリング」経済)を建設した。これらのビジネスモデルは、ユーザーを商品化する「オーディエンス商品」の販売か、市場の賃料収奪であり、監視と同意の犠牲を強いる。真の同意を尊重するプラットフォームを構築するには、エンドツーエンドの原則に基づく「反=反脱仲介主義的」な分散システムの設計が不可欠である。
第13章 オープンアクセスからデジタル・コモンズへ
グーグルやフェイスブックのような「オープン」なプラットフォームは、実際にはユーザーのデータと注意力を商品化する技術経済的要塞である。真の自由と価値を解放するには、ユーザーが利益を相互化し、データ主権を保持できる「デジタル・コモンズ」への移行が必要だ。ブロックチェーン技術は分散型共同組織(DCO)の基盤となり、スマートコントラクトやオープン・バリュー・ネットワーク(OVN)とともに、ユーザー主導の共有と市場の新たな形態を可能にする。
第三部 我々自身のインターネット
第14章 協同組合主義の現実主義
協同組合主義は歴史的には限定的な役割だったが、現在は変革の機会が開けている。既存産業の混乱、ウィキペディア等による協力文化の一般化、コモンズベースのピア生産による大規模オンライン協力の実践経験、そしてネットワークが企業モデルを不安定化させ資本集中の障壁を下げたことがその理由である。課題は、無償のピア生産から生計を立てる協同組合への移行と、厳格なメンバーシップ定義と公平な価値分配を伴う民主的ガバナンスの確立にある。
第15章 プラットフォーム協同組合のための三つの不可欠な構成要素
プラットフォーム協同組合を永続的なものとするためには、単なる法人形態の変更ではなく、ビジネス・アズ・ユージュアルの感染から守る強固な保護措置を定款に埋め込むべきである。第一に、プラットフォームの売却を防ぐための高水準の承認要件と外部者による拒否権。第二に、役員報酬や投資リターンに上限を設けること。第三に、全てのスタッフがメンバーに対する受託者として責任を持つ「スタッフ受託者モデル」のガバナンスを採用すること。これらは、人間が人間の利益のために働くという純粋な焦点を維持するために不可欠である。
第16章 プラットフォーム協同組合を始めたいなら…
プラットフォーム協同組合を始める際の実践的アドバイス。第一に、既存の地域の協同組合(信用組合、土地信託等)と連携し、その知恵とネットワークに学び、加わることを検討せよ。第二に、共有の目標を持つ異なるスキルを持つ3~6人のコアチームを構築せよ。第三に、時間と資金の現実を直視し、文書化と継承のシステムを確立せよ。第四に、ソフトウェア開発が長期の維持管理を要することを理解し、既存のオンラインツールを使ったイベント開催やコミュニティ組織家の雇用という選択肢も真剣に検討せよ。
第17章 「協同組合」の意味
「協同組合」という用語を、「良いもの」という曖昧な意味で薄めてはならない。協同組合とは、メンバー利益のために運営される価値観ベースの企業であり、その中で事業を行う人々によって所有・管理される。メンバーと組合との経済的関係(消費者、生産者、労働者、多様な利害関係者)によって種類が決まる。プラットフォーム協同組合を設計する際は、誰がメンバーか、そのニーズは何か、組合との関係はどうあるべきかという基本問題に立ち返り、労働者利益を中心に据えた明確な構造を構築することが極めて重要である。
第18章 異なる種類のスタートアップが可能だ
ベンチャー資本に支えられた従来型テックスタートアップのモデルは行き詰まりつつある。プラットフォーム協同組合は、その所有権と持続可能性の問題に対抗するのに適した新たな労働・所有モデルとなりうる。コンテンツバブルの崩壊、アプリに代わるチャットボットの台頭、AIの成熟とその所有の重要性、分散化クラウドの必要性、監視資本主義への対抗など、近未来の技術動向を見据えつつ、自由でオープンな法的枠組みと、倫理的に設計されたAIプラットフォームの構築が急務である。
第19章 ポジティブなプラットフォームのデザイン
今日のオンデマンド労働プラットフォームは消費者体験のデザインは優れているが、労働者の生計を構造化する「社会経済的デザイン」については未熟で、シリコンバレーの価値観が埋め込まれている。協同所有は一歩前進だが、それ自体では十分でない。「ポジティブなプラットフォーム」の設計原則として、収入最大化、安定性と予測可能性、透明性、評判と成果物の携帯性、スキル向上、社会的つながり、偏りの排除、フィードバックメカニズムの八つを提案する。技術設計、ガバナンス設計、所有設計を統合して考える必要がある。
第20章 便利な連帯:プラットフォーム協同組合主義のためのデザイン
プラットフォーム協同組合のインタラクションデザインは、魅力(現状の習慣への適合)と、連帯を育むためのある程度の社会的努力とのバランスを取らなければならない。プロフィールページでの「私たち」という代名詞の使用、選択的連帯を可能にするインターフェース(特定の労働者を支援するためにより長く待つ等)、匿名性と特定可能性を使い分ける評判システムなど、個人性と集団性、プライバシーと透明性の新たな均衡を達成するデザインが求められる。
第21章 プライバシーのためのデザイン
プライバシーは技術的・社会的・政治的問題であり、民主的で公平なプラットフォーム協同組合の核心である。開発者とユーザーの二分法を超え、全ての構成貢献者が関与するガバナンス構造(プライバシー監視委員会等)を確立すべきである。プライバシー設計は三つの問い(どの実践を媒介するか、関連する情報フローは何か、どの設計アプローチが適切か)を繰り返し問い、機密性(暗号化)、コントロール(透明性と選択)、実践(社会的半透明性、行動規範)の各アプローチを適宜組み合わせる。
第22章 クラウドファンディングがいかに管理責任へと変わるか
クラウドファンディングは多くの協同組合で成功せず、それはマーケティングが「コミュニティ」を搾取の対象と見なすためである。真のコミュニティとは、共有の物語を持つ集合的行動であり、持続には物質的利益だけでなく、情緒的投資(スチュワードシップ)が必要だ。Loconomicsの事例は、製品発売前にイベントを通じてコミュニティの感触を確かめる重要性を示す。マーケティング(視聴者、メッセージ、呼びかけ)ではなく、組織化(人々、招待、関与の持続)の論理に基づく「納屋建て」的戦略が、クラウドファンディングをスチュワードシップへと変える。
第23章 分散所有の経済的障壁と推進要因
協同組合が米国経済で比較的小さな役割にとどまるのには経済理論的理由(貢献の多様性、競争、技術投資の必要性)がある。しかし、ウーバー等のライドシェアリングは地理的に集中したネットワーク効果を持つため、地域市場ごとの参入障壁は低く、プラットフォーム協同組合の成立は可能である。価値の分配より価値創造の提案に集中できるよう、ブロックチェーンに基づく分散型共同組織(DCO)や、プロバイダー株式所有プログラム(PSOP)のような、公平な価値分配のルールが「普通」となることが近道かもしれない。
第24章 組合にはプラットフォーム・パワーがある
衰退する労働組合と新興のプラットフォーム協同組合は相互に必要としている。SEIU-UHWと提携する在宅看護師(LVN)の協同組合事例は、組合が持つ集合的購買力(医療保険等)や研修機会を提供し、協同組合が労働者に直接的な力を与える「組合・協同組合」ハイブリッドモデルの可能性を示す。ベンチャー資本からの資金調達に伴う民主的ガバナンスとの緊張はあるが、労働者は収奪から自分たちを守る方法を知っている。組合は搾取的雇用モデルへの対抗運動から、協同組合を通じて労働者が直接権力を握る新たな雇用モデルへと進化しうる。
第25章 低賃金労働者とその地域社会のためのアプリづくり
低賃金労働者とその地域社会の具体的ニーズに応えるアプリのエコシステムを構築することは、プラットフォーム協同組合主義の重要な一環である。職場と地域社会の両方の問題に対処するアプリ(欠席連絡、行政手続き簡素化、メンタルヘルス支援等)は、物質的基盤を提供することで、信頼や連帯といった非物質的関係の構築を促す。高スキル労働者では一般的な、仕事と家庭・地域をデジタルでつなぐ再構築を、低賃金労働者の生活にも拡張する必要がある。
第26章 クラウド:本質的に協力的だが、不自然に沈黙させられて
アマゾン・メカニカルタークでの自身の過酷な労働体験から、現在のクラウドワーク・プラットフォームが低賃金、感情的な有害コンテンツ、無報酬の仕事を許容する搾取的システムであることを告発する。熟練職もクラウドワークに置き換えられつつある今、労働者自身が標準を設定し保護を実施できる自主管理プラットフォームが必要である。そのためには、ビジネスや法律の専門家だけでなく、実際にそのプラットフォームで働く労働者の声と専門性を設計過程の中心に据えなければならない。
第27章 プラットフォームと信頼:評判システムを超えて
ウーバー等が採用する5段階評価のような評判システムは、人を評価する際の礼儀や偏見のために実質的に機能せず(「レイク・ウォベゴン効果」)、労働者を監視と恐怖に晒す「密告システム」でしかない。真の信頼構築には、評判システムの微調整ではなく、Craigslistのような非関与モデル、Wikipediaのような階層と卒業システム、公正貿易認証のような独立した外部監査制度など、多様なインスピレーションが必要である。秘密主義のベンチャー企業と異なり、協同組合は開かれた実験を通じてより良いモデルを発見できる利点を持つ。
第28章 なぜプラットフォーム協同組合はオープン協同組合であるべきか
コモンズベースのピア生産(FLOSS、Wikipedia)は、階層的命令関係ではなく、共有資源を基盤とした協調的生産の新たなモデルを示した。しかし従来型協同組合は、しばしばコモンズを生み出さず、競争的思考に陥り、自らを地域・国家的メンバーシップに閉じこもらせがちである。「オープン協同組合主義」は、これらにコモンズベースのピア生産の原則を吹き込む。人工的希少性の拒否、オープン・バリュー会計、CopyFairライセンス、オープンデザイン、オープンサプライチェーン、物理的インフラの相互化といった六つの実践を通じて、利潤最大化モデルを超え、コモンズ指向の倫理的経済を目指すべきである。
第四部 可能性の条件
第29章 贅沢な協同組合主義を超えて
1960-70年代のカウンターカルチャーに端を発する協同組合ブーム(自然食品協同組合等)は、結局、主流への対抗を消費者アイデンティティの選択に還元し、体制を脅かすことなく別の市場セグメントを生み出したに過ぎなかった。現在のプラットフォーム協同組合主義運動は、この「贅沢な協同組合主義」の道を繰り返してはならない。低所得の移民、元受刑者などの歴史的周縁化されたコミュニティのニーズを最初に据え、組合や行政など既存セクターとの創造的連携を通じて、ビジネス・アズ・ユージュアルそのものを変革する長期的プロジェクトとして取り組むべきである。
第30章 金は全てのプラットフォームの根源
プラットフォームを誰が所有するかという闘争は、貨幣(金融)という最も古いプラットフォームを巡る闘争の一部である。今日の巨大プラットフォームを可能にするのは技術ではなく、それを建設するための集中化された資本へのアクセスである。プラットフォーム協同組合を構築するには、資本を労働に従属させる必要があり、その論理的帰結は金融プラットフォーム自体の協同組合化である。モンドラゴンの労働者銀行のような伝統的モデルに加え、インターネットの破壊的力(新しい交換手段、分散化された資本調達)を活用し、既存プラットフォームの「転換」や大規模な組織化と併せて、中央集権的金融へのゲリラ戦を展開すべきである。
第31章 人々中心のアイデアから人々に力を与える資本へ
プラットフォーム協同組合主義の実現には、アイデアと資本のミスマッチが障壁として見られるが、その原因は二つある。第一に、技術者の多くがプラットフォームの真のユーザー・所有者となるべきコミュニティと関係を持たないこと。第二に、既存システムに挑戦する仕事を、従来型資本が支援すると期待することである。解決策は、労働者防衛プロジェクトのように、有色人種や移民コミュニティを事業のリーダーとして投資するとともに、JOBS法に基づくクラウドファンディングなどを通じて、「私たち」自身が「私たち」に投資する協同組合主義的金融の創造にある。
第32章 コード・スクールは協同組合化できるか
「コードを学べ」というスローガンが広まる中、公立大学とは別に、キャリアと直結した集中プログラミングコースを提供する「コード・スクール」が登場した。しかし、これらは私的リスクと負債を抱える起業家的人間像を再生産する傾向がある。公的大学に導入される「コーディング・ブートキャンプ」が同様の論理を強化するなら、デジタル経済の既知の偏りと不平等を複製する危険がある。代わりに、労働理論と労働史に基づき、新しい集合性、組織化、労働者のエージェンシーの可能性を探る協同組合的なデジタルスキルプログラムを、公立大学内に構築すべきである。
第33章 良い仕事のための規範
プラットフォーム経済は、労働者を犠牲にして投資家の利益と消費者の利便性を最適化してきた。公正で尊厳ある経済システムを設計するには、政治的合意だけでなく、尊厳と尊重をすべての運営領域に埋め込むための実践的枠組みが必要である。国家家庭内労働者同盟が提案する「良質な仕事の規範」は、安全性、安定性と柔軟性、透明性、繁栄の共有、生活賃金、包含と意見反映、支援とつながり、成長と発展の八原則から成る。このような価値観ベースの仕様を新経済のDNAに挿入する正念場である。
第34章 あなたのご近所のフレンドリーな技術協同組合に会おう
技術協同組合(例:Agaric)は、協同組合的なプラットフォーム構築に必要な、技術と協同組合事業の両方を理解する開発者を生み出す理想的な存在である。技術協同組合の形成は、適切な仲間の探求、自己管理戦略の模索、既存企業の転換の検討、明確な運営パラメータの定義、協同組合ネットワークへの参加、他の協同組合への投資、自由ソフトウェアツールの使用を通じて可能である。強い技術協同組合は、より強い協同組合的プラットフォームを生み出し、連帯を通じて仕事と生活を変えることができる。
第35章 組合・協同組合を通じて人々の所有経済を築く
組合と協同組合は歴史的に別々の道を歩んできたが、現代の不平等の蔓延は両者の新たな収斂を要求している。組合化され従業員所有の協同組合(組合・協同組合)ハイブリッドモデルは、モンドラゴンの価値観に基づき、構造的不平等を打ち破り、スケーラブルで利益のある事業を構築する。デンバーのグリーンタクシー協同組合は、組合の政策提言と市場技術を組み合わせ、ウーバーに対抗する事例を示した。フリーランサー組合や持続可能なビジネス評議会などのネットワークと連携し、労働者所有を経済の中心に据えることができる。
第36章 プラットフォーム協同組合のための価値論に向けて
コモンズベースのピア生産に関する研究は、プラットフォームの提供主体の種類(非営利協同組合、企業等)が、そのガバナンス(ミッション定義、意思決定等)だけでなく、価値創造(使用価値、評判価値等)の能力にも影響を与えることを示している。特に協同組合的構造は、より自己統治的で水平的な関係を促し、使用価値とオンライン評判価値の生成においてプラス効果を持つ。プラットフォームの所有モデルを選択・推進する際には、このガバナンスと価値創造の関連性を考慮すべきである。
第37章 デジタル主権のための公共政策
プラットフォーム資本主義は労働の不安定化と公共サービスの削減をもたらす「監視資本主義」である。これに対抗するには、バルセロナ市のような都市による規制執行と再公営化の動きや、公共インフラと協同組合的プラットフォームの新たな連携が必要だ。都市は市民データの主権を確保する分散型共通データインフラを自ら運営し、その上で地域企業・協同組合がサービスを提供するモデルを構築すべきである。EUのD-CENTプロジェクトのような公共投資による革新的な協同組合的プラットフォームの実証実験が、長期的社会的価値創造への道を開く。
第38章 共有のために構築された法・ガバナンス構造
プラットフォーム協同組合を法的に組織化するには、労働者協同組合のための州法(カリフォルニア州等)、有限責任会社(LLC)、Bコーポレーションなど、既存の事業体形態を利用できる。LLCは、運営協定により労働者にメンバー権と管理権を与える柔軟な構造を提供する。低賃金移民労働者の事業化支援の経験は、事業計画技術が労働者に機会と力を与えることを示す。国際的メンバーシップ、パートタイム労働、離脱の容易さを考慮したガバナンス構造と、労働者センターや法律サービス機関からの支援が成功の鍵となる。
第39章 ブロックチェーンとその落とし穴
ブロックチェーン(分散型台帳技術)は、信頼できる第三者を介さずに取引や共同決定を検証・記録する手段として、プラットフォーム協同組合活動の実用的ツールとなりうる。しかし、その議論には二つの誤った前提が潜む。第一に、信頼構築という厄介で時間のかかる社会的プロセスを、エレガントな技術的解決策で置き換えられるという考え。ブロックチェーンは信頼の「放棄」であって構築ではない。第二に、技術的分散化が自動的に平等な社会・政治的組織化をもたらすという技術決定論。分散化は資本主義の行き詰まりに対する理想的な解決策としてすでに回収されている。ブロックチェーンはツールの一つに過ぎず、社会的・政治的組織化と組み合わせて初めて意味を持つ。
第40章 非=協同組合主義
デジタル技術は必ずしも協同組合的な世界を容易にするわけではない。協同組合を成功させる最大の障害は資本へのアクセスであり、これはデジタルの世界でも変わらない。プラットフォーム協同組合主義は、小さくてローカルなものだけを礼賛する「贅沢な協同組合主義」や、政府の関与を排除する考えに陥らず、中央集権的な公共オプションと分散型協同組合のハイブリッドモデルも検討すべきである。重要なのは、抽象的な原則ではなく、人々の具体的ニーズ(生活、つながり)に応える実例を構築し示すことである。同時に、協力は非協力(既存の金融システムへの抵抗)と組み合わせられなければならない。
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プラットフォーム協同組合主義:デジタル経済における「所有」の再定義と権力構造への挑戦 AI考察
by Claude 4.5
「共有経済」という名の搾取構造
この本を手に取ったとき、まず頭に浮かんだのは、Uberのドライバーたちが「独立した起業家」として扱われながら、実際には最低賃金すら稼げていないという現実だった。「シェアリングエコノミー」という言葉は、私たちに何か温かい、相互扶助的なものを想起させる。しかし実態はどうか。
トレバー・ショルツは冒頭で鮮明に指摘している。かつて「共有経済」は企業権力への挑戦として提示された。ドリル、芝刈り機、車を共同利用するという純粋な発想から始まった。だが「シリコンバレーの会議室で非商業的価値観が書き換えられ」、共有経済は「誤った呼称」になった。
具体的な数字を見てみよう。オンデマンド経済の労働者は年間平均7,900ドルしか稼いでいない。アメリカでは2014年に51%の人々が年収3万ドル未満で、76%が貯蓄ゼロだった。1970年代以降、直接雇用から人々を追い出す協調的な努力が続いてきた。デジタル労働は「低賃金危機の子供」なのだ。
ここで重要なのは、これが単なる「新しい技術による摩擦」ではないという点だ。これは意図的な設計による結果である。企業は労働者を「従業員」ではなく「独立請負人」「ターカー」「ドライバーパートナー」「ラビット」と呼ぶ。なぜか。そうすることで健康保険、社会保障、失業保険、労災補償を負担せずに済むからだ。労働コストを30%削減できる。
「所有」という核心的問い
ネイサン・シュナイダーが問いかける問題は本質的だ。「プラットフォームやネットワークが本当に私たちのものだったら?」
この問いは単純に見えて深い。Facebookのユーザーは毎日膨大なコンテンツを生成している。そのコンテンツがプラットフォームの価値を作っている。しかしその価値は誰のものか。株主のものだ。ユーザーは製品であり、広告主に売られている。
マーク・ザッカーバーグがFacebook株を自分のLLCに寄付する代わりに、ユーザー自身が所有・管理する信託に入れたらどうなるか、とシュナイダーは問う。ユーザーは個人データの扱いについて取締役会で発言権を持つことになる。プラットフォームの成功に利害関係を持つことになる。
これは空想的な話ではない。すでに実在する例がある。Stocksy Unitedは写真家が共同所有するストックフォト代理店で、メンバーは同等の投票権を持ち、利益の90%が配当として還元される。Fairmondoはユーザー所有のオンラインマーケットプレイスで、2,000人以上のメンバーが60万ユーロ以上を出資している。
協同組合の歴史と「失敗」の教訓
ここで立ち止まって考える必要がある。協同組合は新しいアイデアではない。1844年のロッチデール原則以来、170年以上の歴史がある。アメリカには3万以上の協同組合があり、2兆ドル以上の資産を保有している。しかし、それでもなお支配的な経済モデルにはなっていない。
なぜか。経済理論が示唆するのは、労働者協同組合が株主企業より効率的なのは、(1)労働者間の貢献レベルに大きな多様性がない場合、(2)外部競争が低い場合、(3)技術変化に対応した頻繁な投資が必要ない場合、ということだ。
しかしヨハイ・ベンクラーは重要な指摘をしている。今日のシェアリングエコノミーのプラットフォームは、実はこれらの条件を満たしている部分がある。都市内の移動サービスは比較的均一なサービスで、競争は限定的だ。そしてネットワーク効果は地理的に集中している。ニューヨークの乗客はロサンゼルスでのプラットフォームの規模など気にしない。自分の都市での供給密度を気にする。
これは何を意味するか。プラットフォーム協同組合を立ち上げるために、何百万人ものユーザーを同時に移行させる必要はない。数千人のドライバーを登録するところから始められるということだ。
資本という根本的障壁
ブレンダン・マーティンの章は、この運動が直面する最も根本的な問題を突いている。「なぜ私たちが自分たちのUberや他の大規模プラットフォームを作れないのか。技術の進歩でプラットフォーム構築が容易になったにもかかわらず、障壁は金融だ」
これは重要な認識だ。技術がオープンソースで利用可能になっても、資本へのアクセスがなければプラットフォームは構築できない。そして従来の資本は、その性質上、民主的所有構造と相容れない。ベンチャーキャピタルは100倍のリターンを求める。そのためには独占を目指し、労働者から価値を搾取する必要がある。
マーティンが指摘する歴史的教訓は示唆的だ。19世紀の労働騎士団は200以上の産業協同組合を代表していた。しかしその多くが失敗した。理由は資本へのアクセスの欠如だった。
ここで興味深いのは、解決策として提示されているのが「金融プラットフォーム自体を協同組合化する」というアイデアだ。モンドラゴンはCaja Laboral(労働銀行)を構築することで、協同組合経済を支える金融基盤を作った。デジタル時代には、ブロックチェーン技術や新しい形態の協調的金融がこの役割を果たす可能性がある。
ブロックチェーンへの冷静な評価
レイチェル・オドワイヤーの章は、ブロックチェーンへの過度な期待に対する冷静な批判を提供している。これは私の懐疑的な視点と共鳴する部分だ。
ブロックチェーンは分散型データベースとして、信頼できる第三者(銀行、政府)なしに取引を検証できる。これが「脱中央集権」の夢を掻き立てる。しかしオドワイヤーは二つの重要な問題を指摘する。
第一に、「技術的アーキテクチャを社会的・政治的組織形態と混同している」という問題。分散化された技術システムが自動的に平等主義的な社会を生むわけではない。過去10年は、技術システムの分散化が社会的・政治的・経済的に平等な実践につながるという直線的因果関係がないことを示してきた。
第二に、「面倒で時間のかかる社会的プロセスをエレガントな技術的ソリューションで置き換えられる」という仮定の問題。協力を育み拡大することは本当に難しい。だからこそ私たちには制度、規範、法律、市場がある。ブロックチェーンは信頼を構築するのではなく、「信頼なしの協力」を可能にする。これは信頼を育てることとは根本的に異なる。
この批判は重要だ。技術的ソリューションへの過度な信頼は、政治(議論、紛争、つながりと差異を生み出すもの)を経済学で置き換えようとする新自由主義的統治性と共通するものがある。
労働者の声と組織化の必要性
クリスティ・ミランドはAmazon Mechanical Turkの労働者として、プラットフォーム上での経験を生々しく語っている。週8時間働いて19.64ドルしか稼げない。仕事を見つけるのに膨大な労力がかかる。ISISの殺人ビデオや動物虐待のコンテンツを見せられる。賃金窃盗が横行している。
最も衝撃的なのは、「レビュー後に仕事を拒否し、支払いを拒否し、提出された仕事と現金の両方を手元に残す」ことがプラットフォームの「機能」として組み込まれているという事実だ。
ミランドの結論は明快だ。「協同組合プラットフォームを設計する際、労働者の声以上に重要な声はない。労働者なしには協同組合はあり得ない」
この指摘は、技術開発者やアカデミアが主導するプラットフォーム協同組合主義の議論に対する重要な警告だ。2015年のPlatform Cooperativismカンファレンスでは、労働者の声を聴くパネルに参加した聴衆は非常に少なかった。
「対抗的」協同組合主義の必要性
アストラ・テイラーの最終章は、この本の中で最も挑発的で、私の問題意識に最も近い。彼女は問う。「デジタル技術は、より公正で協力的な世界の夢をより可能にするのか?私には完全にはそう確信できない」
産業時代にも協同組合所有の良い根拠はあったし、同じくらいの障壁もあった。テイラーが強調するのは「内部/外部戦略」の必要性だ。周縁部で協同組合的代替案を構築しながら、同時に中心部の既存構造に挑戦すること。
彼女は1960年代のフードコープの経験を引用する。これらの協同組合は「消費者選択によって媒介される現状への反対様式」を促進した。その結果、デイヴィッド・モーバーグが1979年に書いたように、「多くの代替制度は、もう一つの市場選択として比較的無害なものにされてしまった」。
これは重要な教訓だ。協同組合が単に「より良い消費者選択」になってしまえば、既存システムを変革する力を失う。フードコープ運動は、持続可能な食料システムの発展ではなく、自然・有機食品の高級市場セグメントへの商品化を促進した。
テイラーの処方箋は明確だ。「協力は非協力と組み合わされなければならない—構築する代替案を補完する能動的抵抗」。
プライバシーと監視の問題
セダ・ギュルセスの章は、技術設計における価値の埋め込みについて重要な視点を提供している。プラットフォームは中立ではない。その設計には作成者の価値観が反映される。
「オーディエンス商品」を販売するビジネスモデル(Facebook、Google)は、本質的に監視を必要とする。同様に、マーケットプレイス賃料を取得するプラットフォーム(Uber、Airbnb)も、利益を最大化するためにユーザーとプロバイダーに関する広範なデータを収集する。
フェリックス・ヴェト(Fairmondo)の言葉が引用されている。「私たちはユーザーデータの収益化に反対することを決めた。それは対立を取り除き、ユーザーデータの扱いについて会話を可能にする」。これは単純に聞こえるが、技術的・財政的に大きな挑戦だ。データ飢餓型の第三者を通じてではなく、自社で分析と認証を運用する能力が必要になる。
ギュルセスが提案する「同意志向のアーキテクチャ」は、ユーザーデータとユーザーインタラクションの制御を可能な限りユーザー自身のコンピューターで実行するソフトウェアに留める、という「エンドツーエンド原則」に基づいている。これは「反・反脱仲介」とでも呼ぶべきものだ。
公共政策と都市の役割
フランチェスカ・ブリアの章は、公共部門の潜在的役割について興味深い視点を提供する。バルセロナ市長アダ・コラウの例が挙げられている。15M運動から生まれたこの市政は、Airbnbへの規制、観光のための責任ある人気集会の開催、協同組合経済の促進、公共サービスの再公営化を推進している。
これは「スマートシティ」モデルへの批判的理解に基づいている。大手テック企業が推進する新自由主義的で監視主導のスマートシティモデルではなく、「民主的で、グリーンで、コモンズベースのデジタル都市」を目指す。
ブリアの主張で重要なのは、都市や政府が「データが力である」ことをまだ十分に認識していないという指摘だ。シリコンバレーはデータを新しい資産クラス—金融市場で売買される商品—に変えようとしている。これに対抗するには、データを社会化する新しい形態が必要だ。
法的構造と変換の可能性
ミリアム・チェリーの章は、既存の法的枠組みの中でプラットフォーム協同組合を構築する実務的な側面を扱っている。労働者協同組合のための専用の州法がある場所もあるが、統一法はない。しかしLLC(有限責任会社)やBコーポレーション(社会的利益を追求する企業形態)など、既存の企業形態を適応させることは可能だ。
興味深いのは「変換」の可能性だ。ゼロから協同組合を構築するよりも、既存のビジネスを協同組合に変換する方が容易な場合がある。アメリカでは今後10年間に、ベビーブーマーのオーナーの退職により100万の収益性のある中小企業が閉鎖すると予測されている。これらを労働者に売却し、労働者所有に変換する動きが増えている。
オンラインプラットフォームにも同じ論理を適用できる。完全に市場価値のピーク時に大企業を買収するのは不可能かもしれないが、「もしFacebookのユーザー(つまりコンテンツ作成者)がストライキの脅威の下で所有権を要求するように組織したら?」という問いは興味深い。
批判的考察:何が見落とされているか
この本を読み終えて、いくつかの疑問が残る。
第一に、規模の問題。協同組合プラットフォームは、本当にUberやAirbnbの規模に達することができるのか。ヨハイ・ベンクラーはネットワーク効果が地理的に集中していることを指摘し、これが参入障壁を下げると論じる。しかし、グローバルなブランド認知、マーケティング力、そして何よりも膨大な資本へのアクセスという点で、既存の巨大プラットフォームとの競争は極めて困難だ。
第二に、権力構造への挑戦。この本は主にビジネスモデルと所有構造に焦点を当てている。しかし、プラットフォーム資本主義を支えているのは、より広範な権力構造—金融システム、規制当局との癒着、政治的ロビー活動—である。アストラ・テイラーが指摘するように、協同組合の構築だけでなく、既存構造への対抗も必要だ。
第三に、国際的な視点の限界。この本は主にアメリカとヨーロッパの文脈で書かれている。しかしプラットフォーム資本主義はグローバルな現象であり、グローバルサウスへの影響—データ植民地主義、労働の国際的裁定—についての分析は限定的だ。
第四に、技術的決定論への傾斜。ブロックチェーンへの批判はあるものの、全体としてこの本は「正しい技術設計」が協同組合的価値を埋め込めるという前提に立っている。しかしオドワイヤーが警告するように、技術は中立ではなく、その開発と普及は権力関係の中で行われる。
日本の文脈で考える
この議論を日本に当てはめると、いくつかの興味深い点が浮かび上がる。
日本には農協、生協、信用金庫など、強固な協同組合の伝統がある。これらは戦後の経済発展において重要な役割を果たした。しかし近年、その影響力は低下している。農協改革の議論に見られるように、協同組合は「既得権益」として批判されることも多い。
一方で、日本のプラットフォーム経済は欧米ほど浸透していない。Uberは規制によって日本では限定的にしか展開できていない。これは「規制の遅れ」と批判されることもあるが、見方を変えれば、プラットフォーム資本主義の最悪の側面から労働者を保護しているとも言える。
日本で考えるべきなのは、既存の協同組合的制度(生協、農協、信金など)とデジタル技術をどう結びつけるかだ。また、高齢化社会における介護労働、ギグワークの増加などの文脈で、プラットフォーム協同組合主義がどのような形で展開しうるかを検討する価値がある。
結論:協同組合主義の可能性と限界
この本は、プラットフォーム経済における「所有」という根本的な問いを提起している。誰がプラットフォームを所有し、誰が価値を獲得するのか。現状では、ごく少数の株主と創業者が、数百万人のユーザーと労働者が生み出す価値を搾取している。
プラットフォーム協同組合主義は、この構造を変革する一つの道筋を示している。労働者とユーザーが所有し、民主的に統治するプラットフォーム。しかし、それは技術的解決策だけでは実現しない。資本へのアクセス、法的枠組み、そして何よりも労働者自身の組織化と声が必要だ。
最も重要なのは、アストラ・テイラーが強調する「対抗的」要素だろう。協同組合の構築は、既存の権力構造への挑戦と組み合わされなければならない。「協力は非協力と組み合わされなければならない」。単に「より良い選択肢」を提供するだけでは、システムを変革することはできない。
この本が提示する問いは、パンデミック以降、権威への信頼が揺らいでいる私たちにとって特に重要だ。政府、専門家、メディア、そして巨大テック企業—これらの権威は本当に私たちの利益のために機能しているのか。もしそうでないなら、私たち自身が所有し、統治する制度を構築することはできるのか。この本は、その可能性を示すと同時に、その困難さも正直に認めている。答えは私たち自身の行動にかかっている。
