書籍『成長なき繁栄:明日の経済のための基礎』ティム・ジャクソン 2017年

ギフトエコノミー / 贈与経済生態経済学・脱成長経済・代替経済

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Prosperity without Growth: Foundations for the Economy of Tomorrow Tim Jackson 2017年

目次

  • 第1章 成長の限界 – The limits to growth
  • 第2章 失われた繁栄 – Prosperity lost
  • 第3章 繁栄の再定義 – Redefining prosperity
  • 第4章 成長のジレンマ – The dilemma of growth
  • 第5章 デカップリングの神話 – The myth of decoupling
  • 第6章 消費主義の「鉄の檻」 – The ‘iron cage’ of consumerism
  • 第7章 限界内での繁栄 – Flourishing – within limits
  • 第8章 明日の経済の基盤 – Foundations for the economy of tomorrow
  • 第9章 「脱成長」マクロ経済学に向けて – Towards a ‘post-growth’ macroeconomics
  • 第10章 進歩的国家 – The progressive State
  • 第11章 持続する繁栄 – A lasting prosperity

第1章 成長の限界

繁栄とは物質的豊かさを超えた概念である。地球の資源は有限であり、人口が100億人に達する世界で無限の経済成長は不可能だ。マルサスの人口論から始まり、1972年の「成長の限界」レポートまで、資源枯渇への警告は続いてきた。気候変動、生物多様性の喪失、資源不足という現実的脅威に直面している。経済活動の規模は1950年以降10倍に拡大し、2100年までに200倍になる可能性がある。しかし地球の生態系の60%がすでに劣化している。我々は成長神話から脱却し、有限な惑星での真の繁栄を模索する必要がある。

第2章 失われた繁栄

2008年の金融危機は成長追求そのものが原因だった。1950年代から続く民間信用の拡大が危機を招いた。政府は金融機関救済に数兆ドルを投じ、緊縮政策を実施したが、根本的問題は解決されていない。成長への執着が金融規制緩和を推進し、投機的行動を助長した。ケインズ的刺激策は一時的に採用されたが、すぐに緊縮政策に転換された。労働生産性の伸びは先進国で過去数十年間一貫して低下している。世界経済は長期停滞(secular stagnation)に陥る可能性が高い。危機後の対応は既存システムの延命に過ぎず、真の変革は実現していない。

第3章 繁栄の再定義

繁栄は単なる物質的豊かさではなく、人間として flourish(繁栄)する能力である。アマルティア・センの「潜在能力アプローチ」に基づき、繁栄を「限界内での有限な潜在能力」として再定義する。GDP(国内総生産)は真の進歩の指標として不適切だ。1970年代以降、米国のGDPは成長したが、真の進歩指標(GPI)は停滞している。幸福研究によれば、一定の所得水準を超えると物質的豊かさと幸福度の相関は弱くなる。相対的所得効果により、他者との比較が重要になる。真の繁栄は健康、教育、社会参加、コミュニティへの帰属感、創造性などの能力に基づくべきだ。

第4章 成長のジレンマ

成長のジレンマとは、持続不可能な成長と不安定な脱成長という二つの難題である。物質的豊かさは象徴的意味を持ち、社会参加の手段となっている。消費財は社会的言語として機能し、アイデンティティや地位を表現する。所得と健康・教育には相関があるが、収穫逓減の法則が働く。キューバやチリなど、低所得でも高い健康水準を達成する国もある。経済停滞は雇用削減や社会不安を招く可能性がある。しかし日本は2つの「失われた10年」の間も平均寿命が延びた。資本主義経済は労働生産性向上を追求し、これが成長への構造的依存を生む。成長か崩壊かの二者択一を超えた道を見つける必要がある。

第5章 デカップリングの神話

経済成長と環境負荷の切り離し(デカップリング)は解決策として期待されているが、その実現可能性は疑問だ。相対的デカップリング(効率改善)は起きているが、絶対的デカップリング(総量削減)は実現していない。炭素強度は年0.6%しか改善していないが、人口と所得の伸びにより排出量は増加している。貿易により先進国の環境負荷が途上国に移転している現象も判明した。1.5℃目標達成には炭素強度を年8.6%改善する必要があり、これは過去の実績の50倍以上である。より公平な世界を想定すると、経済規模は2050年に現在の11倍、炭素強度は200分の1以下にする必要がある。技術的可能性は存在するが、現在の社会構造下での実現は極めて困難だ。

第6章 消費主義の「鉄の檻」

現代社会は創造的破壊と消費需要拡大の双方向的動態に支配されている。資本主義は効率性追求と革新を通じて成長を駆動する。企業は労働生産性向上と製品革新により競争優位を獲得する。消費者は物質財を通じて社会的アイデンティティを構築し、地位や帰属を表現する。新奇性への欲求は進化的基盤を持つが、消費社会はこれを物質的満足に限定している。広告やマーケティングが欲望を操作し、計画的陳腐化が買い替えサイクルを加速する。この「鉄の檻」は個人の選択を制約し、真の自由を奪っている。不安とストレスが消費行動を駆動し、システム全体が成長依存症に陥っている。構造と人間性が共謀して破壊的な物質主義を永続化させている。

第7章 限界内での繁栄

2008年の危機時、英国の家計貯蓄率が急上昇した事実は、人間が純粋な消費者ではないことを示している。物質主義のパラドックスにより、豊かな社会ほど社会的結束が弱くなっている。進化心理学によれば、人間には利己性と利他性、新奇性追求と保守性という対立する価値観が共存している。消費社会は利己的な新奇性追求のみを特権化している。しかし「代替的快楽主義」への需要が高まっており、内発的価値(家族、友情、創造性)を重視する人々の幸福度は高い。ボランタリー・シンプリシティ(自発的簡素化)やトランジション・タウン運動などの社会実験が広がっている。政府の役割は、より持続可能で充実した生活を可能にする社会構造を創造することだ。

第8章 明日の経済の基盤

脱成長経済の4つの基盤は、サービスとしての企業、参加としての労働、将来へのコミットメントとしての投資、社会財としての貨幣である。企業はモノの生産から人間サービスの提供に転換すべきだ。ケア、クラフト、文化分野は炭素集約度が低く雇用集約度が高い。これらの分野は労働生産性向上に抵抗するため、雇用創出に有効だ。投資は生態学的資産、再生可能エネルギー、社会インフラに向けるべきだ。コミュニティ銀行やインパクト投資により、地域に根ざした持続可能な投資が可能になる。現在の債務ベース貨幣制度は投機を助長し、政府の社会投資能力を制約している。主権貨幣制度への移行により、政府が社会のために直接支出できるようになる。

第9章 「脱成長」マクロ経済学に向けて

脱成長マクロ経済学の構築が急務である。持続可能投資は短期的には生産性を低下させる可能性があるが、長期的な繁栄には不可欠だ。サービス経済への移行は「ボーモルの病気」により経済成長率を押し下げる。ケア、教育、芸術などの分野は労働生産性向上に抵抗するため、相対的にコストが上昇する。しかしこれは成長の新しいエンジンではなく、ゼロ成長に向かう構造的変化だ。脱成長経済でも雇用、平等、金融安定性は維持可能だ。ピケティの不平等拡大理論は、労働と資本の代替弾性が1未満の場合に成り立たない。政府の反循環的支出により経済安定化が可能だ。利子を伴う債務制度は必ずしも成長を必要としない。脱成長マクロ経済学は理論的に実現可能である。

第10章 進歩的国家

有限な地球での持続可能な繁栄には、効果的なガバナンスが不可欠だ。政府は成長への依存により「分裂した国家」となっている。一方で消費者の自由を促進し、他方で社会・環境財を保護するという矛盾に陥っている。エリノア・オストロームのコモンズ研究は、地域コミュニティによる資源管理の可能性を示している。政府は社会契約の具現化として、短視眼的選択を防ぐコミットメント装置の役割を果たすべきだ。アヴナー・オファーの「豊かさの挑戦」理論によれば、個人は近視眼的選択に陥りやすく、社会制度によるサポートが必要だ。進歩的国家は、生態学的限界の設定、消費主義への対抗、不平等の是正、経済学の修正という4つの政策領域に取り組むべきだ。

第11章 持続する繁栄

消費主義は「聖なる天蓋」(神聖な枠組み)として機能し、死への不安を物質的所有で慰めようとする現代の試みだ。しかしこの代替宗教は根本的に欠陥がある。個人の選択は重要だが、構造的変化なしには不十分だ。公共財とコミュニティの再生により、より意味のある繁栄の基盤を築く必要がある。明日の経済は地域に根ざしたサービス提供、持続可能な投資、社会的企業が中心となる。これは資本主義の終焉を意味するかもしれないが、新しい所有形態と分配メカニズムの可能性を開く。この変革はユートピアではなく、人間性のより深い理解に基づく現実的なビジョンだ。繁栄は共同の営みであり、その根源は我々一人一人の内にある。ウブントゥ哲学が示すように「我々があるから私がある」のだ。


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