書籍要約『資本の巨人たち:集中した権力と人類の危機』ピーター・フィリップス 2024年

SDGs 環境主義WW3・核戦争トランスナショナル資本家階級(TCC)・資本主義

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『Titans of Capital:Concentrated Power and the Crisis of Humanity』Peter Phillips (2024)

目次

  • 序文 / Foreword
  • 序章 / Introduction
  • 第1章 資本の巨人たち:集中するグローバルエリートが世界の富を管理する / Titans of Capital:Concentrated Global Elites Manage World Wealth
  • 第2章 世界資本を支配するのは誰か? / Who Controls World Capital?
  • 第3章 世界経済フォーラム:資本主義の救世主、そして気候危機の利益追求者 / The World Economic Forum:Saviors of Capitalism—and Climate-Crisis Profiteers
  • 第4章 社会的に有害な投資における巨人たち:タバコ、アルコール、プラスチック、銃器、ギャンブル、民間刑務所 / Titans in Socially Harmful Investments:Tobacco, Alcohol, Plastics, Firearms, Gambling, and Private Prisons
  • 第5章 戦争と国際武器貿易への巨人たちの投資 / Titans’ Investments in War and the International Weapons Trade
  • 第6章 中国:多極化世界の構築 / China:Building a Multipolar World
  • 第7章 ロシア:グローバル資本主義へのイデオロギー的挑戦 / Russia:An Ideological Challenge to Global Capitalism
  • 第8章 巨人たちの破綻:より良い世界の構築 / Crash of the Titans:Building a Better World
  • 謝辞 / Acknowledgments
  • 付録:グローバル権力エリートへの手紙(2018年) / Appendix:2018 Letter to the Global Power Elite

本書の概要

短い解説:

本書は、世界の富の大部分を管理する10大資産運用会社の役員117名(「タイタン」)に焦点を当て、彼らが支配する約50兆ドルの資本が、不平等の拡大、環境破壊、戦争など地球規模の危機にどのように関与しているかを明らかにする。超富裕層(世界人口の上位0.05%)に富が集中するメカニズムとその世界的影響を批判的に分析し、変革の必要性を訴える。

著者について:

著者ピーター・フィリップスは政治社会学の名誉教授(ソノマ州立大学)であり、メディア分析プロジェクト「プロジェクト検閲」の元ディレクター。前著『Giants:The Global Power Elite』(2018年)に続き、グローバル資本の集中と権力エリートのネットワークを追跡する。本書では、金融エリートの意思決定が人類の生存を脅かす構造的問題を浮き彫りにする。

テーマ解説

  • 主要テーマ:超富裕層による資本の極度の集中と、それがもたらす人類存続の危機
  • 新規性:世界の資産運用上位10社の役員117名(タイタン)を特定し、その人的ネットワークと投資行動を詳細に分析
  • 興味深い知見:ESG投資を標榜するタイタンたちが、環境破壊や社会的害悪をもたらす産業に巨額を投資する矛盾

キーワード解説(1~3つ)

  • タイタン:世界の資産運用上位10社の役員117名。世界の富約50兆ドルの投資判断を行うグローバル資本主義の核心
  • 超国家的資本家階級:国境を越えて結びつき、共通の利益のために行動する資本家・エリート層
  • ESG投資:環境、社会、ガバナンスに配慮した投資。タイタンたちはこれを標榜するが、実際には矛盾する投資も行う

3分要約

本書『Titans of Capital』は、世界の富の大部分を管理する10大資産運用会社の役員会を構成する117名の個人(「タイタン」)に焦点を当てる。彼らは約50兆ドルという莫大な資本の投資判断を行い、世界の超富裕層(世界人口の上位0.05%)の利益を代行している。2018年の前著『Giants』で分析した17社から、富の管理はさらに集中し、より少数の巨大企業と個人に権力が移行した。

著者は、この極度の資本集中が、拡大する経済的不平等、環境破壊、戦争の継続、民主主義の空洞化といった地球規模の危機の根本原因であると主張する。タイタンたちは世界経済フォーラムなどの場で「ステークホルダー資本主義」や「ESG投資」を掲げるが、その投資行動はしばしばこれと矛盾する。例えば、彼らは化石燃料企業、タバコ・アルコール会社、武器メーカー、ギャンブル事業、民間刑務所など、社会的・環境的に有害な産業に巨額の投資を続けている。

第1章、第2章では、トップ10社と117名のタイタンのプロフィール、人的ネットワーク、政策形成団体(外交問題評議会、ビジネス円卓会議等)への関与を詳細に分析し、彼らが形成する「超国家的資本家階級」の核心を明らかにする。

第3章では、タイタンたちの多くが参加する世界経済フォーラムの役割を考察する。WEFは気候変動や不平等といった資本主義の危機を認識し、「より良い資本主義」を標榜するが、その実態は現状維持と資本の自由な移動の保護が主目的であると批判する。

第4章、第5章では、タイタンたちの投資がもたらす具体的な害悪に着目する。タバコ、アルコール、プラスチック、銃器、ギャンブル、民間刑務所といった社会的に有害な産業、そして主要兵器メーカーや核兵器関連企業への巨額な投資は、人類の健康、安全、平和を脅かしている。

第6章、第7章では、中国とロシアへのタイタンの投資と、米国を中心とした西側との地政学的緊張を分析する。中国の経済台頭と「小康」社会の構築、ロシアへのNATO東方拡大に端を発するウクライナ戦争は、タイタンたちの投資戦略と利益に深く関連している。

最終章では、タイタンたちによる資本の集中とその投資判断が、人類の生存そのものを危機に陥れていると結論づける。著者は、この危機を回避するためには、草の根の民主主義運動を通じて富の再分配と資本の民主的管理を要求し、タイタンたちに変革を迫る必要があると訴えかける。人類の未来のためには、資本の無限の成長追求ではなく、普遍的人権と環境保護を最優先するパラダイムシフトが不可欠なのである。

各章の要約

序文

この序文では、世界の富の大部分を管理する「資本のタイタン」と呼ばれる投資運用会社とその役員117名が、人類の生存を脅かす危機を促進していると指摘する。資本家階級は「すべてを欲しがり」、金融化された経済は短期的利益を追求し、不安定さの中で繁栄する。COVID-19パンデミックやハワイ・マウイ島の火災のような危機でさえも、富裕層による富の収奪と投機の機会と化している。アフガニスタン戦争やウクライナ戦争における軍産複合体の巨大利潤と、ブラックロックのようなタイタン企業の戦後復興事業への関与は、戦争が資本にとってのビジネスであることを露わにする。著者は、環境や社会正義を求める活動家が、一般市民ではなく、本書で名指しされるような「階級的敵」であるこれらの企業と個人を直接の標的とすべきだと主張する。

序章

序章では、前著『Giants』の更新として、さらに集中が進んだ世界の資本管理の実態を提示する。2017年に資産運用額1兆ドル以上の企業は17社だったが、2022年には31社に倍増し、特に上位10社で約50兆ドルを管理する。これら10社の役員会を構成する117名が「タイタン」として分析の対象となる。本書の目的は、富が世界人口の上位0.05%に集中するメカニズム、その意思決定を行うネットワーク、そしてその結果としてもたらされる甚大な社会的害悪(不平等、貧困、環境破壊、戦争)を明らかにすることである。タイタンたちは、自身の投資判断がもたらす結果に対する責任から逃れることはできない。結論として、2018年にグローバルエリートに送った「世界人権宣言」の重要性を想起させる手紙を再掲し、変革を促す。

第1章 資本の巨人たち:集中するグローバルエリートが世界の富を管理する

この章では、「超国家的資本家階級」の概念と、その中核をなす「タイタン」の位置づけを、C. Wright Mills『パワーエリート』、Leslie Sklair、William I. Robinsonらの先行研究を参照しながら理論的に整理する。超国家的資本家階級は、国境を越えて結びつき、共通のイデオロギー(消費主義と資本の無限成長)のもとで行動する。そして、資本の過剰蓄積という問題に対処するため、危険な金融投機、戦争と軍備拡張、公共領域の民営化という3つの主要なメカニズムに依存する。その結果、富の偏在は深刻化し、オックスファムのデータを引用すれば、世界の富裕層1%が2020年以降に創出された新たな富の約3分の2を獲得している。一方で、極度の貧困に苦しむ人々は数億人に上り、貧困と不平等が原因で每日何万人もの人々が命を落としている。タイタンたちは、このような資本主義の矛盾の只中にありながら、その存続のために不可欠な資本成長の継続というジレンマに直面している。

第2章 世界資本を支配するのは誰か?

この章では、世界のトップ10資産運用会社(ブラックロック、バンガードなど)と、その役員会を構成する117名の「タイタン」の詳細なプロファイルを提示する。2017年から2022年にかけ、これら10社が管理する資産は89%増加し、約50兆ドルに達した。タイタンたちは互いに強固に結びつき、10社間での相互投資額は3200億ドルに上る。117名の社会的・経済的プロファイルを分析すると、その86%が白人、65%が男性であり、多くが米国と欧州出身である。彼らは非常に富裕で、複数の大企業の役員を兼任し、外交問題評議会、ビジネス円卓会議、ビジネス評議会などの主要な政策形成団体や、大学や文化機関の理事としても広範な影響力を持つ。中にはCIAでの経歴を持つ者もいる。彼らは資本成長の持続可能性にこだわる一方で、気候変動などの危機には「ステークホルダー資本主義」の枠組みの中で対処可能だと楽観的に捉える傾向がある。

第3章 世界経済フォーラム:資本主義の救世主、そして気候危機の利益追求者

この章では、タイタンの76%が何らかの形で関与する世界経済フォーラムの役割を分析する。WEFは、気候変動や不平等といった資本主義の多重的危機(ポリクリシス)を認識し、クラウス・シュワブの提唱する「ステークホルダー資本主義」や「ESG投資」を通じて「より良き資本主義」の実現を標榜する。これは、企業が株主だけでなく社会全体への責任も果たすべきだとする理念である。しかし、タイタンたちが運用する資本は、ESGを標榜しながらも、エクソンモービルやシェルなどの化石燃料企業に4090億ドル以上、主要石炭企業に140億ドル以上を投資し続けている。これは、気候変動に対する真の脅威となっている。タイタンたちの本質的な関心は、資本投資の保護、債務回収の保証、そして収益機会の拡大にあり、WEFはそのための危機管理メカニズムとして機能していると著者は批判する。

第4章 社会的に有害な投資における巨人たち:タバコ、アルコール、プラスチック、銃器、ギャンブル、民間刑務所

この章では、タイタンたちの投資が、ESGの「S」(社会)に明らかに反する分野に及んでいることを暴く。彼らは、健康被害や依存症を引き起こすタバコ会社に1035億ドル、アルコール会社に601億ドルを投資する。また、海洋汚染や健康リスクと関連するプラスチック製造のトップ5社に1924億ドルを投じる。さらに、米国で頻発する銃乱射事件の原因となる銃器メーカーや、中毒性のあるギャンブル事業、そして人権侵害が報告される民間刑務所会社にも巨額の資金を提供している。このような投資行動は、タイタンたちが公言する「社会的責任」や「人間の福祉」への配慮が、収益性の前では空洞化していることを示す証拠である。

第5章 戦争と国際武器貿易への巨人たちの投資

この章では、タイタンたちが死の商人とも呼べる世界の大手兵器メーカーに2656億ドルもの資本を投じていることを明らかにする。ロッキード・マーティン、レイセオン、ボーイングなどの企業は、ウクライナ戦争をはじめとする国際紛争で巨額の利益を上げており、タイタンたちはその戦争特需によって直接的に利益を得ている。さらに、人類を絶滅に導きうる核兵器の生産に関わる企業(ノースロップ・グラマン、ロッキード・マーティンなど)に対しても、タイタンは莫大な投資を行っている。核兵器禁止条約が発効しているにもかかわらず、核兵器保有国はその近代化に巨費を投じており、タイタンたちの投資はこの危険な軍拡競争を支えている。著者は、戦争と軍備拡張への投資が、不平等と飢餓を永続させ、最終的には人類文明そのものを破滅させる「道徳的破綻」であると断じる。

第6章 中国:多極化世界の構築

この章では、急速な経済成長を遂げ、数億人を極貧から脱却させた中国へのタイタンの投資を分析する。中国は「小康社会」という独自の人権基準を掲げ、国家主導の資本主義モデルを発展させてきた。その経済規模は購買力平価でみれば米国を凌ぎ、一带一路構想などで世界的な影響力を拡大している。タイタンたちは、テンセントやアリババをはじめとする中国の主要企業に295億ドル以上を投資し、中国の経済成長に深く組み込まれている。中国の指導者たちは世界経済フォーラムの場で多極化世界と国際協調を訴え、その「小康」理念はWEFの「ステークホルダー資本主義」とある程度の親和性を持つ。しかし、台湾をめぐる米中対立は先鋭化しており、米国は台湾への武器供与を通じて中国をけん制する。タイタンたちは、米中の地政学的緊張の中で、双方への投資という難しいバランスを迫られている。

第7章 ロシア:グローバル資本主義へのイデオロギー的挑戦

この章では、ウクライナ戦争を背景としたロシアと西側諸国の対立を、タイタンの投資戦略の観点から考察する。冷戦終結後、NATOの東方拡大はロシアの安全保障上の懸念を増大させ、2014年の米国支援下でのウクライナ政変と2022年のロシアの軍事侵攻へとつながった。戦争勃発後、タイタンたちはロシア企業への投資の多くを凍結または売却せざるを得なかったが、その損失は、戦争特需で価値が上昇した兵器メーカーへの投資利益によって相殺されている。米国とNATOの戦略的目的は、プリン政権を弱体化させ、ロシアを西側資本に開放することにあると著者は推測する。しかし、この戦略は核衝突という壊滅的なリスクをはらんでおり、タイタンたちは戦争の長期化と戦後復興という新たな投資機会を危険な賭けとして追い求めている。

第8章 巨人たちの破綻:より良い世界の構築

最終章では、これまでの分析を総括し、タイタンたちによる資本の集中が人類の生存危機を招いていると結論づける。彼らの投資判断は、中毒性商品、プラスチック汚染、銃器蔓延、民間刑務所の弊害、気候変動、そして核戦争のリスクにまで及んでいる。ウクライナ戦争への関与や、米国防総省の「全領域指揮統制システム」開発への巨額投資は、タイタンたちが軍事衝突と技術支配を通じて利益を拡大しようとする姿勢を示す。このような破滅的な道を回避するためには、草の根の民主主義運動の強化が不可欠である。著者は、富の再分配と資本の民主的管理を要求し、タイタンたちとその支持層に対して、人類全体の福祉と環境保護を最優先するよう根本的な変革を迫る。資本の無限の成長というパラダイムから脱却し、普遍的人権に基づく世界の構築が、今まさに求められている。


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