書籍『西洋の自殺:リベラリズムの意味と運命に関する一考察』ジェームズ・バーナム 1964

LGBTQ、ジェンダー、リベラル、ウォークネスグローバリゼーション・反グローバリズム新世界秩序(NWO)・多極化・覇権権力

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英語タイトル:『Suicide of the West: An Essay on the Meaning and Destiny of Liberalism』James Burnham 1964

日本語タイトル:『西洋の自殺:リベラリズムの意味と運命に関する一考察』ジェームズ・バーナム 1964

目次

  • まえがき / Foreword
  • 序論 / Introduction
  • 第1章 西洋の収縮 / The Contraction of the West
  • 第2章 リベラルとは誰か? / Who Are the Liberals?
  • 第3章 人間性と良い社会 / Human Nature and the Good Society
  • 第4章 普遍的対話 / The Universal Dialogue
  • 第5章 平等と福祉 / Equality and Welfare
  • 第6章 イデオロギー的思考 / Ideological Thinking
  • 第7章 通りすがりの批判的注釈 / A Critical Note in Passing
  • 第8章 リベラルは本当にリベラリズムを信じているか? / Do Liberals Really Believe in Liberalism?
  • 第9章 リベラルの価値序列 / The Liberal’s Order of Values
  • 第10章 リベラルの罪悪感 / The Guilt of the Liberal
  • 第11章 左には敵なし / Pas d’Ennemi à Gauche
  • 第12章 リベラリズムの弁証法 / Dialectic of Liberalism
  • 第13章 再び:リベラルとは誰か? / Again: Who Are the Liberals?
  • 第14章 アメリカ外交政策の漂流 / The Drift of U.S. Foreign Policy
  • 第15章 リベラリズム対現実 / Liberalism vs. Reality
  • 第16章 リベラリズムの機能 / The Function of Liberalism

本書の概要

短い解説

本書は、1960年代のアメリカを代表する保守思想家による、現代リベラリズムの本質と機能を厳しく分析した古典的批判書である。

著者について

著者ジェームズ・バーナムは、政治学者・思想家として『管理革命論』で知られ、トロツキズムから反共保守主義へと転向した経歴を持つ。雑誌『ナショナル・レビュー』の創設にも関わり、20世紀アメリカ保守思想の形成に大きな影響を与えた知識人である。

主要キーワードと解説

  • 主要テーマ:西洋文明の収縮、リベラリズムの自己矛盾、現実認識の歪み
  • 新規性:リベラリズムを「西洋の自殺」イデオロギーとして分析、価値序列の転倒、罪悪感の政治的機能
  • 興味深い知見:「左には敵なし」の戦略法則、リベラリズムの弁証法的機能、敗北を勝利に転換する思考様式

3分要約

バーナムは、20世紀における西洋文明の急速な収縮を地政学的事実として提示する。1914年に世界の大部分を支配していた西洋は、わずか50年で東欧、アジア、アフリカの大部分を失った。この収縮は外的脅威によるものではなく、西洋内部の要因、特に「意志の欠如」によるものである。

現代リベラリズムは19の基本信念から構成される。人間性の可塑性と無限の進歩可能性、理性主義、平等主義、民主主義、国際主義、世俗主義などである。これらの信念は相互に関連し合い、一つのイデオロギー症候群を形成している。リベラルは教育によって無知を克服し、制度改革によって社会問題を解決できると信じている。

しかし、リベラルの思考は現実から遊離したイデオロギー的思考である。彼らは事前に決められた原則から演繹的に結論を導き出し、事実によってその信念が揺らぐことはない。スキッド・ロウの「解決」や最低賃金法の逆効果など、具体例は政策の意図と結果の乖離を示している。

リベラルの価値序列では、従来の自由・自治・正義・平和の順序が平和・正義・自由・自治へと転倒した。この変化は愛国主義の衰退と国際主義の台頭を意味する。個人の自由よりも社会正義が優先され、国家主権よりも平和が重視される。

リベラルの行動原理には「左には敵なし」がある。彼らは右翼を主要な敵とし、左翼に対しては寛容である。フランコ政権は厳しく批判するが、チトー政権は容認する。この選択的義憤は、リベラルが左翼の一翼であることを示している。

リベラリズムには深刻な罪悪感が内在している。恵まれた地位にあるリベラルは、世界の貧困と不平等に対して個人的責任を感じる。この罪悪感が改革への情熱を駆り立てるが、同時に非西洋世界に対する道徳的武装解除をもたらす。

リベラリズムの弁証法的機能も重要である。同じ概念が文脈によって正反対の意味を持つ。平和・自由・民主主義などの普遍的価値は、誰が使うかによって全く異なる政治的内容を持つ。この相対性をリベラルは理解せず、抽象的普遍性に固執する。

アメリカ外交政策は、西洋戦略・ヤルタ戦略・第三世界戦略の混合物である。1956年のハンガリー動乱とスエズ危機が転換点となり、以後は解放政策を放棄し、西洋同盟国よりも第三世界や共産主義国との協調を優先するようになった。

リベラリズムは現実の三つの重大な挑戦に対処できない。国内の無法地帯化、後進地域の人口爆発と政治的活性化、そして共産主義の世界制覇の野望である。リベラルの楽観主義、寛容主義、平等主義、民主主義はこれらの生存に関わる課題への対処を困難にする。

最終的に、リベラリズムの主要機能は「西洋の自殺」を正当化することである。地政学的敗北を道徳的勝利に転換し、撤退を進歩として説明する。西洋文明の収縮と衰退を「自由・平等・正義の勝利」として再解釈することで、西洋人の心理的慰安を提供している。リベラリズムは西洋文明の死に際して、その痛みを和らげる麻酔薬の役割を果たしているのである。

各章の要約

第1章 西洋の収縮

過去50年間で西洋文明は急速に収縮した。1914年には世界の大部分を支配していた西洋は、ロシア革命に始まり、中国、東欧、アジア、アフリカを次々と失った。この収縮は外的な軍事的脅威によるものではない。西洋は圧倒的な経済力と軍事力を保持していたにもかかわらず、それを使用する意志を欠いていた。これは文明の自殺的傾向を示している。

第2章 リベラルとは誰か?

リベラルは特定の政治的・社会的信念を共有する人々である。エレノア・ルーズベルト、ハンフリー上院議員、ドグラス最高裁判事らが典型例だ。リベラルは大学教授、ジャーナリスト、政府官僚、社会福祉従事者に多い。彼らの判断は予測可能で、39項目の診断テストによってリベラルかどうかを判定できる。リベラリズムは単なる個人の意見ではなく、体系的なイデオロギー症候群である。

第3章 人間性と良い社会

リベラリズムは人間性の可塑性と無限の進歩可能性を信じる。人間は本質的に善良で理性的であり、適切な教育と制度改革により完全な社会を実現できるとする。これは原罪や人間の限界を認めるキリスト教的人間観とは対照的だ。リベラルは伝統を疑い、急進的変革を好む。無知と悪い制度が社会問題の原因であり、理性に基づく普遍的教育が解決策だと考える。

第4章 普遍的対話

リベラルは政治を普遍的対話として理解する。すべての人が自由に意見を表明し、民主的多数決で決定を下すべきだとする。学問の自由と言論の自由は絶対的価値である。しかし、この立場は認識論的相対主義に陥る。客観的真理の存在を否定し、真理は民主的合意によって決まるとする。ホームズ判事の「思想の自由市場」理論がその典型だ。

第5章 平等と福祉

現代リベラリズムは徹底した平等主義を採用している。人種、性別、宗教による差別を否定し、経済的平等を追求する。この平等主義は国際主義と結びつき、最終的には世界政府の理想に向かう。19世紀の限定国家論から福祉国家論への転換は、リベラリズムの社会主義化を示している。政府の積極的介入により社会正義を実現しようとする。

第6章 イデオロギー的思考

イデオロギー的思考では、事実よりも信念が優先される。リベラルの反セミティズム論者、共産主義者、人種平等論者の例が示すように、彼らは反証不可能な信念体系を持つ。スキッド・ロウの「解決」、最低賃金法の逆効果、世界飢餓の「解決」可能性など、具体例はリベラルの政策が現実と乖離していることを示す。彼らの真の目的は問題解決ではなく、イデオロギーの実現である。

第7章 通りすがりの批判的注釈

リベラルの19の信念とその対立概念を比較すると、リベラリズムの問題点が明確になる。人間性に関するリベラルの楽観論は、歴史的事実と現代科学の知見に反している。20世紀の戦争と虐殺は人間の本質的限界を示している。遺伝学の発見は人間性の固定性を裏付ける。普遍的教育が社会問題を解決するという信念も、ドイツや日本の例が示すように根拠がない。

第8章 リベラルは本当にリベラリズムを信じているか?

多くのリベラルは自らの信念の論理的帰結を理解していない。カトリック系やフロイト派のリベラルは、人間性に関する楽観的理論と矛盾する信念を同時に抱いている。しかし、リベラリズムの政治的実践は楽観的人間観を前提としており、この前提なしには政策の正当性が失われる。フランケル、シュレシンガーらの知識人リベラルも、最終的には楽観論に回帰する。

第9章 リベラルの価値序列

現代リベラルの価値序列は平和・正義・自由・自治の順である。19世紀リベラリズムの自由・自治・正義・平和から大きく変化した。この転換は愛国主義の衰退と国際主義の台頭を意味する。個人の自由よりも社会正義が優先され、国家主権よりも平和が重視される。リベラルは伝統的価値に感情的結びつきを失い、抽象的な人類愛に向かう。

第10章 リベラルの罪悪感

リベラリズムには深い罪悪感が内在している。恵まれた地位にあるリベラルは、世界の貧困と不平等に対して個人的責任を感じる。この罪悪感が改革への情熱を駆り立てるが、同時に論理的根拠を欠いている。リベラルの個人主義的原理からは集団的責任は導けない。この罪悪感は、貧しく抑圧された者に対する道徳的武装解除をもたらし、文明社会の秩序維持を困難にする。

第11章 左には敵なし

リベラルの戦略原則は「主要な敵は右にある」である。彼らは右翼政権に厳しく、左翼政権に寛容だ。フランコ政権は糾弾するがチトー政権は容認し、バティスタは悪魔視するがカストロは擁護する。この選択的義憤は、リベラリズムが左翼の一部であることを示している。右翼の敵なしには、リベラリズムは存在意義を失う。マッカーシーも部分的にはリベラルが創り出した敵だった。

第12章 リベラリズムの弁証法

リベラルは普遍的価値を文脈抜きで理解するが、実際には同じ概念が状況によって正反対の意味を持つ。軍縮は弱者に有利で強者に不利だが、西洋は自ら軍縮を提唱している。自由は革命勢力には有益で既存政府には有害となる。平等は劣位者の上昇と優位者の下降を意味する。アルジェリア独立やアフリカ諸国の「解放」は、実際には新たな帝国主義と特権階級の形成をもたらした。

第13章 再び:リベラルとは誰か?

リベラルは主に言語専門職、税制免除機関の職員、管理職エリートから構成される。軍人、自営業者、農民には少ない。彼らはマキャベリの「狐」に属し、力より知恵に依存する。パレートの「結合本能」(第1類残基)を持ち、変化と革新を好む。対照的に保守派は「集団持続」(第2類残基)を特徴とし、伝統と秩序を重視する。西洋の統治エリートにおける狐の優位は、文明の衰退の兆候である。

第14章 アメリカ外交政策の漂流

アメリカ外交政策は明確な戦略目標を欠き、西洋戦略・ヤルタ戦略・第三世界戦略の矛盾する混合物である。1956年のハンガリー動乱とスエズ危機が転換点となった。アメリカは東欧解放を放棄し、西洋同盟国に対抗してナセルを支持した。その後の政策は一貫して軟化し、共産主義との対決を避け、第三世界との協調を優先している。この傾向はケネディ政権で加速した。

第15章 リベラリズム対現実

リベラリズムは現在の三つの重大な挑戦に対処できない。国内都市部の無法地帯化、後進地域の人口爆発と政治的活性化、共産主義の世界制覇の野望である。リベラルの楽観主義、寛容主義、平等主義、罪悪感はこれらの生存に関わる課題への対処を困難にする。リベラリズムは力の行使に不慣れで、中途半端な武力使用により最悪の結果を招く。共産主義に対しても宥和政策をとり、西洋の敗北を促進している。

第16章 リベラリズムの機能

リベラリズムの主要機能は「西洋の自殺」に伴う精神的慰安の提供である。アフリカ独立による戦略基地の喪失、熟練兵力の消失など、西洋の地政学的敗北を「自由・平等・進歩の勝利」として再解釈する。敗北を勝利に、撤退を前進に転換する巧妙な錬金術を用いる。リベラリズムは西洋収縮の原因ではなく表現であり、文明の衰退に伴う精神的慰撫剤として機能している。死にゆく文明への子守歌なのである。


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