
『Mirage Men: An Adventure into Paranoia, Espionage, Psychological Warfare, and UFOs』Mark Pilkington 2010
『ミラージュ・メン:パラノイア、エスピオナージュ、心理戦、UFOへの冒険』マーク・ピルキントン 2010年
目次:
- 第一部 フリンジへの潜入 / Into the Fringe
- 第二部 空飛ぶ円盤の到来 / The Coming of the Saucers
- 第1章 UFO入門 / UFO 101
- 第2章 リフトオフ / Lift-Off
- 第3章 鳥たちの集会 / Conference of the Birds
- 第4章 ワシントン対空飛ぶ円盤 / Washington Versus the Flying Saucers
- 第5章 宇宙の先駆者たち / Pioneers of Space
- 第6章 ウフォロジストたちの中で / Among the Ufologists
- 第7章 リック / Rick
- 第8章 牛肉、昆虫、そしてエイリアンの地下組織 / Beef, Bugs and the Alien Underground
- 第9章 限界を超えて / Over the Edge
- 第10章 見ることは信じること / Seeing is Believing
- 第11章 悪質な情報 / Bad Information
- 第12章 空飛ぶ円盤は実在する! / Flying Saucers are Real!
- 第13章 秘密兵器 / The Secret Weapon
- 第14章 政策の問題 / A Matter of Policy
- 第15章 地球に降りて / Down to Earth
- 第16章 大量破壊欺瞞兵器 / Weapons of Mass Deception
- 第17章 地上へ / DOWN TO EARTH
- 第18章 大量欺瞞兵器 / WEAPONS OF MASS DECEPTION
本書の概要:
短い解説:
本書は、UFO現象の背後に潜む国家による情報操作と心理戦の実態を、著者自身の調査と体験を通して描くノンフィクションである。対象読者は、UFOや陰謀論に興味を持つ一般読者から、現代の情報戦やプロパガンダの実態に関心を持つ人々まで幅広い。著者は、UFO現象の多くが諜報機関による意図的な「幻影(ミラージュ)」、すなわち欺瞞工作の産物であると主張する。政府が地球外生命体の存在を隠蔽しているという通説に対し、むしろ政府自体がエイリアンの来访という神話を積極的に創作・流布してきた可能性を探る。個人の信念と国家の策略が交錯する不可思議な世界への旅を通じて、真実とは何か、信じるとはどういうことかを問いかける。
各章の要約
第一部 フリンジへの潜入
著者はカリフォルニア州ヨセミテ国立公園での自身のUFO目撃体験から物語を始める。この個人的な体験は、UFO現象への深い関心と、その背後にある謎への探求心を掻き立てる契機となった。やがて著者は、UFOコミュニティの内部に潜入し、人々の信念と懐疑の狭間で揺れ動く体験をする。この第一部は、著者が「フリンジ(辺境)」と呼ばれる、主流から外れた現象やその信奉者たちの世界に足を踏み入れるまでの経緯を描いている。
第1章 UFO入門
著者は友人と共に、元空軍特別調査室(AFOSI)のエージェント、リチャード・ドーティについてのドキュメンタリー制作を計画する。ドーティは1980年代、物理学者ポール・ベネウィッツに対する組織的な欺瞞工作(ディスインフォメーション)に関与した人物として知られる。この工作は、ベネウィッツがUFOとエイリアンの陰謀という妄想に没頭するように仕向け、最終的に彼を精神的に追い詰めた。この章では、諜報機関がUFO神話をどのように利用し、時には積極的に創作してきたのか、その歴史の序幕が提示される。
第2章 リフトオフ
UFO現象が再び注目を集め始める中、インターネット上に「リクエスト・アノニマス」を名乗る人物が現れる。彼は、アメリカ政府が極秘に行った地球外生命体「エベン」との交換プログラム「プロジェクト・クリスタルナイト」、および人類初の異星訪問「セルポ計画」の詳細を暴露する。この衝撃的な物語は、ビクター・マルティネスのメーリングリストを介して広まり、ビル・ライアンという人物がその情報発信の中心的存在となる。著者とジョンは、この「セルポ」物語の波に乗り、ドーティへの接近を試みる。
第3章 鳥たちの集会
著者らはネバダ州ラフリンで開催された国際UFO会議に参加する。会場は多種多様なUFO研究者、体験者、信者で溢れ、まさにUFO文化の縮図となっていた。ここでは、セルポ計画のスポークスパーソンとなったビル・ライアンの動向を追い、リチャード・ドーティ本人との接触を果たすことを目指す。会議は、真実を求める熱気と、どこか現実離れした熱狂に包まれていた。
第4章 ワシントン対空飛ぶ円盤
1952年、ワシントンD.C.上空で発生した大規模なUFO目撃事件は、アメリカ政府とCIAに大きな衝撃を与えた。CIAが設置したロバートソン委員会は、UFO現象が国家保安上の脅威となりうると結論づけ、世論の関心を削ぐための「デバンキング(暴露・懐疑的な説明)」工作を推奨した。この章では、冷戦下におけるパラノイアと、UFO現象が心理戦(PSYOP)のツールとして利用され始めた経緯が明らかにされる。
第5章 宇宙の先駆者たち
1950年代、UFOパイロットとの接触を主張する「コンタクティ」たちが登場する。その筆頭がジョージ・アダムスキーであり、彼は金星人「オーソン」と会ったと述べた。コンタクティたちの語る地球外生命体は、平和的な「宇宙兄弟」であり、核兵器の危険性を警告するメッセージをもたらした。しかし、アダムスキーのような人物の登場は、UFO研究を科学的な探求からオカルト的な領域へと移行させ、結果的に真剣な調査を妨げる効果ももたらした。
第6章 ウフォロジストたちの中で
1980年代、ウフォロジストのビル・ムーアは、政府内部の情報提供者「ファルコン」と元AFOSIエージェントのリチャード・ドーティから接触を受ける。ムーアは、本物のUFO情報へのアクセスと引き換えに、UFOコミュニティ内部の動向を報告するよう要求される。ムーアはこの取引に応じ、やがてポール・ベネウィッツへの欺瞞工作に協力するようになる。この章では、諜報機関がどのようにしてUFO研究者を抱き込んでいったのか、その内部事情が赤裸々に描かれる。
第7章 リック
著者らはついにラフリン会議でリチャード・ドーティと直接対面する。ドーティは一見ごく普通の人物であったが、諜報員時代の数々の逸話を語り、自身が「黄色い本」と呼ばれる地球外技術の holographic device に実際に触れたと主張する。著者らはドーティと時間を共にし、時に国防総省関連の人物と思しき者たちとの不審な接触を目撃する。ドーティは複雑な人物像を浮かび上がらせる。
第8章 牛肉、昆虫、そしてエイリアンの地下組織
ポール・ベネウィッツの妄想の中心には、ニューメキシコ州ダルス近くのアーチュレッタ・メサ地下に存在するというエイリアンの基地があった。この地域では、家畜の身体の一部が外科的に切除される「家畜虐殺」事件が多発しており、ベネウィッツはこれをエイリアンの遺伝子実験と結びつけた。AFOSIはベネウィッツの妄想を増幅させるため、メサの上に偽の基地の入口や装備を設置するなど、大がかりな「セット演出」を行ったのである。
第9章 限界を超えて
AFOSIによる工作は、ベネウィッツに膨大な報告書「プロジェクト・ベータ」を書かせるまでにエスカレートした。報告書は、邪悪なエイリアンによる侵略が進行中であり、人類は力で対抗するしかないと訴える内容であった。こうした工作の果てに、ベネウィッツの精神的健康状態は著しく悪化し、彼は最終的に精神病院へと収容される。この章は、国家による個人への心理的操作がもたらす破壊的な結末を描く。
第10章 見ることは信じること
ラフリン会議でのドーティとの交流の中で、著者らは思いがけない提案を受ける。ドーティは、アメリカ国防情報局(DIA)が彼らのドキュメンタリー制作に資金提供し、場合によっては「本物の」エイリアン映像を提供することも可能だとほのめかしたのである。この出来事は、諜報機関がメディアを通じてUFO叙事詩を世に送り出そうとした過去の事例(例:1974年の映画『UFOs: Past Present and Future』)を想起させた。政府とエンターテインメントの境界線が曖昧になる瞬間であった。
第11章 悪質な情報
1980年代半ば、UFOコミュニティに「MJ-12文書」と呼ばれる極秘文書がリークされる。この文書は、ロズウェル事件後にトルーマン大統領が設置したとされる12人の委員による極秘組織「マジェスティック12」の存在を証明するものとされた。しかし、後の調査でこれらの文書は精巧な偽造物である可能性が極めて高くなった。著者は、このMJ-12文書こそが、AFOSIなどによるUFOコミュニティに対する情報戦の頂点であり、コミュニティを分裂させ、信用を失墜させることを目的とした「ブラックプロパガンダ」の傑作であったと推測する。
第12章 空飛ぶ円盤は実在する!
著者は、リチャード・ドーティから受けた資金提供の申し出が実現しないまま、キルトランド空軍基地を見学する。基地内にはマンザノ山核兵器貯蔵施設など秘密裏の軍事施設が存在し、ベネウィッツが監視していた場所を実際に目撃する。この体験は、UFO現象の背後に潜む軍事的現実を実感させるものだった。著者は、U-2偵察機やSR-71ブラックバードなどの先端偵察機が、過去多くのUFO目撃報告の正体であったことを指摘する。軍の極秘プロジェクトが、誤認や、時には意図的に「未確認飛行物体」として扱われてきた歴史的経緯を検証する。
第13章 秘密兵器
冷戦期、アメリカとソ連は円盤型航空機の開発を実際に行っていた。アメリカではアブロ・カナダ社が「プロジェクトY」や「シルバーバグ」といった垂直離着陸機を開発し、その存在が一部報道されていた。また、ナチス・ドイツでも円盤型機「フルーククライゼル」の開発が進められていたという証言がある。著者は、これらの「人造円盤」がUFO目撃談の一部を説明し得るとしつつも、その形状がもつ心理的・象徴的効果(ユングのいう「マンダラ」)が、地球外生命体の乗り物という神秘的なオーラを増幅させてきたと考察する。
第14章 政策の問題
UFO現象は、単なる誤認や幻想ではなく、国家の安全保障戦略において利用可能な「心理戦の武器」として機能してきた。著者は、レーガン政権下の戦略防衛構想(スターウォーズ計画)のように、時に国家は実際には存在しない超兵器をでっち上げて敵を威嚇・撹乱することを指摘する。地球外技術という神話は、敵対国に「アメリカはとてつもない技術を持っている」と思い込ませ、軍事的優位を確保する安価な手段となり得たのである。UFOの真実は「宇宙人が来ている」ことではなく、「そのように信じ込ませる仕組み」が存在することにある。
第15章 地球に降りて
著者は、自分たちが作り出してきたクロップサークル(穀物模様)と、ドーティたちが仕掛けたUFOの「ミラージュ」との間に共通点を見いだす。どちらも人為的に作られた「謎」であり、それを見た人々が独自の解釈と物語を紡ぎ出すことで、ひとり歩きする現象となる。UFO神話は、諜報機関の工作、メディアの増幅、大衆の願望や恐怖が複雑に絡み合って生成された現代の民話なのである。真実が明かされても、それを信じようとしない人々の心理(認知的不協和)が、この神話を永続させている。
第16章 大量破壊欺瞞兵器
最終章で著者は、UFO現象の核心は「何が空を飛んでいるか」ではなく、「私たちが何を信じるように仕向けられているか」にあると結論づける。国家は国家安全保障の名の下に、そして個人は意味を求める心の内から、共に「ミラージュ(幻影)」を作り上げてきた。リチャード・ドーティのような人物は、その狭間で、爱国心、信念、欺瞞、そして時に狂気が入り混じった存在として現れる。本書は、UFOを巡る物語が、パラノイア、エスピオナージュ、心理戦という現代社会の核心を映し出す鏡であることを示して終わる。
第17章 地上へ
セルポ情報の信用性が大きく揺らぐ中、著者らは元CIA科学者キット・グリーンと会見する。彼は「核心ストーリー」として、地球外生命体の訪問と米政府による技術回収の可能性を真剣に論じる。その情報公開には数十年かけた漸進的アプローチが必要だと説く。リック・ドーティとの再会では、さらに突飛な地球外生命体接触談が語られる。調査の最終地アラモゴードでは、空軍基地近くで不可解な静止物体を目撃し、それが瞬時に消滅する体験をする。この出来事は、UFO現象の本質的な不可解さを象徴していた。
第18章 大量欺瞞兵器
著者は、UFO現象が情報機関の「幻影工作」に利用されてきたと結論づける。しかし、大規模な陰謀というよりは、神話自体が自己維持する生命力を持ち、必要に応じて利用されると指摘する。UFOは技術的問題というより、人間の想像力の中で作用する「トリックスター」的存在である。やがて人類自身が地球外生命体となる日が来るかもしれないが、現時点ではUFOは現実と幻想の境界を曖昧にする「大量欺瞞兵器」として機能し続けている。
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