
日本語タイトル:『ローカル・ダラーズ、ローカル・センス:ウォール街からメイン街へ資金をシフトし、真の繁栄を実現する方法』マイケル・シューマン 2012年
英語タイトル:『Local Dollars, Local Sense: How to Shift Your Money from Wall Street to Main Street and Achieve Real Prosperity』Michael H. Shuman 2012年
目次
- 序章:イントロダクション / Introduction
- 第1章:生きている収益率 / A Living Rate of Return
- 第2章:ゼロコスト景気刺激策 / Zero-Cost Stimulus
- 第3章:協同組合の隠れた力 / The Hidden Power of Cooperatives
- 第4章:機関融資 / Institutional Lending
- 第5章:反貧困投資 / Anti-Poverty Investing
- 第6章:もし私が富豪だったら… / If I Were a Rich Man…
- 第7章:SEC領域での非認定投資 / Unaccredited Investing in SEC-Land
- 第8章:ローカル取引所 / Local Exchanges
- 第9章:みんなでプールに入ろう! / Everybody into the Pool!
- 第10章:自分自身への投資 / Investing in Yourself
全体の要約
本書は、アメリカの投資システムが抱える根本的な問題を明らかにし、ウォール街からメイン街(地域経済)への投資シフトを提案する革新的な経済書である。
著者シューマンは、現在の投資制度が構造的に破綻していることを指摘する。アメリカ経済の約半分を占める地域の中小企業には、ほぼ全ての投資資金が流れていない一方で、グローバル企業には過剰投資が行われている。この30兆ドルの長期貯蓄のうち、地域小企業に向かうのは1%未満という現実がある。効率的な資金配分が実現すれば、15兆ドルが地域企業に流れるべきだと主張する。
この投資格差の主因は、1930年代の大恐慌時代に制定された時代遅れの証券法にある。「認定投資家」(年収20万ドル以上または資産100万ドル以上)に該当する富裕層2%のみが自由に投資できる一方、98%の一般投資家は事実上地域企業への投資から排除されている。証券法遵守には数万ドルの法的費用が必要で、小企業にとって参入障壁となっている。
しかし著者は、地域投資がウォール街を上回る収益性を持つことを実証している。歴史的にウォール街の実質リターンは年2.6%程度で、一般に信じられている8-12%とは大きく乖離している。一方、地域企業は競争力があり、2%の人口増加率を維持し、地域経済への波及効果も2-4倍大きい。
本書は地域投資を実現する具体的手法を提示する。協同組合を通じた投資、地域銀行・信用組合の活用、コミュニティ開発金融機関(CDFI)、前払い販売、クラウドファンディング、直接公開株式(DPO)、地域証券取引所の創設、投資クラブや相互基金など、既存の法的枠組み内で可能な多様なアプローチを詳述している。
特に注目すべきは「自分自身への投資」という概念である。クレジットカード債務の返済、住宅購入、エネルギー効率化、教育投資など、個人レベルでの投資が7%以上のリターンを生み出し得ることを数値的に証明している。自主運用IRAの活用により、税制優遇を受けながら地域投資も可能だと説明する。
著者は、地域投資への15兆ドルのシフトが実現すれば、アメリカ史上最大の資本移動となり、地域経済を劇的に活性化させる一方、ウォール街の既存構造に根本的変化をもたらすと予測している。気候変動、エネルギー危機、経済不安定が増大する中、地域経済の強靭性構築が国家的急務であることを強調し、投資システムの抜本的改革を訴えている。
各章の要約
第1章:生きている収益率
ウォール街の投資リターンに関する一般的な認識が大きく間違っていることを明らかにする。投資業界は年8-12%のリターンを宣伝するが、実際のS&P500の1871-2010年の実質年平均リターンは2.6%に過ぎない。44年間投資した場合でも平均3.8%、20年間では5%未満である。現在の401(k)制度では、典型的な貯蓄者サムが年5000ドルを44年間積み立てても、退職時の手取り年収は約2万ドルで貧困線近くとなる。投資業界の誇大宣伝により、大部分のアメリカ人が退職後の貧困に直面する構造的問題が存在している。
第2章:ゼロコスト景気刺激策
地域経済繁栄のための3つの原則を提示する。第1に地域所有企業の雇用比率最大化、第2に地域自給率向上による経済多様化、第3に高い労働・環境基準を持つ地域企業モデルの普及である。地域企業は同規模の非地域企業と比較して2-4倍の経済波及効果を生み出す。バーリントン(バーモント州)のような地域投資に注力した都市は、全国平均の半分の失業率を達成している。小企業は1990年以降GDP比率を維持し、グローバル企業と互角に競争している。石油価格上昇により地域企業の競争優位性はさらに高まると予測される。
第3章:協同組合の隠れた力
アメリカには3万の協同組合が存在し、3兆ドルの資産、年5000億ドルの収益を上げている。協同組合は証券法の規制を回避しやすく、地域投資の重要な入り口となる。メンバーは出資に加え、協同組合からの借入や他の地域事業への投資も可能である。ウィリー・ストリート協同組合は21日間で60万ドルを会員から調達し、4%の利息で新店舗を開設した。Co-op Powerは会員から30万ドルを集め、地域エネルギー事業に投資している。協同組合セクターの拡大には、より多くの資本と投資家の多様化が必要である。
第4章:機関融資
地域銀行・信用組合は地域企業への融資において大手銀行より優れた実績を持つ。資産10億ドル未満の小中規模銀行は全銀行資産の22%しか占めないが、中小企業融資の54%を担っている。Move Your Money運動により、2009年に信用組合は150万人の新規加入者を獲得した。E.F.シューマー協会のSHAREプログラムやEqual ExchangeのCDプログラムなど、地域銀行と連携した革新的な投資手法が生まれている。ノースダコタ州の州立銀行は92年の歴史を持ち、州に5.55億ドルの利益をもたらしている。州立銀行の他州への拡大が検討されている。
第5章:反貧困投資
1960年代以降のコミュニティ開発運動は地域投資の先駆者となった。CDFIは250億ドルの資産を管理し、2006年には6.9万戸の住宅と3.5万の雇用を創出した。ニューマーケット税額控除は7年間で39%の税額控除を提供し、投資家に魅力的な機会を提供している。バーモント州持続可能雇用基金は400万ドルの地域企業投資ファンドを創設した。マイクロファイナンスセクターでは、カリフォルニア州で年2000件、計1200万ドルのマイクロローンが実行されている。従来の慈善的アプローチから収益性重視への転換が進んでいる。
第6章:もし私が富豪だったら…
認定投資家(アメリカ人の2%)には地域投資の幅広い選択肢がある。レスリー・クリスチャンのUpstream 21は地域森林製品企業のホールディングカンパニーとして機能している。アイオワ州フェアフィールドでは、バート・チョイノウスキーが25年間で3億ドル以上の地域投資を誘致し、「シリコーン・バレー」と呼ばれる起業家コミュニティを創出した。オークランドのアリ・ダーフェルは、65人の投資家から資金を調達してGatherレストランを開業、大成功を収めている。これらの事例は、地域投資の高い収益性と地域経済への波及効果を実証している。
第7章:SEC領域での非認定投資
現行証券法の制約下でも、非認定投資家が参加可能な手法が存在する。前払い販売(Awaken Caféが2万ドル調達)、無収益取引(KickstarterやKivaなど)、地域ネットワーキング(LION)、P2Pレンディング、低コスト公開株式などがある。しかし根本的には、98%の国民を地域企業投資から排除する1930年代の証券法の抜本的改革が必要である。2011年に議会で規制緩和法案が検討され始めており、クラウドファンディングや小口投資の解禁に向けた動きが活発化している。現行制度は経済発展を阻害しており、早急な改革が求められている。
第8章:ローカル取引所
地域証券取引所の創設は地域投資の流動性確保に不可欠である。1934年の取引所法により地域取引所の多くが消滅したが、復活への機運が高まっている。Mission Marketsは社会的企業向けオンライン証券取引プラットフォームを運営し、地域ポータルの展開を計画している。ペンシルベニア州のLanXやカリフォルニア州のUNIEXなど、草の根レベルでの地域取引所設立の取り組みが進んでいる。適切な品質管理と規制当局の協力があれば、地域取引所は地域経済活性化の強力な手段となり得る。技術的・法的障壁は解決可能であり、近い将来の実現が期待される。
第9章:みんなでプールに入ろう!
地域投資のリスク分散のため、投資プールの創設が重要である。RSF社会投資ファンドは1000人の投資家から資金を集め、38州で登録している。コロンバスのECDIは100万ドルの地域ファンドを組成中である。CalvertFoundationは49州で登録され、1.8億ドルのコミュニティ投資を行っている。メイン州のNo Small Potatoes投資クラブは10万ドルで地域農家への少額融資を実施している。BIDCOという連邦法上の事業開発会社の仕組みも活用可能である。地域相互基金の設立には2500万-5000万ドルが必要だが、地域取引所の発展により実現可能性が高まっている。
第10章:自分自身への投資
ウォール街の5%を上回る最も確実な投資は自分自身への投資である。クレジットカード債務返済は15-20%のリターンに相当する。住宅購入は賃貸より3万ドル以上有利で、繰上返済により更なる利益が得られる。エネルギー効率化投資は年10-20%の光熱費削減を実現し、平均17%のリターンを生む。教育投資により収入向上も可能である。自主運用IRAを活用すれば、税制優遇を受けながら地域事業や不動産に投資できる。著者自身の投資失敗体験を踏まえ、基本に立ち返った堅実な投資アプローチの重要性を強調している。多くの個人にとって、退職金制度より自己投資の方が確実で高いリターンを期待できる。
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