書籍要約『アレイスター・クロウリー:魔術、ロックンロール、そして世界で最も邪悪な男』ゲイリー・ラックマン 2014年

悪魔主義・悪魔崇拝・秘密結社・オカルト

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『Aleister Crowley:magick, rock and roll, and the wickedest man in the world』Gary Lachman 2014

『アレイスター・クロウリー:魔術、ロックンロール、そして世界で最も邪悪な男』ゲイリー・ラックマン 2014年

目次

  • 序章 ボウアリー街の獣 / The Beast On The Bowery
  • 第1章 赦されざる罪 / The Unforgivable Sin
  • 第2章 黄金の暁の黄昏 / Twilight Of The Golden Dawn
  • 第3章 アイオーンの言葉 / The Word Of The Aeon
  • 第4章 掟とは何か? / What Is The Law?
  • 第5章 銀の星に向かって / Toward The Silver Star
  • 第6章 性と魔術 / Sex And Magick
  • 第7章 唯一のセレマイトならニューヨークは孤独な町 / New York’s A Lonely Town When You’re The Only Thelemite Around
  • 第8章 セレマ修道院への出入り / In And Out Of The Abbey Of Thelema
  • 第9章 荒れ野をさすらう / Wandering In The Wasteland
  • 第10章 クロウリー信仰の落日 / The Sunset Of Crowleyanity
  • 第11章 獣は生き続ける / The Beast Goes On

本書の概要

短い解説:

本書は、20世紀を代表する最も物議を醸す神秘思想家・魔術師、アレイスター・クロウリーの生涯と思想、そして彼の遺産が死後、大衆文化(特にロックミュージックやポップカルチャー)に与えた驚くべき影響を、歴史的・文化的文脈から再評価する伝記である。

著者について:

著者ゲイリー・ラックマンは、元ニューヨークのパンク・ロック・ミュージシャン(本名ゲイリー・ヴァレンタインとしてブロンディーなどのバンドで活動)であり、現在は意識史や西洋オカルティズムの研究・執筆に従事する著述家である。この独自の経歴が、クロウリーのロック・カルチャーへの影響を語る上でユニークな視点をもたらしている。ラックマンは、センセーショナリズムに走らず、神話と事実を分け、文化現象としてのクロウリーの核心に迫ろうとする。

テーマ解説

  • 主要テーマ:「邪悪」のレッテルを貼られた魔術師の実像と、彼の思想的遺産のポップカルチャーにおける変容。
  • 新規性:クロウリーのロックンロールとの接点を、単なる引用やイメージの借用を超えて、その精神的な反体制性や個人主義の系譜として捉え直す。
  • 興味深い知見:クロウリーの思想(セレマ)が、彼の意図を超え、時に矮小化されながらも、現代の個人の自己実現と自由を求める文化的潮流の先駆けとなった可能性。

キーワード解説(5つ)

  • セレマ(Thelema):クロウリーが神託として受け取ったと主張する「汝の意志することを行え」を基本律とする宗教的・哲学的体系。
  • 真の意志(True Will):個人の存在の根源的・宇宙的な目的。これを見出し、実現することがセレマの核心。
  • 魔術(Magick):クロウリーが綴りを変えて定義した「意志によって変化を引き起こす科学と技術」。
  • 黄金の夜明け団(The Golden Dawn):19世紀末英国で結成された、西洋オカルト復興の中心的な秘密結社。クロウリーの魔術的修行の出発点。
  • エイオン(Aeon):クロウリーの宇宙論における約2000年周期の時代区分。自身は新たな「ホルスのエイオン」の預言者と位置づけた。

3分要約

本書は、アレイスター・クロウリー(1875-1947)の複雑な生涯とその死後の影響力を、神話と史実を切り分けながら再検証する伝記である。序章では、著者が1970年代のニューヨーク・パンクシーンで初めてクロウリーの「伝説」に触れた経験を語り、そのセンセーショナルなイメージと実際の思想的影響のギャップについての探求を始める。

クロウリーの生い立ち(第1章)は、富裕で厳格なプリマス・ブレズレン(キリスト教の一派)の家庭で始まる。幼少期の父親の死と、母親から「獣」と呼ばれたことは、彼の反キリスト教的立場とアイデンティティ形成に深く刻まれた。ケンブリッジ大学時代からオカルトに傾倒し、「黄金の夜明け団」に加入する(第2章)。ここで魔術の基礎を学ぶが、団内の権力争いや自身の奔放さから主流派と対立し、やがて独自の道を歩み始める。

その転機が1904年のカイロでの体験である(第3章)。妻との儀式的行為の最中、彼は「アイワス」という存在から『法の書』を受信したと主張する。その核心が「汝の意志することを行え」という「法」であり、これが新宗教「セレマ」の礎となった(第4章)。クロウリーはこれを旧約聖書的倫理(罪と服従)に代わる新時代「ホルスのエイオン」の啓示と位置づけた。

以後、クロウリーは自らを「預言者」とし、魔術的探求とセレマの布教に邁進する(第5章)。アルプス登山や世界旅行、さまざまな魔術的実験(特に性的魔術)を繰り広げた(第6章)。性的エネルギーを霊的変容の手段とする彼の実践は、当時のタブーを破るものであり、「邪悪」というレッテルを強固にする一因となった。

第一次世界大戦中、彼はアメリカに渡り(第7章)、ドイツのスパイ疑惑に巻き込まれながらも、雑誌『インターナショナル』を通じて反戦・プロパガンダ活動を行う。戦後、イタリア・チファルに「セレマ修道院」を設立するが(第8章)、門下生の一人が謎の死を遂げたことでスキャンダルが発生、修道院は閉鎖され、クロウリーはイタリアから追放される。

1920年代以降は名声と経済的に没落の道をたどる(第9章)。数々の訴訟(特に「黒魔術師」としての誹謗裁判での敗訴)、麻薬依存、借金に苦しみながらも、膨大な著作の執筆と少数の弟子の指導を続けた。晩年はイギリスで、一部の信奉者に囲まれながらも「世界で最も邪悪な男」という新聞のキャンペーンに晒されて過ごした(第10章)。

しかし、クロウリーの死後、特に1960年代以降、彼の影響は予想外の形で復活する(第11章)。アレン・ギンズバーグなどのビート世代、ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)やデヴィッド・ボウイなどのロックミュージシャン、さらにはサタニズムや混沌魔術などのオカルト・サブカルチャーに至るまで、その思想とイメージは反体制、個人の解放、神秘主義的探求の象徴として引用・摂取されていった。著者は、クロウリーの真の遺産は、正統な宗教体系としてのセレマよりも、その過激な個人主義と自由の追求が大衆文化に与えた衝撃と、現代の「自己実現」カルチャーの先駆けとなった点にあると示唆する。

各章の要約

序章 ボウアリー街の獣

1970年代のニューヨーク、特にボウアリー街周辺のパンク・ロックシーンにおいて、アレイスター・クロウリーの名は、反逆と神秘主義のカリスマとしてささやかれていた。著者は自身の音楽活動の中で、クロウリーの「汝の意志することを行え」という言葉が、ロックの反体制精神と重ねて解釈されているのを目の当たりにする。しかし、そのセンセーショナルなイメージ(「黒魔術師」「邪悪な男」)の背後にある実際の思想と生涯はほとんど知られていなかった。本章では、この体験を出発点に、神話に覆われた人物の実像と、その死後の文化的変容を探求する本書の目的が提示される。

第1章 赦されざる罪

アレイスター・クロウリー(本名エドワード・アレクサンダー・クロウリー)は、1875年、イングランドのウォリックシャーで生まれた。父は富裕なビール醸造業者であり、一家は厳格なキリスト教の一派、プリマス・ブレズレンに属していた。幼少期に父を亡くし、過保護で厳格な母に育てられる。彼は早熟で反抗的であり、母親からは時折「獣」と呼ばれた。この幼少期の経験は、彼の後の反キリスト教的姿勢と、自らを「大いなる獣」666と同一視する自己像の根源となった。ケンブリッジ大学では詩や登山に熱中し、そこでオカルト文献と出会い、人生の方向を定める。

第2章 黄金の暁の黄昏

1898年、クロウリーはロンドンで当時最も影響力のあった秘密結社「黄金の夜明け団」に加入する。ここで儀式魔術、カバラ、タロット、占星術など西洋秘教の体系的な訓練を受け、類い稀な才能を示した。しかし、彼の放縦な生活態度、性的奔放さ、そして結社の上層部(特にW. B. イェイツやS. L. マグレガー・メイザース)との確執から、やがて対立が深まる。クロウリーは団の秘密文書を公開すると脅し、独自の魔術的権威を主張し始める。黄金の夜明け団での経験は、彼の魔術的基盤を形成すると同時に、正統なオカルト界からの追放と、孤高の道を歩む運命を決定づけた。

第3章 アイオーンの言葉

1904年、エジプト・カイロでのハネムーン中、クロウリーの運命を変える出来事が起こる。妻のローズがトランス状態で「ホルス神があなたを待っている」と告げたことをきっかけに、クロウリーは自身を「アイワス」と名乗るプレトーベラー(知覚存在)からの啓示を受信する。その内容は、三章からなる『法の書』(Liber AL vel Legis)として自動筆記された。この書は、旧約聖書的な「罪と罰」の時代(オシリスのエイオン)が終わり、新たな「ホルスのエイオン」が到来したと宣言し、その新しい「法」を説いた。当初クロウリー自身もこの体験に困惑し、数年間その文書を公にしなかった。

第4章 掟とは何か?

『法の書』の核心は、その第一章40節に簡潔に記される「汝の意志することを行え。これが法のすべてである」という言葉である。クロウリーはこれを「セレマ」(ギリシア語で「意志」)という新たな宗教的・哲学的体系の基本律と解釈した。ここでの「意志」は、気まぐれや欲望ではなく、個人の存在の深淵から湧き上がる「真の意志」を指す。これを見出し、実現することが人間の究極の目的であり、それに従うことが自由と完成をもたらす、とされた。この思想は、ヴィクトリア朝的な抑圧やキリスト教的罪の概念への正面からの挑戦であった。クロウリーは自らをこの新法の預言者「To Mega Therion」(大いなる獣)と称した。

第5章 銀の星に向かって

『法の書』を受容した後、クロウリーはその「法」を実践し、布教するための組織として「A∴A∴」(銀の星)を設立する。これは黄金の夜明け団に似た階梯制の魔術的修行組織であったが、その目的は個人の「真の意志」の発見と実現に特化していた。同時期、彼は魔術的探求の一環として世界中を旅し、ヒマラヤや中国雲南省への遠征、アルプス登山などを敢行した。これらの冒険は単なる探検ではなく、極限状態における自己の限界と意志の力を試す魔術的儀式でもあった。著者はこう述べる。「彼にとって、山は祭壇であり、苦難は秘儀への入門であった。」

第6章 性と魔術

クロウリーの思想と実践において、性は中心的な役割を占めた。彼は性的エネルギーを最も強力な魔術的力の一つと見なし、それを霊的変容や啓示を得るための手段として体系化した(性魔術)。これは当時、最もタブー視され、彼の評判を悪化させる要因となった。パリではオペラ歌手と「聖なる守護天使」との交信を目指す魔術作業を行い、モスクワでは「白羊宮の儀式」と呼ばれる一連の性的儀式を実行した。これらの実践は、彼が「マギッカ」(Magick)と綴る魔術を、「意志によって変化を引き起こす科学と技術」として定義する具体例であった。

第7章 唯一のセレマイトならニューヨークは孤独な町

第一次世界大戦が勃発すると、クロウリーは中立国アメリカに渡る。当初はイギリスへの愛国心からドイツへの敵対的記事を書いていたが、やがて厭戦的・風刺的な姿勢へと転じる。ニューヨークでは雑誌『インターナショナル』を発行し、巧みなプロパガンダ活動を行い、イギリス諜報部やドイツのスパイ疑惑に巻き込まれる。この時期、彼は自らの「真の意志」が戦争協力ではなく、啓示の宣教にあると確信するようになるが、アメリカでのセレマの布教はほとんど成功せず、経済的にも行き詰まった。

第8章 セレマ修道院への出入り

戦後、クロウリーはイタリア・シチリア島のチファルに、理想的なセレマ共同体「セレマ修道院」を設立する。ここでは、規則や義務から解放され、各人が「真の意志」に従って生きることが目指された。しかし、その自由奔放な生活(麻薬の使用、性的儀式の実践など)は近隣住民の反感を買い、さらに1923年、英国人の若い弟子ラウル・ラヴデーが謎の死を遂げる事件が発生する。クロウリーは毒を飲ませた嫌疑をかけられ、イタリアのムッソリーニ政権から国外追放処分を受ける。このスキャンダルは、彼の「邪悪」なイメージを国際的に固定化する決定打となった。

第9章 荒れ野をさすらう

セレマ修道院の崩壊後、クロウリーの人生は長い下降線をたどる。経済的困窮、ヘロインなどの重度の麻薬依存、健康の悪化に苦しみながらも、膨大な著作(魔術書、詩、自伝)の執筆と、わずかな弟子たちとの魔術作業を続けた。1934年、彼は「黒魔術師」と書いた新聞を名誉毀損で訴えるが、法廷で自らの魔術的信念を説明するはめになり、かえって評判を傷つける結果に終わる(敗訴)。この時期、彼は自らを「預言者」として認めない世界を「荒れ野」と感じながら、その中で意志を貫く孤高の存在であり続けようとした。

第10章 クロウリー信仰の落日

1930年代後半から晩年にかけ、クロウリーはイギリスに戻り、主にブライトンやロンドンで過ごした。少数の熱心な信奉者(例えば、『月光の戦士』の著者ルイス・ウィーリングや若きケネス・アンガー)に支えられながらも、「世界で最も邪悪な男」という新聞のキャンペーンに晒され続けた。彼は自らの思想体系を完成させようと努め、また自伝『聖なる守護天使の信憑性』の執筆に注力した。1947年12月1日、72歳で肺炎のため死去。彼の葬儀は「サンクトゥム・レグメヌム」の朗読とともに執り行われ、遺灰はアメリカの弟子に送られた。

第11章 獣は生き続ける

クロウリーの死は、彼の影響力の終わりではなく、新たな始まりであった。1950年代のビート世代(ウィリアム・バロウズ、アレン・ギンズバーグ)は、彼を反体制と意識拡張の先駆者として発見した。1960年代以降のロックンロールの時代、彼のイメージと思想は、ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)、デヴィッド・ボウイ、ブラック・サバスなどのミュージシャンによって、反逆、神秘主義、ダークな魅力の源泉として引用・視覚化された。さらに、アントン・ラヴェイのサタニズム教会や、混沌魔術など、現代のオカルト・サブカルチャーにもその影響は及んでいる。著者は、クロウリーの真の遺産は、特定の宗教的教義としてではなく、個人の自由と自己実現を究極の価値とする彼のラディカルなメッセージが、大衆文化の中に変容しつつも生き続けている点にあると結論づける。そのメッセージは、「汝自身の法に従って生きよ」という、現代にも通じる挑発なのである。


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