
『Weird Scenes Inside the Canyon:Laurel Canyon, Covert Ops & The Dark Heart of the Hippie Dream』David McGowan [2014]
『ウィアード・シーンズ・インサイド・ザ・キャニオン:ローレル・キャニオン、秘密工作、そしてヒッピー・ドリームの闇の核心』デイヴィッド・マッゴーワン [2014]
目次
- 第1章 呪われた村:導入にあたって / Village of the Damned By Way of an Introduction
- 第2章 人民に力を:これをカウンターカルチャーと呼べるか? / Power to the People Call this a Counterculture?
- 第3章 掘れ!:ローレル・キャニオン・デス・リスト / Dig! The Laurel Canyon Death List
- 第4章 関連した人生と相対的な死 / Related Lives and Relative Deaths
- 第5章 望ましき人々:キャニオンの特異な過去 / Desirable People The Canyon’s Peculiar Past
- 第6章 ヴィートと彼のフリーカーズ:ヒッピー文化の不気味な根源 / Vito and his Freakers The Sinister Roots of Hippie Culture
- 第7章 ゴドー・ポーレカスの死:アンガーズの幼きルシファー / The Death of Godo Paulekas Anger’s Infant Lucifer
- 第8章 ヤング・タークス・オール:ハリウッドのトリッピング / All the Young Turks Hollywood Tripping
- 第9章 ウィアード・シーンズ・インサイド・ザ・キャニオン / Weird Scenes Inside the Canyon
- 第10章 夏の暑さの中のヘルター・スケルター:デス・リストの帰還 / Helter Skelter in a Summer Swelter Return of the Death List
- 第11章 迂回路:ラスティック・キャニオンとグレイストーン・パーク / Detours Rustic Canyon & Greystone Park
- 第12章 嵐のライダーズ:ザ・ドアーズ / Riders on the Storm The Doors
- 第13章 8マイル・ハイ、そして急速な墜落:ザ・バーズ / Eight Miles High and Falling Fast The Byrds
- 第14章 大いなるセレンディピティ:バッファロー・スプリングフィールド / The Great Serendipity Buffalo Springfield
- 第15章 バッファロー・スプリングフィールドの彼方へ、そしてモンキーズも / Beyond Buffalo Springfield and the Monkees, too
- 第16章 アールタモント・パイ:グラム・パーソンズ / Altamont Pie Gram Parsons
- 第17章 ジーン・クラークの失われた遠征 / The Lost Expedition of Gene Clark
- 第18章 LAの狼王:「パパ」・ジョン・フィリップス / The Wolf King of LA “Papa” John Phillips
- 第19章 腹を空かせたフリークス、ダディ:フランク・ザッパ / Hungry Freaks, Daddy Frank Zappa
- 第20章 ワイルドに生まれついて:ジョン・ケイ / Born To Be Wild John Kay
- 第21章 もっと白く蒼ざめて:アーサー・リーとラヴ / A Whiter Shade of Pale Arthur Lee and Love
- 第22章 終わらない振動:ザ・ビーチ・ボーイズ / Endless Vibrations The Beach Boys
- 第23章 陰鬱なゲーム:フーディーニ / The Grim Game Houdini
- 第24章 二度と騙されない:パンクとニューウェーブの到着 / Won’t Get Fooled Again Punk and New Wave Arrive
本書の概要:
短い解説:
本書は、1960年代にロサンゼルスのローレル・キャニオンで勃興した音楽シーンとヒッピー・カウンターカルチャーを、その地の特異な歴史、多数の不可解な死、および軍・諜報機関との深い関わりから再検証することを目的とする。従来の「愛と平和」の神話を覆し、その陰に潜む闇の側面を暴き出す試みである。
著者について:
著者デイヴィッド・マッゴーワンは、アメリカの調査ジャーナリスト・作家であり、政府公式見解や主流メディアのナラティブに対して独自の調査に基づく異議申し立てを行うことで知られる。特にアメリカの政治・社会史における陰謀、隠蔽工作、権力構造に焦点を当て、『The CIA’s Greatest Hits』等の著作がある。本書では、公的な記録、家系図、地理的・歴史的文脈の緻密な分析を通じて、カウンターカルチャーの起源に対する通説への根本的な疑問を提示する。
テーマ解説
- 主要テーマ:表向きのヒッピー・ムーブメントの背後にある軍産複合体および諜報機関の関与と操作
- 新規性:ローレル・キャニオンを地理的・人的な結節点として、音楽、ハリウッド、軍事、オカルトのネットワークを具体的に結びつけて分析する視点
- 興味深い知見:多くのカウンターカルチャーのリーダーたちが軍関係者や情報機関職員の子女であったという指摘
キーワード解説
- ローレル・キャニオン:ロサンゼルスにある渓谷で、1960年代に多くのミュージシャンやアーティストが集住し、フォーク・ロックなどの音楽シーンが誕生した地。著者はこれを「実験場」とみなす。
- デス・リスト:本書が列挙する、ローレル・キャニオンと関連するミュージシャン、関係者たちの不可解で早すぎる死の数々。事故、自殺、過剰摂取など。
- カウンターカルチャー:既存の社会規範に反抗する文化運動。1960年代のヒッピー・ムーブメントが典型とされるが、著者はその自発性と純粋性に疑問を呈する。
- コバート・オペレーション(秘密工作):政府や組織がその関与を隠して行う影響工作。著者はヒッピー文化の普及にそのような操作が働いた可能性を探る。
- フリーク・ファミリー:ヴィート・ポーレカスを中心とした前衛的なダンス・パフォーマンス集団。著者はこれをヒッピー文化の直接的な先駆けかつ「培養器」と位置づける。
3分要約
本書は、1960年代のロサンゼルス、ローレル・キャニオンを中心に花開いた音楽シーンとヒッピー文化の誕生を、その地の特異な歴史と不可解な人的ネットワーク、そして数多の早すぎる死を通して再検証する試みである。著者は、このカウンターカルチャーが「愛と平和」の自発的な草の根運動として語られる通説に真っ向から異を唱える。導入部で提示されるのは、1960年代にこの渓谷に突如として集まった若者たちの多くが、軍の高官、諜報機関関係者、法執行機関幹部の子女であったという驚くべき事実である。ローレル・キャニオン自体が、歴史的に映画産業や軍関係者の隠れ家的な居住地であり、さらに近隣にはロッキードなどの軍需産業や核関連施設が存在する地であった。
この地理的・人的土壌の上で、まず注目されるのがヴィート・ポーレカスとその「フリーク・ファミリー」である。彼らはLSDを常用し、前衛的なダンスやファッションで知られた集団で、後にミュージシャンとなる多くの若者たちに直接的な影響を与えた。著者は、この集団の活動が、ヒッピー文化の「実験的」かつ「劇場的」な側面の原型であったとみなす。そして、この文化的な「実験」が、単なる芸術的表現の域を超え、社会工学の一環として、若者を既存の社会秩序から引き離し、管理可能な反対派に仕立て上げるための工作であった可能性を暗示する。ミュージシャンやアーティストたちの急激な台頭と、それに伴うドラッグ文化の普及は、偶然の産物ではなく、何らかの意図的な後押し、あるいは少なくとも利用があったと推測させる。
その仮説を補強するのが、「ローレル・キャニオン・デス・リスト」と著者が呼ぶ、関係者たちに降りかかる不可解な死の連鎖である。本書は、ザ・ドアーズのジム・モリソン、バーズのグラム・パーソンズやクラレンス・ホワイト、ママス&パパスのジョン・フィリップスの娘など、事故、過剰摂取、自殺、未解決殺人などで亡くなった多数の事例を列挙し、その多さと状況の不自然さを指摘する。これらの死は、単なる「ロックンロールの代償」ではなく、何らかの秘密を封じるため、あるいはある種の「生贄」的な様相すら帯びていると著者は疑う。
各章では、ザ・ドアーズ、ザ・バーズ、バッファロー・スプリングフィールド、ラヴ、フランク・ザッパ、ビーチ・ボーイズといったバンドやアーティストが個別に取り上げられるが、著者の関心は音楽的な評価ではなく、彼らがローレル・キャニオンというネットワークのどの結節点に位置し、どのような人的繋がり(軍関係、ハリウッド、フリーク・ファミリーなど)を持ち、どのような死を遂げたか、あるいは奇妙な運命を辿ったかにある。例えば、ジム・モリソンの父親が海軍高官であること、バーズのメンバーが軍関係の家庭の出身であること、バッファロー・スプリングフィールドの結成が極めて偶然めいた出来事の連鎖によることなどが詳述される。
最終的には、ローレル・キャニオンで生まれた「ヒッピー・ドリーム」は、表向きは体制への反抗を謳いながら、その実、体制側のエージェントやその影響下にある者たちによって主導され、大衆のエネルギーを無害な方向へ逸らし、真の政治的変革を阻害するための「管理された反乱」であったという、衝撃的な結論が導き出される。著者は、その後のパンク・ムーブメントの到来をも、この同じパターンの繰り返しである可能性を示唆し、読者に「二度と騙されない」よう警告を発する。
各章の要約:
第1章 呪われた村:導入にあたって
ロサンゼルスのローレル・キャニオンは、1960年代半ば、フォーク・ロックやサイケデリック・ロックの中心地として突如脚光を浴びた。しかし、この「村」に集まったミュージシャンやアーティストたちの背景を調査すると、驚くべき共通点が浮かび上がる。彼らの多くは、軍の高官、CIAやFBIなどの諜報機関職員、法執行機関幹部の子女なのである。著者は、この事実が示唆するもの、つまりカウンターカルチャーと体制側との深い人的結合に最初の疑問符を付ける。この章は、従来の神話化されたヒッピー像とは異なる、闇に包まれたローレル・キャニオンの真の姿を探る旅の出発点となる。
第2章 人民に力を:これをカウンターカルチャーと呼べるか?
ヒッピー・ムーブメントは、既成の政治体制や社会規範に対する真の反抗として語られることが多い。しかし著者は、その「反体制」の表象を仔細に検証する。ローレル・キャニオンから発信されたメッセージは、実際には根本的な政治経済構造の変革を求めるものではなく、ドラッグ、セックス、ロックンロールへの逃避、あるいは曖昧なスピリチュアリズムへと向けられていた。この章では、そのような文化が「体制転覆」ではなく、若者を政治的無力化へと導く「安全弁」として機能した可能性、さらには意図的に作られたものであった可能性について論じられる。
第3章 掘れ!:ローレル・キャニオン・デス・リスト
ローレル・キャニオンとその音楽シーンに深く関わった人物たちの間に、異常な数の不可解な死が発生していることを著者は指摘する。この章は、そのリストを提示し始める。死因は、薬物過剰摂取、事故、自殺、不明な殺人など多岐にわたる。著者は、これらの死が単なる悲劇の積み重ねではなく、何らかのパターン、あるいは共通する要因の存在を示唆していると考える。この「デス・リスト」は本書を通じて繰り返し参照され、ローレル・キャニオンの華やかな歴史の裏側に横たわる闇の証拠として機能する。
第4章 関連した人生と相対的な死
前章に挙げられた死の事例をさらに深掘りし、犠牲者たちの相互の関係性に焦点を当てる。ローレル・キャニオンは狭いコミュニティであり、人々の結びつきは密接であった。したがって、ある人物の死は、単独の事件ではなく、ネットワーク全体に波及する影響を持っていた可能性がある。著者は、個々の死が互いに無関係であるという見方を退け、それらが「ローレル・キャニオン現象」というより大きな文脈の中で関連性を持つと考え、その謎を解き明かそうとする。
第5章 望ましき人々:キャニオンの特異な過去
ローレル・キャニオンの歴史は、1960年代よりずっと前に遡る。この章では、ヒッピーたちが流入する以前のキャニオンが、ハリウッドのスターや映画関係者、そして何より軍関係者やその家族たちに人気の居住地であったことが明らかにされる。近隣には主要な軍需産業(ロッキード等)や核研究施設があり、キャニオン自体が一種の「軍産複合体のベッドタウン」の性格を帯びていた。この環境は、後のカウンターカルチャーの「実験」にとって、偶然とは思えないほどに適した舞台であったと著者は論じる。
第6章 ヴィートと彼のフリーカーズ:ヒッピー文化の不気味な根源
ヒッピー文化の直接的な先駆けとして、ヴィート・ポーレカスとその「フリーク・ファミリー」に注目する。彼らは1960年代前半からLSDを使用し、奇抜な服装で前衛的なダンス・パフォーマンスを行い、ロサンゼルスのアンダーグラウンド・シーンで異彩を放った集団である。後の多くのロック・ミュージシャンは、この集団と交流を持ち、そのライフスタイルに強い影響を受けた。著者は、フリーク・ファミリーを、ヒッピー文化の価値観と美学が「培養」された「実験室」として位置づけ、その活動が単なる芸術的表現を超えていた可能性を探る。
第7章 ゴドー・ポーレカスの死:アンガーズの幼きルシファー
ヴィート・ポーレカスの息子、ゴドーの短い生涯と不可解な死を取り上げる。ゴドーは幼少期からフリーク・ファミリーの一員として、成人のドラッグ使用や性的な環境の中に置かれ、前衛映画作家ケネス・アンガー作品の「幼きルシファー」としても出演した。彼は1969年、僅か6歳で謎の死を遂げる。著者はこの事件を、ローレル・キャニオンの暗黒面が最も無垢な存在にまで及んだ象徴的な悲劇として描き、その死の状況に関する疑問を投げかける。
第8章 ヤング・タークス・オール:ハリウッドのトリッピング
ローレル・キャニオンの音楽シーンとハリウッドの結びつきに焦点を当てる。多くのミュージシャンが俳優や業界関係者と親交を深め、またハリウッドの子女たち自身がシーンの中心に参入していった。著者は、この交流が単なる社交の域を超え、ドラッグ文化の普及や、映画産業を通じたカウンターカルチャー・イメージの広範な流通に重要な役割を果たしたことを指摘する。ハリウッドは、この「革命」を娯楽商品としてパッケージ化する装置としても機能した。
第9章 ウィアード・シーンズ・インサイド・ザ・キャニオン
この章では、ローレル・キャニオン内部の日常的な「奇妙な光景」が描かれる。ドアーズのジム・モリソンが自宅の屋根から近所の家に飛び移ろうとするなど、薬物の影響下での奇行、オカルト的な儀式の噂、そして常に付きまとう死の気配が、キャニオンの生活の一部であった。著者は、これらのエピソードを、表面的な自由と狂気の背後に潜む、より組織的で不気味な現実の徴候として提示する。
第10章 ヘルター・スケルター in a summer swelter:デス・リストの帰還
1969年夏、ローレル・キャニオンに近いシエラ・マドレで発生したシャロン・テートら5人の惨殺事件(マンソン・ファミリーによる)は、カウンターカルチャーの楽園に終止符を打つ象徴的事件となった。著者はこの事件を、ローレル・キャニオン・デス・リストの延長線上にある、あるいはその頂点に位置するものとして分析する。マンソンとそのファミリーは、ヒッピー文化の最悪の部分を体現しており、その事件は「愛の夏」が闇に飲み込まれる瞬間であった。著者は、マンソンと音楽業界(特にビーチ・ボーイズのデニス・ウィルソン)との接点にも言及する。
第11章 迂回路:ラスティック・キャニオンとグレイストーン・パーク
ローレル・キャニオンのすぐ隣にある、ラスティック・キャニオンとグレイストーン・パーク(旧石油王の邸宅)に話を拡げる。ラスティック・キャニオンには、ミュージシャンやオカルト実践者のコミューンが存在し、グレイストーン・パークはパーティーや奇怪な儀式の会場として使用された。これらの場所は、ローレル・キャニオン・ネットワークの延長であり、同様に薬物と死が蔓延する「実験場」であった。著者は、これらの地が持つ歴史的・象徴的な重み(グレイストーンでは石油王の息子の不可解な死が起きている)にも注目する。
第12章 嵐のライダーズ:ザ・ドアーズ
ザ・ドアーズのリーダー、ジム・モリソンを中心に分析する。著者の関心は音楽そのものよりも、モリソンの経歴(父親が海軍大将)、彼の詩やパフォーマンスに込められたオカルト的・死のイメージ、そして1971年のパリでの謎に包まれた死にある。モリソンは、軍のエリート家庭に生まれながら反体制のアイコンとなった矛盾した存在であり、その死は「デス・リスト」の中でも最も象徴的なものの一つである。著者は、モリソンが体制に対する本当の脅威となったために「処理」された可能性を示唆する。
第13章 8マイル・ハイ、そして急速な墜落:ザ・バーズ
ローレル・キャニオンを代表するバンド、ザ・バーズの軌跡を追う。彼らの音楽的革新と社会的影響力は大きかったが、バンド内部には深い亀裂と個人的な悲劇が渦巻いていた。著者は、バンドの主要メンバー(ロジャー・マッギン、デヴィッド・クロスビー、ジーン・クラーク、クリス・ヒルマンら)の背景、特に軍関係の家庭出身者が多い点を指摘する。さらに、グラム・パーソンズの関与、クラレンス・ホワイトの不可解な殺害、そしてメンバーたちが辿った数奇な運命を、ローレル・キャニオン・ネットワークと「デス・リスト」の文脈で語る。
第14章 大いなるセレンディピティ:バッファロー・スプリングフィールド
バッファロー・スプリングフィールドの結成は、極めて偶然が重なった出来事として伝えられている。著者は、スティーヴン・スティルス、リッチー・フューレイ、ニール・ヤング、ジム・メッシーナ、デューイ・マーティンらが出会いバンドを結成するまでの経緯を詳述するが、そこには不自然なほどの「運命的な」繋がりが見られると指摘する。彼らの音楽は社会的不安を反映していたが、著者はこのバンドの急激な出現と短命な活動が、ローレル・キャニオンという「舞台」で用意された脚本の一部であった可能性を匂わせる。
第15章 バッファロー・スプリングフィールドの彼方へ、そしてモンキーズも
バッファロー・スプリングフィールドのメンバーがその後、CSNYやパコなど様々な重要なグループに散らばって影響力を及ぼしたように、ローレル・キャニオン・ネットワークは音楽業界全体に拡散していった。さらに著者は、一見正反対に見られるテレビ製作物のバンド、モンキーズをもこの文脈に組み込む。モンキーズのメンバー、特にミッキー・ドレンツとピーター・トークもローレル・キャニオンと繋がりがあり、彼らを通じてカウンターカルチャーの要素が広く大衆に浸透していった経路を示す。
第16章 アールタモント・パイ:グラム・パーソンズ
カントリー・ロックの先駆者であり、悲劇のアイコンであるグラム・パーソンズに焦点を当てる。バーズを経て、フライング・ブリトー・ブラザーズやソロ活動で活躍した彼の人生は、ドラッグと自己破壊に彩られていた。1973年、カリフォルニアのジョシュア・ツリーでヘロイン過剰摂取により死亡するが、その死の前後には不可解な出来事(遺体の強盗・火葬)が起こった。著者は、パーソンズの死を単なる事故ではなく、彼が関わった危険な人間関係や、ローレル・キャニオンの闇に根ざしたものとして描く。
第17章 ジーン・クラークの失われた遠征
バーズの創設メンバーであり、主要なソングライターであったジーン・クラークの人生を追う。彼はバーズ脱退後、ソロや他のグループで活動するが、商業的成功には恵まれず、深い不安と薬物依存に苦しんだ。1991年、自宅で自然死(心臓発作)とされるが、その死には謎が残る。著者は、クラークの芸術的才能とその挫折、そして最後まで付きまとった「デス・リスト」の影を、ローレル・キャニオンが生み出し、そして見捨てた才能の典型例として哀悼する。
第18章 LAの狼王:「パパ」・ジョン・フィリップス
ママス&パパスの中心人物、ジョン・フィリップスを取り上げる。彼はローレル・キャニオンの社交界の中心にいて、モンタレー・ポップ・フェスティバルを企画するなど、カウンターカルチャーの「顔」の一人であった。しかし著者は、その華やかなイメージの背後にある、娘(マッケンジー・フィリップス)への性的虐待疑惑、重度のヘロイン依存、そしてマフィアとの関係などの暗い側面を暴き出す。フィリップスの人生は、ローレル・キャニオンの光と闇が最も鮮明に表れた例の一つである。
第19章 腹を空かせたフリークス、ダディ:フランク・ザッパ
ローレル・キャニオンにおいて異色の存在であったフランク・ザッパを分析する。ザッパは商業主義とドラッグ文化を辛辣に批判し、社会風刺を込めた前衛的な音楽を追求した。一見、体制側の操作とは無縁に見えるが、著者はザッパの経歴(父親が化学・生物学の専門家で軍と関わりがあった)や、彼が初期にフリーク・ファミリーと関わり、そのメンバーをバンドに起用した事実に注目する。ザッパの批判的な立場さえも、このネットワークの内部から生まれたものである可能性が示唆される。
第20章 ワイルドに生まれついて:ジョン・ケイ
サイケデリック・ロック・バンド、ステッペンウルフのリーダー、ジョン・ケイに焦点を当てる。彼は東ドイツで生まれ、幼少期に脱出したという特異な経歴を持つ。バンドの大ヒット曲「ボーン・トゥ・ビー・ワイルド」は、カウンターカルチャーの「自由」のアンセムとなった。しかし著者は、ケイのバックグラウンドと、彼の音楽が持つ反抗的なイメージとの間に潜む複雑さを探る。また、ステッペンウルフのメンバーや関係者にも悲劇が訪れていることを指摘する。
第21章 もっと白く蒼ざめて:アーサー・リーとラヴ
サイケデリック・ロックの先駆的かつ謎めいたバンド、ラヴとその天才的リーダー、アーサー・リーを取り上げる。ラヴはローレル・キャニオンの象徴的存在であったが、商業的成功には縁がなかった。リーはアフリカ系アメリカ人としてこのシーンでは異色であり、その複雑な性格と薬物問題から、孤立と困難な人生を送った。著者は、ラヴの傑作アルバム『フォーエヴァー・チェンジズ』に込められた預言的な悲しみと、リーのその後の荒廃した人生を、ローレル・キャニオンという環境が天才をどのように消費したかの例として描く。
第22章 終わらない振動:ザ・ビーチ・ボーイズ
アメリカの夢を体現するバンドとして知られるビーチ・ボーイズでさえ、ローレル・キャニオンの闇と無縁ではなかったことを論じる。特に、弟のデニス・ウィルソンがローレル・キャニオン・シーンに深く入り込み、チャールズ・マンソンと親交を持ったことが強調される。ブライアン・ウィルソンの精神的崩壊と薬物依存、そしてデニスの溺死事故は、ビーチ・ボーイズの明るいイメージを裏切る悲劇である。著者は、このバンドの変容と悲劇が、1960年代アメリカの無垢が失われていく過程と並行していることを示す。
第23章 陰鬱なゲーム:フーディーニ
この章では、ローレル・キャニオンの歴史をさらに遡り、偉大なる脱出術師ハリー・フーディーニとこの地との関連に言及する。フーディーニの妻の実家がローレル・キャニオンにあり、彼自身もオカルトや心霊術への深い関心を持っていた。著者は、フーディーニの死(腹部を殴打されたことが原因)の不可解さと、彼のオカルト研究が後のキャニオンの住人たち(ケネス・アンガーなど)に引き継がれた可能性を指摘する。これにより、キャニオンの「奇妙さ」の系譜は20世紀初頭まで伸びることになる。
第24章 二度と騙されない:パンクとニューウェーブの到着
1970年代後半、ローレル・キャニオンには新たな波、パンク・ロックとニューウェーブのミュージシャンたちが流入した。この章では、彼らが1960年代のヒッピー文化を偽りの革命として拒絶したことを確認する。しかし著者は、この新たな「反体制」のムーブメントもまた、同じパターンを繰り返しているのではないかと問いかける。新しいアーティストたちは、同じ場所(ローレル・キャニオン)に住み、同じような人的ネットワーク(音楽業界、メディア)に組み込まれ、果たして本当に「体制」から独立していると言えるのか。著者は、歴史が繰り返される可能性に警鐘を鳴らし、読者に常に疑う目を持ち続けるよう促して本書を締めくくる。
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