書籍『ヨーロッパの奇妙な死』ダグラス・マレー 2017年

移民問題

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日本語タイトル:ヨーロッパの奇妙な死 ダグラス・マレー 2017年

英語タイトル:The Strange Death of Europe Douglas Murray 2017

目次

  • 序論 Introduction
  • 第1章 始まり The beginning
  • 第2章 移民にハマった経緯 How we got hooked on immigration
  • 第3章 自分たちに言い聞かせた言い訳 The excuses we told ourselves
  • 第4章 「ヨーロッパへようこそ」 ‘Welcome to Europe’
  • 第5章 「我々はすべてを見た」 ‘We have seen everything’
  • 第6章 多文化主義 Multiculturalism
  • 第7章 彼らはここにいる They are here
  • 第8章 名誉なき預言者たち Prophets without honour
  • 第9章 早期警戒サイレン Early-warning sirens
  • 第10章 罪悪感の専制 The tyranny of guilt
  • 第11章 送還の偽装 The pretence of repatriation
  • 第12章 それと共に生きることを学ぶ Learning to live with it
  • 第13章 疲労 Tiredness
  • 第14章 我々はこれに縛られている We’re stuck with this
  • 第15章 反発の制御 Controlling the backlash
  • 第16章 物語が尽きた感覚 The feeling that the story has run out
  • 第17章 終わり The end
  • 第18章 あり得たかもしれないこと What might have been
  • 第19章 これから起こること What will be
  • あとがき Afterword

序論

ヨーロッパは自殺を犯している。政治指導者たちが決断し、ヨーロッパの人々がそれに従うかは別問題である。この本は、我々が知るヨーロッパ文明が自殺を犯す過程にあり、イギリスも他の西欧諸国もこの運命を避けられないと論じる。現在生きている人々の生涯の終わりまでに、ヨーロッパはもはやヨーロッパではなくなり、ヨーロッパの人々は故郷と呼べる唯一の場所を失うだろう。

第1章 始まり

2002年のイギリス国勢調査は、国の劇的な変化を示した。白人イギリス人がロンドンで少数派になり、イスラム教徒人口が倍増するという予測は「恐怖をあおる」ものとして退けられたが、2011年の調査でその通りになった。海外生まれの人口は10年間で300万人増加し、ロンドン住民の44.9%のみが「白人イギリス人」と自認した。キリスト教徒は3700万人から3300万人に減少し、イスラム教徒は150万人から270万人に増加した。この変化は一時的なニュースとして扱われ、深刻な議論は避けられた。

第2章 移民にハマった経緯

戦後ヨーロッパ各国は労働力不足を補うため「ガストアルバイター」制度で移民を受け入れた。当初は一時的な労働者として想定されたが、家族を呼び寄せ定住した。政府は移民数を常に過小評価し、統合能力を過大評価した。公衆の大多数は移民政策に反対だったが、政治家は選挙前に厳格な姿勢を示しながら実際には何も変えなかった。この偽善的な態度が数十年続き、移民は増加し続けた。メディアと政治階級は反対意見を「人種差別」として攻撃し、議論を封じ込めた。

第3章 自分たちに言い聞かせた言い訳

大規模移民の正当化として経済的利益、高齢化社会への対応、多様性の価値、グローバル化による不可避性が挙げられた。しかし経済的利益は主に移民自身にあり、福祉制度への負担は明らかだった。高齢化問題は退職年齢の引き上げなど他の解決策があり、移民も年をとる。多様性の利益は人数とともに無限に増加するものではない。「止められない」という主張も、日本や中国が示すように選択の問題である。これらの議論は結果を正当化するために後付けで作られたものであり、実際の政策決定とは無関係だった。

第4章 「ヨーロッパへようこそ」

ランペドゥーサ島は地中海を渡る移民の最初の目的地となった。2000年代から増加し、2011年のアラブの春後に急増した。イタリアは単独で負担を負い、事実上すべての到着者が欧州に留まることになった。マーレ・ノストルム作戦で救助されたが、これが密輸業者を利する結果となった。ギリシャの島々も同様の状況で、短い海路でトルコから到着する移民が急増した。2015年、メルケル首相の「Wir schaffen das」(我々はできる)宣言が欧州全体を巻き込む危機を引き起こし、数十万人が国境を徒歩で越えてドイツを目指した。

第5章 「我々はすべてを見た」

ギリシャの島々では2015年に1日8000人が到着する日もあった。地元住民は自身も難民の歴史を持ちながら寛容に対応したが、限界があった。シリア人、アフガニスタン人、エリトリア人など様々な背景の人々が到着し、それぞれ異なる事情を抱えていた。多くは真の難民だったが、偽装する者もいた。処理能力を超える数で、身元確認は困難だった。NGOが移民に助言し、制度を悪用する方法を教えていた。一度ヨーロッパに入れば事実上永住できることを皆が知っていた。これは世界で最も寛大だが持続不可能なシステムだった。

第6章 多文化主義

2010年、メルケル首相は多文化主義が「完全に失敗した」と宣言し、キャメロン、サルコジらも続いた。しかし「多文化主義」の定義は曖昧で、批判の対象も不明確だった。問題は並行社会の存在、特にイスラム教徒コミュニティによる別の法制度の要求だった。「名誉殺人」や女性器切除などの問題が表面化し、寛容の限界が議論された。しかし警告を発した人々は攻撃され、問題は隠蔽された。イスラム教徒の強い宗教的アイデンティティと世俗的ヨーロッパの価値観の衝突が明らかになったが、政治的に対処することは困難だった。

第7章 彼らはここにいる

2015年に150万人を受け入れたドイツでは統合の課題が山積した。2010年に統合失敗を認めたにも関わらず、30倍の規模で同じ実験を続けた。イスラエルの成功例とは異なり、ドイツの新住民は共通の文化的背景を持たなかった。地方自治体は独自に対応を迫られ、住民との軋轢も生じた。大半の到着者は若い男性で、その多くが真の難民ではなかった。ヨーロッパの価値観を教える授業は限定的で、根本的な価値観の違いは解決されなかった。政治家は楽観的な見通しを示したが、現実は複雑だった。

第8章 名誉なき預言者たち

オランダでピム・フォルタインは同性愛者・左派の立場からイスラムの自由主義的価値観への脅威を指摘した。彼は2002年の選挙直前に左翼活動家に暗殺された。その後テオ・ファン・ゴッホがムハンマド・ボーイェリに殺害され、アヤーン・ヒルシ・アリは身を隠すことになった。批判者は殺害され、隠れ、または国外逃亡を余儀なくされた。一方で多文化主義を推進する当局は「人種差別」の告発で反対者を黙らせた。警察と検察は「コミュニティ関係」を恐れて犯罪を隠蔽し、少女への集団性的暴行なども長年看過された。言論の自由が事実上消失していった。

第9章 早期警戒サイレン

1989年のルシュディ事件から始まり、デンマーク風刺画事件、シャルリー・エブド襲撃まで、イスラムへの批判や風刺は暴力で応えられ続けた。ヨーロッパは暗殺者の拒否権を内面化し、自己検閲するようになった。テロ攻撃後も政治家は「イスラムは平和の宗教」と繰り返し、問題の本質に向き合うことを避けた。同性愛者への攻撃、ユダヤ人への攻撃が増加したが、これらの問題を指摘する者が攻撃された。反イスラムの声は暴力か法的制裁で沈黙させられ、問題は悪化の一途をたどった。ヨーロッパは自らの価値観を守ることができなくなっていた。

第10章 罪悪感の専制

アイラン・クルディの写真が世界を動かし、ヨーロッパの罪悪感が政策を左右した。しかし湾岸諸国はシリア難民を一人も受け入れず、ヨーロッパのみが責任を負った。ヨーロッパは独特の歴史的罪悪感に苦しんでいる。植民地主義、ホロコースト、戦争の罪が世代を超えて受け継がれ、自己嫌悪の文化を生み出した。オーストラリア、アメリカ、イスラエルも同様の「原罪」を背負わされているが、他の文明は自らの過去の罪を認めない。ヨーロッパのみが最悪の瞬間で自らを判断し、他者は最良の瞬間で判断するダブルスタンダードが存在する。この罪悪感は道徳的酩酊状態を生み、政策判断を歪めている。

第11章 送還の偽装

シェンゲン協定により国境が消失したヨーロッパでは、外部国境の管理が南欧諸国に委ねられた。ダブリン規則により最初の到着国が責任を負うはずだったが、実際は機能しなかった。2015年の危機で国境が再び設置され、シェンゲンシステムは崩壊した。パリ同時テロの実行犯が移民として潜入していたことが判明し、治安への懸念が高まった。政治家は移民制限を約束したが、実際の送還は極めて少なかった。フランスでは表面的な象徴的措置(ヘッドスカーフ禁止など)で問題を糊塗しようとしたが、根本的解決には至らなかった。建前と現実の乖離が拡大していった。

第12章 それと共に生きることを学ぶ

2016年夏、ヨーロッパ各地でテロ攻撃が連続発生した。ニース、ヴュルツブルク、アンスバッハ、ルーアンで多数の犠牲者が出た。これらの攻撃者の多くは難民申請者や移民だった。同時に性的暴行事件も急増し、ケルンの大晦日事件では1200人の女性が被害を受けた。ドイツ全16州で毎日のように性的暴行が発生したが、当局は人種識別を避けるため事件を隠蔽した。被害女性の中には攻撃者を庇う者さえいた。政治家は反テロ対策に集中し、より広範な社会問題を無視した。世論調査では移民に対する否定的見解が多数を占めたが、政治的議論は制限され続けた。

第13章 疲労

ヨーロッパは歴史の重荷に疲れている(Geschichtsmüde)。宗教の衰退により、大聖堂や教会は意味を失った建造物となった。19世紀の聖書批判とダーウィンの進化論により、ヨーロッパは根本的な物語を失った。科学は謎を解いたと主張するが、人々は依然として解決されていない存在として自分自身を体験している。芸術は技術的野心と道徳的野心を失い、意味のある答えを提供できない。20世紀の政治的災害(ファシズム、共産主義)により、すべてのイデオロギーへの不信が生まれた。東欧は悲劇的な人生観を保持しているが、西欧は「豊かさと繁栄の中で眠っている」状態にある。

第14章 我々はこれに縛られている

ブリュッセルテロ後、ベルギー当局者は「ヨーロッパではまもなくイスラム教徒がキリスト教徒を上回る」と認めた。モレンベーク地区の高校生の90%がテロリストを英雄視していた。イギリスではイスラム教徒の27%がシャルリー・エブド攻撃に同情を示した。ヨーロッパ各国で若者のイスラム教徒不信が高まっているが、政治家とメディアは問題を認めようとしない。オランダ、フランス、ドイツで過半数がイスラムを否定的に見ているが、当局は反対者を攻撃し続けている。EDL(イングリッシュ・ディフェンス・リーグ)やペギーダのような抗議運動は極右として弾圧されたが、実際の極右問題は軽視された。

第15章 反発の制御

スウェーデンは最も厳格な政治的コンセンサスを持つ国として、移民政策への批判を封じ込めてきた。1993年の世論調査では63%が移民の帰国を望んだが、編集長は解雇された。2015年には人口の2%に相当する16万人以上が難民申請し、国家予算の危機を招いた。音楽フェスティバルでの集団レイプ事件が隠蔽され、犯罪統計は意図的に歪められた。しかしスウェーデン民主党が第一党になる世論調査結果が示すように、民意は変化している。メディアと政治階級の合意とは正反対の方向に世論は動いており、この乖離は持続不可能である。政治的爆発は時間の問題となっている。

第16章 物語が尽きた感覚

現代ヨーロッパは人生の目的や意味を見失っている。「私は何のためにここにいるのか」という根本的な問いに答えられない。宗教の衰退により、結婚式や葬式さえも意味を失った。科学は謎を解いたと主張するが、人々は依然として解決されていない存在として自分を体験している。人間は動物以上の存在であり、単なる消費者でもないことを直感している。イスラムに改宗する若者が増えているのは、キリスト教会が自信を失い、イスラムの批判的研究が暴力で阻止されているからである。アートは技術的・道徳的野心を失い、虚無主義が蔓延している。ウエルベックの小説が示すように、空虚な西欧文明に確信を持つイスラムが浸透していく可能性がある。

第17章 終わり

政治家たちは失敗を認めず、同じ政策を継続している。2016年も1万人以上が地中海で「救助」され、イタリアに到着した。大半はシリア人ではなくサハラ以南アフリカの若い男性だった。ギリシャのモリア難民キャンプは暴動で焼失した。ドイツでは政治家が60時間の「ドイツ的価値」講座で問題が解決すると信じている。しかし現実には統合は失敗し、並行社会が拡大している。フランス、イギリス、ドイツのユダヤ人コミュニティは脅威にさらされ、70%が宗教行事への参加を避けている。この状況で政治的爆発が起きれば、その責任は現在の政治指導者たちにある。

第18章 あり得たかもしれないこと

適切な政治的・道徳的指導力があれば異なる結果が可能だった。政府は「ヨーロッパは世界の誰でも住める場所であるべきか」という根本的問いから始めるべきだった。真の難民支援なら、出身国近隣での支援が効果的で費用も安い。オーストラリアの方式のように、域外での難民申請処理も可能だった。一時的庇護制度、強制送還の実施、統合の成功例と失敗の率直な評価が必要だった。政治的コンセンサスを広げ、「極右」のレッテルを減らし、過去への健全な態度を取り戻すべきだった。文化的価値の再確認と、宗教と世俗主義の建設的対話が求められる。

第19章 これから起こること

現在の政治的態度が続く限り、ヨーロッパは「世界の国連」のような存在になるだろう。中国、インド、ロシアが固有の特徴を保つ中、西欧のみが根本的に変質する。移民の子どもたちは移民制限に反対し、政治的変化はますます困難になる。国際問題が国内政治に直結し、外交政策も制約される。人種問題への執着が拡大し、世界各地の紛争がヨーロッパの街頭に持ち込まれる。サウジアラビアやイランなど紛争当事国は責任を負わず、ヨーロッパのみが人道的代償を払う。世論は移民に対して否定的だが、政治家は無視し続けている。この乖離は政治的爆発を招く可能性が高い。

あとがき

2017年の出版以降もヨーロッパでのテロ攻撃は続いた。ウェストミンスター橋、マンチェスター・アリーナ、ロンドン橋、フィンズベリー・パーク・モスクで多数の犠牲者が出た。「怒りを振り返るな」というメッセージが繰り返されたが、なぜ怒ってはいけないのかという問いは発せられなかった。オランダ、フランス、ドイツ、オーストリアの選挙では反移民政党が躍進した。東欧諸国は移民割り当てを拒否し続け、EUとの対立が深刻化している。2018年の研究では、移民ゼロのシナリオでも2050年までにスウェーデンのイスラム教徒人口は11%、通常の移民で21%、高水準の移民で31%になると予測された。これらの変化は不可逆的であり、ヨーロッパは根本的に異なる社会になるだろう。


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