
Careless People: A story of where I used to work
本書の要約
「Careless People」は、サラ・ウィン・ウィリアムスによるFacebookでの7年間の体験を記した回顧録である。著者はニュージーランド出身の外交官から、Facebookのグローバル公共政策部門のディレクターとなった人物だ。彼女はFacebookが「世界をより開かれた、つながった場所にする」という使命から、危険なプラットフォームへと変貌していく過程を内部から目撃した。著者はマーク・ザッカーバーグ、シェリル・サンドバーグ、ジョエル・カプラン等の幹部らと密接に働き、会社の意思決定プロセスや隠れた動機を詳述している。
本書の核心はFacebookが多くの国で社会的・政治的混乱を引き起こしながらも、利益と成長を優先し続けた様子を描いている。ミャンマーでのロヒンギャに対するジェノサイド、2016年米国大統領選挙でのフェイクニュースの拡散、中国市場参入のための検閲ツール開発など、会社の最高幹部がこれらの問題を重要視しなかった実態が明らかになる。
著者自身も職場でのセクシャルハラスメントを経験し、会社の内部調査システムが機能していないことを痛感する。最終的に彼女は解雇され、その後SEC(証券取引委員会)に内部告発を行った。
本書はテクノロジー企業の巨大な力と、その無責任さがもたらす破壊的影響についての警告である。現在、同社はMetaとして人工知能技術の最前線にいるが、著者は同じ「致命的な不注意」が続いていることを懸念している。
目次
- 第1章 単純な希望(Simpleminded Hope)
- 第2章 革命を提案する(Pitching the Revolution)
- 第3章 これは楽しくなるぞ(This Is Going to Be Fun)
- 第4章 さよなら(Auf Wiedersehen to All That)
- 第5章 小さな赤い本(The Little Red Book)
- 第6章 私たちは何のために立ち上がるのか(What Do We Stand For?)
- 第7章 彼に良い時間を(Show Him a Good Time)
- 第8章 道が尽きる(Running Out of Road)
- 第9章 レディ・マクナゲット(Lady McNugget)
- 第10章 良いニュースだけ(Only Good News)
- 第11章 ロードトリップ(Road Trip)
- 第12章 ボディ(The Body)
- 第13章 ストックホルム症候群(Stockholm Syndrome)
- 第14章 カタンの5人の開拓者と1人の億万長者(Five Settlers and One Billionaire in Catan)
- 第15章 簡単なお願い(A Simple Request)
- 第16章 運転を続けて(Just Keep Driving)
- 第17章 栄光の炎の中で(Going Down in a Blaze of Glory)
- 第18章 赤旗(Red Flag)
- 第19章 PACマン(PAC-Man)
- 第20章 独裁への道(Slouching Toward Autocracy)
- 第21章 億万長者の時間(Billionaire Time)
- 第22章 0.001%のためのハンガーゲーム(Hunger Games for the 0.001 Percent)
- 第23章 これを飛ばせる(Making Sure This Thing Flies)
- 第24章 カリフォルニア時間(California Time)
- 第25章 マペットとモンシニョール(Muppets and Monsignors)
- 第26章 邪悪な西の魔女(The Wicked Witch of the West)
- 第27章 ストリートファイターの戦術(Street Fighter Tactics)
- 第28章 リーンインして横になる(Lean In and Lie Back)
- 第29章 シチズン・サンチェス(Citizen Sanchez)
- 第30章 ポーカーフェイス(Poker Face)
- 第31章 心温まる物語(A Heartwarming Story)
- 第32章 妊娠中に期待しないこと(What to Not Expect When You’re Expecting)
- 第33章 このことに触れなければならないのか(Do We Have to Go into This?)
- 第34章 フェイスブックの選挙(The Facebook Election)
- 第35章 真実に対する怒り(Angry at the Truth)
- 第36章 ローズバッド(Rosebud)
- 第37章 庶民の味方(Man of the People)
- 第38章 ケーキを食べさせておけ(Let Them Eat Cake)
- 第39章 フェイスブック・フェミニスト・ファイトクラブ(Facebook Feminist Fight Club)
- 第40章 北京からの挨拶(Greetings from Beijing)
- 第41章 我々の中国パートナー(Our Chinese Partner)
- 第42章 敬意を込めて、上院議員(Respectfully, Senator)
- 第43章 早く動いて法律を破れ(Move Fast and Break the Law)
- 第44章 感情的ターゲティング(Emotional Targeting)
- 第45章 魚は頭から腐る(A Fish Rots from the Head)
- 第46章 ミャンマー(Myanmar)
- 第47章 このようになる必要はなかった(It Really Didn’t Have to Be This Way)
- 第48章 ただのビジネス(Just Business)
各章の要約
第1章 単純な希望(Simpleminded Hope)
著者はクライストチャーチ(ニュージーランド)出身で、13歳の時にサメに襲われ生死の境をさまよう経験をした。その後、外交官として国連やニュージーランド大使館で働き、気候変動や保護政策に取り組んだが、実質的な変化を起こせないことに失望していた。2009年、彼女はFacebookが世界の政治を変える可能性を持つと確信し、同社に入社したいと強く望むようになった。特に、国境を越えた情報の流れをFacebookが管理することになり、政府がそれを規制しようとする時代が来ると予見した。それは自分が求めていた世界を変える革命だと感じた。
第2章 革命を提案する(Pitching the Revolution)
著者はFacebookにグローバル公共政策の仕事を提案するため、マーン・レヴィンとの面会を求めた。マーンは当初冷淡な反応を示し、著者の「フェイスブック外交官」というアイデアに懐疑的だった。会社はワシントンDCの規制当局との関係に集中しており、国際的な問題には関心がなかった。しかし2011年、チュニジア革命などのアラブの春がFacebookを通じて組織される出来事が起き始めた。その後、著者の妹がクライストチャーチで大地震に巻き込まれた際、彼女の安否をFacebookで確認できたことが転機となった。災害時にFacebookが果たした役割をマーンに説明し、最終的に彼女は「自分が提案した職」を得ることができた。
第3章 これは楽しくなるぞ(This Is Going to Be Fun)
2011年7月、著者はフェイスブックのワシントンDC事務所で仕事を始めた。最初の日、彼女はノートパソコンを持ってこなかったことでマーンの秘書メレディスを困惑させた。その後すぐに、ニュージーランドのジョン・キー首相のFacebook本社訪問をアレンジすることになった。著者はマーク・ザッカーバーグが首相と会うことを期待していたが、マークは政治に関心がなく、朝のミーティングを嫌がることを知る。マークの代わりにシェリル・サンドバーグが会うことになったが、彼女もエリオット・シュラーゲが主催するよう指示した。最終的に、マークが偶然首相と遭遇し、ぎこちない握手をして写真を撮ることになった。この訪問は実質的内容がほとんどない社交的なものだった。著者は自分が思い描いていたような政策的議論がなかったことに落胆した。
第4章 さよなら(Auf Wiedersehen to All That)
ドイツの消費者保護大臣とのミーティングで、著者はFacebook側の対応の悪さを目の当たりにする。まずFacebookのオフィスデザイン(露出した配管や「建設中」の外観)がドイツ人を当惑させた。次にマーンが不適切にもユダヤ人であることを持ち出し、さらにトップレスのイメージについて話し始めた。会議の実質的な部分でも、ドイツ側はヘイトスピーチの削除を求めていたが、FacebookはアメリカのFirst Amendment(言論の自由)を理由に拒否した。この失敗から数週間後、ドイツ政府はFacebookに対する調査を開始した。著者はここで初めて、自分の理想と会社の現実のギャップを認識し始めた。
第5章 小さな赤い本(The Little Red Book)
著者はFacebookの職場文化に直面する。同社では金銭的格差が顕著で、従業員の富はIPO前の入社時期に依存していた。彼女は同僚の高価なファッションアイテムや「価格に無関心」という態度に戸惑う。同時に厳しい労働文化があり、マーンは休憩なしで働き、3-4時間しか睡眠を取らない。著者も同様の生活リズムに適応せざるを得なかった。入社時に配布される「小さな赤い本」には、マークの引用や理念が記載されていた。「Facebookは社会的使命を果たすために構築された」というメッセージとともに、福利厚生は従業員が「長期的な目標に集中するため」に提供されていると説明されていた。会社は従業員に対し、単なる仕事ではなく世界を変える使命に参加していると信じ込ませていた。
第6章 私たちは何のために立ち上がるのか(What Do We Stand For?)
2012年初頭、ワシントンDCチームの男性陣が会社の理念や立場について明確化を求め始めた。「世界を変える」という抽象的な話だけでなく、具体的な政策的立場を知りたがった。マーンはこれに困惑したが、カリフォルニア本社でポリシーチームの会議が開かれることになった。米軍支援、臓器提供の促進など、いくつかの提案が議論されたが、結局シェリルがハーバード大学の友人の臓器移植外科医との会話に基づいて、臓器提供促進を選んだ。この取り組みに法的・文化的な複雑さがあると著者が指摘すると、シェリルは激怒した。最終的にマークは「Facebook全体でのメガホン」の使用を拒否し、「私はあなたを却下する」という短いメールを著者に送った。この経験は著者にとって、理想と現実のギャップを感じさせる出来事となった。
第7章 彼に良い時間を(Show Him a Good Time)
2012年4月、著者はエリオットからコロンビアの米州サミットにハビエル・オリバン(Facebookの成長担当重役)を連れて行くよう指示される。IPOを控え、優秀な社員の離職が懸念されており、特にハビに残ってほしかった。ハビはFacebookの成長戦略の中心人物で、攻撃的な手法で新市場の獲得を進めていた。カルタヘナでのサミットでは、著者は国家元首の晩餐会にハビを連れて行くが、席が用意されていなかった。翌日のハビの基調講演も、聴衆が隣の会場に移ってしまい空席が目立つ結果となった。その後、地元のレストラン経営者でありポルノ俳優でもあるとされるフアン・デル・マルの店で夜を過ごす。深夜のサルサクラブでは驚くべきことにヒラリー・クリントンが踊っているのを目撃する。帰り際、著者はハビにFacebookに残るかどうか直接尋ねると、「今のところは残る」と答えた。今日に至るまで彼は同社にとどまり、現在はCOOとして会社を運営している。
第8章 道が尽きる(Running Out of Road)
2012年10月、Facebookは10億ユーザー達成を祝う一方、経営陣は「道が尽きる」(成長の限界に近づいている)と懸念していた。IPO後の株価は半分に下落し、回復には劇的な成長が必要だった。著者は各国政府との関係構築を担当し、メキシコ、ベトナム、ブラジルなど多くの国を訪問した。ミャンマーがFacebookをブロックした際、著者は現地に派遣され、軍事政権と交渉することになった。彼女は妊娠していたが、上司に言えなかった。ネイピードーでの交渉は困難を極め、各省庁のトップとの会議では厳重な警備や儀式的な雰囲気に圧倒された。最終的に、彼女はFacebookがブロックを解除される合意を取り付けた。しかし、同時に彼女は会社の要求が非人道的であると感じ始めた。ミャンマーから帰国後、出血しているにも関わらず夫に妊娠を告げたことを打ち明けた。このエピソードは著者にとって大きな転機となり、会社の「絶対的な使命感」に疑問を抱き始めた。
第9章 レディ・マクナゲット(Lady McNugget)
2012年、シェリル・サンドバーグの本「Lean In」の出版がFacebookに変化をもたらした。著者は本のローンチイベントで名札を配るなど雑用を任され、DC事務所の女性たちは無給で働くことを期待された。著者は日本でのプロモーションツアーに同行し、安倍晋三首相との会談をセットアップする。会談はうまくいったが、帰りの飛行機でシェリルの本当の姿を目にする。彼女は自分の子供たちがマクドナルドで食事したことに激怒するが、自身はマクドナルドで撮影した写真をFacebookに投稿していた。「有名人とは顔を食い尽くすマスクだ」というアップダイクの言葉が著者の頭に浮かぶ。さらに、アシアナ航空機の墜落事故について、シェリルは自分と同僚がその便に搭乗する予定だったとFacebookに投稿した。しかし実際には彼らはいつもユナイテッド航空を利用しており、この投稿は嘘だった。この時から著者はシェリルを同じ目で見ることができなくなった。
第10章 良いニュースだけ(Only Good News)
シェリルの怒りっぽい性格が描かれる。著者はシェリルが理由もなく部下を批判したり、恥をかかせたりする場面を目撃する。例えば、会議に遅れて到着したデビーを皆の前で厳しく叱責したり、ダボス会議でアンゲラ・メルケルが会談を拒否したという事実を隠すよう指示したりした。2014年1月、著者の水が破れて病院に運ばれた際も、シェリルのためのブラジル大統領との会談用トーキングポイントを作成しようとした。2014年のサンパウロでは、Facebookの副社長ディエゴ・ゾーダンがWhatsAppのメッセージをブラジル当局に提出しなかったことで逮捕された。マークはこれを「心温まる話」としてFacebookに投稿したがり、ディエゴが危険な状況にいることをほとんど気にしていなかった。この出来事は著者にマークへの失望感を深めさせた。
第11章 ロードトリップ(Road Trip)
出張中の授乳ポンプのトラブルが描かれる。著者はコロンビアでハビとの出張で、Internet.orgの支援を得るために大統領に会う任務を負う。ジャングルの奥深くへの道のりで彼女は物理的な苦痛を感じるが、自分の健康を犠牲にしてでも仕事を優先しなければならないと感じている。その後のトルコへの出張では、飛行機内で授乳ポンプが使えず苦痛を味わう。イスタンブールのホテルでも電気系統の問題で授乳ポンプが使えず、フロントに助けを求めたところ、誤解を招き、ホテルマンが性的サービスを提供するために部屋を訪れるという奇妙な状況になった。これらの経験を通じて、著者はFacebookでの職場環境が母親としての基本的ニーズにも配慮しないことを痛感した。
第12章 ボディ(The Body)
著者は韓国への出張に直面する。マーク・ザッカーバーグが逮捕状が出ている国へ渡航する際、著者と他のスタッフはマークに韓国大統領との会談に向けた礼儀作法を教えようとするが、マークはふざけてしまう。韓国はFacebookのゲームに関する法律に従わなかったとして、マーク、シェリル、他の幹部に逮捕状を出していた。会社のリスク評価チームは当初、著者が「捕まる身体」として先に韓国に行くよう提案した。著者は躊躇したが、彼女が7ヶ月の赤ちゃんの母親であることが考慮され、別の女性スタッフが代わりに行くことになった。実際には、先遣隊が逮捕されることはなく、マークとチームは韓国へ向かうことになった。この出来事は会社の冷酷さを示す例として描かれている。
第13章 ストックホルム症候群(Stockholm Syndrome)
著者はFacebookの「身体」として韓国に送られるという状況を回避できたものの、それに対する夫のトムの反応は驚きだった。彼は著者が「ストックホルム症候群」に陥っていると指摘し、FacebookのリーダーシップにもはやFacebookが社員に要求していることを拒否できると教えた。著者がジャヴィ・オリヴァンのチームに異動を申し出るも、韓国に関する「ボディ」の議論が続いていた。Facebookが韓国の警察と衝突したにもかかわらず、マークと幹部たちは旅行を続行した。著者はこの経験を通じて、会社の優先順位が社員の安全や健康よりも成長と収益にあることを痛感した。
第14章 カタンの5人の開拓者と1人の億万長者(Five Settlers and One Billionaire in Catan)
著者がマークとアジア地域への出張中の体験が描かれる。2014年10月、彼女は初めてプライベートジェットに乗り込み、インドネシアへの旅に同行する。ジャワ島のアマンジヴォ・リゾートに到着すると、マークの巨大なスイートルームでのプールパーティに誘われる。妊娠中の著者は水着姿を見せることを躊躇するが、結局参加する。マークは妊娠中の妻が出産の際に自分がいなくても構わないと考えていることを明かす。夜にはカタン(ボードゲーム)をプレイし、著者はマークが勝つように周囲が操作していることに気づいて抗議する。翌日の寺院観光では、マークが観光客の写真を撮ってあげる場面と、別の観光客に拒否される場面が対照的に描かれる。この体験を通じて、著者はマークの人間性と権力に対する複雑な関係を垣間見る。
第15章 簡単なお願い(A Simple Request)
著者はインドネシア大統領との会談をアレンジするが、マークは大統領の予定に合わせることを拒んでいた。マークは正午以前のミーティングを嫌がり、著者はジョコ・ウィドド大統領当選者のスケジュールとマークの好みの間で板挟みになる。結局、会談は大幅に遅れて行われる。会談自体はうまくいき、ジョコウィはFacebookを使った選挙勝利について語った。その後の記者会見では、大統領がInternet.orgについて非公式に話し、代表団は協力を約束したものの、実際には何も具体的な成果は得られなかった。著者はこの訪問が内容のない社交的なものに終わったことに失望する。しかし、マークは大統領との出会いを楽しんだようだった。
第16章 運転を続けて(Just Keep Driving)
インドネシア訪問の続きでは、マークが「穏やかな暴動」を体験したいという奇妙な要求をする。実際の会談後、マークはジョコウィ大統領とともにショッピングモールへ向かい、群衆に囲まれる経験をする。エリオットはこの冒険を危険だと考えていたが、マークは熱狂する。「すごかった」とマークは興奮して言い、大統領に対する群衆の熱狂を目の当たりにして感銘を受ける。この体験は後にマークが政治に対する興味を深めるきっかけとなる。しかし、混乱の中でコミュニケーションチームのメンバーが置き去りにされるという事態も発生する。エリオットは「とにかく運転を続けろ」と指示し、彼らはそのスタッフを見捨てて先に進んだ。
第17章 栄光の炎の中で(Going Down in a Blaze of Glory)
韓国訪問では、シェリルが加わり、サムスンとの会談が行われたが大きな成果はなかった。サムスン本社での晩餐会後、韓国のDJによるカラオケパーティーが開かれ、マークはバックストリート・ボーイズの曲を熱唱した。東京への飛行中も機内でカラオケが続き、激しい乱気流の中でも男性スタッフたちは「栄光の炎の中で散る」と歌い続けた。この旅行を通じて、著者はマークをより深く理解するようになる。マークはFacebookで著者と友達になり、様々な会話を交わす中で、マークが最も尊敬する大統領はアンドリュー・ジャクソンであることを明かした。著者には、マークが権力に魅了されていることが明らかになり始めていた。
第18章 赤旗(Red Flag)
著者はFacebookの中国戦略に対する懸念を描く。マークは2011年以来中国市場参入を最優先事項としており、中国のインターネット規制当局との協力を模索していた。Facebookはヴォーン・スミスを中国チームのリーダーに任命した。彼はゴルフを通じて中国政府関係者と関係を構築しようとした。2014年のAPECサミットでは、シャオミのCEOレイ・ジュンがFacebookに投資する可能性について話し合われた。著者はAPECに向かう前、シェリルから「中国に関する最悪の国の一つ(ロシア)でさえ、インターネット人口の20%を獲得できれば、ロシアよりも多くのユーザーが得られる」というマークのメールを転送された。ヴォーンは中国への入国に向けた提案として、「法の支配を尊重する」という中国当局のスタンスに同意し、「自由は秩序を意味する」という中国のインターネット規制当局のルー・ウェイ大臣の言葉を引用した。著者はこれらが民主主義の価値観と相容れないと感じていた。
第19章 PACマン(PAC-Man)
マーンが去り、ジョエル・カプランがポリシーチームの副社長に昇進する。ジョエルはブッシュ政権の元メンバーで共和党との太いパイプを持っていた。彼の視点はアメリカ中心的で、国際問題への理解は浅かった。ジョエルは政治広告をFacebookの収益源として発展させようとし、政治広告販売チームを立ち上げた。著者はこのアプローチに反対していた。ジョエルは他国にもPAC(政治活動委員会)を設立するよう著者に指示するが、著者はそれが多くの国で違法であると説明する。ジョエルは「主要な同盟国へのお金の流れを促進する」という考えを持ち出し、著者が「それは多くの国で贈収賄と汚職と見なされる」と答えると、ジョエルは落胆した。このエピソードは著者とジョエルの価値観の違いを浮き彫りにした。
第20章 独裁への道(Slouching Toward Autocracy)
2014年12月、ロシアの反対派指導者アレクセイ・ナワリヌイの裁判に抗議するFacebookイベントページがロシア当局の要請で削除された。これが契機となり、マークはコンテンツ削除に関する決定プロセスを変更し始める。それまでは、ポリシーチームがガイドラインに沿って決定していたが、マークは「センシティブな国」からのコンテンツ削除要請はすべて自分に上げるよう求めた。2015年2月、全ポリシーチームが集まった会議で、ジョエルは「政府がFacebookをブロックするという信頼できる脅威がある」か「従業員へのリスクがある」場合にのみコンテンツを削除するという新しい基準を説明した。このアプローチは実質的に世界中の政府に「Facebookを規制したければ、社員を逮捕するか、サービスをブロックすると脅せ」というメッセージを送ることになった。チームメンバーからの懸念にもかかわらず、決定はマークの判断に委ねられることになり、「Facebookは一人の独裁者による専制政治だ」と著者は感じるようになった。
第21章 億万長者の時間(Billionaire Time)
著者はコロンビアの大統領サントスとの会談をマークのために設定する。しかし、マークは昼前の会議を嫌がり、昼12時30分以降を主張した。大統領は別の予定があり、結局マークは自分のパスポートを忘れたり薬を忘れたりして、さらに遅れが生じた。結局、マークは大幅に遅れて到着し、大統領との会談はわずか10分で終了した。会談ではInternet.orgについて説明したものの、具体的な成果は得られなかった。この遅刻のせいで、当初大統領が約束していたInternet.orgへの支援は実現しなかった。著者はこの出来事を通じて、「億万長者の時間」には他人の時間よりも価値があるとマークが信じていることを痛感した。
第22章 0.001%のためのハンガーゲーム(Hunger Games for the 0.001 Percent)
2015年のダボス会議での体験が描かれる。著者は11ヶ月の娘をダボスに連れて行くことにしたが、これをシェリルに隠していた。ダボスでは、イタリア首相やイギリスの財務大臣から、Facebookが税金を適切に支払っていないという批判が出た。アイルランドのケニー首相との会談では、シェリルはアイルランドが「ナレッジ・デベロップメント・ボックス」と呼ばれる新しい税制度を導入し、Facebookのような企業の知的財産からの収入に対して半分の税率を適用することを約束した。シェリルは著者に対し、「税金は世界中で私たちに降りかかってくる」と語った。しかし、シェリルが本当に気にしていたのは女性の行進ではなく、メラニア・トランプの衣装だった。著者はシェリルがプライベートジェットでシャンパンを飲みながら、「ケーキを食べさせておけ!」と言っているように感じた。
第23章 これを飛ばせる(Making Sure This Thing Flies)
Internet.orgの問題点が浮き彫りになる。67のデジタル権利団体が共同でマーク・ザッカーバーグに公開書簡を送り、Internet.orgが実際にはフルインターネットではなく、Facebookとローカルのサービスプロバイダーが承認したアプリやウェブサイトのみにアクセスを提供していると指摘した。さらに、ネット中立性の原則に違反し、暗号化やセキュリティーが欠如していると批判した。Internet.orgの責任者クリス・ダニエルズとデジタル権利団体との会議は対立に終わった。著者はこの分断を解決するため、名称変更を提案したが、マークは長い間抵抗し、最終的にブラジルでのみ「Free Basics」という名前に変更することを渋々認めた。インドでは、同様の批判に直面し、Facebookはソーシャルメディアキャンペーンを展開するが、インドの規制当局TRAIはFree Basics(Internet.org)を禁止した。アフリカの「アキーラ」ドローンプロジェクトも試験飛行で墜落し、同社の衛星をスペースXのロケットが発射台で爆発させるなど、一連の失敗が続いた。
第24章 カリフォルニア時間(California Time)
著者はマークから何度も「なぜカリフォルニアに拠点を置かないのか」と尋ねられた。2015年5月、マークは珍しく著者に感謝のメールを送り、彼女の世界各国での取り組みを評価した。著者はこれがマークからの移転要請のサインだと理解し、ニューヨークからカリフォルニアへの移転を決意した。7月、マークは再び感謝のメールを送り、「より密接に協力できることを楽しみにしている」と述べた。著者はこの移転が彼女の家族生活に大きな影響を与えることを認識しつつも、マークの期待に応えようとした。
第25章 マペットとモンシニョール(Muppets and Monsignors)
2015年9月、マークは中国訪問、Internet.org、Oculusについての講演など重要なプロジェクトに集中していた。中国の習近平国家主席との会談を期待していたが、シアトルで行われた短い握手しか実現しなかった。その後、マークは国連で演説し、「Connectivity Declaration(接続性宣言)」を推進した。国連でのイベント後、ブラジルのルセフ大統領との会談やグローバル・シチズン・フェスティバルへの参加など慌ただしい日程が続いた。グローバル・シチズン・フェスティバルでは、マークのビデオと実際の登場が重なるというハプニングが起きた。マークは2017年のチャレンジとして、アメリカの州を訪問することを決意した。これは大統領選挙の前哨戦となる州を訪問するという計画で、著者はマークが大統領選出馬を検討していることに気づいた。さらに、マークはメディア企業の買収や設立について議論し、「第五の権力」としてのFacebookの役割について語った。著者はマークの異常な野心と権力の集中に危機感を抱いた。
第26章 邪悪な西の魔女(The Wicked Witch of the West)
著者がInternet.orgの名称変更を求めた後、マークはInternet.orgの敵に対して「攻勢に出る」よう指示する。2015年8月、マークは幹部を集め、アプリのテスト中にユーザーを「誘導」するために「ストリートファイター戦術」を使うよう促した。マークは、「敵対者」のリストを作成し、Facebookのプラットフォームとアルゴリズムを利用して彼らに圧力をかけるツールを開発するよう命じた。著者は「敵対者とは誰か」と尋ねると、「私たちに反対する人は誰でも敵対者だ」という答えが返ってきた。インドでは、フリーベーシックのために「戦争部屋」が設置され、テレビ、新聞、映画館、ラジオ、ビルボードなど多くのメディアを通じて広告キャンペーンが展開された。インド当局に送られた1700万通のメールの多くは技術的な問題で届かず、インド規制当局はFacebookのキャンペーンを「デモクラティックな公開協議を人気コンテストに貶めた」と批判した。最終的に2016年2月8日、インド当局はフリーベーシックを禁止した。著者はマークやシェリルが世界中の政府や市民社会団体と協力するという誠実なアプローチを取る代わりに、「街頭闘士」の戦術を選んだことに失望した。
第27章 ストリートファイターの戦術(Street Fighter Tactics)
マークはFacebook革命の限界に直面した後、アメリカ全土の旅に出る。アイオワの小さな町から始まり、デトロイト近郊のフォード組立ラインで働き、ネブラスカのプライド祝賀行事に参加し、サウスカロライナのAME教会に出席するなど、まるで大統領選挙の前哨戦のような活動を展開した。公式には大統領選への出馬を否定していたが、オバマとブッシュの選挙を勝利に導いたコンサルタントを財団に雇い、6000語のマニフェストを発表するなど、あらゆる兆候が政治的野心を示していた。ハワイの不動産問題では、地元のハワイアンが数世代にわたって所有していた土地の権利を強制的に売却させようとした際、悪いイメージが広がることを恐れた。Facebookの取締役会は、マークが「政府の地位や公職」に就くために最大2年間会社を離れても支配権を失わないという新しい株式構造を承認した。これは彼が大統領選に出馬した場合に備えたものだった。
第28章 リーンインして横になる(Lean In and Lie Back)
2017年1月、トランプ就任の日、著者はダボスからシェリルと共に帰国の途についていた。シェリルは若いアシスタントのセイディとの不適切な関係を持ち、彼女に高価な下着を買わせたり、自分の家に泊まるよう誘ったりしていた。プライベートジェットの中で、シェリルは著者にもベッドに入るよう要求し、断ると怒った。ワシントンDCでは女性たちによる大規模な抗議行動「ウィメンズ・マーチ」が行われていたが、シェリルはそれに全く関心を示さず、「メラニアは何を着ていたの?」と尋ねた。著者は「ケーキを食べさせておけ!」と言いたい気持ちを抑えた。この経験は著者にとって、シェリルの二面性と「リーンイン」の理念と実際の行動のギャップを浮き彫りにした出来事だった。
第29章 シチズン・サンチェス(Citizen Sanchez)
著者はアメリカ市民権を申請する。試験の当日、ジョエルから「ダーティ・サンチェス(性的な意味を持つ卑猥な言葉)についての質問はあったか?」というメールを受け取り、不快感を覚える。市民権テストでは、結婚日の質問に答えられず、カリフォルニア州の居住期間が90日に満たないことが判明し、申請をやり直さなければならなくなった。Facebookの弁護士が特急審査を申請することになったが、トムのビザが切れる期限までわずか5ヶ月しかなかった。この状況が著者のFacebook退職を難しくしていた。
第30章 ポーカーフェイス(Poker Face)
2016年2月、著者はFacebookの取締役会に対して規制リスクについて説明する責任を負う。取締役会会議でマーク、シェリル、取締役らが参加し、予想以上にカジュアルな雰囲気だった。著者は規制のリスクと対策について説明し、5500万ドルの予算と60人の新スタッフを要求した。エリオットは「タバコ業界」を引き合いに出し、Facebookも社会に危害を与えていると認める発言をしたが、議論はすぐに別の議題に移った。その後の業績評価で、ジョエルは著者の「ポーカーフェイス」について言及したが、取締役会での著者の反応(目を回す仕草)に不満を示した。これは極右政党との協力を提案する取締役に対する著者の反応だった。ジョエルは「どんな意見の相違があれ、取締役会に対して目を回すことはできない」と注意した。
第31章 心温まる物語(A Heartwarming Story)
2016年3月、ブラジルでFacebookの副社長ディエゴ・ゾーダンが逮捕された。これはWhatsApp(Facebook所有)がブラジル政府の薬物密売事件に関するメッセージ提出要請を拒否したためだった。マークはこの出来事を「心温まる物語」としてFacebookに投稿したいと考えた。彼はディエゴが「コミュニティを守るために投獄された」と賞賛したかった。しかし法務チームは、この投稿がさらなる社員の逮捕リスクを高めると警告した。マークはディエゴを助けるよりも、自分の投稿に関心を示した。最終的にディエゴは釈放されたが、この出来事は著者にとってマークの本当の姿を示す出来事となった。
第32章 妊娠中に期待しないこと(What to Not Expect When You’re Expecting)
著者はブラジルのジョアン・ペソアを訪問した後、同地域がジカウイルスの発生地であることを知り、妊娠中に感染したのではないかと恐れる。ジカウイルスは胎児の小頭症などの先天性障害を引き起こすことで知られていた。医師の診察を受けるが、超音波検査では異常は見つからなかったものの、胎児がまだ子宮内にいる間はジカを確実に診断できないと言われる。2016年3月、著者は健康な女の子を出産したが、分娩後に大量出血し、生死の境をさまよう経験をした。羊水塞栓症と診断され、35回以上の輸血を受け、集中治療室に運ばれた。この経験は著者に母親としての罪悪感と、技術の最先端にいるシリコンバレーで出産に関連して死にかけるという矛盾を感じさせた。「現代のアメリカでの死に方」と著者は表現した。
第33章 このことに触れなければならないのか(Do We Have to Go into This?)
産休から戻った著者は、ジョエルからの継続的なハラスメントに直面する。彼は著者がまだ病気で強い痛み止めを服用しているにもかかわらず、ビデオ会議を設定し、ベッドから参加した。彼は著者に出血している場所について不適切な質問をし、著者が拒否すると怒った。ジョエルはインドのハイデラバードでの「リーダーシップオフサイト」への参加を強要し、著者が授乳中の赤ちゃんを置いて行くことを躊躇すると、「授乳について説明してくれ」と不適切に要求した。産休明けの業績評価では、ジョエルは「産休中に十分に対応できなかった」と批判した。著者が「昏睡状態だった」と反論しても、批判は続いた。HR担当者のステイシー・トメイも「認識していた」と述べ、会社が産休中の著者への不適切な要求を知りながら何も対処しなかったことを認めた。
第34章 フェイスブックの選挙(The Facebook Election)
2016年11月のトランプ勝利後、Facebookのオフィスでは政策・コミュニケーションチームが集められ、選挙結果についての感情を議論するミーティングが行われた。ジョエルはトランプの勝利を喜び、「トランプの政策は共和党の政策であり、私が望むもの」と著者に告げた。会議では若い社員が「黒人やヒスパニック系の友人たちが心配」と発言するが、白人の若い男性社員が「同盟者になりたい」と発言し、場をしらけさせた。誰かが「これは私たちの責任なのか?2016年は『フェイスブックの選挙』だと言われている」と質問するが、エリオットはこの考えを突き放した。マークも後に「フェイスブックが選挙に影響したという考えはクレイジーだ」と発言した。著者は会社内でのこの反応に失望した。
第35章 真実に対する怒り(Angry at the Truth)
トランプ勝利後、マークはフェイスブックが選挙に影響したという非難に怒りを露わにする。ペルーのAPECサミットへの出発前、マークはパスポートを忘れるというハプニングがあった。飛行中、エリオットはフェイスブックがトランプ陣営にどのように助力したかを説明した。フェイスブックはトランプ陣営のサンアントニオのオフィスにスタッフを常駐させ、「Project Alamo」と呼ばれるデータベースを活用して有権者をマイクロターゲティングし、広告費用を削減しながら効果的なメッセージを届けていた。さらに、フェイスブックは女性や黒人、若い有権者向けの「投票抑制キャンペーン」も支援していた。マークはこれらの事実を受け入れ始めるが、エリオットの提案した対策には抵抗した。ペルー到着後、「We take misinformation seriously」と題した投稿を出すが、具体的な対策には踏み込まなかった。
第36章 ローズバッド(Rosebud)
ペルーでのAPECサミット中、マークは習近平国家主席との会談を望んでいたが、習近平は厳重な警備の下、マークとの接触を完全に避けた。マークは世界の指導者たちを前に講演を行った後、各国首脳との円卓会議を主催した。しかし、予想されたような厳しい批判はなく、各国首脳はマークにおべっかを使い、協力関係を求めた。会議後、マークはオバマ大統領との会談に向かったが、オバマはフェイスブックが「世界的に破壊的な役割を果たしている」と批判し、マークは激怒した。帰りの飛行機でマークはボードゲームで負けると著者を「カンニング」と非難した。著者は「すべての戦いに勝とうとするから全体像が見えない」と反論し、Internet.orgの名称変更の件を例に挙げた。フライト中、マークは「第5の権力」としてのフェイスブックの役割や、ニューヨーク・タイムズの買収、新しいメディア帝国の創設などについて語った。最後に著者は「ローズバッド」(映画「市民ケーン」の有名なセリフ)という言葉で、マークの権力欲と孤独を暗示した。
第37章 庶民の味方(Man of the People)
マークは2017年のチャレンジとして、アメリカ全土の旅を始める。アイオワの小さな町、デトロイト近郊のフォード工場、ネブラスカでのプライドイベント、サウスカロライナの教会など、まるで大統領選の前哨戦のような場所を訪れた。各訪問はチャールズ・オマニーという元ホワイトハウス写真家によって記録され、フェイスブックに投稿された。ハワイでの土地問題が表面化すると、マークはネガティブな報道に過敏に反応し、訴訟を取り下げると発表した。だが実際には引き続き現地のプロフェッサーに毎月6000ドルを支払い、土地から人々を遠ざけるよう手配していた。フェイスブックの取締役会は、マークが「政府の地位や公職」のために最大2年間会社を離れても、会社の支配権を失わないという新しい株式構造を承認した。著者は別の仕事を探し始めるが、健康保険の必要性から辞職できないでいた。彼女は腸内にがん化前の組織が発見され、医療専門家は彼女が「リンチ症候群」を持っている可能性があると指摘した。
第38章 ケーキを食べさせておけ(Let Them Eat Cake)
2017年1月、トランプの就任式の日、著者はダボスからシェリルと一緒に帰国していた。ワシントンDCでは「ウィメンズ・マーチ」と呼ばれる史上最大の単一日の抗議活動が行われていたが、シェリルは全く関心を示さなかった。「ウィメンリーダーシップ」についてのパネルを終えたばかりのシェリルは、フェイスブックの投稿から始まった歴史的な女性の抗議について話すことを避け、代わりにメラニア・トランプの服装について尋ねた。著者は「ケーキを食べさせておけ!」と言いたい気持ちを抑えた。シェリルの二面性や偽善は、Facebookの他の部分にも反映されていた。会社はリベラルな女性の権利をプッシュする一方で、トランプ陣営のような極右勢力にも積極的に協力していた。
第39章 フェイスブック・フェミニスト・ファイトクラブ(Facebook Feminist Fight Club)
社内で女性約200人による秘密グループ「フェミニスト・ファイトクラブ(FFC)」が結成される。このグループはシェリルがウィメンズ・マーチについて沈黙を守ったことなど、会社の問題点を指摘した。管理職は「#ally(同盟者)ボット」を導入し、男性が女性を支援したときに報酬を与えるシステムを作ったが、これは男性の昇進や株式オプションに影響する可能性があった。FFCのメンバーはこれを「最低限の礼儀をわきまえているだけで過度の称賛を受ける」と批判した。この時期、著者は海外オフィスでの性的ハラスメントも目撃した。すべての問題についてエリオットに報告したが、彼は「それは残念だが、推薦状を書くことはできる」と述べるだけだった。調査は著者側ではなくジョエルを調査するはずだったが、実際には著者の行動を調査するようになった。彼女のパフォーマンスに「懸念」があるという理由で、アジア部門とラテンアメリカ部門の責任を半分に減らされた。
第40章 北京からの挨拶(Greetings from Beijing)
著者はFacebookの中国戦略に関する文書を検討するよう命じられる。マークは2014年に「中国進出3年計画」を立て、中国がFacebookの最優先事項であると宣言していた。著者は中国部門を率いる責任を負うことになったが、中国のテック・ポリシーに関する彼女の懸念は無視された。Facebookは中国のインターネット規制当局との協力を模索し、検閲ツールの開発を進めていた。また、安全な社会秩序の促進を約束し、「自由は秩序を意味する」という中国当局の見解に同意していた。さらに、政府要請に応じてFacebookユーザーのデータを提供することも検討されていた。これらの対応は米国内でのFacebookの姿勢とは大きく異なり、中国での事業のためには企業価値を簡単に妥協する姿勢が明らかになった。
第41章 我々の中国パートナー(Our Chinese Partner)
「アルドリン」と名付けられた中国進出プロジェクトでは、ホニー・キャピタルという中国の投資会社をパートナーとして迎えた。ホニーは中国ユーザーのデータを中国国内に保存し、政府の要請に応じてコンテンツ検閲やユーザーデータの提供を担当することになっていた。Facebookはホニーと中国政府のために顔認識、写真タグ付け、その他の検閲ツールを構築し、中国政府が中国ユーザーの公開投稿とプライベートメッセージをすべて検閲できるようにする計画だった。中国には緊急コンテンツスイッチも用意され、特定の地域(新疆ウイグル自治区など)をブロックしたり、「潜在的な不安の時期」に中国の内外からのウイルス性コンテンツを削除したりできるようにする予定だった。Facebookは中国以外のユーザーのデータは中国政府にアクセスさせないと主張していたが、内部文書ではそれが不可能であることを認めていた。これらの計画は、Facebookの公式な姿勢と大きく矛盾していた。
第42章 敬意を込めて、上院議員(Respectfully, Senator)
Facebookの中国チームはプロジェクトがリークした場合のための準備をしていた。議会や投資家からの批判に備え、マークのトーキングポイントを準備した。彼らが予測した批判的な見出しには「中国政府がFacebookを使って市民を監視する」「Facebookが中国市民のデータを中国政府に引き渡す」などがあった。焦点グループ調査では「Facebookがプライバシーを気にしているという考えはどこでも信じられない」という結果が出ていた。中国計画に関する議会証言の準備では、「中国のユーザーデータに対する中国政府の事実上の一括アクセスを与えることを喜んでいるのに、米国の要請には攻撃的に戦うのはなぜか」という質問への対応も用意されていた。2018年4月、マークは上院議員コーテズ・マストの質問に「中国でのサービス提供の条件についてはまだ決定されていない」と答えたが、これは明らかな嘘だった。FacebookはすでにCCP(中国共産党)と協力し、彼らの要件を満たすために技術とツールを開発していた。
第43章 法律を無視して突き進め(Move Fast and Break the Law)
マーク・ザッカーバーグは中国進出を最優先課題としていた。中国政府がFacebookの進出条件として中国企業パートナーを求めた際、ホニー・キャピタルが選ばれ、コード名「ジュピター」と呼ばれた。このパートナーシップでは中国ユーザーデータの中国内保管と、中国政府の要請に基づくコンテンツ検閲を実施する計画だった。
Facebookは工学チームを結成し、中国政府が要求する検閲ツールを開発。このツールには緊急時にコンテンツやリージョンをブロックする機能や、1万ビュー以上の投稿を自動的に検査する「バイラリティカウンター」機能が含まれ、すでに香港と台湾で展開されていた。
また、Facebook幹部は中国での事業展開についての議会証言用の回答を準備し、真実を曖昧にする戦略を立てていた。証言では中国のユーザーデータの保護を約束する一方、実際には中国政府へのデータ提供を計画していた。
第44章 感情的ターゲティング(Emotional Targeting)
2017年4月、Facebookが13〜17歳の若者を「無価値」「不安」「失敗」などの感情的弱みを抱えている時に広告ターゲティングする内部文書がリークされた。オーストラリアの広告主向けに作成されたこの資料では、若者のプライベートな投稿や写真、友人とのやり取りを監視して脆弱な瞬間を特定する方法が説明されていた。
Facebookはこうした若者の感情状態をもとにした広告配信を複数のクライアント向けに行っており、美容製品会社が10代の少女が自撮り写真を削除した瞬間を追跡して広告配信する例もあった。リーク後、会社は「Facebookは感情状態に基づいてターゲティングするツールを提供していない」と虚偽の声明を発表し、実態を隠蔽した。
著者はこの行為に倫理的嫌悪感を示したが、幹部たちはこの慣行を弁護し、広告主にとっての価値を強調した。
第45章 魚は頭から腐る(A Fish Rots from the Head)
Facebook社内では、トランプ当選後の影響、女性社員の組織「フェミニスト・ファイト・クラブ」(FFC)の問題提起、そして世界中で引き起こしている害悪への対応不足により、社員と経営陣の間に信頼が崩壊していた。多くの社員は自分たちが共犯者になっていると感じ始め、応募者がFacebookで働きたくないと採用担当者に告げるなど採用も難しくなっていた。
経営陣はこうした問題に無関心で、シェリルは新たなインターン生が道徳性や企業文化について質問することに不満を漏らし、ビジネスについて質問しないのはなぜかと疑問視した。経営陣の会議では社員のメンタルヘルスやモラル問題が定期的に議題になったが、エリオットは「ダボス会議のエリートたちは世間知らずだが、マークとシェリルは他のビジネスリーダーとは違い『道徳的権威』を持っている」と主張した。
職場環境も悪化し、てんかん発作を起こした契約社員が放置される事件も起きた。
第46章 ミャンマー(Myanmar)
ミャンマーはFacebookの破壊的影響を最も明確に示す例だった。2013年以降、ミャンマーではほとんどのインターネットユーザーがFacebookを利用し、多くの携帯電話にプリインストールされていた。2014年にはFacebook上でのヘイトスピーチが原因で暴動が発生したが、Facebookのコンテンツチームは対応を拒否した。
問題点は多岐にわたった:
- ビルマ語を話すモデレーターがダブリンに1人しかいなかった
- コミュニティ基準がビルマ語で公開されていなかった
- 報告ボタンがビルマ語表示されなかった
- Facebookのシステムがビルマ語と互換性がなかった
著者はこれらの問題を幹部に訴えたが無視された。2017年後半、軍はFacebook上で虚偽のニュースやヘイトスピーチを拡散するための大規模な作戦を展開し、これが「ジェノサイド」と国連が後に表現する残虐行為につながった。少なくとも1万人が殺害され、70万人以上のイスラム教徒が国外逃亡した。
FacebookはミャンマーでEUに「安全な」データ処理を提供する義務を怠り、「ヘイトスピーチを監視して対応する能力が不足している」と国連調査団に批判された。
第47章 こんな風になる必要はなかった(It Really Didn’t Have to Be This Way)
著者はJoelと同じ場所にいることを懸念し、エリオットのオフサイトミーティングでの対面を恐れていた。トランプ政権との関係強化によりJoelの権力は増大し、政治的言論やコンテンツに関する重要な決定に関与するようになっていた。
航空博物館での夕食会で、Joelは著者を「官能的」と公然と呼び、その後ダンスフロアで彼女の後ろから身体を擦りつけるというセクハラ行為を行った。著者は人事部門のステイシーに近づくことで身を守ろうとしたが、「この人たちが私に話すことは信じられないわよ」という警告的な発言に、この件を報告することを断念した。
著者はJaviの成長チームへの異動を希望したが、Elliotにブロックされ、代わりに彼女のパフォーマンスに問題があると非難された。ハラスメント調査が開始されたが、すぐにJoelを免責し著者を責める方向に転換した。最終的に著者は解雇され、警備員に付き添われて退社させられた。
第48章 ただのビジネス(Just Business)
著者はFacebookでの7年間を振り返り、世界を良くするという初期のビジョンが腐敗していったと感じている。当初は世界中の人々がFacebookで人生を変える感動的な体験をしていたが、次第に最悪の人々が恐ろしいことをするための効果的なツールになってしまった。
著者は「こんな風になる必要はなかった」と繰り返し、Facebookの経営陣が多くの機会に違う選択をすることができたと強調する。中国、ミャンマー、選挙、ヘイトスピーチ、脆弱な若者に関する問題など、あらゆる局面で異なる道を選ぶ可能性があった。
しかしFacebookの経営陣は責任感を身につけず、むしろその行動の結果を目の当たりにするにつれ、より無関心になった。彼らは修復する代わりに、開始演説、政治的野心、別荘購入などの虚栄心に没頭し、これらの決断や道徳的妥協は日常的なビジネス判断に過ぎなかった。
著者は「私はそれに加担していた。私は変えようとして失敗し、その責任を背負っている」と結んでいる。
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