「The Colder War」 9. ウラニウムのプーチン化
いかにして世界のエネルギー貿易がアメリカの手からすり抜けたか

強調オフ

ロシア、プーチンロシア・ウクライナ戦争

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第9章 ウラニウムのプーチン化

2011年3月11日(金)、自然が襲った。

マグニチュード9.0の巨大地震が、日本の本州の北東40マイルの海底をつかんだのである。この地震により、本州は東へ3メートル、地軸は4センチ以上ずれた。この衝撃で発生した津波は、高さ130フィート(約15メートル)に達し、内陸6マイルの地域が浸水した。何十万人もの人々が逃げ惑った。16,000人近い遺体が収容されたが、さらに2,500人が行方不明となっている。

津波の進路には、福島第一原子力発電所の冷却システムに供給する発電機が横たわってた。その発電機が停止し、冷却システムが停止した。その後、炉心溶融が発生した。国際原子力・放射線事象評価尺度では、チェルノブイリに次ぐレベル7の災害であった。

福島原発事故の後処理には数十年を要するが、ウラン・イエローケーキのスポット価格は60%以上下落し、1ポンド28ドル(図9.1参照)となり、ウラン鉱山の株価も60~85%下落した。日本は安全評価のために他の52基の原子炉をすべて停止させた。韓国も23基の原子炉を停止させたが、現在ではほとんどが再稼働している。

※イエローケーキ – ATOMICA – ウラン精鉱ともいい、ウランの精錬工程のうち山元で行う粗製錬の製品の総称

福島原発事故は、世界中の反原発デモ参加者を寝不足に追いやった。彼らにとっては、この震災によって、原子力発電はずっと恐ろしいものであったことが明らかになった。ドイツは、2022年までに17基の原子炉をすべて永久に停止すると発表した。他の多くの国も、おそらくはすべての国も、同様に原子力発電所を閉鎖するものと思われた。

しかし、そうもいかない。

ドイツに追随する国はなかった。現在、十数カ国で71基以上の新しい原発が建設中であり、さらに163基が計画され、329基が提案されている。(トルコ、カザフスタン、インドネシア、ベトナム、エジプト、サウジアラビア、湾岸首長国など、原子力発電を持たない多くの国々がまもなく最初の原子炉を建設する予定である(図9.2)。

原子力発電所を保有する多くの国が安全対策を見直すために休業を宣言したが、ほぼすべての国が現状維持にとどまっている。ウランは依然として、ベースロードの電力を経済的に生産でき、温室効果ガスやその他の好ましくない炭化水素を排出しない唯一の燃料である。

1977年以来、原子力発電所を建設していない米国では、2020年までに新たに6基が稼働する予定で、そのうち4基は2007年半ば以降に認可申請されたものである。米国は世界最大の原子力発電国であり、全世界の原子力発電所の30%以上を占めている。65基の原子力発電所(100基強の原子炉を保有)は、米国の電力の20%を生み出している。

フランスは最もウランに依存している国であり、その電力の75パーセントは原子力発電によるものである。都市部の住民が石炭火力発電所による汚染で窒息している中国は、現在、原子力発電所の建設を急ピッチで進めている。すでに17基の原子炉が稼動しており、さらに29基が建設中である。2020年までに4倍の容量にしたい考えだ。インドは20基の原発を持ち、さらに7基を増設中である。人口の90%以上が無電化状態にあるアフリカのいくつかの国でも、その可能性を模索し始めている。

特に福島原発事故によって古い設計の原発の脆弱性が露呈した後では、新しい原発はより安全なものになるはずだ。福島の原子炉格納容器は、チェルノブイリの原子炉格納容器よりもはるかに頑丈だったが、40年前のものであり、現在の格納容器工学や材料から数世代遅れていた。福島はまもなく廃炉の候補となっただろう。

長期的な不足

ドイツは原発がなくてもやっていけるかもしれないが(二酸化炭素排出量は拡大しているし、すでにフランスから原発で発電した電気を輸入してごまかしているが)、他の原発利用国や原発準備国はどこも無理だろう。代替手段がないのだ。つまり、世界経済と化石燃料への不満が高まれば高まるほど、ウランの需要が高まるということだ。そしてそれは、ウラン産業を支配する可能性のある国にとっては、利益と政治的影響力を意味する。

世界原子力協会は、2010年から2020年までの需要の伸びを33パーセントと予測し、その後の10年間も同様の伸びを予測している。2011年、世界で消費されたイエローケーキ・ウランは1億6千万ポンドであった。今からわずか10年後の2024年には、もしそれが入手可能なら、年間2億ポンドを消費することになる。

同時に、供給不足も深刻化している。2012年、世界のウラン消費量は鉱山の産出量を25%上回り、4000万ポンド(現在の長期価格では約18億ドル相当)不足した。2020年には5500万ポンドまで増加する見込みである。ウラン鉱山は数が少ない。1つでも持っている国は20カ国しかなく、世界の生産量の半分は6カ国10鉱山のものである。(欧州連合の供給源は図9.3に示す通りである)。

米国では、100基の原子炉で年間4300万ポンドのウランの燃料を燃やして電気を生産している。米国の鉱山からの供給は約400万ポンドで、これらの発電所の稼働に必要な量の9パーセントにすぎない。

もう一つの見方がある。現在から2021年までに米国の原子力発電所が必要とするイエローケーキの量は約2億7500万ポンドと推定される。米国の全原発の在庫は1億2千万ポンドに過ぎない。

長期的に見れば、採掘量を増やすことが唯一の答えである。しかし、新しいウラン鉱山は、他のどの資源よりも生産開始が困難である。技術的な課題、環境と安全の要件、厳しい許認可を考慮すると、決定から生産まで最低でも10年はかかる。新しい鉱山は、予想される消費量の増加に対して十分な速さで稼働していない。そして、世界はすでに、地中から掘り出す以上のものを使っているのだ。実際、過去20年間はそうだった。

過去10年間に提案されたすべてのウラン鉱山が予定通り承認され、建設され、稼働したならば、供給は追いつくかもしれない。しかし、現在のウラン価格は、それらの鉱山を建設しようとする企業にとって低すぎる。また、価格上昇に賭けるリスクテイカーは、規制の遅れという別のリスクに直面することになる。ウラン鉱山の建設許可を得るのは、自動車局で1時間並ぶのとはわけが違う。ウラン鉱山の建設許可を得るには、自動車局の1時間待ちの行列とは違う。何年も何年も行列に並び、意思決定者が放射能という厄介者に立ち向かう勇気を持つのを待つ必要がある。

そして、プーチンはそれをレジに、さらに地政学の道具にしようと準備している。地上の資源をコントロールすることは、プーチンの計画の一部に過ぎない。この計画の全体像を理解するためには、少し回り道をする必要がある。

科学の授業

ウラン燃料サイクルは、まず地中からウラン鉱石を掘り出し、化学的な処理によってウランの酸化物(主にU3O8)を抽出することから始まる。これを乾燥させたものが、イエローケーキと呼ばれる粉末である。色はおわかりだ。

イエローケーキに含まれるウラン原子の99%以上はU-238で、発電所や爆弾などの連鎖反応を維持することができない、ほとんど放射性のない同位体である。残りの約0.7%のウラン原子はU-235(数字の違いは中性子が3個少ないことを示す)であり、これはやや放射性の高い同位体で、ほんの数ポンドの量で連鎖反応を維持することができる。U-235は、原子が分裂するときに、他のU-235原子を分裂させるのにちょうどよい速度の中性子を放出するからである。まるで、一人の酔っ払いが喧嘩を始めたら、それが酒場全体に広がるようなものだ。

イエローケーキを有用なものにするためには、残りの材料中のU-235の濃度が高くなるように、U-238を十分に分離する必要がある。

  • 商業用原子力発電所で使用する場合は3~10%。
  • ある種の研究用原子炉や医療用原子炉に使用する場合は、20%。
  • 潜水艦の小型発電機用として20〜90%。
  • 90% 兵器に使用するため

自然界に存在する0.7%のU-235濃度から、より高い濃度にするには、まずウランの酸化物にフッ素を導入することから始める。すると、常温では気体である六フッ化ウラン(UF6)が生成される。

次に、この六フッ化ウランガスを、U-235の原子とU-238の原子(中性子が3個多いため重くなる)のわずかな重さの違いを利用したシステムに送り込むのである。この方法には6つの巧妙な技術があるが、商業的に使われているのは2つだけである。一つは、超高速の遠心分離機でガスを回転させる方法。もうひとつは、超微細フィルターにガスを通す方法である。

どちらの方法でも、各ステップで、そのステップに入ったガスよりもわずかにU-235の含有量が多いものと少ないものの2つのガスの流れができる。ガスが多くの遠心分離機または多くのフィルターを通過した後、プロセスは六フッ化ウランの2つのタンクで終了する。1つは希望する濃度のU-235、もう1つはU-238で、U-235は自然界の0.7%よりはるかに低い微量なものである。その2つ目のタンクの中身はテールと呼ばれる。長期貯蔵しやすいように、テールガスはウラン酸化物に再変換することもある。

燃料の場合は、最終的に加工される。濃縮されたガス(U-235の濃度)は、化学的に処理されて酸化ウラン粉末になる。この粉末を圧縮してペレット状にし、加熱してセラミックに凝集させ、原子炉に合わせた棒状の燃料集合体に束ねる。

現在の各国のウラン濃縮能力を図9.4に示す。

短期的な解決策

現在、世界の原子炉に十分な量のウランが供給されているのは、鉱山からの一次供給と使用量のギャップを二次供給が埋めているからにほかならない。その二次供給の大部分はロシアが担っている。

ソ連が崩壊した時、ロシアは200万ポンドを超える兵器用ウランと、この材料を取り扱い、加工するための広大で未使用の施設を受け継いだ。1993年、ロシアと米国の間で結ばれた「メガトンからメガワットへ」という協定によって、この2つのウランが統合されることになった。その後20年間で、核弾頭2万個分に相当する110万ポンドのロシア製弾頭級ウラン(90%U-235)が、逆に尾部濃縮で希釈され、3300万ポンドの原子炉級ウラン(3%U-235)にまで濃縮されたのである。これを米国に売却した。

「メガトンからメガワットへ」は20年間、供給不足を補うために役立ったが、今はもう歴史となっている。2013年11月に期限切れとなり、年間2400万ポンド(米国が使用していた量の55%)のウラン供給が終了した。

メガトンからメガワットへの移行期間中、ロシアは二次生産の別の流れを運営していた。その余剰濃縮能力を、他人の尻尾のために使ったのである。1990年代から2000年代初頭にかけて、ロシアはアレバ(カナダ)やウレンコ(欧州のコンソーシアム)といった大手企業から、すぐに処理できる量のテール缶を受け入れた。現在では、この副業も歴史的なものとなっている。

米国は現在、ささやかながら二次供給に貢献している。メガトン級時代には、米国も不要になった弾頭材料を燃料に転換していた。しかし、兵器級ウランを燃料級にダウンブレンディングする設備を持っているのは、アメリカのウェスダイン・インターナショナル社1社だけで、その能力は年間1万8千ポンドにも満たない。(ロシアはその5倍以上である)(図9.5参照)。

そのため、米国は核弾頭用ウランをダウンブレンディング工場に供給することはできても、それを供給する工場はあまりないのである。もし、米国の政治家がプーチン氏に核弾頭の材料を渡すことを提案したら、どんな悲鳴が上がるか想像してみてほしい。

現在、ロシアは鉱山から産出される濃縮ウランに加え、自国が備蓄する尾鉱から濃縮ウランを生産している。ウラン鉱石生産量ではロシアは6位だが、旧ソ連諸国の生産量を合わせると、カザフスタン、ウズベキスタン、ロシアで世界のウラン生産量のほぼ半分を占めている。濃縮ウランの生産量ではロシアが1位世界の濃縮ウランの40%以上を供給しており、そのほとんどが発電所向けである。

プーチンのウランスーパー

ロシアは現在、ウランの鉱山生産量で世界第6位その上、プーチンは隣国のカザフスタンにも大きな影響力を持っている。カザフスタンは共通経済圏(CES)の関税同盟に加盟しており、世界トップの38%のウラン一次生産国である。つまり、ロシアはすでに世界の一次生産量の47パーセントを手中に収めているのである。

これだけの採掘と濃縮の能力を持つプーチンは、原子炉燃料の長期供給を確保しようと必死な国々にとって頼みの綱となっている。例えば、ロシアは2012年、福島原発事故にもかかわらず、原子力をあきらめきれない日本と、日本の電力会社がウラン濃縮サービスを利用できることを保証する協定に調印した。

ロシアは米国への供給も続けるが、今度はロシアの条件で供給する。メガトン合意では、ロシアは米国の電力会社に直接販売せず、米国濃縮公社(USEC)にのみ、市場価格よりも安い価格で販売することになっていた。そして、対象となるのはダウンブレンドされた核弾頭用ウランだけで、新規に鉱山で生産されたものは対象外であった。こうした制約があったため、ロシアはメガトンを2013年まで延長しようとはしなかった。

2012年、ロシアの核燃料輸出会社テネックスは、米国の電力会社4社に10億ドル以上の原子炉燃料を供給する6年間の契約を結んだ。また、USECに濃縮サービスを9年間提供する契約も結んでいる。USECとの契約では、年間供給量はメガトンの約半分となるはずだ。価格の上限はなく、ウランの産地にも条件はない。

プーチンは、ロシアの国営原子力事業体であるロスアトムが原子炉を建設している国でも、ロシア産ウランの長期的な顧客を獲得している。

ロスアトムは世界の原子力分野の巨人である。世界で最も多くの原子力発電所を建設しており、現在、中国、ベトナム、インド、トルコで建設が進行中である。現在ロスアトムが受注している21のプロジェクトは、500億ドルの価値がある。イランは少なくとも8基の新しい原子炉の購入を計画しており、ロシアはそのプロジェクトの建設と運営、燃料の供給を行う準備ができている。米国がウクライナ問題で逡巡している間に、プーチンはより多くの長期契約を締結している。

さらに、これらの新しい施設の多くは、ロスアトムが最近バングラデシュと締結した最初の原子力発電所のための契約のように、プラント寿命までの燃料供給契約を伴っている。プーチンは “フルサービスプロバイダー “の意味を理解しているのだ。

また、ロスアトムは年間30億ドルのロシア産ウランを他の顧客へ輸出している。その5分の1がアジア太平洋地域向けである。この市場は急速に拡大しており、ロスアトムはロシア最大の太平洋港であるウラジオストクに新しいウラン製品輸送ハブを建設中である。

究極の供給源

プーチンはロシア国外での鉱山生産を封じ込めている。2010年半ば、アトムレッドメッツォロト(ARMZ、国営企業ロスアトムの一部門)は、世界最大の上場ウラン生産者の一つであるウラン・ワンの株式を17%から51%に引き上げた。当時、ARMZはウラン・ワンをパブリックビークルとして利用し、拡張計画のための投資家を集めたいと考えていた。

しかし、福島原発事故によってウランに対する投資家の関心が失われたため、その考えは頓挫した。そこで、2013年にウラニウム・ワンの残りの全株式を13億ドルで取得し、当時の市場価格に対して100%以上のプレミアムをつけて非公開化した。タイミングが良かった。

ウラン・ワンは、年間1,600万ポンドの生産量を誇る大企業である。この買収により、ロシアはオーストラリア、カナダ、カザフスタン、南アフリカ、タンザニア、さらには米国での鉱山事業を手に入れ、今後は米国のすべての鉱山会社の合計よりも多くのウランを毎年生産することになる。

ロシアは、日本、フランス、インド、韓国、カナダとウラン探査・開発協定を結んでいる。ARMZはすでに、世界最大のウラン生産国であるカザフスタンの国営企業カザトムプロムと共同生産プロジェクトに参加している。

また、ロシアは、世界のウラン埋蔵量の5パーセントを占めるナミビアにもアプローチしている。ナミビアはすでに大きな生産国であり、2018年にはカザフスタンに次ぐイエローケーキの輸出国になると予想されている。

プーチンの計画には、エジプトも含まれている。2013年にモルシ大統領(当時)と会談した後、両国は原子力発電所の建設を含む「平和的原子力プロジェクトにおける協力の再開」を発表している。カイロは2025年までに、約300万世帯の電力をまかなえる4ギガワットの原子力発電能力を求めている。また、エジプトはモスクワにウラン鉱山の共同開発で協力するよう要請した。モルシ政権が崩壊しても、この協定は存続する可能性が高い。

モンゴルの学校へ

ロシアは欲しいものを手に入れるために、かなり遠くまで行くことをいとわない。プーチンは資源をめぐる戦争は避け、イラクのように他国に汚れ仕事をさせ、戦利品の分け前を得ることを好むが、経済戦争には躊躇しない。モンゴルは、ウクライナと同様、ロシアが独自に「ニア・ビヨンド」の一部とみなしている国境を接する国の一つであり、その出来事について考えてみよう。

ロシアは、モンゴルのドルノド鉱床(7,500エーカー)を最初に開発した国である。ソビエトとロシアは1988年から1995年まで、ピーク時には1万人近くの労働力を使って採掘した。ロシアは1億5千万ドルを投じてこの地を開発したが、1995年、モスクワからの資金供給がすべて途絶えた激動の時代に、これを放棄した。

しかし、ロシアがドルノドを手放すことはなかった。

そして、2003年までこのプロジェクトは放置されたままだった。2003年、モンゴル政府は欧米の鉱山会社にこのプロジェクトを開放した。カナダの小さな会社カーン・リソーシズは、モンゴル政府をパートナーに迎え、株式の過半数を取得した。

しかし、プーチンはそのカーンを切り捨てた。

2009年1月、ロシアとモンゴルは、ウラン採掘の合弁事業を発表した。そして、2010年1月、モンゴル国会は、モンゴル政府が出資するすべてのプロジェクトの51%の株をモンゴル政府に与えることを決定した。ドルノドもその中に含まれていた。このように、ハーンは無補償収用によってプロジェクトの主導権を失った、つまり奪われたのである。

この問題は、現在、国際的な訴訟に発展している。この訴訟でカーンが取り戻せるものは、弁護士への報酬であり、また一人、死んだ顧客の夕食となる。

カーンを追い出すきっかけが、モスクワにあったことは間違いない。2009年7月、プーチン首相(当時)のモンゴル訪問の焦点はウランだった。その1カ月後、メドベージェフ大統領がARMZの社長を引き連れてウランバートルに現れたのは偶然ではないだろう。その目的は何であったと思う。

2010年に入ってから、ロシアとモンゴルの関係は冷え込んできたようだ。その頃、経済のネジが回り始めていた。2011年の夏、ロシアのディーゼル燃料の供給が原因不明のまま中断し、モンゴルの収穫が危ぶまれた。ウラン燃料の供給が途絶え、モンゴルの収穫が危ぶまれたのだ。

ロシアがモンゴルでの地位を固める一方、米国はモンゴルでの取り組みを失敗させてきた。2011年、モンゴル政府は日本や米国と「核燃料リース契約」を結び、ウランを核燃料に加工して輸出することを秘密裏に交渉していた。その見返りとして、モンゴルは海外の顧客から使用済み核燃料を引き取ることに同意していた。

この交渉には、米国も深く関わっていた。供給も処分も魅力的だった。そして、モンゴルは(米国の支援を受けて)多くのものを得ることができた。まず、モンゴルは核廃棄物の公認の廃棄場としての地位を確立する。そして、核燃料を販売し、使い終わったら引き取るという、昔の牛乳屋さんのような約束ができる。そうすれば、モンゴルは世界のウラン燃料ビジネスにおいて、重要な、そして独立したプレーヤーになる。

ところが、2011年9月、エルベグドルジ大統領は突然、この契約を打ち切った。その表向きの理由は、他国の核廃棄物は「蛇の生殺し」だからだという。ウランを採掘し、輸出した後に核廃棄物を受け取るというのは、私が思うに、外国の超大国からの圧力であってはならない。「この妄想を捨てなければならない」。そこで、核廃棄物の輸入、輸送、貯蔵を禁止する法律が成立した。

エルベグドルジさんの懸念は本物だったのだろう。しかし、多くの人は、再びプーチンの手が働いたと見るだろう。

モンゴルは今、ウラン開発でたった1つのパートナーに絞られた。ロシアである。モンゴルの役割は、ARMZに原料を供給することだけらしい。ロシアはドルノドに、モンゴルはカザフスタンに、商業用ウランを供給するためにプーチンの手に委ねられることになった。

終盤戦へ

そんな中、2014年1月に行われたプーチンとの会談で、ロスアトムのトップであるセルゲイ・キリエンコは、意気揚々と語っていた。2014年1月、プーチンと会談したロスアトムのセルゲイ・キリエンコは、最近のロシアのウラン生産量である年間650万ポンドが、まもなく3倍近くになると予言したのである。「2015年には8,400トン(年間)に達し、プライムコストは全く違うものになる」とキリエンコは言った。1,850万ポンドだ。

それは空論ではない。ロスアトムはロシアのウラン埋蔵量をイエローケーキで12億ポンドとしており、これは世界第2位である。同社は2020年までに年間4000万ポンドを採掘する能力が十分にある。カザフスタン、ウクライナ、ウズベキスタン、モンゴルでのロシアの海外プロジェクトを加えると、2020年の年間生産量は6300万ポンド以上に跳ね上がる。ロシアの勢力圏すべてを含めると、2020年までに年間1億4,000万ポンドを超える生産量になることは容易である。

これほど野心的なウラン採掘計画は、他国にはない。2020年までには、ロシア自身がイエローケーキの3分の1を生産する可能性がある。さらにカザフスタンが25パーセントを供給すれば、ロシアは世界の供給量の半分以上を実質的に支配することになる。

ロシアの優位はそれだけに留まらない。

燃料棒を製造する施設は世界的に見ても相当数がある。しかし、酸化ウランから六フッ化ウランへの転換や、ウラン235を分離する濃縮の設備はそうではない。転換や濃縮で世界をリードしているのは……ロシア語を話す国である。

ロシアのイルクーツク州アンガルスクにある主要転換施設は、年間4400万ポンドの六フッ化ウランを生産し、トムスク州セベルスクの小規模転換施設は、さらに2200万ポンドの六フッ化ウランを生産している。ロシアは全ウラン転換能力の3分の1を占めている。2位は米国で18%。2015年に予定されているロスアトムの新転換プラント建設が進めば、ロシアのシェアはさらに上がると予想されている。

同様に、ロシアは世界の濃縮能力の40パーセントを所有している。既存施設の拡張計画により、そのシェアは50パーセントに近づくだろう。

イエローケーキの生産は市場をコントロールする上で重要だが、それが決定的な要素ではない。カザフスタンは10年間でウラン生産量を5倍に増やした。ロシア、ナミビア、モンゴルなど他の国も、この生産量増加率に匹敵する能力がある。しかし、地球上のすべてのイエローケーキを所有しても、それを原子炉で使用できるものに変える能力がなければ、少しも役に立たない。

イエローケーキを核燃料にするための転換施設や濃縮施設は、鉱山にあるわけではないのだ。

プーチンの狙いは、この核燃料転換と濃縮の市場を押さえることだ。プーチンの狙いは、核燃料転換と濃縮の市場を制することだ。この市場を制すれば、何十年も需要が伸び続ける核燃料の供給と価格をコントロールできる。どちらの機能も参入障壁が非常に高いので、その支配力はますます強まるだろう。新しい転換施設や濃縮施設を建設することは、ほとんどの国にとってコストがかかりすぎるし、欧米ではNIMBY(not in my backyard)派の影響もあって困難である。

ロシアは、世界のイエローケーキ生産の58%を支配し、現在イエローケーキから六フッ化ウランへの転換の3分の1を担っており、まもなく世界の濃縮能力の半分を保有することになるのである。

これは、「ストラングルホールド(絞殺)」という言葉がある。

一過性の余剰

プーチンの計画は忍耐を要する。なぜなら、需要増は避けられないものの、2011年の福島原発事故以来、ウラン相場は低迷しているからだ。過去10年間、原子炉開発に何十億ドルも費やした効果が、たった一度の出来事で水の泡になるとは、私の知る限り誰も予想していなかった。しかし、それが現実となった。

福島原発事故後、イエローケーキの価格は60%以上下落し、事故前の1ポンドあたり72ドルから28ドル前後と、9年ぶりの安値となった。ウラン生産者の株価は大打撃を受けた。ウラン生産者の株価は大打撃を受け、赤字が続いているため、鉱山を閉鎖している。

しかし、前述したように、福島原発事故によって世界が原子力エネルギーから遠ざかることはなかった。では、価格下落の理由は何だろうか。

まず第一に、日本が原子力産業全体の停止ボタンを押したことが挙げられる。世界の原子力発電の13%を占めていた日本は、福島原発事故以来、50基の原発をすべて停止している。大半は運転を再開する予定だが、それには時間がかかり、2015年までに運転を再開できるのは、最初の6基程度にとどまる見込みである。これはウラン市場の需要サイドに大きな打撃を与える。

そして、備蓄品からの売りもある。原発事故当時、日本の電力会社は3年分のウラン在庫を抱えていたが、その後、長期契約で購入が約束されていた2年分の供給を受けている。日本の電力会社は在庫を抱え込むことなく、その多くをスポット市場に投下した(今すぐ受け渡し、今すぐ支払う)。

通常、スポット市場はウラン取引全体の10%に過ぎないからだ。残りの90%は長期契約で売られ、その価格は通常、スポットより45%ほど高くなる。電力会社は、数年先のウランを確実に入手するために、より高い価格が期待できる長期契約を利用している。その代わり、不安定なスポット市場に賭けることになる。

売り手である日本と韓国は、原子炉が停止している間に自国の在庫の一部を市場に出していたため、高い価格で買っていた分、打撃を受けた。しかし、一人の損失は他の人の利益となる。買い手は自国の在庫を安価に積み上げることができたのだ。日本は売った国の名前を出していないが、ロシアは大きな買い手の一人だったと思う。ロシアは、必然的なリバウンドを待って、何年もそれを保有することに満足するだろう。

福島原発の事故により、世界中で古い原子炉の退去が加速され、スポット市場でのウランの一時的な売りに拍車がかかった。例えば、カリフォルニア州のサンオノフレ原発の廃炉が急がれ、約1千万ポンドが放出された。

2つ目の価格への打撃は、米エネルギー省からだった。2013年、イエローケーキを六フッ化ウランガスに転換する米国唯一のプラントであるコンバーダインが、計画的なメンテナンスのため年の大半を停止していた。変換プラントがないため、イエローケーキの供給が滞っていたのだ。そこで、イエローケーキと六フッ化ウランを米国内で最も多く貯蔵しているエネルギー省はどうしたかというと、イエローケーキの貯蔵と六フッ化ウランの貯蔵を同時に行った。それは、両方のウランを大量に売り始めたのである。

さらに2013年7月、エネルギー省は “過剰ウラン在庫 “の新計画を発表した。2008年に採択された以前の計画では、売却の上限を米国の全原発の年間燃料所要量の10%としていた。新計画にはそのような上限はない。エネルギー省がどれだけの量を販売するかは分からないが、年間700万から1000万ポンドでもおかしくはないだろう。

最後に、先に述べたように、テール(当然ながらロシア産)由来の低価格のU-235が市場に溢れている。これは2018年頃まで続き、その頃には安価なウランはすべてなくなり、一次生産が原動力として戻ってくるだろう。

確かに、現在の供給過剰は価格を低迷させ、それ自体はロシアのような大生産国にとって悪いことのように思えるが、ロシアのように賢く、将来を見据えた大生産国であれば話は別である。価格上昇を待つ間、ロシアは余剰尾鉱を処分し、現物ウランを備蓄し、(ウラニウム・ワンなどの)不良債権を底値で拾ってきたのである。

特にヨーロッパでは、ロシアがEUに供給するウランの32%、カザフスタンとウズベキスタンが19%を供給しており、ウランに関するあらゆることに強い影響力を持つように仕向けている。

つまり、ヨーロッパは天然ガスをロシアに依存しているのと同様に、ウランもロシアに依存しているのである。

原子力発電は、1950年代以降、どの年代においても、産業規模のエネルギー源として世界で最も急速に成長している。ドイツでグリーン・ドラムがどんなに大きく叩かれても、それは変わらない。プーチンは、ウランの獲得競争に勝てば、その見返りがあると見ている。プーチンは、ウラン資源獲得競争に勝つことで、その見返りを得ようとしている。アメリカもヨーロッパも、まだ誰も参入していないのだ。

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