『DMSOハンドブック:医師のための治療ガイド』アーチー・H・スコット 2013年
目次
- 第1章 序論 / Introduction
- 第2章 アミロイドーシス / Amyloidosis
- 第3章 アルツハイマー病とその他の認知症 / Alzheimer’s and other Dementia
- 第4章 関節炎 / Arthritis
- 第5章 スポーツ外傷 / Athletic Injuries
- 第6章 脳損傷 / Brain Injuries
- 第7章 火傷 / Burns
- 第8章 癌患者治療におけるDMSOと従来療法 / DMSO and Conventional Therapy in the Treatment of Cancer Patients
- 第9章 癌患者治療におけるDMSOとレートリル / DMSO and Laetrile in Treating Cancer Patients
- 第10章 手根管症候群 / Carpal Tunnel Syndrome
- 第11章 肝硬変 / Cirrhosis of the Liver
- 第12章 糖尿病 / Diabetes
- 第13章 消化器疾患 / Digestive Problems
- 第14章 耳と聴覚の問題 / Ear & Hearing Problems
- 第15章 救急医療 / Emergency Medicine
- 第16章 眼疾患 / Eye Problems
- 第17章 線維筋痛症 / Fibromyalgia
- 第18章 真菌感染症 / Fungus Infections
- 第19章 頭髪と頭皮の問題 / Hair and Scalp Problems
- 第20章 頭痛 / Headache
- 第21章 感染症 / Infections
- 第22章 炎症 / Inflammation
- 第23章 間質性膀胱炎 / Interstitial Cystitis
- 第24章 DMSOの合法性 / Legality of DMSO
- 第25章 ループス / Lupus
- 第26章 精神疾患 / Mental Illness
- 第27章 精神遅滞 / Mental Retardation
- 第28章 多発性硬化症 / Multiple Sclerosis
- 第29章 疼痛 / Pain
- 第30章 放射線障害からの保護 / Protection from Radiation Damage
- 第31章 呼吸器疾患 / Respiratory Problems
- 第32章 強皮症 / Scleroderma
- 第33章 帯状疱疹とヘルペス / Shingles & Herpes
- 第34章 脊髄損傷 / Spinal Cord Injuries
- 第35章 皮膚疾患 / Skin Problems
- 第36章 脳卒中 / Stroke
- 第37章 歯と歯茎の疾患 / Tooth & Gum Disease
- 第38章 DMSOの毒性学 / Toxicology of DMSO
- 第39章 結論 / Conclusion
本書の概要
短い解説:
本書は、医療従事者を対象に、DMSO(ジメチルスルホキシド)の多様な治療応用とその科学的根拠を包括的に解説することを目的としている。50年以上にわたる研究と臨床経験に基づき、従来治療が困難な疾患に対するDMSOの有効性と安全性を実証する。
著者について:
著者アーチー・H・スコットは、1964年からDMSOの研究を開始し、「DMSOの父」と呼ばれるスタンリー・W・ジェイコブ博士と協力してきた。医学博士ではないが、40年以上にわたり米国およびメキシコの医師やクリニックのコンサルタントとして活動し、DMSOの医学的応用における第一人者として認知されている。本書では自身の長期使用経験と多数の臨床例に基づく実践的知見を提供する。
テーマ解説
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主要テーマ:DMSOの多様な治療特性とその作用機序
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新規性:従来治療が困難な疾患に対するDMSO単独および併用療法の有効性
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興味深い知見:FDA承認後も続くDMSOの治療的価値に対する認識の遅れ
キーワード解説
3分要約
DMSO(ジメチルスルホキシド)は、1866年にロシアの化学者Alexander Zaytsevによって初めて合成されたが、1960年代にスタンリー・W・ジェイコブ博士によって医学的応用が本格的に研究されるまで、主に工業用溶剤として使用されていた。DMSOは木質由来の天然化合物であり、凍結防止剤として臓器移植における臓器保存に利用されたことを契機に、その多様な医学的特性が明らかとなった。
DMSOの特筆すべき特性は多岐にわたる。強力なフリーラジカルスカベンジャーとして作用し、細胞損傷や老化の原因となる不安定分子を除去する。皮膚や細胞膜を透過する性質を持ち、血液脳関門を通過できる数少ない物質である。血管拡張作用により血流を改善し、抗炎症作用と疼痛緩和効果を発揮する。さらに、免疫系を正常化し、他の薬剤の毒性を軽減しながら効果を増強する特性を持つ。
これらの特性により、DMSOは関節炎、アルツハイマー病、癌、脳卒中、火傷、スポーツ外傷など、実に多様な疾患の治療に応用可能である。例えば、アルツハイマー病患者におけるアミロイドタンパク質の溶解、癌治療における化学療法や放射線療法の副作用軽減と効果増強、脳卒中後の浮腫軽減と神経保護効果など、従来治療が困難な疾患においても顕著な効果を示す症例が多数報告されている。
DMSOの安全性は、カリフォルニア州ヴァカヴィル刑務所で実施された大規模な毒性学研究などで確認されており、ヒトにおいては眼毒性などの重篤な副作用は認められていない。主な副作用はニンニク様の口臭と軽度の皮膚刺激のみである。1965年にFDAによって臨床試験が一時停止されたが、これはイヌやウサギで見られた可逆的な眼のレンズ変化が、ヒトやサルでは確認されなかったためである。
1978年に間質性膀胱炎の治療薬としてFDA承認を得て以来、DMSOは医師の判断で様々な疾患に使用できるようになった。しかし、その多様な治療応用可能性にもかかわらず、従来の医学界における認知度は依然として低い。本書は、50年以上にわたる研究と臨床経験に基づき、DMSOの治療的価値を包括的に提示し、より多くの医療従事者による活用を促進することを目的としている。
各章の要約
第1章 序論
DMSOは木質由来の天然化学化合物であり、1866年に初めて合成された。1960年代にスタンリー・W・ジェイコブ博士とロバート・J・ハーシュラーによって医学的応用が本格化し、臓器移植における凍結防止剤としての使用を契機に多様な医学的特性が明らかとなった。DMSOは強力なフリーラジカルスカベンジャーであり、免疫正常化作用、細胞膜透過性、血管拡張作用など、多数の治療的特性を有する。MSM(メチルスルフォニルメタン)はDMSOから派生した物質で、多くの特性を共有するが、効果は弱く食品サプリメントとして分類される。
第2章 アミロイドーシス
アミロイドーシスはアミロイドタンパク質が各種組織に異常沈着する疾患で、診断が困難である。イスラエルでのマウス研究では、DMSO投与によりアミロイドフィブリルが溶解し、肝臓のアミロイド沈着が完全に消失した。他の研究でもDMSOによる有害反応は報告されておらず、全てのアミロイドーシス症例においてDMSO治療が推奨される。
第3章 アルツハイマー病とその他の認知症
DMSOはアルツハイマー病の脳病変にみられるアミロイドタンパク質を溶解する。第4回国際アルツハイマー病会議で発表された研究では、18人の患者にDMSOを9ヶ月間投与し、記憶力、集中力、コミュニケーション能力の改善が認められた。高齢者の精神機能維持にも有効であり、101歳まで精神機能を良好に維持した症例も報告されている。
第4章 関節炎
DMSOは関節炎治療において従来の鎮痛剤や抗炎症薬よりも優れた効果を示し、有害な副作用がない。ブラジルでの研究では、DMSO投与によりフリーラジカル産生が66%減少し、変形性関節炎患者の85%、関節リウマチ患者の77%に長期持続的な改善が認められた。DMSOは疼痛緩和、血流改善、硫黄供給、抗炎症作用により関節炎を改善する。
第5章 スポーツ外傷
DMSOは急性外傷と反復性ストレス損傷の両方に有効である。炎症とフリーラジカル損傷を軽減し、選手の復帰期間を短縮する。プロフェッショナルスポーツ選手の間でも広く使用されており、頭部外傷後の長期的な脳損傷予防にも有用である。盲目の女性マラソンランナーの症例では、DMSOにより重度の足首捻挫から迅速に回復し、レースを完走できた。
第6章 脳損傷
重度の頭部外傷におけるDMSOの静脈内投与は、頭蓋内圧の低下、脳血流の改善、浮腫の軽減に効果的である。トルコでの研究では、閉鎖性頭部外傷患者の頭蓋内圧がDMSO投与により迅速に低下し、神経学的機能と生存率が改善した。13年間持続した脳損傷後遺症の症例でも、DMSO投与により急速な改善が認められている。
第7章 火傷
DMSO含有ローションは火傷治療に有効である。沸騰した油による重度の火傷を負った患者にDMSOとアロエベラのローションを適用したところ、迅速な回復と瘢痕形成の予防が認められた。水疱形成の予防や日焼けの緩和にも有用である。
第8章 癌患者治療におけるDMSOと従来療法
DMSOは単独でも抗癌作用を示すが、化学療法薬と併用することで毒性を軽減し効果を増強する。チリでの研究では、末期癌患者65人にDMSOとシクロホスファミドを併用投与し、57人に客観的または主観的寛解が認められた。放射線療法における防護剤としても有効であり、ロシアの研究ではDMSO投与により放射線火傷が予防できた。
第9章 癌患者治療におけるDMSOとレートリル
DMSOとレートリル(アミグダリン)の併用療法は、末期癌患者に対して劇的な効果を示す症例がある。舌癌とブドウ球菌感染症で瀕死の状態だった患者が、DMSOとレートリルの静脈内投与により完全回復した。進行性脳腫瘍の患者も同様の治療により20年以上生存している。レートリルは癌細胞に特異的に存在する酵素によって活性化され、正常細胞には影響を与えない。
第10章 手根管症候群
DMSOは抗炎症作用、血流改善、疼痛緩和により手根管症候群の症状を改善する。従来の治療に反応しなかった患者が、DMSOの局所適用により短期間で症状の完全な消失を経験した。手術による合併症のリスクを回避できる有効な治療法である。
第11章 肝硬変
アルコール性肝硬変の末期患者8人にDMSOを6ヶ月間投与したところ、全例で健康状態の改善、嘔吐の減少、肝機能検査の改善が認められた。全員が1年後の時点で生存しており、DMSOが肝臓の自然治癒を促進することが示唆された。
第12章 糖尿病
DMSOは糖尿病性神経障害と末梢循環障害の改善に有効である。インスリン使用量の削減が可能となる症例もあり、切断が必要とされた足趾の救済にも成功している。全ての糖尿病患者において、合併症予防のためにDMSO治療が考慮されるべきである。
第13章 消化器疾患
DMSOは消化性潰瘍やストレス性胃粘膜障害の治療と予防に有効である。サリム博士の研究では、DMSO投与により十二指腸潰瘍の再発率が65%から13%に減少した。アスピリンとコーラの長期使用による重度の消化管損傷の症例でも、DMSO投与により出血が止まり、生命の危機から回復した。
第14章 耳と聴覚の問題
DMSOは中耳炎の治療に有効であり、抗生物質と併用することで鼓膜穿刺を回避できる。チリでの研究では、耳鳴患者15人全員にDMSOスプレーと筋肉内注射により改善が認められ、9人は完全回復した。DMSOによる内耳血流の改善が症状緩和に関与していると考えられる。
第15章 救急医療
DMSOは浮腫軽減、抗炎症、酸素供給増加、フリーラジカルからの細胞保護など、救急医療に理想的な特性を有する。全ての救急隊と救急病院にDMSOが常備され、適切な訓練が行われるべきである。脳卒中、心臓発作、外傷患者の転帰を改善する可能性が高い。
第16章 眼疾患
DMSOは網膜色素変性症や加齢黄斑変性症などの眼疾患治療に有効である。ヒル博士の研究では、50人の患者のうち22人が視力改善、9人が視野改善、5人が暗順応改善を示した。40% DMSO点眼薬は高齢者の老眼症状改善にも有用である。
第17章 線維筋痛症
DMSOは線維筋痛症の疼痛とその他の症状を軽減する。従来の治療に反応しなかった患者が、DMSO静脈内投与と経口投与により疼痛のない生活を送れるようになった。長期持続的な症状緩和が可能である。
第18章 真菌感染症
DMSO含有ローションは水虫やジャングル腐敗病などの真菌感染症治療に有効である。従来の治療に反応しなかった退役軍人たちが、DMSOローションにより即時の症状緩和を経験した。爪の真菌感染症や足の臭いの対策にも有用である。
第19章 頭髪と頭皮の問題
DMSOは頭皮の毛細血管を拡張し、血流を改善することで毛髪成長を刺激する。抗癌化学療法による脱毛症患者において、DMSOローションの使用で毛髪再生が促進された。重度の頭皮感染症においても、外科的処置を回避して治癒が達成されている。
第20章 頭痛
DMSOの局所適用は片頭痛を含む各種頭痛の緩和に有効である。早期治療により片頭痛の発作を逆転させることが可能である。従来の鎮痛剤にみられる有害な副作用がないことが利点である。
第21章 感染症
DMSOは抗生物質と併用することで感染症治療の効果を増強する。骨髄炎や重度の膀胱感染症など、従来の治療に反応しなかった症例において、DMSO追加投与により迅速な回復が認められている。全ての重度感染症においてDMSO併用療法が考慮されるべきである。
第22章 炎症
DMSOは強力な抗炎症剤であり、ステロイドや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)にみられる有害な副作用がない。サリム博士の研究では、DMSOがNSAIDs誘発性胃炎を軽減し、消化管の治癒を促進することが示された。全ての炎症性疾患に対する安全で効果的な治療選択肢である。
第23章 間質性膀胱炎
DMSOは1978年に間質性膀胱炎治療薬としてFDA承認を得た。膀胱内注入または経口投与により、疼痛、頻尿、出血などの症状を緩和する。放射線性膀胱炎の治療にも有効である。
第24章 DMSOの合法性
H. Ray Evers医師に対する連邦裁判所の判決により、一度承認された医薬品は医師の判断で他の疾患にも使用できることが確認されている。この判決は医師の処方の自由を支持する重要な先例となった。
第25章 ループス
DMSOはループスの症状管理において最も重要な薬剤の一つである。コルチコステロイドよりも効果的で有害な副作用がない。メトトレキサートなどの免疫抑制剤による長期合併症を回避できる。
第26章 精神疾患
ペルーでの研究では、統合失調症、躁うつ病、アルコール性精神病などの精神疾患患者42人にDMSOを投与し、急性患者では劇的かつ迅速な改善が認められた。慢性患者でも一定の改善がみられ、全ての精神科病院での使用が推奨される。
第27章 精神遅滞
ダウン症候群の子供たちを対象としたチリの研究では、DMSOとアミノ酸の併用投与により、対照群と比較して全ての発達領域で大幅な進歩が認められた。ポートランドのビリー・キング症例では、14歳で10ヶ月児の精神能力だったものが、2年間のDMSO治療後には7歳児の能力まで向上した。
第28章 多発性硬化症
ロシアの研究では、多発性硬化症患者34人にDMSOを投与し、再発型患者において髄鞘再生、浮腫軽減、神経伝達改善が認められた。進行型患者でも一定の改善がみられ、重度の症例においても生活の質の向上が達成されている。
第29章 疼痛
DMSOは様々な疼痛状態に対して効果的な鎮痛作用を示す。幻肢痛を含む難治性疼痛に対しても有効である。手術後疼痛の管理においても、従来の鎮痛剤よりも優れた効果とより少ない副作用が確認されている。
第30章 放射線障害からの保護
DMSOは放射線防護剤として有効である。ロシアの研究では、子宮頸癌患者の放射線療法前にDMSOを局所適用することで放射線火傷が予防された。京都大学の研究では、低濃度(0.5%)のDMSOがDNAの二本鎖切断修復を促進することが示された。原子力発電所事故などの放射線被曝時における重要な防護剤である。
第31章 呼吸器疾患
DMSOは気管支炎や喘息などの呼吸器疾患治療に有効である。チリでの研究では、重度の細気管支炎の乳児にDMSOエアロゾルを投与し、80%に感覚と咳嗽の改善、75%に呼吸数減少と呼吸機能改善が認められた。従来の治療薬にみられる副作用がないことが利点である。
第32章 強皮症
DMSOは強皮症に対する唯一の効果的な治療法である。クリーブランドクリニックの研究では、43人の患者のうち26人に良好から優れた進歩が認められた。重度の症例においても症状緩和と生命予後の改善が達成されている。
第33章 帯状疱疹とヘルペス
DMSOは単独または抗ウイルス剤と併用して帯状疱疹と単純ヘルペスの治療に有効である。早期治療により帯状疱疹後神経痛の予防が可能である。リジンとの併用療法も有効性が報告されている。
第34章 脊髄損傷
DMSOは脊髄損傷後の浮腫軽減、血流改善、フリーラジカルからの保護により神経損傷を軽減する。静脈内投与が最も効果的であるが、受傷後長期間経過した症例でも一定の改善が認められている。
第35章 皮膚疾患
チリでの大規模研究では、慢性皮膚潰瘍患者1371人の95%以上がDMSOスプレーにより完全治癒した。15年間持続した下肢潰瘍や重度の静脈瘤潰瘍など、従来治療に反応しなかった症例でも顕著な効果が認められている。皮膚移植の生存率向上にも有用である。
第36章 脳卒中
DMSOは血液脳関門を通過し、脳浮腫を軽減し、神経細胞を保護するため、脳卒中治療に理想的な薬剤である。早期治療により永久的な脳損傷や死亡を予防できる。昏睡状態にあった患者がDMSO治療により完全回復した症例も報告されている。
第37章 歯と歯茎の疾患
DMSOは歯周病治療に有効である。ポーランドの研究では、歯周病患者32人全員にDMSOコンブレスにより炎症軽減、出血減少、歯の動揺改善が認められた。日常的な口腔衛生管理としての使用も推奨される。
第38章 DMSOの毒性学
DMSOは医学で使用されている中最も安全な製品の一つである。ヴァカヴィル刑務所で実施された大規模毒性学研究では、通常用量の3~30倍を90日間投与しても重篤な副作用は認められなかった。動物でみられた眼のレンズ変化はヒトでは確認されていない。著者自身49年間の長期使用においても有害影響は認められていない。
第39章 結論
DMSOは人類の苦痛緩和において最も重要な製品の一つである。実質的に全ての疾患の治療に単独または他剤と併用して有用であり、極めて安全である。二重盲検法の実施が困難であるという批判はあるが、治療結果の比較により有効性は実証されている。医療従事者がDMSOの治療的価値を認識し、活用することが、より健康で幸福な生活の実現と医療費削減につながる。