
英語タイトル:
When Technology Fails:A Manual for Self-Reliance, Sustainability, and Surviving the Long Emergency– Matthew Stein [2008]
日本語タイトル:
『テクノロジーが失敗するとき:自給自足、持続可能性、そして長期的な緊急事態を生き抜くためのマニュアル』 – マシュー・スタイン [2008]
目次
- 第1章 自給自足への招待 / An Introduction to Self-Reliance
- 第2章 現在の傾向、未来の可能性 / Present Trends, Possible Futures
- 第3章 備品と準備 / Supplies and Preparations
- 第4章 生存のための緊急措置 / Emergency Measures for Survival
- 第5章 水 / Water
- 第6章 食料:栽培、採集、狩猟、貯蔵 / Food:Growing, Foraging, Hunting, and Storing
- 第7章 避難所と建築物 / Shelter and Buildings
- 第8章 応急処置 / First Aid
- 第9章 ハイテク医療が機能しないとき / When High-Tech Medicine Fails
- 第10章 衣類と繊維 / Clothing and Textiles
- 第11章 エネルギー、熱、動力 / Energy, Heat, and Power
- 第12章 金属加工 / Metalworking
- 第13章 道具と容器 / Utensils and Storage
- 第14章 それほど近代的でない化学によるより良い生活 / Better Living Through Not-So-Modern Chemistry
- 第15章 工学、機械、材料 / Engineering, Machines, and Materials
- 第16章 持続可能性への移行 / Making the Shift to Sustainability
本書の概要
短い解説:
本書は、気候変動、ピークオイル、テロ、パンデミックなど、現代社会が直面する複合的な危機に備え、個人と家族が自給自足と持続可能性を達成するための実践的な知識と技術を提供する、緊急時対応とローテクノロジー生活のための包括的なマニュアルである。
著者について:
著者のマシュー・スタインはMITを卒業したエンジニアであり、グリーンビルダーとしても活動する。自身の経験と広範な調査に基づき、現代のハイテク社会の脆弱性を鋭く指摘し、それに対抗するための実践的なローテクノロジーと備えの方法を体系的に解説する。単なるサバイバル技術の羅列ではなく、持続可能な社会への移行という大きなビジョンを持って本書を執筆している。
テーマ解説
本書は、技術への過度な依存がもたらす社会の脆弱性を認識し、個人レベルで可能な「備え」と「自給自足のスキル」を獲得することで、長期的な緊急事態に主体的かつ回復力を持って対処するためのロードマップを提供する。
キーワード解説
- ピークオイル (Peak Oil):世界の石油生産量がピークに達し、以後は減少に転じるという概念。現代経済の基盤を揺るがす主要な脅威として位置づけられる。
- ロングエマージェンシー (The Long Emergency):気候変動、資源枯渇、経済不安などが収束し、数十年にわたって続くであろう危機的状況を指す著者の造語。
- 自給自足 (Self-Reliance):外部の中央集権的なシステム(電気、水道、物流など)に依存せず、自分自身やコミュニティの力で必要なものを賄う能力。
- グリーンビルディング (Green Building):環境への影響を最小限に抑え、エネルギー効率が高く、健康的な住環境を提供する建築手法。パッシブソーラー設計やストローベイル建築などが含まれる。
- 持続可能性 (Sustainability):将来の世代のニーズを損なうことなく、現在のニーズを満たす能力。本書では、生態学的な限界を認識したライフスタイルと社会システムの構築が強調される。
3分要約
本書『When Technology Fails』は、現代社会が石油の生産ピーク(ピークオイル)、気候変動による異常気象、パンデミック、テロリズムといった複合的な危機に直面しているという認識から出発する。著者のマシュー・スタインは、これらの脅威がもたらす「長期的な緊急事態(ロングエマージェンシー)」に備えるためには、個人と家族が自給自足と回復力を身につけることが不可欠だと論じる。
本書はまず、現代社会がいかに複雑で脆弱な技術システムに依存しているかを、過去の大規模停電やハリケーン・カトリーナなどの事例を挙げて明らかにする。続いて、世界の人口増加、森林破壊、海洋資源の枯渇といった「エコ脅威」と、石油生産のピークアウトが世界経済と食料生産に与える影響を詳細に分析する。これらの分析を通じて、技術への過信がもはや通用しない時代における「備え」の必要性を説く。
具体的な備えとして、まずは72時間分の「グラバンドラン」キットの内容や長期保存可能な食料の計算方法など、短期的な災害への準備をリストアップする。さらに、火起こし、水の確保、簡易シェルターの建設といった野外での緊急サバイバル技術から、より長期的な視点での自給自足のための基礎スキルへと展開する。
中盤以降では、生活の基盤を支えるための具体的な技術を詳細に解説する。安全な飲料水の確保(ろ過、煮沸、化学処理)、持続可能な農業(バイオインテンシブ農法、コンパニオンプランツ)、自然素材を用いた住宅建設(ストローベイル、ラムドアース)、薪ストーブや太陽光発電などの再生可能エネルギー、そして高次医療が受けられない状況を想定した代替医療(ハーブ療法、ホメオパシー、断食)まで、その範囲は多岐にわたる。
最終章では、個人の備えを超えて、社会全体として持続可能性へ移行するための戦略を提示する。著者は、無制限の成長を前提とする現在の経済システムを批判し、「ゆりかごからゆりかご」や「ザ・ナチュラル・ステップ」といった持続可能な社会のためのフレームワークを紹介する。また、読者が個人レベルでできる具体的な行動(省エネ、地元産品の購入、政治参加など)を挙げ、楽観的な未来を築くための希望と指針を提供する。本書は単なるサバイバルマニュアルではなく、個人と社会がより強靭で持続可能な未来を創造するための、一種の設計図なのである。
各章の要約
第1章 自給自足への招待
この章では、大規模停電や自然災害の事例を引きながら、現代のハイテク社会がいかに脆弱であるかを示す。著者は、短期的な災害から長期的な社会崩壊まで、あらゆる不測の事態に備えるために本書が書かれたと述べる。そして、ただ怖がるのではなく、知識と準備によって恐怖を軽減し、自ら行動を起こすことの重要性を説く。また、本書が単なるサバイバルガイドではなく、持続可能な技術やライフスタイルへの移行を促進するためのツールでもあると強調する。
第2章 現在の傾向、未来の可能性
本書の基盤となる章であり、世界が直面する主要な脅威(エコ脅威、ピークオイル、バイオ脅威、テロ脅威)を詳細に分析する。特に、気候変動、森林破壊、海洋資源の枯渇などの「エコ脅威」と、世界経済の基盤を揺るがす「ピークオイル」が中心的なテーマである。システム思考の概念を用いて、これらの問題が複雑に絡み合い、地球の「キャリングキャパシティ」を超えた「オーバーシュート」状態にあることを解説し、このままビジネスアズユーシュアルを続ければ社会の「崩壊」は避けられないと警告する。
第3章 備品と準備
この章は、読者が実際に備えを始めるための実践的なガイドである。まず、72時間用の「グラバンドラン」サバイバルキットやファーストエイドキットの具体的なチェックリストを提示する。地震対策や長期的な食料備蓄の計画についても詳しく解説し、1年間の食料必要量の計算方法や、小麦や豆類などの長期保存に適した食品の選び方を紹介する。また、テント、寝袋、ストーブなどのキャンプ用品や、銃器の選択肢についても触れている。
第4章 生存のための緊急措置
技術がまったく使えない状況を想定した、原始的な生存技術を解説する。まず、パニックを防ぎ、直感を活用するなど、「サバイバー・パーソナリティ」の重要性を説く。その後、マッチ、フリント&スチール、弓と錐などによる火おこし方法、毒性テストを含む野生植物の見分け方、昆虫食、ロッジやスノーケイブなどのシェルター建設技術を紹介する。さらに、植物繊維からのロープ作りや、石や骨を使った簡単な道具の製作方法、そして核災害時の生存戦略についても簡潔にまとめている。
第5章 水
水の重要性と、緊急時における確保・浄化方法を詳細に解説する。まず、災害時に浴槽や給湯器から水を確保する方法を説明する。次に、煮沸消毒、携帯用フィルター(カタディン、MSRなど)、UV殺菌(ステリペン)、化学処理(ヨウ素、次亜塩素酸)など、様々な水処理技術の長所と短所を比較し、著者の推奨製品を紹介する。また、低技術での方法として、砂フィルターや太陽光消毒(SODIS)、太陽蒸留器の作り方も説明する。井戸の掘り方や水源の保護についての基本的な知識も提供する。
第6章 食料:栽培、採集、狩猟、貯蔵
世界の人口増加と食料生産の現状を踏まえ、自給自足のための食料戦略を多角的に提示する。持続可能な農業手法として、ジョン・ジーボンズの「バイオインテンシブ農法」とパーマカルチャーの原則を詳しく解説する。家庭で簡単にできるスプラウト(もやし)の作り方、一般的な野生の食用植物(タンポポ、カタバミなど)と有毒植物の見分け方を紹介する。さらに、ルートセラーや乾燥、燻製などによる食品保存技術、バターやチーズの自家製法、そして弓矢や罠を使った狩猟の基礎についても説明する。
第7章 避難所と建築物
環境負荷が低く、エネルギー効率の高い「グリーンビルディング」の概念と具体的な工法を紹介する。ストローベイル(藁俵)建築、ラムドアース(版築)、アドビ、コブなどの土系建築から、断熱型枠(ICF)、構造用断熱パネル(SIP)などの現代的な手法まで解説する。パッシブソーラー設計の原則や、カビの問題を防ぐための建築上のヒントも提供する。また、地震や山火事に対する住宅の耐性を高める方法についても言及し、ログキャビンやティピーなどの伝統的なローテク構造物についても簡単に触れる。
第8章 応急処置
救助者の安全確認から始まり、応急処置のABC(気道、呼吸、循環)の評価と管理方法を詳細に説明する。心肺蘇生法(CPR)の手順、出血のコントロール、異なる種類の傷(切創、刺創など)の手当て、骨折や脱臼の固定と応急処置、ショック症状の見極めと治療法を解説する。さらに、熱中症や熱疲労、動物や昆虫の咬傷・刺傷、異物が目に入った場合の対処法を説明する。また、負傷者の安全な搬送方法や、緊急時の出産対応についても簡潔にまとめている。
第9章 ハイテク医療が機能しないとき
現代の高度な医療が受けられない状況に備え、代替医療とホリスティックな癒しの方法を探求する。コリジナルシルバーの生成と使用方法、エキナセアやニンニクなどのハーブ療法、便秘解消や肝臓機能改善のための浣腸や断食、そしてホメオパシーの原理と実践を解説する。特に、ハルダ・クラーク博士のパラサイトクレンズなどの強力なハーブ療法を詳細に紹介する。また、電磁波(EMF)の健康への影響について警告し、祈りや催眠、 Visualization(イメージ療法)といった心身の癒しの力についても論じる。
第10章 衣類と繊維
動物の皮や植物繊維から衣類を作る、伝統的な繊維技術を解説する。まず、羊毛や麻などの天然繊維の準備(梳き、梳毛)から、手紡ぎ、機織り、編み物の基本を説明する。特に、動物の皮からブレインタンニング(脳なめし)によって柔らかいバックスキンを作るプロセスを詳細に説明する。また、木の樹皮を使った鞣し(タンニンなめし)によるレザー作りや、衣服のパターン製作、靴(モカシンなど)の作り方についても触れている。
第11章 エネルギー、熱、動力
石油依存から再生可能エネルギーへの移行を提唱し、実際のシステム設計の基礎を提供する。まず、「ネガワット」(省エネ)の概念の重要性を強調し、太陽光発電、風力発電、小水力発電の特徴、利点、欠点を比較する。バッテリー、インバーター、バックアップ発電機などの主要コンポーネントの役割と選び方を説明し、システムの規模を決定するための負荷計算方法をステップバイステップで示す。さらに、太陽熱温水器や薪ストーブ、燃料電池の仕組みと応用についても解説する。
第12章 金属加工
金属加工の基本的な4つのプロセス(鋳造、鍛造、機械加工、板金)を紹介し、特に自家製の装置で可能な鋳造と鍛造に焦点を当てる。小さなキュポラ炉や木炭炉を使った鋳造方法を、型砂や中子の作り方と共に解説する。また、鍛冶仕事の基礎と、鋼の熱処理(焼き入れ、焼き戻し、焼きなまし、浸炭)の方法を説明する。温度の目安を色で示すチャートも提供し、読者が自分で道具や部品を製作するための基礎知識を与える。
第13章 道具と容器
焼き出しによる木製のカップやボウルの作り方から始まり、籠編みの基礎(材料、スポーク、綾織り)、ヒョウタンの栽培と加工(乾燥、種取り、密封)、そして素焼きの陶器作りを解説する。粘土の選び方と準備、ピンチポット、コイルポット、スラブポットといった基本的な成形技法を説明する。さらに、素焼きの方法や、素焼き陶器に防水性を持たせる伝統的な技法についても触れている。
第14章 それほど近代的でない化学によるより良い生活
石鹸、キャンドル、アルコール、酢、接着剤、植物油など、日常生活に欠かせない品々を自家製するための「ローテク」な化学レシピを提供する。灰汁(アク)を使った鹸化反応による石鹸の製造方法、獣脂や蜜蝋を使ったろうそくの作り方を説明する。穀物の発芽(麦芽化)から発酵、蒸留までのアルコール製造工程を詳細に解説し、酢の生成や、松ヤニや皮膠(ひかわ)などの天然接着剤の作り方も紹介する。最後に、オリーブオイルの自家製法にも触れる。
第15章 工学、機械、材料
読者が複雑な機械や構造物を設計・理解するための、基礎的な工学原理を解説する。力と静力学の基本概念(力のベクトル、モーメント)を説明し、材料力学における応力、ひずみ、曲げモーメントの考え方を紹介する。梁の強度を計算するための簡単な公式や、流体の流れにおける圧力損失の見積もり方法を示す。また、一般的な材料の特性表や、三角法、対数などの実用的な数学の基礎を提供し、英語単位とメートル単位の換算表も掲載する。
第16章 持続可能性への移行
最後の章では、個人の備えを超え、社会システム全体を持続可能なものへと変革する必要性を説く。著者は、悲観的な現状認識にとどまらず、ドイツのフィードインタリフ(FIT)政策やブラジルのクリチバ市の都市計画など、世界各地の積極的な成功事例を紹介する。また、フリー市場経済の限界を「コモンズの悲劇」の概念を用いて批判し、「ゆりかごからゆりかご」や「ザ・ナチュラル・ステップ」といった持続可能な社会のためのデザイン原則を解説する。最後に、読者が個人レベルで実践できる具体的な行動(省エネ、地元消費、政治参加など)をリストアップし、持続可能な未来を創造するための希望と責任を訴える。
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