高ウイルス負荷と換気不良 COVID-19による高死亡率の原因
High Viral Load and Poor Ventilation: Cause of High Mortality From COVID-19
journals.sagepub.com/doi/10.1177/1010539520944725
要旨
COVID-19による死亡率は欧米先進国とアジアの発展途上国では大きな格差がある。開放換気による鼻腔内のウイルス負荷の低さがこの差のもっともらしい理由である。SARS-CoV-2の感染は、呼吸器飛沫および感染媒介物を介して起こる。ウイルスが空気感染していることは十分な証拠がある。
SARS-CoV-2の感染の最大の要因は、無症候性または無症候性の保菌者である。ウイルスが環境中、特に感染媒介物に付着したままであり、定期的かつ反復的にウイルスにさらされることになるため、換気の不足が大きな要因となっている。
その結果、先進国に住む人々は、鼻腔や鼻咽頭に高いウイルス負荷を蓄積する傾向がある。COVID-19の重症度は上気道に蓄積されたウイルス負荷に正比例することが研究で明らかになっている。これらの要因は、高ウイルス負荷と換気不良との間に強い関連性があり、欧米先進国ではCOVID-19による死亡率が高いことを示している。
キーワード COVID-19、コロナウイルス、感染症、コミュニティアウトブレイク
COVID-19パンデミックの死亡率は国によって差がある。死亡率の差は、低・中所得国に比べて高所得国の方が高いようである（世界保健機関の報告書）。これには、使用されている症例定義や報告・検査率など、いくつかの理由が考えられる。この違いの理由は理解されていない。この論文では、換気不良とそれに続く高ウイルス負荷の蓄積が、これら2つの国の死亡率にこのような劇的な差をもたらした理由である可能性を説明しようとしている。
Liuら1は、Lancet Infect Diseases誌2020年3月号に、重症例の平均ウイルス負荷は軽症例の約60倍であるという結果を発表した。彼らはΔct法でウイルス負荷を計算した。Chung-Ming Chuらは2004年に32人の患者のデータをCMAJ誌に発表し、鼻咽頭標本の初期ウイルス負荷が高いことがSARSの予後不良と独立して関連していることを実証している2。
空気感染の制御における換気の役割
空気感染は、ウイルスの伝播に重要な役割を果たしている。この感染経路は、世界保健機関（WHO）、中国国家衛生委員会、日本の当局などの国際機関によっても最近認められている。換気は、空気感染の伝播において重要な決定要因であると考えられている。
MorawskaとCaoによるレビュー論文4では、SARS-CoV-2の空気感染経路はこれまで十分に検討されてこなかったことが強調されている。著者らは、自然換気による換気率の向上、空気の再循環を避けること、他人の直接の空気の流れの中に滞在しないこと、同室の人数を減らすことの役割を強調している。
家庭、オフィス、病院などでは、効率的な換気が行われていないと、SARS、SARS-CoV-2を含むウイルスの感染リスクが高まる。これは、換気の悪い閉鎖空間に住んでいる、または働いている人の鼻腔および鼻咽頭における累積ウイルス負荷を決定する重要な要因であるように思われる。
我々の文献レビューによると、高所得国に住む多くの人々は室内（オフィスや家庭）で過ごす時間が長く、多くの場合、より高いウイルス負荷にさらされている可能性のある中央加熱または空調設備のある施設内で過ごすことが示唆されている。
これは、無症状のCOVID-19感染者が身近な環境にいる場合に特に当てはまる。このような状況下では、ウイルスは呼吸器の飛沫中または環境中に長期間持続する可能性がある。これはさらに、日常的に継続的かつ定期的に曝露されて、鼻腔および鼻咽頭におけるより高いウイルス負荷をもたらす可能性がある。
このような高ウイルス負荷は、急性呼吸窮迫症候群を含む重篤な呼吸器疾患の発症の原因となり、死亡リスクを増大させる。これに対して、低所得国（南・東南アジア諸国）の人々は、家庭に住み、換気の良いオフィスで仕事をするという伝統的な生活様式（資源不足も理由の一つ）のため、このようなウイルス濃度にさらされていない。このため、鼻腔や鼻咽頭のウイルス負荷が低く、結果的に重症化が少ない可能性がある。このような仮説は、さらに検討する価値があると考えている。