書籍『巨大化の呪い:新金ぴか時代の反トラスト法』ティム・ウー 2018年

トランスナショナル資本家階級(TCC)・資本主義ビッグテック・SNS新自由主義経済

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日本語タイトル:『巨大化の呪い:新金ぴか時代の反トラスト法』ティム・ウー 2018年

英語タイトル:『The Curse of Bigness: Antitrust in the New Gilded Age』Tim Wu 2018年

目次

  • 序章 / Introduction
  • 第1章 独占化運動 / The Monopolization Movement
  • 第2章 生きる権利、ただ存在するだけではなく / The Right to Live, and Not Merely to Exist
  • 第3章 トラスト・バスター / The Trustbuster
  • 第4章 反トラスト法の頂点とシカゴ学派 / Peak Antitrust and the Chicago School
  • 第5章 最後の大型訴訟 / The Last of the Big Cases
  • 第6章 シカゴ学派の勝利 / Chicago Triumphant
  • 第7章 テクノロジー・トラストの台頭 / The Rise of the Tech Trusts
  • 結論 新ブランダイス主義アジェンダ / A Neo-Brandeisian Agenda

全体の要約

本書は、現代アメリカが19世紀末の第一次金ぴか時代と同様の極度な経済集中状況に陥っていることを警告し、反トラスト法の復活を提唱する。著者ティム・ウーは、過去40年間の規制緩和実験の結果として、独占的企業群による経済支配、富の集中、中産階級の没落、そして民主主義への脅威が生じていると論じる。

19世紀末のトラスト運動では、J・P・モルガンやジョン・D・ロックフェラーといった人物が社会ダーウィニズムの思想に基づき、巨大独占企業による経済支配を正当化した。これに対し、ルイス・ブランダイスは人間的規模の経済と分散化を重視し、独占の弊害を指摘した。彼は経済民主主義を提唱し、人々が真に自由に生きるためには政府と企業の両方からの支配から解放される必要があると考えた。

セオドア・ルーズベルト大統領は「トラスト・バスター」として知られ、スタンダード石油やモルガンの鉄道独占に対する訴訟を起こした。彼の反トラスト執行は政治的な意味合いが強く、民主政府が私的権力に対して主権を持つことを示そうとした。1912年の大統領選挙では、経済構造のあり方が主要争点となり、競争的経済か独占的経済かの選択が国民に問われた。

20世紀中頃、反トラスト法は民主主義の必要条件として広く受け入れられた。ナチス・ドイツや日本の軍国主義における政府と独占企業の癒着が、ファシズム台頭の一因とみなされたからである。1950年の反合併法制定により、産業集中への監視が強化された。

しかし1970年代以降、シカゴ大学のアーロン・ディレクターとロバート・ボークが「消費者厚生」を唯一の基準とする新理論を提唱した。ボークは議会が1890年のシャーマン法制定時に消費者の価格利益のみを意図していたと主張したが、これは歴史的事実に反する極端な解釈であった。それでも彼らの理論は司法府に浸透し、反トラスト法執行は大幅に弱体化した。

2000年代以降、航空、通信、製薬、ビールなど多くの産業で大規模な合併が進行した。特にテクノロジー業界では、フェイスブックやグーグル、アマゾンといった企業が競合他社を次々と買収し、新たな独占体制を構築した。フェイスブックのインスタグラム買収やグーグルのユーチューブ買収などは、明らかな競争阻害行為だったにもかかわらず、規制当局は介入しなかった。

現在の状況は第一次金ぴか時代との類似点が多い。極度の富の集中、産業の寡占化、中産階級の不満、そして極端な政治的選択肢への支持が見られる。これは民主主義にとって深刻な脅威である。

著者は新ブランダイス主義アジェンダとして以下を提案する:合併審査の厳格化と民主化、大型訴訟の復活、企業分割の積極的活用、市場調査権限の拡大、そして反トラスト法の目標を「消費者厚生」から「競争の保護」へ転換することである。これらの改革により、経済権力の分散と民主的統制を回復し、真の経済自由を実現できると主張する。

各章の要約

序章

Introduction

現代アメリカは第一次金ぴか時代と同様の極度な経済集中状況にある。過去40年間の規制緩和実験により、金融、メディア、航空、通信業界で寡占が進み、Google、Facebook、Amazonなどの巨大テック企業が異常な権力を握った。これに伴い富の集中が進行し、中産階級の没落と極端な政治的選択肢への支持が生まれている。ルイス・ブランダイスが警告した「巨大化の呪い」が民主主義を脅かしている。反トラスト法は本来、私的権力への制約として機能すべきだが、シカゴ学派の「消費者厚生」理論により骨抜きにされた。

第1章 独占化運動

The Monopolization Movement

19世紀末から20世紀初頭にかけて、アメリカは強力なトラスト運動の支配下に入った。1895年から1904年の10年間で2,274の製造業企業が合併し、157の巨大企業が各業界を支配した。J・P・モルガンは鉄道、鉄鋼、海運、通信業界で独占企業を創設し、ジョン・D・ロックフェラーのスタンダード石油とともに経済を支配した。この運動は社会ダーウィニズムの思想に基づき、独占を自然淘汰の結果として正当化した。彼らは競争を「破滅的」とみなし、強者による支配を進歩的とした。しかしこの動きはアメリカの分散的権力の伝統に反し、激しい民衆の反発を招いた。1890年のシャーマン法制定はこうした反独占感情の表れであった。

第2章 生きる権利、ただ存在するだけではなく

The Right to Live, and Not Merely to Exist

ルイス・ブランダイスは1856年にルイビルで生まれ、小規模事業主の父のもとで育った。彼の故郷ルイビルは大企業に支配されない「経済民主主義」の理想的な例であった。弁護士として成功した彼は、J・P・モルガンのニューヘイブン鉄道独占化計画との戦いを通じて反トラスト思想を形成した。ブランダイスは「過度な巨大化の弊害」を指摘し、人間的規模の経済を重視した。彼にとって民主主義の目的は「個人の発達」であり、そのためには経済的安全保障と自由が必要だった。巨大企業による支配は人々の品格と自立を奪うと考え、政府と企業の両方からの自由を求めた。真の成功とは収入ではなく技能の向上と社会への貢献にあるとし、分散化された経済構造を理想とした。

第3章 トラスト・バスター

The Trustbuster

1901年、アナーキストによるマッキンリー大統領暗殺により、セオドア・ルーズベルトが大統領に就任した。マッキンリーの自由放任政策とは対照的に、ルーズベルトは政府の経済への積極介入を主張した。彼はJ・P・モルガンの北部証券会社(西部鉄道独占)とジョン・D・ロックフェラーのスタンダード石油に対する歴史的訴訟を起こした。ルーズベルトの反トラスト執行は主に政治的動機に基づいており、民主政府が私的権力に対して主権を持つことを示そうとした。彼は「悪いトラスト」と「良いトラスト」を区別し、濫用的行為を行う独占のみを標的とした。スタンダード石油訴訟では同社の排他的手法と競合他社への破壊工作が明らかとなり、1911年の最高裁判決により34の構成企業への分割が命じられた。

第4章 反トラスト法の頂点とシカゴ学派

Peak Antitrust and the Chicago School

1950年代から1960年代にかけて、強力な反トラスト法は民主主義の必要条件として広く受け入れられた。ナチス・ドイツ、イタリア、日本における政府と独占企業の癒着がファシズム台頭の一因とみなされたためである。I・G・ファルベンなどのドイツ独占企業は戦争遂行に深く関与し、戦後連合軍により分割された。1950年の反合併法(セラー・ケファウバー法)は産業集中の初期段階での阻止を目的とし、ヨーロッパも同様の競争法を採用した。しかし同時期、シカゴ大学でアーロン・ディレクターとロバート・ボークが新理論を発展させた。ボークは1966年の論文で、議会が1890年のシャーマン法制定時に「消費者厚生」の最大化のみを意図していたと主張したが、これは歴史的事実に反する極端な解釈であった。それでも彼らの理論は司法に浸透し、反トラスト法の政治的・社会的目標は無視されるようになった。

第5章 最後の大型訴訟

The Last of the Big Cases

1974年、ニクソン政権は世界最大企業AT&Tに対する訴訟を開始した。AT&Tは6つの独占(市内通話、長距離通話、電話機器、企業向けサービス等)を保有する「超独占企業」であった。同社は競争を「混沌的」「破滅的」として否定し、絶対的支配を主張していた。1982年、レーガン政権下で同社は7つの地域会社に分割された。この分割により答話機、モデム、オンラインサービスなど新産業が誕生し、後のインターネット革命の基盤となった。ヨーロッパや日本が通信独占を維持したのと対照的に、アメリカは技術革新で大きく先行した。1990年代のマイクロソフト訴訟では、同社がネットスケープを破壊してブラウザ市場を独占しようとした行為が問題となった。クリントン政権のジョエル・クラインは積極的に訴追したが、ブッシュ政権が分割ではなく和解を選択した。

第6章 シカゴ学派の勝利

Chicago Triumphant

2000年代初頭までに、反トラスト法は大幅に弱体化し、独占や集中に対する規制力を失った。シカゴ学派の理論は主に司法府を通じて浸透した。最初は「垂直制限」の分野から始まり、最高裁が1979年に「シャーマン法は消費者厚生の処方箋である」と宣言した。ハーバード学派のドナルド・ターナーとフィリップ・アレダも経済的厳密性を重視し、結果的にシカゴ学派の前提を受け入れた。独占企業は「潜在的競争」の脅威により自制するとの理論により、独占的行為への寛容度が高まった。ポスト・シカゴ学派の経済学者たちが反論したが、ブッシュ政権下で反独占執行は事実上停止した。2004年、スカリア判事は独占的利益の獲得を「自由市場制度の重要要素」と称賛し、反トラスト法から「反」が除去された状況となった。

第7章 テクノロジー・トラストの台頭

The Rise of the Tech Trusts

1990年代から2000年代にかけて、インターネットの混沌とした競争環境により、永続的独占は不可能と考えられていた。しかし2010年代には、Google、Facebook、Amazon、Appleが市場を支配するようになった。反トラスト当局はこれらの企業による競合他社買収を阻止できなかった。2012年のFacebookによるInstagram買収では、規制当局は両社が競合関係にないと誤った結論を下した。その後WhatsAppも190億ドルで買収され、Facebookは67件、Amazonは91件、Googleは214件の買収を無制限に実行した。YouTubeやWazeなど重要な競合他社の買収により、各社の独占的地位は強化された。買収が困難な場合、これらの企業は「クローン」戦略を採用し、競合他社の機能を模倣した。ピーター・ティールは「競争は敗者のため」と公然と独占を称賛し、テック企業は世界的影響力の拡大を人類への貢献として正当化している。

結論 新ブランダイス主義アジェンダ

A Neo-Brandeisian Agenda

著者は反トラスト法復活のための6つの改革案を提示する。第一に、合併審査の厳格化である。現行制度は1950年の反合併法の議会意図から大幅に逸脱しており、価格への影響証明を過度に要求している。60億ドル超の巨大合併には高い基準を設け、主要企業数が4社未満となる合併は原則禁止すべきである。第二に、合併審査プロセスの民主化である。現在の秘密主義的手続きを改め、一般への情報公開と意見聴取を拡大すべきである。第三に、大型訴訟の復活である。持続的独占に対する解体訴訟は反トラスト法の核心的伝統であり、ヨーロッパの積極的執行を模範とすべきである。第四に、企業分割の活用である。Facebook-Instagram-WhatsAppの分離など構造的救済は、複雑な行動規制より効果的である。第五に、英国型の市場調査権限の導入である。第六に、反トラスト法の目標を「消費者厚生」から「競争の保護」へ転換することである。これらにより、経済権力の分散と民主的統制を回復できる。

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