書籍『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源』 2012年

権力階級闘争・対反乱作戦・格差社会

サイトのご利用には利用規約への同意が必要です

『国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源』ダロン・アセモグル、ジェームズ・A・ロビンソン 2012年

Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty Daron Acemoglu, James A. Robinson 2012

目次

  • 序文 – Preface
  • 第1章 これほど近いのに、これほど異なる- So Close and Yet So Different
  • 第2章 役に立たない理論 – Theories That Don’t Work
  • 第3章 繁栄と貧困の形成 – The Making of Prosperity and Poverty
  • 第4章 小さな差異と決定的瞬間:歴史の重み – Small Differences and Critical Junctures: The Weight of History
  • 第5章 「私は未来を見た、そしてそれは機能する」:収奪的制度下での成長 – “I’ve Seen the Future, and It Works”: Growth Under Extractive Institutions
  • 第6章 分岐する道 – Drifting Apart
  • 第7章 転換点 – The Turning Point
  • 第8章 私たちの領域ではない:発展への障壁 – Not on Our Turf: Barriers to Development
  • 第9章 発展の逆転 – Reversing Development
  • 第10章 繁栄の拡散 – The Diffusion of Prosperity
  • 第11章 好循環 – The Virtuous Circle
  • 第12章 悪循環 – The Vicious Circle
  • 第13章 今日の国家の失敗 – Why Nations Fail Today
  • 第14章 型を破る- Breaking the Mold
  • 第15章 繁栄と貧困の理解 – Understanding Prosperity and Poverty

各章の要約

序文

エジプトのタハリール広場で抗議する人々は、腐敗と政治的抑圧が経済問題の根本原因だと理解していた。しかし学者や専門家の多くは、地理や文化、政策の無知が貧困の原因だと考えている。本書は、エジプトの抗議者たちが正しく、貧困国は狭いエリートが社会を自分たちの利益のために組織しているために貧しいのだと論じる。英国のような豊かな国は、市民が政治権力を広く分散させ、経済機会を活用できる社会を創り出したのである。

第1章 これほど近いのに、これほど異なる

メキシコとアメリカの国境の町ノガレスは、フェンスで二分されている。北側のアリゾナ州ノガレスは豊かで、南側のソノラ州ノガレスは貧しい。地理や文化、住民の背景は同じなのに、この違いは制度の差から生まれる。アメリカ側では包摂的な経済制度が機能し、メキシコ側では収奪的制度が支配している。スペインの植民地政策が生み出した制度の遺産が、現在でも両国の格差を生み出し続けている。世界の不平等を理解するには、制度がいかに経済的インセンティブを形作るかを見る必要がある。

第2章 役に立たない理論

世界の不平等を説明する従来の理論は機能しない。地理仮説は、熱帯地域が本質的に貧しいとするが、歴史的には熱帯地域の方が豊かだった時期もある。文化仮説は、特定の文化的価値観が経済発展を阻害するとするが、同じ文化でも制度が変われば経済成果は劇的に変わる。無知仮説は、指導者が正しい政策を知らないために貧困が続くとするが、実際には指導者は政治的制約の中で行動している。これらの理論は、なぜ貧困国が「間違った選択」をするのかを説明できない。答えは政治と制度にある。

第3章 繁栄と貧困の形成

朝鮮半島の分断は制度の重要性を示している。韓国は市場経済と私有財産制度の下で急速な成長を遂げたが、北朝鮮は中央計画経済と私有財産の禁止により停滞した。包摂的経済制度は幅広い人々の参加を可能にし、技術革新と教育を促進する。一方、収奪的経済制度は少数のエリートが富を抽出するために設計されている。政治制度が経済制度を決定し、包摂的政治制度は権力を広く分散させ、収奪的政治制度は権力を狭いエリートに集中させる。両者は相互に強化し合う関係にある。

第4章 小さな差異と決定的瞬間:歴史の重み

14世紀のペスト(黒死病)は、西欧と東欧で異なる影響をもたらした。西欧では労働力不足により農民の地位が向上し、封建制が衰退したが、東欧では地主が農民支配を強化し、第二次農奴制が生まれた。小さな制度的差異が決定的瞬間において増幅され、長期的な制度の分岐を生み出す。英国の名誉革命も、大西洋貿易という決定的瞬間と既存の制度的差異の相互作用の結果だった。制度変化は歴史に依存するが、同時に偶然性も重要な役割を果たす。

第5章 「私は未来を見た、そしてそれは機能する」:収奮的制度下での成長

ソ連は収奪的制度の下でも急速な経済成長を実現した。スターリンは農業から工業への資源再配分を強制的に行い、1928年から1960年まで年6%の成長を記録した。しかしこの成長は技術革新に基づかず、持続不可能だった。中央計画経済は適切なインセンティブを提供できず、1970年代には成長が止まった。ソ連の経験は、収奪的制度でも一時的な成長は可能だが、創造的破壊がなければ持続的成長は不可能であることを示している。同様のパターンは古代ローマやマヤ文明にも見られる。

第6章 分岐する道

ヴェネツィア共和国は中世において包摂的制度への道を歩んでいたが、1297年の「閉鎖」により収奮的制度に転換した。既存エリートが新規参入者を排除し、コメンダ契約を禁止して貿易を国有化した結果、経済は衰退した。古代ローマも共和政から帝政への移行により、包摂的要素が失われ、最終的に崩壊した。英国は西ローマ帝国崩壊後に最も後進地域となったが、封建制の発展と独立都市の出現により、後に包摂的制度への基盤が築かれた。制度の発展は単純な累積過程ではなく、逆転も起こりうる。

第7章 転換点

1583年、ウィリアム・リーが発明した編み機を、エリザベス1世とジェームス1世は失業を恐れて特許を拒否した。これは創造的破壊への恐れを示している。英国では17世紀に絶対主義への試みが続いたが、1688年の名誉革命で議会が勝利し、包摂的政治制度が確立された。議会は独占を廃止し、財産権を保護し、金融市場を発展させた。これらの制度変化が産業革命の基盤となった。技術革新は新しい人材によって推進され、既存エリートの抵抗を克服する必要があった。英国の成功は、幅広い連合による包摂的制度の確立にあった。

第8章 私たちの領域ではない:発展への障壁

オスマン帝国は1485年にイスラム教徒の印刷を禁止し、1727年まで印刷機を認めなかった。絶対主義体制は創造的破壊を恐れ、技術革新を阻害した。スペインは新大陸の銀により絶対主義を強化し、経済衰退を招いた。オーストリア・ハンガリー帝国とロシアは産業化を積極的に阻止し、鉄道建設も禁止した。中国は明・清朝時代に海外貿易を禁止し、内向きになった。エチオピアのような絶対主義国家や、ソマリアのような政治的中央集権化を欠く社会は、いずれも産業革命の恩恵を受けることができなかった。

第9章 発展の逆転

ヨーロッパの植民地拡張は、多くの地域で独立した発展の可能性を破壊した。オランダ東インド会社はモルッカ諸島でスパイス貿易を独占するため、バンダ諸島で1万5千人を虐殺し、プランテーション社会を創設した。大西洋奴隷貿易はアフリカの政治制度を破壊し、1000万人以上のアフリカ人が奴隷として運ばれた。南アフリカでは、19世紀にアフリカ人農民が経済的成功を収めていたが、1913年の原住民土地法により強制的に貧困化された。これらの事例は、ヨーロッパの成長が他地域の発展を逆転させる構造を生み出したことを示している。

第10章 繁栄の拡散

18世紀イギリスの植民地政策は、オーストラリアとアメリカで包摂的制度の発展を促した。オーストラリアでは囚人植民地として始まったが、労働力不足により囚人に経済的インセンティブを与える必要があり、最終的に包摂的経済制度が発達した。フランス革命は絶対主義を打倒し、封建制度を廃止して包摂的制度への道を開いた。ナポレオンの征服により、これらの改革はヨーロッパ各地に輸出された。日本の明治維新では、薩摩・長州等の藩が幕府を倒し、封建制度を廃止して近代化を推進した。一方、中国は皇帝制度の集権化により改革に抵抗し続けた。19世紀の制度変化が現在の世界不平等の根源となっている。

第11章 好循環

包摂的制度は好循環を生み出し、時間とともに強化される。イギリスの黒人法事件は、法の支配が確立され、エリートも法的制約を受けることを示した。18世紀から19世紀にかけて、イギリスでは段階的な政治改革により選挙権が拡大され、より包摂的な政治制度が発達した。アメリカでは19世紀後期の強盗男爵(ロッカフェラー、モルガンなど)による独占に対し、反トラスト法により対抗した。フランクリン・ルーズベルトの最高裁判所詰め込み計画の失敗は、包摂的制度が権力集中への抵抗力を持つことを証明した。包摂的制度は多元主義、法の支配、自由な報道を通じて自己強化し、持続的な経済成長の基盤となる。

第12章 悪循環

抽出的制度は悪循環を生み出し、貧困と抑圧を永続化させる。シエラレオネでは、イギリス植民地政府が設立した間接統治制度と商品委員会が独立後も継続され、シアカ・スティーブンスにより一層強化された。グアテマラでは、スペイン征服者の子孫が500年間権力を維持し、先住民の土地を奪い強制労働制度を続けた。アメリカ南部では南北戦争後もplantation eliteが権力を保持し、ジム・クロウ法により黒人を抑圧した。エチオピアでは皇帝ハイレ・セラシエが軍事クーデターで倒されたが、メンギスツ政権も同様の抽出的制度を再現した。これらは寡頭制の鉄則を示している。

第13章 今日の国家の失敗

現代の貧困国は抽出的制度により失敗している。ジンバブエのムガベ政権は宝くじに当選するなど腐敗が蔓延し、経済は崩壊した。シエラレオネでは1991年から2001年の内戦により国家が完全に破綻した。コロンビアでは準軍事組織が国土の大部分を支配し、民主主義は名目的にすぎない。アルゼンチンでは2001年の経済危機で銀行預金が凍結され、国民の貯蓄が収奪された。北朝鮮、ウズベキスタン、エジプトなど、共産主義や権威主義体制下では抽出的制度が経済成長を阻害している。これらの国々では政治的権力が少数に集中し、経済制度も抽出的性格を持つため、持続的発展は不可能である。

第14章 型を破る

一部の国家は歴史の型を破り、抽出的制度から包摂的制度への転換に成功した。ボツワナでは1895年に3人の首長がロンドンに赴き、セシル・ローズによる併合を阻止した。独立後、セレツェ・カーマとクエット・マシレの指導下で包摂的制度を構築し、ダイヤモンド収入を国家発展に活用した。アメリカ南部では1955年のローザ・パークス事件に始まる公民権運動により、連邦政府の介入を通じて抽出的制度が解体された。中国では1976年のマオ死後、鄧小平が権力闘争に勝利し、経済制度の包摂化を推進した。これらの成功例は、臨界的局面と既存制度の相互作用、そして幅広い連合の形成が重要であることを示している。

第15章 繁栄と貧困の理解

本書の理論は2つのレベルで構成される。第1レベルは包摂的制度と抽出的制度の区別、第2レベルは制度の歴史的起源の説明である。包摂的制度は持続的成長を促進するが、抽出的制度下での成長は創造的破壊を恐れるエリートにより制限される。中国の権威主義的成長は一時的成功にすぎず、長期的には限界がある。近代化理論や外国援助による繁栄の創出は失敗している。ブラジルの労働者党の成功例が示すように、社会の幅広い層のエンパワーメントこそが包摂的制度構築の鍵である。自由なメディアも重要な役割を果たす。制度変化には小さな差異と偶然性が重要であり、歴史的決定論は成立しない。


この記事が気に入りましたら、alzhacker.comを応援してください。
アルツハッカーは100%読者の支援を受けています。

会員限定記事

新サービスのお知らせ 2025年9月1日より

ブログの閲覧方法について

当ブログでは、さまざまなトピックに関する記事を公開しています。2025年より、一部の詳細な考察・分析記事は有料コンテンツとして提供していますが、記事の要約と核心部分はほぼ無料で公開しており、無料でも十分に役立つ情報を得ていただけます。 さらに深く掘り下げて知りたい方や、詳細な分析に興味のある方は、有料コンテンツをご購読いただくことで、より専門的で深い内容をお読みいただけます。

パスワード保護有料記事の閲覧方法

パスワード保護された記事は以下の手順でご利用できます:
  1. Noteのサポーター・コアサポーター会員に加入します。
  2. Noteサポーター掲示板、テレグラムにて、「当月のパスワード」を事前にお知らせします。
  3. 会員限定記事において、投稿月に対応する共通パスワードを入力すると、その月に投稿したすべての会員記事をお読みいただけます。
注:管理システムと兼用しているため過去記事のすべてのパスワード入力欄に「続きを読む」が表示されますが、閲覧できるのは2025年6月以降の記事となります。

サポーター会員の募集

もしあなたに余裕があり、また私が投稿やツイート記事、サイト記事の作成に費やす時間、研究、配慮に価値を見出していただけるなら、私の活動をご支援ください。これらの記事は、病気で苦しむ人に力を与え、草の根コミュニティのレベルアップを図り、市民主導で日本を立て直すことを目指しています。これからも無料読者、サポーターすべての方に有益な情報を提供するよう努力してまいります。
会員限定記事(一部管理用)

「いいね」を参考に記事を作成しています。
いいね記事一覧はこちら

備考:機械翻訳に伴う誤訳・文章省略があります。下線、太字強調、改行、注釈、AIによる解説(青枠)、画像の挿入、代替リンクなどの編集を独自に行っていることがあります。使用翻訳ソフト:DeepL,LLM: Claude 3, Grok 2 文字起こしソフト:Otter.ai
alzhacker.com をフォロー