
https://archive.org/details/wherethereisnodo0000davi
英語タイトル:『Where There Is No Doctor: A Village Health Care Handbook』David Werner, Carol Thuman, Jane Maxwell 2017
日本語タイトル:『医者がいない村の健康ケアハンドブック』デビッド・ワーナー、キャロル・スーマン、ジェーン・マクスウェル 2017
目次:
- はじめに / Introduction
- この新版について / Note about this New Edition
- 村落保健ワーカーへの言葉 / Words to the Village Health Worker
- 保健ニーズと人間のニーズ / Health Needs and Human Needs
- 保健ケアに関連する多くのこと / Many Thing Relate to Health Care
- あなたのコミュニティをよく見ること / Take a Good Look at Your Community
- ニーズを満たすための地域資源の活用 / Using Local Resources to Meet Needs
- 何をすべきか、どこから始めるかを決めること / Deciding What to Do and Where to Begin
- 新しいアイデアを試すこと / Trying a New Idea
- 人と土地のバランス / A Balance Between People and Land
- 予防と治療のバランス / A Balance Between Prevention and Treatment
- 医薬品の賢明で限定された使用 / Sensible and Limited Use of Medicines
- 進捗状況の把握 / Finding Out What Progress Has Been Made
- 共に教え、共に学ぶ / Teaching and Learning Together
- 指導のためのツール / Tools for Teaching
- 本書の最善の活用法 / Making the Best Use of This Book
- 第1章 家庭療法と一般的な信念 / Home Cures and Popular Beliefs
- 第2章 混同されやすい病気 / Sicknesses That Are Often Confused
- 第3章 病人の診察方法 / How to Examine a Sick Person
- 第4章 病人の世話の方法 / How to Take Care of a Sick Person
- 第5章 薬を使わない治療 / Healing Without Medicines
- 第6章 近代医薬品の正しい使い方と誤った使い方 / Right and Wrong Use of Modern Medicines
- 第7章 抗生物質:その性質と使用方法 / Antibiotics: What They Are and How to Use Them
- 第8章 薬の計量と与え方 / How to Measure and Give Medicine
- 第9章 注射の指示と注意事項 / Instructions and Precautions for Injections
- 第10章 応急手当 / First Aid
- 第11章 栄養:健康のために何を食べるか / Nutrition: What to Eat to Be Healthy
- 第12章 予防:多くの病気を回避する方法 / Prevention: How to Avoid Many Sicknesses
- 第13章 いくつかの非常に一般的な病気 / Some Very Common Sicknesses
- 第14章 特別な医療が必要な重篤な病気 / Serious Illnesses That Need Special Medical Attention
- 第15章 皮膚の問題 / Skin Problems
- 第16章 目 / The Eyes
- 第17章 歯、歯茎、口 / The Teeth, Gums, and Mouth
- 第18章 泌尿器系と生殖器 / The Urinary System and the Genitals
- 第19章 母親と助産師のための情報 / Information for Mothers and Midwives
- 第20章 家族計画—望む数の子供を持つこと / Family Planning—Having the Number of Children You Want
- 第21章 子供の健康と病気 / Health and Sicknesses of Children
- 第22章 高齢者の健康と病気 / Health and Sicknesses of Older People
- 第23章 医薬品キット / The Medicine Kit
- グリーンページ—医薬品の用途、用量、注意事項 / The Green Pages—The Uses, Dosage, and Precautions for Medicines
- 追加情報 / Additional Information
- 用語集—難しい言葉の説明 / Vocabulary—Explaining Difcult Words
- 教材の入手先 / Addresses for Teaching Materials
- 索引 / Index
本書の概要:
短い解説:
本書『Where There Is No Doctor』は、医療アクセスが限られた地域(医者がいない村)の住民、コミュニティヘルスワーカー、一般家庭を主な対象とした、包括的な初级医療ケアの実践ハンドブックである。その目的は、専門家に依存しすぎない「 informed self-care (情報に基づく自己ケア)」を促進し、地域住民自身が常見する疾病の予防、識別、初期対応を行えるようになることにある。具体的には、健康診察の方法、一般的な病気とその家庭での手当て、栄養と衛生、医薬品(特に抗生物質や鎮痛剤)の安全な使用法、応急処置、妊娠・出産ケア、家族計画など、多岐にわたるトピックを平易な言葉と豊富なイラストで解説する。特に、地域の伝統的知識や資源を尊重しつつ、近代医学の知見をどう活用するかに重点を置いている。保健医療の知識は一部の専門家の独占物ではなく、すべての人の共有財産であるという信念が根底に流れている。
各章の要約
はじめに
本書が書かれた背景と哲学が述べられている。保健医療はすべての人の権利であると同時に責任でもあるとし、専門医療機関が遠く離れた地域であっても、明確で簡潔な情報があれば人々は自ら大多数の健康問題を予防し治療できると論じる。本書はメキシコの山村での経験に基づいており、80以上の言語に翻訳され、100カ国以上で利用されている。読者は自身の限界を知り、必要に応じて専門家の助けを求めることの重要性も強調されている。
この新版について
2017年改訂版では、科学的知見の更新に基づき情報が追加・修正されたことが説明されている。栄養アドバイス(エネルギー食の重要性)、下痢時の経口補水療法(糖質ベースより穀物ベースが有効)、医療器具の滅菌(HIV感染予防のため)、蚊が媒介する病気、鎌状赤血球症、避妊インプラントなど、新たな項目が盛り込まれている。また、抗生物質耐性の問題や、農薬の誤用、薬物乱用、安全でない中絶などの社会問題にも対応を促している。
村落保健ワーカーへの言葉
村落保健ワーカー(コミュニティで保健活動をリードする人)の心構えと活動指針が詳述されている。単なる治療者ではなく、教育者であり、地域の変革を促す触媒としての役割が強調される。具体的には、①親切であること、②知識を共有すること、③地域の伝統とアイデアを尊重すること、④自身の限界を知ること、⑤学び続けること、⑥教えることを実践すること、⑦仕事を楽しむこと、⑧将来を見据えること、が挙げられる。また、地域のニーズと資源を評価し、予防と治療のバランスを取り、医薬品の賢明な使用を教育し、活動の成果を評価する方法についても指南する。参加型学習や教材作りの具体的なツールや方法論(フランネルボード、ポスター、劇など)も紹介され、保健ワーカーが如何に地域を巻き込み、人々の自信と能力を引き出すかが論じられている。
第1部
第1章 家庭療法と一般的な信念
多くの地域には長年受け継がれてきた家庭療法や民間信仰がある。これらには体に良い効果を持つものもあれば、有害なもの、効果が信仰に依存するものもある。本章では、メキシコを例に、様々な家庭療法(薬用植物、骨折時の自家製ギプスなど)と民間信仰(病気の原因を witchcraft や evil eye に求める考え、太陽の落ち窪みと下痢の関係など)を紹介し、その有効性や危険性を検証する方法(複数の療法がある病気は効果が不確か、不潔または嫌悪を催す療法は有害である可能性が高いなど)を提示する。治療においては、近代医療が有効な重篤な感染症(肺炎、破傷風、結核など)では時間を浪費せず医療を求めること、また浣腸や下剤の乱用が危険であることを強調する。
第2章 混同されやすい病気
病気の原因について、医学的見地と地域の民間伝承との間で認識の違いがあることが説明される。例えば、下痢の原因を「祟り」と考えるか「感染」と考えるかといった違いである。病気は「感染性」と「非感染性」に大別され、抗生物質が有効なのは細菌が原因の感染症のみであることが強調される。また、発熱や腹痛など類似した症状を示す異なる病気(マラリア、腸チフス、肺炎など)を、地域特有の病名(例:メキシコでの “empacho”, “susto”)で一括りにすることで生じる混乱を解説する。正しい治療のためには、症状の詳細な観察と医学的診断に基づく病名の特定が不可欠であると説く。
第3章 病人の診察方法
病人を適切にケアするためには、系統立てた診察(問診と視診)が重要である。本章では、その具体的な手法を詳細に示す。問診では、最も苦痛な症状、経過、きっかけなどを尋ねる。視診では、全身状態(栄養状態、意識レベル)、体温、呼吸数と様子、脈拍数とリズム、皮膚や目の色、耳・喉・鼻・皮膚の状態、腹部の痛む場所や硬さ、筋肉や神経の状態(麻痺、痙攣、感覚の有無)などを観察する。これらの所見を「患者報告書」に記録し、医療従事者に相談する際の情報として活用する方法が示される。
第4章 病人の世話の方法
病気からの回復において、医薬品以上に重要なのが適切な看護である。病人には、静かで風通しの良い環境、十分な水分、身体の清潔、栄養価の高い食べ物が必要である。重篤な患者には、特に水分補給(脱水症状の防止)、頻回の栄養補給、体位変換(床ずれと肺炎の予防)、状態変化の観察(体温、脈拍、呼吸、排泄の記録)が不可欠である。意識不明の場合の体位や、危険な病状を示す兆候(大量出血、呼吸困難、昏迷、激しい腹痛など)のリストが提示され、これらの兆候が見られた場合は直ちに医療援助を求めるよう促している。
第5章 薬を使わない治療
多くの病気は、薬ではなく身体の自然治癒力によって治癒する。休息、栄養、清潔、そして特に「水」の正しい使用が治療の基本である。例えば、下痢には経口補水液が、発熱には水分補給と冷却が、咳には蒸気吸入が、創傷感染には洗浄や温湿布が、それぞれ薬以上に有効な場合が多い。水を沸騰させて飲むこと、下痢時に水分を絶やさないことなど、水を媒介した感染予防と治療の重要性が繰り返し強調される。薬は必要な時のみに使用すべきであるという原則が示される。
第6章 近代医薬品の正しい使い方と誤った使い方
医薬品、特に近代薬はその危険性を理解した上で、必要な時のみ正しく使用すべきであるという基本方針が示される。なかでも、 chloramphenicol (重篤な感染症以外での使用は危険)、分娩促進のための oxytocin (陣痛促進目的は危険)、不必要な注射(特に小児)、 penicillin の乱用、 gentamicin (小児の聴覚障害リスク)、危険な下痢止め、ステロイド剤の乱用など、誤用による危害が大きい薬剤がリストアップされ、具体的な警告がなされる。また、ビタミン剤や栄養剤の注射、カルシウム注射、高価な「強壮剤」の多くが無益かつ危険であること、妊婦や授乳婦、特定の病気を持つ人々への投与禁忌についても言及する。
第7章 抗生物質:その性質と使用方法
抗生物質は細菌感染症に対して極めて重要であるが、その危険性と適正使用が詳細に論じられる。ペニシリン、テトラサイクリン、エリスロマイシンなど主要な抗生物質のグループが紹介され、使用の際は①必要な場合のみ使用する、②適切な薬剤を選ぶ、③推奨用量と期間を守る、④内服で済む場合は注射を避ける、⑤アレルギー反応に注意する、などの基本原則が示される。特に、 chloramphenicol は腸チフスなど限られた重篤な疾患にのみ使用すべきであり、小児や妊婦へのテトラサイクリン投与は歯や骨の発育を妨げるため避けるべきであると警告する。抗生物質の乱用が薬剤耐性菌を生み、将来の治療を困難にするという公衆衛生上の重大な問題点も強調されている。
第8章 薬の計量と与え方
薬を安全に効果的に使用するためには、正確な計量が不可欠である。グラム(g)とミリグラム(mg)の関係、液状薬の計量に用いるミリリットル(ml)とティースプーン(5ml)の関係が説明される。成人用薬剤を小児に分割して与える方法や、薬剤を粉砕してシロップを作る方法が具体的に示される。小児への投与量は、体重や年齢に基づいて成人量の一部(例:1〜3歳は1/8)として計算する方法が紹介される。読み書きができない人への服薬指導には、太陽や月などの絵を用いた服薬指示書が有効であることが示され、その具体例が提示される。
第9章 注射の指示と注意事項
注射は内服よりも危険が大きく、必要な場合に限るべきであるという強い警告がなされる。注射が真に必要な状況(重篤な肺炎、破傷風、劇症の感染症、アレルギー性ショックなど)と、そうでない状況(ビタミン剤、ほとんどの抗生物質や鎮痛剤)が明確に区別される。注射によるリスク(不潔な針による感染症、アレルギー反応、神経損傷など)と、それを最小限にするための注意事項(器材の滅菌、注射部位、アナフィラキシー反応への備えとしてのアドレナリンの準備)が詳細に説明される。特に、ペニシリン注射によるアナフィラキシーショックの予防と対応手順が重点的に述べられている。
第10章 応急手当
一般的な救急処置の方法が体系的に解説される。出血の制御(直接圧迫法と圧迫点)、鼻血、切り傷・擦り傷の洗浄と手当て、大きな傷の閉じ方(バタフライテープと縫合)、感染症の見分け方と治療(温湿布、抗生物質)、骨折・脱臼・捻挫の対処法(副子固定、冷却と温熱)、やけどの手当て(冷却、清潔の保持、水分補給)、意識障害や呼吸停止時の対応(気道確保、人工呼吸)、熱中症、中毒、蛇やサソリの咬傷に対する処置などが網羅されている。いずれの場合も、状況の評価、初期対応、そして必要に応じて速やかに医療機関へ搬送するという流れが強調される。
第11章 栄養:健康のために何を食べるか
良好な健康の維持における栄養の重要性を説く。栄養不良(マラスムス、クワシオルコル)の徴候と、それが感染症に対する抵抗力を著しく低下させることを説明する。健康的な食生活の基本として、「主食」(エネルギー源)に「補助食品」(高エネルギー食品、体作り食品、保護食品)を組み合わせる概念を紹介する。経済的制約の中で如何に栄養を改善するかについて、母乳栄養の推奨、卵、レバー、豆類、ダークグリーンの葉野菜、油の活用など、具体的で実践的なアドバイスが数多く示される。ビタミン剤よりも食品からの摂取を優先すべきこと、そして下痢や発熱時の子どもへの食事制限が有害であることなど、地域にありがちな誤った栄養觀念にも言及する。
第12章 予防:多くの病気を回避する方法
病気の予防は治療に勝るという観点から、清潔(衛生)と予防接種の重要性が詳細に論じられる。下痢や寄生虫症が「糞口感染」で広がるメカニズムを解説し、それを断ち切るための個人衛生(手洗い、入浴)、家庭内衛生(動物の管理、掃除)、公衆衛生(適切なごみ処理、水源の保護、トイレの建設と使用)の基本原則を示す。回虫、鉤虫、条虫などの寄生虫や、アメーバ、ジアルジア、住血吸虫の生活環と、それに基づいた効果的な予防策が説明される。さらに、予防接種(DPT、ポリオ、BCG、はしかなど)が命を救う確実な手段であることが強調され、定期接種のスケジュールが提示される。最後に、健康に有害な習慣(アルコールの過剰摂取、喫煙、清涼飲料水の多用)にも言及し、共同体全体での健康づくりの必要性を訴える。
第13章 いくつかの非常に一般的な病気
この章では、地域社会で頻繁に遭遇する一般的な疾患について包括的に解説している。脱水症は下痢や嘔吐に伴って急速に進行し、特に小児では生命を脅かす危険性がある。経口補水液の適切な調合と早期投与が重要である。下痢と赤痢については、栄養不良、衛生状態、細菌やウイルス感染など多様な原因を分析し、基本的な治療方針として水分補給と栄養維持を優先すべきとしている。呼吸器疾患では、風邪から肺炎に至るまで、症状の見極めと段階的な対応方法を詳細に説明する。著者は「これらの一般的な疾患に対する正しい知識と初期対応が、重症化を防ぎ、医療資源の適切な配分につながる」と強調している。
第14章 特別な医療が必要な重篤な病気
専門的な医療介入を必要とする重篤な疾患に焦点を当てている。結核は持続性の咳嗽と体重減少が特徴で、適切な抗結核薬の長期服用が治療の成否を分ける。破傷風は創傷感染から発症し、筋硬直と痙攣を主症状とし、予防にはワクチン接種が不可欠である。マラリアは蚊媒介性の疾患で、迅速な診断と抗マラリア薬の投与が予後を決定する。これらの疾患は、適切な医療アクセスが限られた環境では特に致命的となる危険性が高く、早期発見と専門医療機関への速やかな紹介の重要性が繰り返し述べられている。
第15章 皮膚の問題
皮膚疾患を病因別に分類し、それぞれに対する実践的な治療法を提示している。細菌感染には温湿布と抗生物質、真菌感染には抗真菌剤、アレルギー性皮膚炎には冷湿布とステロイド外用薬といった具合に、病態に応じた適切な治療法を詳細に説明する。特に疥癬や白癬などの伝染性皮膚疾患については、集団感染を防ぐための予防策と早期治療の重要性を強調している。著者は「皮膚の健康状態は全身の健康状態を反映するため、皮膚疾患の適切な管理が全体の健康維持につながる」と指摘する。
第16章 目
眼科疾患の診断と治療について、詳細な図解を交えて解説している。感染性結膜炎から白内障、緑内障などの重篤な疾患まで、幅広い眼疾患をカバーする。トラコーマやビタミンA欠乏症による角膜障害など、予防可能な失明の原因について特に重点を置き、その予防策と早期発見の重要性を訴える。著者は「目の疾患は迅速な対応が視力予後を決定するため、初期症状を見逃さないことが極めて重要である」と強調している。
第17章 歯、歯茎、口
口腔衛生の重要性と、一般的な歯科疾患の予防・治療法について詳述している。齲蝕(虫歯)と歯周病の病因を説明し、日常的な歯磨きと定期的な歯科検診の必要性を強調する。口腔内の感染症や前癌病変の早期発見についても言及し、全身の健康と口腔衛生の密接な関係を指摘する。著者は「適切な口腔衛生は、単に歯を守るだけでなく、全身の感染症予防にも寄与する」と述べ、包括的な健康管理の一環としての口腔ケアの重要性を説いている。
第18章 尿路系と性器
尿路感染症は解剖学的特徴から女性に多く、適切な水分摂取と抗生物質による治療が必要である。性感染症では、淋病や梅毒などの古典的疾患から現代的な問題までを網羅的に扱う。これらの疾患は無症状のことも多いが、不妊や重篤な合併症を引き起こす危険性があるため、早期発見とパートナー同時治療の重要性を強調する。予防策としてはコンドームの使用が最も効果的であり、性教育の重要性も合わせて指摘している。泌尿器系の疾患全般にわたって、生活習慣の改善と定期的な健康チェックの必要性が述べられている。
第19章 母親と助産師のための情報
妊娠から出産、産後までの一連の過程を詳細に解説。妊娠中の栄養管理、定期健診の重要性、出産準備から分娩時の対応までを体系的に説明する。特に高危険妊娠の早期発見と適切な医療機関への紹介の必要性を強調。新生児のケアについては、母乳栄養の開始と継続、へその緒の管理、予防接種などの基本事項を具体的に示す。産後の母親の健康管理にも言及し、育児と母親の健康維持の両立の重要性を訴えている。伝統的な知恵と現代医学の調和の必要性が随所に感じられる内容である。
第20章 家族計画
妊娠のタイミングと出産数を計画的にコントロールすることの重要性を、母子の健康面から詳細に論じている。各種避妊法の効果、利点・欠点、適応を客観的に比較し、個人の状況に合わせた方法選択の必要性を強調する。自然な方法から医療的介入を要する方法まで、多様な選択肢を提示している。特に、男女双方の理解と協力が家族計画の成功に不可欠である点を繰り返し指摘する。地域社会における性と生殖に関する健康サービスの整備と、正確な情報提供の重要性が結論として述べられている。
第21章 子どもの健康と病気
小児期特有の健康問題を発達段階に応じて詳細に分析。栄養不良、感染症、先天異常など、多様な健康課題に対して、予防、早期発見、治療の観点から対応策を提示する。成長モニタリングの重要性を強調し、具体的な発達評価方法を紹介。予防接種の意義とスケジュール、一般的な小児疾患の家庭での対応を具体的に説明する。特に、子どもの健康問題は急速に悪化する可能性があるため、保護者の観察力と迅速な対応が重要であると指摘。子どもの健全な発達には、家庭と地域全体での支援体制が不可欠であると結論づけている。
第22章 高齢者の健康と病気
高齢者に多く見られる健康問題の予防と治療について論じている。視力の衰え(老眼、緑内障、白内障)、体力・食欲の減退による衰弱、足のむくみ、慢性の足の潰瘍、排尿困難、慢性咳嗽、関節炎(リウマチ)など、他の章で詳細が説明されている問題を要約して挙げる。さらに、高齢期に特に重要な心臓病(胸痛、呼吸困難、足のむくみなどが症状)と脳卒中(突然の意識障害、片側麻痺などが症状)について、その症状、治療、予防(健康的な生活習慣、高血圧管理)を詳述する。その他、聴力損失、不眠症、肝硬変、胆嚢疾患など加齢に伴い頻度が増す病気についても解説する。最後に、死の受容について、残された時間を愛する人と共に過ごすことの重要性を説き、医療者や家族の心構えに言及する。
第23章 薬箱
家庭用および村落用の薬箱を準備し、管理するための具体的な指針を提供する。緊急時や日常的な健康問題に対処するために、各家庭と共同体が備えておくべき医療資材と薬剤のリストを掲載する。家庭用薬箱には、創傷手当、細菌感染症、発熱、疼痛、貧血、疥癬など一般的な問題に対処するための最低限の物品と薬が含まれる。村落用薬箱はより多くの人を対象とし、注射器、カテーテル、弾性包帯などの追加物品と、より重篤な感染症、喘息、アレルギー反応、マラリア、蛇咬傷などに対する追加薬剤を備える。薬箱の管理においては、子供の手の届かない清潔で涼しい場所に保管し、有効期限を確認し、在庫を切らさないことが重要である。薬局の店主や薬剤師に対しては、適切な薬の販売と顧客への助言を通じて地域の健康増進に貢献するよう呼びかける。
緑色ページ:薬剤の使用法、用量、注意事項
このセクションでは、抗生物質(ペニシリン、テトラサイクリンなど)、抗マラリア薬(アルテミシニン系併用療法など)、駆虫薬、鎮痛剤(アスピリン、イブプロフェンなど)、胃腸薬、喘息治療薬(吸入器など)、抗ヒスタミン薬、抗毒素(抗蛇毒血清など)、抗けいれん薬、家族計画の方法(経口避妊薬、コンドーム、IUDなど)、HIVの抗レトロウイルス療法(ART)など、多岐にわたる薬剤と治療法について、体系的に情報を整理している。各薬剤について、具体的な用量計算方法、投与経路、他の薬剤との相互作用、妊婦や子どもへの投与の可否など、実践的な注意点が詳細に記されている。薬剤の適正使用と、安価で効果的なジェネリック医薬品の選択が繰り返し強調される。
追加情報:HIVとエイズ
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)とエイズ(後天性免疫不全症候群)について説明する。HIVは感染者の血液、精液、膣分泌液、母乳を介して感染し、特に無防備な性行為、汚染された注射器の共有、母子感染などが主な経路である。エイズを発症すると、免疫機能が著しく低下し、体重減少、長期の下痢や発熱、持続性の咳、カンジダ症など、様々な感染症や合併症を引き起こす。治療法として、抗レトロウイルス療法(ART)が感染者の健康維持と寿命の延長、感染予防に有効であることが述べられる。予防策としては、コンドームの使用、清潔な注射器の使用、輸血血液の検査、曝露後予防投与(PEP)などが挙げられる。エイズ患者へのケアにおいては、尊厳を持った支援と偏見のない対応の重要性が説かれる。
性器の病気
性器にできる主な病気として、尖圭コンジローマ(ウィルス性のイボ)、性器ヘルペス(痛みを伴う水疱や潰瘍)、軟性下疳(柔らかく痛みを伴う潰瘍)を取り上げる。これらの病気は性的接触により感染し、HIV感染のリスクを高める可能性がある。各病気の見分け方(症状の特徴)と治療法(外用薬や内服薬)が説明される。すべての症例において、コンドームの使用が感染予防に有効であることが強調される。特に性器ヘルペスは完全な治癒が難しく、再発を繰り返すことがある点が指摘される。
包茎切除と切除術
男児の包皮切除(割礼)と、女児の性器の一部を切除する慣習(女性性器切除)について論じる。男児の包皮切除は、清潔を保ちやすくするなどの理由で行われることがあるが、医学的には必ずしも必要ではない。一方、女児に対する切除術は、クリトリスなどの切除を伴うことが多く、出血、感染症、出産時の合併症など深刻な健康被害を及ぼす危険性が極めて高く、廃止すべき危険な慣習であると強く警告する。
小さく産まれた赤ちゃんの特別なケア
低出生体重児(2.5kg未満)に対する特別なケアとして「カンガルーケア」を紹介する。これは、母親または父親が赤ちゃんを肌と肌が直接触れ合うように胸に抱き、体温を保ち、頻回に母乳を与える方法である。これにより、病院の保育器と同様の温かさと保護を提供できる。この方法は、母子の絆を深め、感染症から赤ちゃんを守り、成長を促進する効果がある。
その他の病気と健康問題
その他の重要な健康問題として、リーシュマニア症(皮膚や内臓に潰瘍を形成する寄生虫症)、ギニア虫症(皮膚下に長い寄生虫が寄生する病気)、低体温症や凍傷などの寒冷による緊急事態、血圧の測定方法、農薬中毒、安全でない中絶による死亡の予防、薬物乱用と依存症について簡潔に解説する。それぞれの問題について、症状、応急手当、治療の基本、そして根本的な原因(貧困、不公平、教育不足など)への対処の重要性が示唆される。
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