
日本語タイトル:『ターニングポイント:科学、社会、そして新たな文化の興隆』フリッチョフ・カプラ 1982年
英語タイトル:『The Turning Point: Science, Society, and the Rising Culture』Fritjof Capra 1982年
目次
第I部 危機と変革 – Crisis and Transformation
- 第1章 潮流の転換 – The Turning of the Tide
第II部 二つのパラダイム – The Two Paradigms
- 第2章 ニュートンの世界機械 – The Newtonian World-Machine
- 第3章 新しい物理学 – The New Physics
第III部 デカルト・ニュートン思想の影響 – The Influence of Cartesian-Newtonian Thought
- 第4章 生命の機械論的見解 – The Mechanistic View of Life
- 第5章 生物医学モデル – The Biomedical Model
- 第6章 ニュートン心理学 – Newtonian Psychology
第III部 デカルト・ニュートン思想の影響 – The Influence of Cartesian-Newtonian Thought
- 第7章 経済学の行き詰まり – The Impasse of Economics
- 第8章 成長の影の側面 – The Dark Side of Growth
第IV部 現実の新しいビジョン – The New Vision of Reality
- 第9章 生命のシステム的視点 – The Systems View of Life
- 第10章 全体性と健康 – Wholeness and Health
- 第11章 時空を超えた旅 – Journeys Beyond Space and Time
- 第12章 太陽時代への移行 – The Passage to the Solar Age
各章の要約
第1章 潮流の転換
20世紀末、人類は前例のない多次元的危機に直面している。核兵器の蓄積、環境汚染、社会病理の増加など、これらは単独の問題ではなく相互に関連した一つの危機の側面である。中国の「危機」という概念が「危険」と「機会」を表すように、現在の危機は文明の転換点を示している。トインビーの文明論、ソローキンの価値体系の循環理論に基づけば、現在は家父長制の衰退、化石燃料時代の終焉、パラダイムシフトという三つの大きな転換が同時に起こっている。この危機は破滅ではなく、新しい文化への移行の機会として捉えるべきである。
第2章 ニュートンの世界機械
16-17世紀の科学革命により、中世の有機的世界観は機械的世界観に置き換わった。コペルニクス、ガリレイ、ベーコン、デカルトらが新しい科学的方法論を確立し、ニュートンがこれを完成させた。デカルトは心身二元論を確立し、物質世界を機械として捉える概念的枠組みを提供した。ニュートンは数学的法則に基づく機械的宇宙論を完成させ、この世界観は300年間科学の基盤となった。しかし機械的自然観は自然の搾取を正当化し、女性の抑圧とも結びついた。19世紀には電磁気学や進化論により機械論の限界が明らかになったが、基本的な概念は維持され続けた。
第3章 新しい物理学
20世紀の物理学は相対性理論と量子論により、デカルト・ニュートン的世界観を根本的に変革した。アインシュタインの相対性理論は絶対的時空概念を覆し、量子論は物質の究極的実在性を否定した。原子レベルでは物質は確定的な性質を持たず、存在の「傾向」のみが確率として表現される。粒子は独立した実体ではなく、相互関連の網目として理解される。観察者の意識も現実の重要な構成要素となった。これらの発見により宇宙は機械ではなく、人間の意識を含む動的で不可分な全体として理解されるようになった。現代物理学は東洋思想との驚くべき類似性を示している。
第4章 生命の機械論的見解
生物学は17世紀以降、デカルトの機械論的生命観に基づいて発展した。生物を部品から構成される機械と見なし、還元主義的手法で生命現象を説明してきた。19世紀には細胞理論、進化論、遺伝学が確立され、20世紀には分子生物学が遺伝の分子的仕組みを解明した。DNA構造の発見と遺伝暗号の解読は生物学の大きな成果である。しかし還元主義的アプローチでは生物の統合的活動や発生、神経系の統合機能などは理解できない。生物学者は部分の詳細は知っているが、全体としての生命現象の理解は限定的である。医学を通じて、より統合的で全体論的な生命観への転換が必要となっている。
第5章 生物医学モデル
西洋医学はデカルトの機械論的身体観に基づく生物医学モデルを採用している。人体を機械と見なし、疾患をその故障として捉え、物理的・化学的介入により修復を試みる。19世紀にパスツールの細菌理論が確立され、特定の原因による特定の疾患という概念が支配的となった。20世紀の医学は分子レベルでの理解を深め、抗生物質、ワクチン、外科技術などで大きな成果を上げた。しかし機械論的アプローチは心身の統合や治癒現象を軽視し、医療費の高騰、副作用の増加、患者の非人間化などの問題を生んでいる。真の健康回復には、心、身体、環境の相互作用を考慮した全体論的医療への転換が必要である。
第6章 ニュートン心理学
心理学もデカルトの心身二元論とニュートン力学の影響を受けて発展した。19世紀の連合主義心理学、20世紀の行動主義とフロイトの精神分析は、いずれもニュートン的概念に基づいている。行動主義は意識を否定し、人間を刺激・反応の機械として扱った。スキナーは徹底した環境決定論を主張し、行動の科学的制御を提唱した。フロイトの精神分析は無意識の発見など革命的だったが、理論的枠組みはニュートン力学に準拠している。心的装置の構造、力動、経済、発生的観点はすべて古典物理学の概念を心理学に応用したものである。これらの限界を超えるには、現代物理学の知見を取り入れた新しい心理学的パラダイムが必要である。
第7章 経済学の行き詰まり
現代の経済学は機械論的世界観に深く根ざしており、経済を生態系から切り離して捉えている。経済学者たちは断片的で還元主義的なアプローチを取り、経済をより大きな生態系や社会構造の一部として理解することに失敗している。これにより、現在の経済理論は相互依存する世界の経済活動を適切に描写できない。成長への執着が生態系の破壊、社会の分裂、核戦争の危険性を高めている。経済学の概念的基盤を根本的に見直し、生態学的観点を取り入れたシステム・アプローチが必要である。
第8章 成長の影の側面
機械論的世界観の影響により、私たちの社会は技術と生産の成長に執着し、物理的・精神的に不健康な環境を作り出している。化学廃棄物による汚染、化石燃料の過度な使用、原子力発電の危険性など、無制限な成長が深刻な健康被害を生み出している。食品産業や農業における化学薬品の大量使用も健康を脅かしている。これらの問題は、バランスを欠いた価値観と機械論的思考の結果であり、根本的な価値観の転換が必要である。
第9章 生命のシステム的視点
生命のシステム的視点は、すべての現象の本質的な相互関連性と相互依存性の認識に基づいている。生物は機械ではなく、自己組織化するシステムとして理解されるべきである。システムは統合された全体であり、その性質は部分の単純な和に還元できない。生物は自己維持、自己再生、自己超越の能力を持つ。意識は複雑な生命システムに現れる特性であり、心と物質は同じ宇宙的プロセスの異なる側面として理解される。この視点は現代物理学や古代の神秘的伝統と調和している。
第10章 全体性と健康
ホリスティック(全体論的)な健康へのアプローチは、人間の有機体を相互関連する身体的・心理的・社会的側面を持つ動的システムとして見る。健康は静的な状態ではなく、継続的な動的バランスの経験である。病気は不均衡と不調和の結果であり、しばしば統合の欠如から生じる。ストレスは病気の発症において重要な役割を果たす。治療は患者の自然治癒力を支援することに焦点を当てるべきである。新しい健康管理システムは予防に重点を置き、個人の責任と社会的責任の両方を含む多次元的アプローチを必要とする。
第11章 時空を超えた旅
新しいシステム心理学は、人間の有機体を相互依存する生理学的・心理学的パターンを含む動的システムとして知覚する。ユング(Jung)の心理学は現代のシステム理論と一致し、フロイトの機械論的アプローチを超えている。人間性心理学と超個人心理学は意識のスペクトラムを探求し、自己実現と精神的成長を重視する。精神的病気は多次元的現象として理解され、治療は体験的アプローチを通じて全意識スペクトラムに対処する必要がある。新しい心理療法は治療者と患者の相互作用を重視し、自然治癒プロセスを促進する。
第12章 太陽時代への移行
システム・アプローチによる経済学は、経済を人間と社会組織からなる生きたシステムとして捉える。現在の経済問題は生態学的観点の欠如によるものである。新しい経済システムは、エネルギーやエントロピーなどの変数を用いて測定される必要がある。太陽エネルギーへの転換は技術的に可能であり、経済的にも効率的である。この移行には深い価値観の変化が必要で、競争から協力へ、拡張から保全へ、物質的獲得から内的成長への転換が求められる。現在進行中の文化的変革は、様々な社会運動の融合を通じて太陽時代への道を開いている。
