書籍要約『なぜ私たちは病気になるのか:ほとんどの慢性疾患の根底にある隠れた流行病とその戦い方』ベンジャミン・ビクマン 2020年

糖尿病若年性認知症・アルツハイマー病

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『Why We Get Sick:The Hidden Epidemic at the Root of Most Chronic Disease—and How to Fight It』Benjamin Bikman (2020)

『なぜ私たちは病気になるのか:ほとんどの慢性疾患の根底にある隠れた流行病とその戦い方』ベンジャミン・ビクマン (2020)

目次

  • 第一部 問題:インスリン抵抗性とは何か、なぜ重要なのか? / Part I:The Problem:What Is Insulin Resistance and Why Does It Matter?
  • 第1章 インスリン抵抗性とは何か? / What Is Insulin Resistance?
  • 第2章 心臓の健康 / Heart Health
  • 第3章 脳と神経疾患 / The Brain and Neurological Disorders
  • 第4章 生殖の健康 / Reproductive Health
  • 第5章 がん / Cancer
  • 第6章 老化、皮膚、筋肉、骨 / Aging, the Skin, Muscles, and Bones
  • 第7章 消化器系と腎臓の健康 / Gastrointestinal and Kidney Health
  • 第8章 メタボリックシンドロームと肥満 / The Metabolic Syndrome and Obesity
  • 第二部 原因:そもそも何が私たちをインスリン抵抗性にするのか? / Part II:Causes:What Makes Us Insulin Resistant in the First Place?
  • 第9章 年齢と遺伝がインスリンに与える影響 / How Age and Genetics Influence Insulin
  • 第10章 ホルモンがインスリン抵抗性を引き起こす仕組み / How Hormones Cause Insulin Resistance
  • 第11章 肥満とインスリン抵抗性、再考 / Obesity and Insulin Resistance, Revisited
  • 第12章 炎症と酸化ストレス / Inflammation and Oxidative Stress
  • 第13章 ライフスタイル要因 / Lifestyle Factors
  • 第三部 解決策:インスリン抵抗性とどのように戦えるのか? / Part III:The Solution:How Can We Fight Insulin Resistance?
  • 第14章 体を動かす:身体活動の重要性 / Get Moving:The Importance of Physical Activity
  • 第15章 賢く食べる:私たちが食べるものに関するエビデンス / Eat Smart:The Evidence on the Food We Eat
  • 第16章 従来の介入:薬物と手術 / Conventional Interventions:Drugs and Surgery
  • 第17章 計画:研究を行動に移す / The Plan:Putting Research into Action

本書の概要:

短い解説:

本書は、血糖値ではなくインスリンの過剰分泌(高インスリン血症)と機能不全(インスリン抵抗性)が、心臓病、アルツハイマー病、がん、不妊など、一見無関係に見える数多くの現代の慢性疾患の共通の根本原因であると論じている。医学界や一般の人々に広く認知されていないこの「隠れた流行病」について、膨大な科学的証拠に基づき解説し、予防・改善のための具体的なライフスタイル戦略を提案することを目的とする。

著者について:

著者ベンジャミン・ビクマンは、ブリガムヤング大学の生物医学科学の教授であり、同学の糖尿病研究ラボの責任者を務める。肥満手術における代謝適応の研究で博士号を取得し、シンガポール国立大学・デューク大学医学大学院でのポスドク研究も経て、インスリン抵抗性と慢性疾患の関係について長年研究を続けている。科学的知見を一般読者にもわかりやすく伝える能力に長け、本書では、複雑な生理学的プロセスを平易な言葉で解説している。

テーマ解説

  • 主要テーマ:現代病の共通原因としてのインスリン抵抗性
  • 新規性:従来の「血糖値中心」の視点から、「インスリン中心」の視点への転換を提唱
  • 興味深い知見:高インスリン血症とインスリン抵抗性は、多くの場合、肥満よりも先に起こる

キーワード解説

  • インスリン抵抗性:体内の細胞がインスリンの作用に対して鈍感になる状態。血液中のインスリン濃度が慢性的に高くなる。
  • 高インスリン血症:血液中のインスリン濃度が異常に高い状態。インスリン抵抗性の結果として、またはその原因として発生する。
  • ケトーシス:インスリン濃度が低い状態で、体内の脂肪がケトン体という代替燃料を産生する代謝状態。

3分要約

本書は、インスリン抵抗性が現代における最も蔓延している、そして見過ごされている健康障害であると主張する。著者は、心臓病、2型糖尿病、アルツハイマー病、がん、不妊症、さらには皮膚病変に至るまで、一見無関係な多くの慢性疾患が、共通してインスリン抵抗性と高インスリン血症に根ざしていることを、膨大な研究データを用いて示す。従来の医学は「血糖値」に焦点を当てすぎており、疾患の真の前兆である「インスリン」の異常を見逃していると批判する。

インスリンは、血糖値を下げるだけでなく、全身の細胞の成長、分裂、エネルギー利用を指揮する主要なアナボリック(同化)ホルモンである。その作用が過剰になると、血管壁を厚くして高血圧を引き起こし、肝臓で悪玉コレステロール(LDLパターンB)の生成を促し、脳内ではアミロイドβ蓄積を促進する。このように、インスリンはあらゆる組織に多岐にわたる悪影響を及ぼす。

問題の根本原因は、私たちのライフスタイル、特に食生活にある。精製された炭水化物や糖質を頻繁に摂取することが慢性的な高インスリン血症を生み、それが細胞の反応を鈍らせ(インスリン抵抗性)、さらに膵臓がより多くのインスリンを分泌するという悪循環を引き起こす。著者は、このサイクルを断ち切るための解決策として、単なるカロリー制限ではなく、炭水化物を制限し(特に糖質と精製デンプン)、良質な脂肪とタンパク質を十分に摂取する食事法を提案する。

さらに、運動(特にレジスタンストレーニング)、十分な睡眠、間欠的断食(タイム・レストリクテッド・イーティング)もインスリン感受性を高める有効な手段である。薬物療法や外科手術は症状を抑えるだけであるのに対し、ライフスタイルの変容は問題の根本にアプローチする唯一の方法であると結論づける。本書は科学的証拠に基づく実践的な行動計画を提示し、読者が自身の代謝の健康を取り戻し、インスリン抵抗性という「隠れた流行病」から身を守るための知識を提供する。

各章の要約

第一部 問題:インスリン抵抗性とは何か、なぜ重要なのか?

第1章 インスリン抵抗性とは何か?

インスリン抵抗性とは、細胞がインスリンの効果に鈍感になる状態であり、その結果、血液中のインスリン濃度が慢性的に高くなる(高インスリン血症)。これは世界中で最も蔓延している健康障害の一つで、成人の最大85%が該当する可能性があるにもかかわらず、ほとんど認識されていない。従来の糖尿病診断は「血糖値」に依存してきたが、それは氷山の一角に過ぎず、血糖値が正常な状態でもインスリン抵抗性は何年も、あるいは何十年も進行していることが多い。著者はこう述べる。「インスリン抵抗性は、あなたが思っているよりもはるかに一般的な病気だ。」

第2章 心臓の健康

心臓病は世界の主要な死因であるが、その根本原因はインスリン抵抗性と切り離せない。高インスリンは、ナトリウムと水分を保持して血圧を上げ、血管壁を厚くし、血管の弛緩を妨げ、悪玉コレステロール(LDLパターンB)を増加させ、炎症を促進することで動脈硬化のプロセスを加速する。インスリン抵抗性は、心筋症の原因にもなる。インスリン感受性を改善することが、心臓病予防の最善の策である。

第3章 脳と神経疾患

脳もインスリンに敏感である。インスリン抵抗性は、脳細胞のエネルギー利用(グルコース取り込み)を妨げ、アルツハイマー病(「3型糖尿病」とも呼ばれる)の発症リスクを劇的に高める。アミロイドβ蓄積やタウ蛋白の過剰活性化といった病態にもインスリンが関与する。さらに、パーキンソン病、片頭痛、末梢神経障害(糖尿病性神経障害)もインスリン抵抗性と強い関連がある。

第4章 生殖の健康

インスリンは生殖機能において重要な役割を果たす。正常な妊娠では生理的なインスリン抵抗性が起こるが、それが過剰になると妊娠糖尿病や子癇前症のリスクとなる。女性では、高インスリンがアンドロゲンを増加させエストロゲンを減少させることで、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や不妊を引き起こす。男性では、インスリン抵抗性がテストステロン低下や勃起不全の原因となる。思春期早発症も、肥満とそれに伴う高インスリン・高レプチン状態が関係している。

第5章 がん

がん細胞は増殖のためにグルコースを大量に消費し(ワールブルク効果)、インスリンは細胞成長を促進するシグナルとして働く。そのため、高インスリン血症とインスリン抵抗性は、乳がん、前立腺がん、大腸がんなど特定のがんのリスクを2倍以上に高める。がん組織は正常組織よりも多くのインスリン受容体を持つことが多いため、高インスリン環境でより活発に増殖する。

第6章 老化、皮膚、筋肉、骨

加齢そのものにインスリン抵抗性が関与している可能性がある。皮膚では、黒色表皮腫(アカントーシス・ニグリカンス)や皮膚タグの原因となる。筋肉では、インスリン抵抗性が筋蛋白の分解を促進し、サルコペニア(加齢性筋減少症)や線維筋痛症に関連する。骨や関節の健康もインスリンに依存しており、インスリン抵抗性は骨密度の低下や変形性関節症、痛風のリスクを高める。

第7章 消化器系と腎臓の健康

消化管と腎臓は、インスリン抵抗性の影響を強く受ける。胃食道逆流症(GERD)、胃不全麻痺、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、胆石、腎結石、そして最終的には腎不全に至るまで、多くの障害がインスリン抵抗性と密接に関連している。特にNAFLDは、インスリン抵抗性の強力な予測因子であり、肝硬変や肝がんへの進行リスクを伴う。

第8章 メタボリックシンドロームと肥満

肥満とインスリン抵抗性は密接に関連しているが、その因果関係は「ニワトリと卵」のように複雑である。従来の「摂取カロリー>消費カロリー」という単純なモデルは不十分であり、ホルモン、特にインスリンが体脂肪の蓄積を決定づける主要な因子である。インスリンが高ければ体脂肪は増加し、低ければ減少する。1型糖尿病患者がインスリン注射で体重が増えること、またその逆がこのことを証明している。

第二部 原因:そもそも何が私たちをインスリン抵抗性にするのか?

第9章 年齢と遺伝がインスリンに与える影響

年齢とともにインスリン感受性は低下する傾向がある。特に女性の閉経によるエストロゲン減少や、男性のテストステロン減少はインスリン抵抗性を悪化させる。遺伝も一定の役割を果たすが(例:ピマ族の高い罹患率)、「倹約遺伝子」説は必ずしも全てを説明せず、食生活の急激な西洋化がより大きな要因である可能性が高い。

第10章 ホルモンがインスリン抵抗性を引き起こす仕組み

インスリンそのものが過剰になると、細胞はその効果に抵抗するようになる(インスリン抵抗性)。これは、インスリン注射による治療がさらなる抵抗性を生む悪循環を生む。ストレスホルモンであるコルチゾールとエピネフリンは、インスリンと拮抗して血糖値を上げ、インスリン抵抗性を引き起こす。甲状腺ホルモンもインスリン感受性に影響を与える。

第11章 肥満とインスリン抵抗性、再考

肥満、特に内臓脂肪の蓄積は炎症と酸化ストレスを増加させ、インスリン抵抗性を引き起こす。脂肪細胞が肥大化し、その貯蔵容量の限界(パーソナル・ファット・スレッショルド)に達すると、インスリン抵抗性が起こり、脂肪が血液中に漏れ出して他の組織(肝臓、筋肉、膵臓)に蓄積(異所性脂肪)し、さらなるインスリン抵抗性を引き起こす。

第12章 炎症と酸化ストレス

慢性的な低レベルの炎症(例:肥満、リウマチ)や、酸化ストレスは、細胞内のインスリンシグナル伝達経路を妨害し、インスリン抵抗性を引き起こす。脂肪組織から分泌される炎症性サイトカインや、酸化ストレスによって生成される「セラミド」などの脂質分子が、このプロセスにおける主要な悪役である。

第13章 ライフスタイル要因

大気汚染(PM2.5)、喫煙(受動喫煙含む)、食品添加物(MSG)、環境ホルモン(BPA)、農薬、過剰な糖質(特にフルクトース)、人工甘味料など、現代の環境に存在する多くの物質がインスリン抵抗性を促進する。一方で、睡眠不足、座りがちな生活もインスリン感受性を著しく損なう。塩分の摂りすぎではなく、不足することも問題となりうる。

第三部 解決策:インスリン抵抗性とどのように戦えるのか?

第14章 体を動かす:身体活動の重要性

運動は、筋肉がインスリンを介さずに血液中のグルコースを取り込むことができるため、インスリン感受性を改善する最も効果的な方法の一つである。有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方が有効だが、特に筋肉量を増やすレジスタンストレーニングは、インスリン感受性の向上において時間あたりの効果が大きい可能性がある。強度の高い運動がより効果的である。寒冷暴露も褐色脂肪を活性化し、グルコース消費を促す。

第15章 賢く食べる:私たちが食べるものに関するエビデンス

食事はインスリン抵抗性に対する最も強力な介入手段である。「カロリーの数」ではなく「カロリーの種類」が重要である。厳格なカロリー制限はストレスホルモンを増加させ、インスリン抵抗性を悪化させる可能性さえある。最も科学的に裏付けられたアプローチは、インスリンを低く保つ食事、すなわち炭水化物(特に糖質と精製デンプン)を制限し、良質な脂肪とタンパク質を十分に摂取することである。低炭水化物・高脂肪食(ケトジェニックダイエット)は、血糖値とインスリン値を低下させ、減量や代謝改善に効果的であることが多くの研究で示されている。食物繊維の摂取、発酵食品の利用、間欠的断食も有効である。著者はこう述べる。「私たちが食べるものは、私たちの代謝の健康において、何よりも重要だ。」

第16章 従来の介入:薬物と手術

メトホルミンはインスリン感受性を改善する効果的な薬物であるが、多くの他の薬剤(スルホニル尿素薬、チアゾリジンジオン薬など)やインスリン注射自体は、根本原因に対処せず、副作用(体重増加など)を伴う。肥満外科手術(バリアトリック手術)は劇的な改善をもたらすが、侵襲的で合併症のリスクがあり、ライフスタイルが変わらなければ効果が持続しない場合もある。

第17章 計画:研究を行動に移す

本書で提示された証拠に基づく実践的な行動計画をまとめる。まず、血液検査で空腹時インスリン値やHOMAスコアを測定し、自分の状態を把握する。食事の4つの柱は、「炭水化物をコントロールする」、「タンパク質を優先する」、「脂肪で満たす」、「時間を管理する(断食)」である。運動は、レジスタンストレーニングと有酸素運動を組み合わせ、週6日、1日20~40分行うことを推奨する。朝食を抜くことや、食事の順番(炭水化物を最後に食べる)など、具体的なテクニックも紹介する。著者はこう述べる。「健康と長寿への取り組みにおいては、ドグマではなくデータが私たちの決定を導くべき時だ。」


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