
英語タイトル:『Secret Societies And Subversive Movements』 Nesta H. Webster 1924
日本語タイトル:『秘密結社と破壊的運動』 ネスタ・H・ウェブスター 1924年
目次
- 第一部 過去 / PART I. THE PAST
- 第1章 古代の秘密の伝統 / THE ANCIENT SECRET TRADITION
- 第2章 イスラームへの反乱 / THE REVOLT AGAINST ISLAM
- 第3章 テンプル騎士団 / THE TEMPLERS
- 第4章 三世紀にわたるオカルティズム / THREE CENTURIES OF OCCULTISM
- 第5章 フリーメイソンリーの起源 / ORIGINS OF FREEMASONRY
- 第6章 グランド・ロッジの時代 / THE GRAND LODGE ERA
- 第7章 ドイツ・テンプル主義とフランス啓明主義 / GERMAN TEMPLARISM AND FRENCH ILLUMINISM
- 第8章 ユダヤ教カバリストたち / THE JEWISH CABALISTS
- 第9章 バイエルン啓明結社 / The Bavarian Illuminati
- 第10章 頂点 / THE CLIMAX
- 第二部 現在 / PART II. THE PRESENT
- 第11章 近代フリーメイソンリー / MODERN FREEMASONRY
- 第12章 イギリスの秘密結社 / SECRET SOCIETIES IN ENGLAND
- 第13章 公然たる破壊的運動 / OPEN SUBVERSIVE MOVEMENTS
- 第14章 汎ゲルマン主義 / PAN-GERMANISM
- 第15章 真のユダヤ的危機 / THE REAL JEWISH PERIL
短い解説:
本書は、古代から20世紀初頭に至るまで、歴史の裏側で活動してきた秘密結社とそのネットワークが、社会秩序の破壊と世界支配を目指してきたとする大規模な陰謀史を提示する。著者は、これらの組織が一つの連続した「隠れた伝統」の下で、フランス革命やその後の世界的混乱を引き起こしたと主張する。主に西洋史に関心のある読者、特に陰謀論や反メイソン、反ユダヤ的文献を探求する層を対象としている。
著者について:
著者ネスタ・H・ウェブスター(1876-1960)は、イギリスの著作家で、20世紀初頭に活躍した反共産主義、反メイソン、反ユダヤ主義的な陰謀論の代表的論客である。彼女は、フランス革命史の研究から出発し、それが単なる政治運動ではなく、秘密結社による長期的な陰謀の結果であったという信念に至った。その視点は、エドマンド・バークやオーギュスタン・バリュエル神父、ジョン・ロビソンらの影響を強く受けており、歴史的事実と推測、伝説を織り交ぜて独自の歴史解釈を構築した。
テーマ解説
- 主要テーマ:歴史を動かす「隠れた手」:本書の核心は、表向きの政治・社会変動の背後には、常に秘密結社による計画的な陰謀と破壊工作が存在するという歴史観である。
- 新規性:継承される「破壊的伝統」の系譜:著者は、グノーシス主義、カタリ派、テンプル騎士団、薔薇十字団、イルミナティ、フリーメイソンなど、時代と名称を変える様々な団体を、一つの連続した反キリスト教的・反国家的な「破壊的伝統」の担い手として結びつける独自の系譜図を描き出した。
- 興味深い知見:ユダヤ人の二面的役割:著者は、ユダヤ人が表向きは支配される民族でありながら、金融と秘密結社を通じて世界を支配しようとする「隠れた力」であるという、矛盾した二重の役割を主張する。
キーワード解説(1~3つ)
- イルミナティ(啓明結社):本書において特にバイエルン啓明結社(イルミナティ)は、近代の破壊運動の中核として描かれ、その思想と組織手法が後の革命運動に継承されたとされる。
- 破壊的運動:国家、キリスト教、私有財産、伝統的家庭など、既存の社会秩序を崩壊させることを目的とする一切の思想的・組織的運動を指す著者の用語。革命、無政府主義、社会主義などが含まれる。
- カバラー:ユダヤ教の神秘主義思想。著者はこれを、グノーシス主義と並ぶ古代の「秘密の知」の源流と位置づけ、その反律法的・反道徳的要素が後世の破壊思想に流れ込んだと主張する。
3分要約
ネスタ・H・ウェブスターの『秘密結社と破壊的運動』は、西洋史を「秘密結社による世界征服のための陰謀」という視点から再解釈した著作である。著者の主張によれば、歴史の表面下には、古代から現代まで一貫して続く「破壊的伝統」が流れており、それは国家、宗教(特にキリスト教)、道徳、社会秩序の解体を最終目的としている。
第一部「過去」では、この伝統の系譜が詳細に追跡される。その起源は、キリスト教の正統教義に対抗した古代のグノーシス主義やオフィティ派などの異端セクトに求められる。中世では、イスマーイール派(アサシン)やカタリ派(アルビジョワ十字軍の標的)がその系譜に連なり、テンプル騎士団は東方での接触を通じてこれらの思想を取り入れ、異端的儀礼と富への欲望で堕落したと断罪される。騎士団解体後、その秘密と財産は地下に潜り、薔薇十字団や初期のメイソン結社に継承されたとされる。
著者にとって決定的な転換点は、1717年の近代フリーメイソンリー「グランド・ロッジ」の成立である。これは表面上は友愛団体だが、その内部に古代からの破壊的教義が流入する通路となった。18世紀後半、ドイツではテンプル騎士団の復活を自称する団体が現れ、フランスではマルティネス・ド・パスカリの「選ばれたコエン」などオカルト的結社が流行する。しかし、最大の脅威はアダム・ヴァイスハウプトが創設した「バイエルン啓明結社(イルミナティ)」であった。ウェブスターは、イルミナティがフリーメイソンの内部に侵入し、徹底した秘密主義、階層組織、そして啓蒙主義の衣をまとった反キリスト教・反国家思想によって、ヨーロッパ全土を転覆させる計画を練ったと主張する。1789年のフランス革命は、イルミナティとそのネットワーク化したメイソン・ロッジが引き起こした「実験」であり、恐怖政治と無秩序は彼らの目標が「破壊」そのものだったことを証明したとする。
第二部「現在」では、この陰謀が現代(1920年代)までどのように継続・発展したかが論じられる。近代フリーメイソンリーは、特にフランスやイタリア、ラテン諸国において、反教権主義と共和主義の急先鋒となり、国家からキリスト教の影響を排除する運動を推進した。イギリスでは、フェビアン協会のような社会主義団体が、漸進的ではあるが社会主義革命に向けた「浸透工作」を行っていると見なされる。さらに、1848年革命、第一インターナショナル、パリ・コミューン、ロシア革命に至るまでの一連の「公然たる破壊的運動」(社会主義、共産主義、無政府主義、シンジカリズム)はすべて、秘密結社という「隠れた手」によって煽動され、指導されてきたとされる。
最後に、著者は二つの「危険」を並列する。一つは、世界制覇を目指す「汎ゲルマン主義」である。もう一つ、そしてより根本的で古い危険が「真のユダヤ的危機」である。著者は、すべてのユダヤ人が陰謀に加担していると主張するわけではないと弁明しつつも、「国際的ユダヤ人」または「タルムード主義ユダヤ人」と呼ばれる一派が、古代からの破壊的伝統(カバラー)の守護者であり、金融支配と秘密結社(メイソンリーへの浸透を含む)を通じて、キリスト教文明の崩壊とユダヤ人の世界的優位の確立を画策していると結論づける。本書は、この二重の脅威(ドイツ主義とユダヤ陰謀)に直面する西洋文明の防衛を訴えて締めくくられる。
各章の要約
第一部 過去
第1章 古代の秘密の伝統
歴史的陰謀の根源は、紀元後早期のキリスト教異端、特にグノーシス主義の諸分派(オフィティ派、カイン派など)に見出される。彼らは物質世界を悪の造物主が作ったものとし、全ての道徳律、特にモーセの律法とキリスト教の倫理を否定した。この反律法的で反権威的な思想が、後の秘密結社に受け継がれる「古代の秘密の伝統」の核心である。著者はこう述べる。「破壊の原理は…キリストの時代と同じくらい古い。」
第2章 イスラームへの反乱
イスラーム世界内部でも同様の破壊的伝統が存在した。7世紀に出現したイスマーイール派は、エジプトでファーティマ朝を樹立し、その中からさらに過激な分派であるアサシン(暗殺教団)が生まれた。彼らは麻薬を用いた洗脳、暗殺を手段とし、絶対服従を旨とする秘密組織を構築した。この「イスラームへの反乱」のモデルは、組織的恐怖政治の先駆けとして後世に影響を与えたとされる。
第3章 テンプル騎士団
十字軍時代に設立されたテンプル騎士団は、膨大な富と権力を手中にし、堕落と傲慢に陥った。著者は、彼らが中東でイスマーイール派などの異端と接触し、キリスト教を否定する神秘主義的・偶像崇拝的な儀礼(バフォメット崇拝など)を取り入れたと主張する。その結果、フランス王フィリップ4世による騎士団弾圧は正当化され、彼らの財産と秘密は地下に潜って存続した。この「テンプルの伝説」が後のオカルト結社の源泉となる。
第4章 三世紀にわたるオカルティズム
14世紀から17世紀にかけて、テンプル騎士団の「秘密」はさまざまな形で表出する。ルネサンス期のヘルメス主義・ネオプラトニズム的魔術師たち(コルネリウス・アグリッパ等)、ドイツの「基督教的結社」を自称しながらルターに敵対した「光の友」、そして17世紀初頭に現れた「薔薇十字団」宣言書は、社会変革を約束する神秘的な「不可視の学院」の存在を喧伝した。これらの動向は、反教権的で神秘主義的な思想が知識人層に浸透しつつあったことを示す。
第5章 フリーメイソンリーの起源
近代フリーメイソンリーの直接の起源は、中世の石工職人組合にあるが、17世紀末から18世紀初頭にかけて、これらの「 operative(実践的)」な組合に、職人ではない紳士たちが「 speculative(観想的)」会員として大量に加入した。この「変容」の過程で、旧来の職人伝承に、前述の薔薇十字的オカルト思想、デイズム(理神論)、さらには古代の破壊的伝統が混入する道が開かれた。スコットランドとイングランドがその初期の中心地となる。
第6章 グランド・ロッジの時代
1717年、ロンドンで四つのロッジが合流して「グランド・ロッジ」が設立されたことは、フリーメイソンリーの歴史上、画期的事件である。これによりメイソンリーは組織化され、急速に欧州全域に拡大した。初期のメイソンは慈善と友愛を標榜したが、その内部にはすでに政治的な議論が行われ、カトリック教徒の加入が禁止されるなど、反教皇制的な性格を帯び始めていた。大陸ヨーロッパ、特にフランスでは、より政治色とオカルト色の強いメイソンリーへと変質していく土壌が形成された。
第7章 ドイツ・テンプル主義とフランス啓明主義
18世紀中頃、ドイツでは「厳格なる監視」を自称するメイソンリーの一派が、自らをテンプル騎士団の正統な後継者と主張し、神秘的な儀礼と階級制度を発達させた。ほぼ同時期、フランスではマルティネス・ド・パスカリが「選ばれたコエン」を創設し、ユダヤ教カバラーに基づく精霊召喚術を実践した。その弟子ルイ・クロード・ド・サン=マルタンは、より内面的な「人間の完成」を追求する「マルティニズム」を興した。これらの潮流は、メイソンリーに神秘主義と魔術的要素を深く浸透させた。
第8章 ユダヤ教カバリストたち
破壊的伝統のもう一つの源泉は、ユダヤ教神秘主義のカバラーである。著者は、中世に編纂された『ゾーハル』などのカバラー文献が、グノーシス主義と共通する汎神論的傾向を持ち、文字通りの聖書解釈を無視して秘儀的解釈を重んじると指摘する。特に、16世紀のイサーク・ルリアのカバラーは、世界の「修復」という革命的なメッセージを含んでいた。この思想が、後の革命思想の源泉となり、またユダヤ人が秘密結社陰謀の中心に位置づけられる論拠の一つとなる。
第9章 バイエルン啓明結社
1776年、インゴルシュタット大学の教授アダム・ヴァイスハウプトが創設した「バイエルン啓明結社」は、本書における陰謀の核心である。ヴァイスハウプトは、合理主義、反教権主義、反王政を掲げ、徹底した秘密主義と細胞式組織によって、社会のあらゆる階層、特にメイソンリー内部に浸透することを計画した。彼は自由と啓蒙を標榜しながら、実際には成員の完全な服従と、既存社会制度の破壊を目指した。著者は、イルミナティを「悪魔的な天才」の所産と見なす。
第10章 頂点
イルミナティの思想と組織手法は、ヴァイスハウプトの弟子や協力者(フォイエルバッハ、クニッゲ男爵等)を通じてドイツ、そしてフランスのメイソン・ロッジに広く浸透した。パリの「哲学者のロッジ」やミラボーなどの革命家がイルミナティと接触したとされる。1789年に勃発したフランス革命は、イルミナティが長年準備してきた「実験」の実行に他ならない。ジャコバン派の恐怖政治、教会破壊、王族処刑は、この結社の破壊的な本性を暴露した。バイエルン政府によるイルミナティ弾圧(1785年)はその危険性を証明したが、すでにその「毒」は欧州中に蔓延していた。
第二部 現在
第11章 近代フリーメイソンリー
19世紀以降のフリーメイソンリーは、国によって性格が分かれる。イギリスやアメリカのメイソンリーは比較的無害な社交団体とされるが、大陸欧州、特にフランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、トルコ、ラテンアメリカ諸国のメイソンリーは、反教権主義と急進的共和主義の牙城となった。著者は、これらの国のメイソンが政治に直接介入し、教会からの財産没収、修道院解散、世俗教育の強制など、キリスト教文明の解体を推進したと非難する。
第12章 イギリスの秘密結社
イギリスでは、大陸のような公然たる反宗教的メイソンリーは存在しないが、別の形の破壊運動が進行していると著者は見る。1884年に設立されたフェビアン協会は、社会主義を漸進的・浸透的に実現することを目指し、知識人層に影響力を持った。その紋章が「狼の中の毛皮」であることは、その「忍び寄る」性質を象徴しているとする。フェビアン協会は、後の労働党や多くの社会改革運動に思想的指導者を提供し、社会主義革命への「ゆるやかな道」を準備したとされる。
第13章 公然たる破壊的運動
マルクスとエンゲルスの『共産党宣言』(1848年)以降、社会主義、共産主義、無政府主義は、秘密結社という「隠れた手」から飛び出して、公然たる政治運動となった。1848年革命、第一インターナショナル(1864年)、パリ・コミューン(1871年)、そして1917年のロシア革命は、この破壊運動の連鎖的な達成である。著者は、これらの運動の指導者や理論家の多くがメイソンまたは秘密結社の成員であったと主張し、ボリシェヴィキ革命もイルミナティ的手法(テロル、財産没収、家族の破壊)の現代における実現と断じる。
第14章 汎ゲルマン主義
世界支配を目指すもう一つの危険な運動が「汎ゲルマン主義」である。これは、ドイツ帝国主義の思想的支柱として、全世界のドイツ民族の統合と、劣等民族に対する支配を主張する。その組織的中心が1891年に設立された「汎ドイツ同盟」である。著者は、この運動が極めて攻撃的で排他的であり、第一次世界大戦の原因の一つとなったと分析する。汎ゲルマン主義は、英国帝国主義のような「自然的な膨張」ではなく、計画的な世界征服の思想であると区別する。
第15章 真のユダヤ的危機
最終章で著者は、「ユダヤ的危機」の本質を論じる。彼女は、ユダヤ人全体を非難する「通俗的反ユダヤ主義」を退けるが、「国際的ユダヤ人」あるいは「タルムード主義ユダヤ人」の存在を主張する。この一派は、古代のカバラー的伝統を守り、ディアスポラ(離散)の中でも結束を保ち、金融業とメイソンリーなどの秘密結社への浸透を通じて、各国政府に影響力を行使しているとする。彼らの最終目標は、キリスト教国家の破壊と、メシア的王国の樹立、すなわちユダヤ人の世界的支配である。著者は、シオン賢者の議定書(当時は真正文書と信じられていた)をこの陰謀の「行動計画書」として引用し、警戒を呼びかける。
結論
本書は、西洋文明が二重の脅威に直面していると警告する。一つは、武力による世界制覇を目指す「汎ゲルマン主義」である。もう一つは、より狡猾で根深い、金融と秘密工作による「ユダヤ=メイソン的陰謀」である。歴史は、これらの破壊運動が一つの連続した伝統に由来することを示していると著者は主張する。国家とキリスト教の価値観を守るためには、この「隠れた手」の正体と手法を認識し、覚醒した公衆の監視と抵抗が必要であると訴えて結ばれる。
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