書籍『資本主義:その言葉の背景にある物語』Michael Sonenscher 2022

トランスナショナル資本家階級(TCC)・資本主義

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『資本主義:その言葉の背景にある物語』マイケル・ソネンシャー(Michael Sonenscher) 2022

『Capitalism: The Story Behind the Word』Michael Sonenscher 2022

目次

  • 序文 / Preface
  • 第一部 諸問題 / Part I: Problems
    • 第1章 資本主義と商業社会 / Capitalism and Commercial Society
    • 第2章 資本主義と政治思想史 / Capitalism and the History of Political Thought
    • 第3章 資本主義、戦争、そして債務 / Capitalism, War, and Debt
    • 第4章 資本主義、王政主義、そして社会問題 / Capitalism, Royalism, and the Social Question
    • 第5章 資本主義と労働権 / Capitalism and the Right to Work
    • 第6章 分割された世界の資本主義 / Capitalism in a Divided World
  • 第二部 諸解決 / Part II: Solutions
    • 第7章 カール・マルクス-資本主義、共産主義、分業 / Karl Marx—Capitalism, Communism, and the Division of Labour
    • 第8章 アダム・スミス-資本主義、功利、正義 / Adam Smith—Capitalism, Utility, and Justice
    • 第9章 ヘーゲル-市民社会と国家 / Georg Wilhelm Friedrich Hegel—Civil Society and the State
    • 第10章 デイヴィッド・リカード-公債と比較優位 / David Ricardo—Public Debt and Comparative Advantage
    • 第11章 ローレンツ・フォン・シュタイン-公債と行政 / Lorenz von Stein—Public Debt and Public Administration
    • 第12章 結論 / Conclusion

全体の要約

本書は「資本主義」という概念の歴史的起源と発展を詳細に分析した思想史研究である。著者ソネンシャーは、現代で当然視されている資本主義概念が実は19世紀のフランスで生まれた比較的新しい造語であり、その背景には複雑な政治・経済思想の系譜があることを明らかにする。

中心となる論点は、資本主義と商業社会の区別である。アダム・スミスが論じた「商業社会」は分業を基盤とする社会であり、これは資本所有に基づく「資本主義」とは本質的に異なる概念だった。この区別を理解することで、現代の経済・政治システムをより適切に把握できると著者は主張する。

第一部では、資本主義概念の歴史的起源を追跡する。18世紀フランスで「資本家(capitaliste)」は主に政府に資金を貸し付ける者を指していた。19世紀初頭、王政主義者たちが新たな政治・経済現象を表現するため「資本主義(capitalisme)」という用語を作り出した。特にエミール・モリス(1834年)の分析では、オランダの金融力がベルギー独立後の経済依存関係を生み出す状況を「資本主義の力」として描写している。

この初期の資本主義概念は戦争、公債、国家権力と密接に結びついていた。1836年の王政主義文書では、資本主義を「主権者たちの主権者」として描き、ロスチャイルド家のような金融勢力が国家を超越した権力を持つ現象として理解されていた。これは後のマルクス主義的理解とは大きく異なる出発点だった。

1830年代から1840年代にかけ、資本主義概念は王政主義者から社会主義者へと受け継がれた。ルイ・ブランは1850年に資本と資本主義を区別し、「資本に万歳!資本主義という致命的な敵をより激しく攻撃しよう」と述べた。この区別により、資本自体は肯定しつつ私的所有制度としての資本主義を批判する立場が生まれた。

アルフォンス・ド・ラマルティーヌとルイ・ブランの「労働権」論争は重要な転換点だった。ラマルティーヌは労働権の法的保障が個人の自由と矛盾すると主張し、国家による雇用保障は新たな隷属制を生み出すと警告した。これに対しブランは、資本の公的所有による解決策を提示した。

第二部では、商業社会の政治理論的基盤を検討する。マルクスの共産主義理論は、プルードンの「財産は盗品である」という主張から発展した「財産の否定的共同体」概念と、ドイツ観念論の個人的自律性概念を統合したものだった。しかしマルクスの理論は所有権の問題に焦点を当てており、分業の問題には十分に対処していなかった。

アダム・スミス研究における「アダム・スミス問題」は、道徳感情論の同情原理と国富論の自己利益原理の整合性に関する議論だった。ジェームズ・レディなど初期の研究者は、スミスのシステムが正義と便宜性の両方を包含する複合的理論であることを示した。正義は強制可能な徳であり、便宜性は自発的な評価基準だった。

ヘーゲルの市民社会概念は、国家と市場の仲介項として行政を位置づけた画期的な理論だった。「普遍身分」としての官僚制は、市民社会と国家の双方に属しながら、税収と公債によって維持される独特な存在だった。この行政概念により、政治と経済の分離と統合が同時に可能になった。

リカードの比較優位論は、単なる貿易理論ではなく、通貨政策と財政政策を統合した包括的な経済理論だった。金本位制と管理通貨制の利点を組み合わせることで、需要と価値の差異を道徳的に調整可能なシステムを構想していた。

ローレンツ・フォン・シュタインは、憲法原理(個人)と行政原理(集団)の区別を通じて社会民主主義理論を展開した。国家の通貨創造権と公債管理により、私的資本の分裂的効果を相殺し、無産階級に教育・技能・資本取得の機会を提供することが可能になる。

結論として、資本主義は所有理論であり、商業社会は分業に基づく社会理論である。資本主義には多くの代替案があるが、分業に対する真の代替案は存在しない。19世紀の思想家たちは、行政、通貨、財政政策の組み合わせによって分業の問題に対処しようと試みた。現代においても、これらの複雑な制度的仕組みを理解することが、商業社会における政治を考える上で不可欠である。

各章の要約

第1章 資本主義と商業社会

Capitalism and Commercial Society

アダム・スミスの商業社会概念は、資本ではなく分業を基盤としていた。「分業が完全に確立されれば、人は交換によって生活し、社会そのものが商業社会となる」とスミスは述べた。資本と分業は歴史的・分析的に区別されるべき概念である。商業社会は市場と価格を前提とするが、資本は所有可能な対象である。この区別により、資本主義の代替案は多数存在するが、分業の代替案は極めて限定的であることが理解できる。

第2章 資本主義と政治思想史

Capitalism and the History of Political Thought

19世紀起源の政治概念は少ないが、資本主義は明確にその一つである。資本主義概念は、ベンジャミン・コンスタンの積極的・消極的自由の区別と同時期に出現した。資本主義は無制限な力として、制限された消極的自由を脅かすという議論が展開された。この議論は、資本主義を異質で変化する問題群の名称と見る立場と、一貫した本質を持つシステムと見る立場に分かれた。本書は第三の視点として、破局の観念が資本主義概念に先行していたと主張する。

第3章 資本主義、戦争、そして債務

Capitalism, War, and Debt

フランス語の「資本主義」は1830年代に出現し、18世紀の「資本家(capitaliste)」概念に由来していた。資本家とは王政府の戦費調達に資金を供給する者を指していた。エミール・モリスは1834年、オランダ・ベルギー関係を分析し、「資本主義の力」がオランダの金融支配を可能にしていると論じた。この初期概念では、国家債務が資本主義の核心を成しており、後のマルクス主義的理解とは対照的に、国家が資本主義発展の組織形態ではなく、資本が国家発展の組織形態だった。

第4章 資本主義、王政主義、そして社会問題

Capitalism, Royalism, and the Social Question

1836年の王政主義文書『国家の人物の文書から引き出された回想録』は、資本主義を「主権者たちの主権者」として描写した。ロスチャイルド家のような金融勢力の支配を「資本主義の新たな力」として批判し、この力が農業から資本を転用し、個人主義という「現代の癩病」を犠牲にして現在を未来に犠牲にすると警告した。ルイ・ド・ボナルドは商業社会を政治社会と対比し、商業社会の自己破壊的性格を論じた。「社会問題」概念も同時期に王政主義者により提起された。

第5章 資本主義と労働権

Capitalism and the Right to Work

1847年、ジョゼフ・ロベールは労働者に向けて「プロレタリア、君の解放は近い。資本主義が君のために作り、今も延長しようとしている生活よりも高次の生活を君は知ったからだ」と宣言した。ラマルティーヌは1844年「労働権と労働組織について」でルイ・ブランの労働組織論を攻撃した。労働権の法的保障は個人の自由と根本的に矛盾し、新たな労働貴族制と賃金封建制を生み出すと主張した。ブランは資本と資本主義を区別し、「資本の抑圧は資本の抑圧ではない。資本主義の抑圧は資本の抑圧とは無関係である」と反論した。

第6章 分割された世界の資本主義

Capitalism in a Divided World

ルイ・ブランの資本・資本主義区別により、社会主義概念がより明確になった。18世紀のジョン・ローのシステムのように、公債を成長エンジンとして使用する発想は存続していた。しかし労働権は分業の問題とも連動しており、分業は国際的・全球的な現象だった。労働権の法的保障は、単一経済内のみならず世界経済の構造・組成・持続可能性に制約を課すことを意味した。資本主義の問題と分業の問題は異なる性質を持ち、異なる解決策を要求していた。

第7章 カール・マルクス-資本主義、共産主義、分業

Karl Marx—Capitalism, Communism, and the Division of Labour

マルクスの共産主義は、フランス法学とドイツ神学の統合だった。プルードンの「財産の否定的共同体」概念と、個人自律性の観念を結合させた。マルクスにとって根本問題は労働力という特殊な所有権だった。プロレタリアートの集団的労働力が新たな否定的共同体の源泉となり、階級意識を通じて個人性の属性を労働力の疎外された諸特性に注入することが可能になる。しかし共産主義が所有を超えた世界をもたらしても、商業社会を超えた世界は想像困難である。

第8章 アダム・スミス-資本主義、功利、正義

Adam Smith—Capitalism, Utility, and Justice

「アダム・スミス問題」は道徳感情論の同情と国富論の自己利益の矛盾とされた。しかしジェームズ・マッキントッシュとジェームズ・レディは、スミスのシステムが正義と便宜性を統合していることを示した。正義は強制可能な唯一の徳であり、法の支配と関連していた。便宜性は結果に関する合理的評価だった。レディはスミスの正義理論をカントと同一視し、法は道徳とは独立して個人の自由意志行使のための「安全で自由な空間」を確保するものだとした。

第9章 ヘーゲル-市民社会と国家

Georg Wilhelm Friedrich Hegel—Civil Society and the State

ヘーゲルの市民社会概念は、国家と市場を仲介する行政の理論を提供した。「普遍身分」としての行政は、私的資源を持たず国家から報酬を受ける特殊な身分だった。貨幣と法律の普遍的性格により、行政は個人的判断力に依存せずに機能できた。市民社会と国家の相互依存関係は信用に基づいており、これが政府の実効的な経済政策を可能にした。権力分離も垂直的のみならず水平的に拡張され、政党政治の基盤となった。

第10章 デイヴィッド・リカード-公債と比較優位

David Ricardo—Public Debt and Comparative Advantage

リカードの比較優位概念は、国際貿易と課税の双方に関わる理論だった。その核心は貨幣・銀行・債務の関係にあった。1797年の金兌換停止以降の通貨論争において、リカードは通貨原理と地金原理の利益を統合する財政・金融制度を構想した。管理通貨制度により利子率管理が可能になり、高価値低効用商品への課税と低価値高効用商品の免税により、需要と価値をより道徳的に調整できるとした。比較優位は費用・生産性のみならず、財政・金融政策に基づいていた。

第11章 ローレンツ・フォン・シュタイン-公債と行政

Lorenz von Stein—Public Debt and Public Administration

シュタインは憲法と行政の区別を通じて社会民主主義理論を展開した。憲法原理は個人に、行政原理は集団に適用された。国家人格と個人人格の矛盾は、国家の通貨創造権と公債管理により解決可能だった。国家が借り入れた資金は無利子貸付により私的資本に加えられ、債務利払いにより資金が再流通する。「債務のない国家は将来を軽視しすぎるか、現在に過度な要求をしている」とシュタインは述べた。社会民主主義は憲法における民主主義的要素と行政における社会的要素の結合だった。

第12章 結論

Conclusion

資本主義と商業社会の区別は重要である。資本主義は所有理論であり、商業社会は分業に基づく社会理論である。分業は個人的多重作業ではなく、個人間の相互依存を前提とする。ルソーが『社会契約論』で述べた自由から隷属への変化の正当化という問題は、19世紀の思想家たちによって行政・通貨・財政政策の統合を通じて検討された。資本主義には多くの代替案があるが、分業の代替案は極めて限定的である。商業社会における政治を理解するには、これらの複雑な制度的配置を把握することが不可欠である。


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