書籍要約『オペレーション・グラディオ:バチカン、CIA、マフィアの聖ならざる同盟』 ポール・L・ウィリアムズ 2015年

CIA、NED、USAID、DS・情報機関/米国の犯罪民主主義・自由

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英語タイトル

:『Operation Gladio:The Unholy Alliance between the Vatican, the CIA, and the Mafia』 Paul L. Williams (2015)

日本語タイトル

:『オペレーション・グラディオ:バチカン、CIA、マフィアの聖ならざる同盟』 ポール・L・ウィリアムズ (2015)


目次

  • 著者の弁明、謝辞、主要人物、年表、略語一覧
  • 第1章 ステイビハインド・ユニット / The Stay-Behind Units
  • 第2章 幸運な突破口:ニグロスと麻薬 / The Lucky Break:Negroes and Narcotics
  • 第3章 バチカンの同盟 / The Vatican Alliance
  • 第4章 麻薬ネットワーク / The Drug Network
  • 第5章 秘密結社 / The Secret Society
  • 第6章 ミケーレ・シンドナの台頭 / The Rise of Michele Sindona
  • 第7章 偽旗テロリズム / False Flag Terrorism
  • 第8章 グラディオ:国境の南 / Gladio:South of the Border
  • 第9章 イル・クラック・シンドナ / Il Crack Sindona
  • 第10章 高揚と新たな犯罪 / High Times, New Crimes
  • 第11章 教皇の問題 / A Papal Problem
  • 第12章 新たなネットワーク / The New Network
  • 第13章 シェルゲーム / The Shell Game
  • 第14章 絶望的な首領 / The Desperate Don
  • 第15章 教皇は死なねばならない / The Pope Must Die
  • 第16章 サン・ピエトロ広場の銃撃 / The Shooting in St. Peter’s Square
  • 第17章 襲撃と方向転換 / A Raid and Redirection
  • 第18章 ブラックフライアーズ橋 / Blackfriars Bridge
  • 第19章 殺人と誘拐 / Killings and Kidnapping
  • 第20章 神の御業 / Works of God
  • 第21章 死と復活 / Death and Resurrection
  • 第22章 勝利するグラディオ / Gladio Triumphant
  • 第23章 センペル・エアデム / Semper Eadem

本書の概要

短い解説:

本書は、冷戦期にNATO主導で西欧諸国に設置され、後に「グラディオ」として知られるようになった秘密の「ステイビハインド」作戦の実態を、バチカン、CIA、マフィアの三者の「聖ならざる同盟」を通じて暴くことを目的とした調査報道である。一般読者に向け、機密解除された文書や公聴会記録を基に、政治、宗教、犯罪が交錯する闇の歴史を描く。

著者について:

著者ポール・L・ウィリアムズは、元大学教授・FBIコンサルタントであり、長年にわたりバチカンの財政活動と国際政治犯罪ネットワークの関係を調査してきた。自身もカトリック教徒として育った背景を持つが、本書はカトリック教会の権威に対する深い疑念と、公的記録に基づく実証的なアプローチに特徴づけられる。

テーマ解説

  • 主要テーマ:「反共」という大義名分の下で結成された秘密作戦が、テロ、麻薬取引、金融犯罪、そして民主主義の破壊にいかに利用されたか。
  • 新規性:「グラディオ」作戦の全体像を、イタリアからトルコ、中南米、アフガニスタンまで広範な地域を横断するグローバルな麻薬・資金洗浠ネットワークと結びつけて分析している点。
  • 興味深い視点:冷戦構造が崩壊した後も、「グラディオ」のネットワークとその手法(偽旗作戦、麻薬取引、宗教的影響力の利用)が形を変えて存続し、現代の国際情勢に影響を与え続けているという主張。

キーワード解説(抜粋)

  • ステイビハインド作戦:NATO諸国において、ソ連侵攻時にゲリラ活動を行うために極秘裏に組織・訓練された部隊。後に国内政治工作やテロ活動に転用された。
  • 偽旗テロリズム:犯行を敵対勢力(主に左翼)に見せかけるために行われるテロ。世論操作や弾圧を目的とする。
  • P2(プロパガンダ・マッソニカ・デュー):リーチョ・ジェッリが率いたフリーメイソンの秘密ロッジ。政財官界、軍、情報機関の要人を網羅し、イタリアをはじめ各国の「影の政府」として機能した。
  • IOR(バチカン銀行):正式名称「宗教活動協会」。バチカン内の独立した金融機関であり、秘密性の高い口座管理により、グラディオ関連の資金洗浠に利用された。
  • 緊張の戦略」:イタリアで展開された、偽旗テロを連発して社会に不安を煽り、強権的な政府の樹立を世論に求めるよう仕向ける作戦。

3分要約

本書は、冷戦初期に米国CIAとNATOが西ヨーロッパで極秘裏に組織した「ステイビハインド」ネットワーク、通称「グラディオ」の暗黒史を追う。その起源は、ナチスの「ヴェアヴォルフ」部隊を率いたラインハルト・ゲーレン将軍のネットワークを、OSS(CIAの前身)のアレン・ダレスやジェームズ・ジーザス・アングルトンが引き継いだことにまでさかのぼる。彼らは、ソ連の侵攻に備えるという名目で、各国に秘密部隊を設置した。

しかし、グラディオの真の目的は「反共」を超えていた。1940年代後半、イタリアで共産党の勢力拡大を阻むため、CIAはバチカン(当時のモンティーニ Monsignor Giovanni Montini、後の教皇パウロ6世を通じて)と同盟し、シチリア・マフィアを動員した。この同盟は、マフィアが提供する麻薬取引ルートと資金が、秘密工作に不可欠な「闇資金」を生み出す構造へと発展する。

1950年代から60年代にかけて、グラディオの中心人物となったのが、銀行家ミケーレ・シンドナと、P2ロッジのグランドマスター、リーチョ・ジェッリである。シンドナはCIA、マフィア、バチカン銀行(IOR)をつなぐ金融パイプ役となり、ジェッリはイタリア軍情報部や政界に浸透し、「緊張の戦略」を指揮した。この戦略とは、極右過激派を用いて無差別テロ(1969年のピアッツァ・フォンターナ爆破など)を実行し、それを左翼の犯行に見せかけて社会不安を煽り、世論を強権政権待望へと誘導するものだった。

グラディオのネットワークはイタリアを超えて広がった。1970年代には、CIAの「コンドル作戦」と連動して南米の軍事政権を支援し、反共名目の下で虐殺と麻薬取引を推進した。同時期、アフガニスタンでは、ソ連軍と戦うムジャヒディーンへの支援ルートが、パキスタン経由のアヘン取引と結びつき、世界的なヘロイン流通を拡大させた。

バチカンは、教皇パウロ6世のもとでシンドナを「教皇の銀行家」とし、パウロ6世の死後に短期間在位した教皇ヨハネ・パウロ1世は、バチカン銀行の腐敗とP2との関係を調査し、改革に乗り出そうとしたが、就任後33日目に不可解な死を遂げる。その後を継いだ教皇ヨハネ・パウロ2世の時代には、バチカン銀行はロベルト・カルヴィ(シンドナの後継者)を通じて、巨額の資金をP2関連のペーパーカンパニーに流出させ、それが1982年のアンブロジアーノ銀行破綻とカルヴィの他殺劇(ブラックフライアーズ橋での絞首死)につながった。

1990年代、欧州議会はグラディオの存在と犯罪を非難したが、ネットワークは解体されなかった。著者は、冷戦終結後も、麻薬取引と偽旗テロの手法は、中東や中央アジアの新たな紛争で再利用され、フェトフッラー・ギュレン運動のような宗教団体との新たな同盟が形作られていると主張する。本書は、民主主義と安全保障の名の下に行われた秘密工作が、いかに深く犯罪と宗教的権威に蝕まれ、現代世界に続く負の遺産を生んだかを告発する。


各章の要約

著者の弁明、謝辞、主要人物、年表、略語一覧

著者は自身のカトリック教徒としての経歴を述べ、バチカンの「時のしるし」に関する教義的論争ではなく、その「現世的な事柄」、すなわち財政と政治工作に焦点を当ててきたと説明する。過去の著作でバチカンの検閲に直面した経験が、本書執筆の動機の一端となっている。膨大な一次資料と、グラディオ調査で命を落としたジャーナリストたちの研究に依拠していることを記す。

第1章 ステイビハインド・ユニット

第二次世界大戦末期、OSSのアレン・ダレスは、ナチスドイツの対ソ諜報責任者だったラインハルト・ゲーレン将軍と取引し、彼の東欧諜報ネットワークを引き継いだ。ゲーレンは「ヴェアヴォルフ」(狼男)と呼ばれるナチス残存兵の地下組織を指揮しており、これが後の「ステイビハインド」作戦の原型となった。戦後、米国は「ソ連の西側侵攻」を想定し、NATO諸国に極秘の抵抗組織を設置する計画を立てる。これが「グラディオ」の始まりである。その初の実働部隊は、イタリアの元海軍司令官でファシスト、ジュニオ・ヴァレリオ・ボルゲーゼ公によって編成された。

第2章 幸運な突破口:ニグロスと麻薬

第二次大戦中、米海軍情報局(ONI)は、シチリア上陸作戦(ハスキー作戦)の支援と紐育港の治安維持を目的に、マフィアのチャールズ・“ラッキー”・ルチアーノと取引した。戦後、ルチアーノはイタリアに強制送還されるが、彼が築いた米国-シチリア間のヘロイン流通ルートは、ビト・ジェノヴェーゼらによって強化されていく。CIAは、このマフィアの麻薬ネットワークが、共産主義の拡大阻止という目的と、秘密工作に必要な「闇資金」調達の手段として利用できることに気づく。

第3章 バチカンの同盟

1948年のイタリア総選挙で共産党が勝利する恐れが高まると、CIAは焦った。ここで重要な仲介役となったのが、バチカン国務省の次官だったジョヴァンニ・モンティーニ(後の教皇パウロ6世)である。モンティーニはCIAとシチリアのマフィア、特にドン・カロジェロ・ヴィッツィーニを引き合わせた。バチカンは反共の砦であり、マフィアは共産主義を嫌う地主層の利益代表であった。この三者同盟により、CIAはマフィアの暴力と投票操作を使って選挙を攪乱し、キリスト教民主党を勝利に導いた。著者はこう述べる。「バチカンはCIAとマフィアの聖ならざる結婚の媒酌人となったのである。」

第4章 麻薬ネットワーク

CIA、バチカン、マフィアの同盟は、単なる選挙工作を超えた。マフィアが支配する麻薬取引は、莫大な利益を生み出す資金源となった。この資金は、CIAのエージェント、ポール・E・ヘリウェルらが設立したシー・サプライ社やキャッスル銀行などの「フロント企業」を通じて洗浄され、世界中の反共工作活動に充てられた。特に、中国共産党から逃れた国民党(KMT)残党が支配する東南アジアの「ゴールデン・トライアングル」は、CIAの重要な麻薬調達源となっていった。

第5章 秘密結社

イタリアにおけるグラディオ作戦の指揮・調整役として頭角を現したのが、リーチョ・ジェッリである。彼はファシストの経歴を持ち、戦後はCIAとイタリア軍情報部(SIFAR)の連絡将校となった。ジェッリはフリーメイソンの秘密ロッジ「P2(プロパガンダ・マッソニカ・デュー)」を掌握し、イタリアの政界、財界、司法、警察、軍、メディアの要人800人以上をメンバーとして網羅した。P2は「影の政府」あるいは「国の内なる国家」として機能し、グラディオ作戦の黒幕となり、「緊張の戦略」を実行に移す母体となった。

第6章 ミケーレ・シンドナの台頭

シチリア出身の銀行家、ミケーレ・シンドナは、1950年代後半にマフィアの資金洗浠で頭角を現し、CIAのエージェントとなった。彼は巧妙な国際金融操作で巨富を築き、「魔術師」と呼ばれた。シンドナの真の役割は、マフィアの麻薬資金、CIAの工作資金、そしてバチカンの資本を結びつける金融の中継点となることだった。1968年、シカゴ出身のモンシニョール、ポール・マルチンクスがバチカン銀行(IOR)の長官に就任すると、シンドナはバチカン財政の実質的な管理者となる。

第7章 偽旗テロリズム

1960年代後半からイタリアは「鉛の時代」に突入する。P2とグラディオは、「緊張の戦略」の一環として、極右過激派グループ(新秩序、国民前衛隊など)を使って無差別テロを実行し、犯行声明を左翼組織になすりつけた。1969年12月のミラノ・ピアッツァ・フォンターナ銀行爆破(17人死亡)はその典型で、当初は無政府主義者の犯行とされたが、後に極右と情報機関の関与が明らかになった。これらのテロは社会にパニックを引き起こし、強権的な治安立法を正当化する口実を与えることが目的だった。

第8章 グラディオ:国境の南

グラディオのネットワークは南米にも拡大した。1973年のチリ・クーデターを契機に、CIAは南米各国の軍事政権と協力して「コンドル作戦」を展開し、左翼活動家を跨国境的に追跡・虐殺した。この作戦の中心的な協力者がリーチョ・ジェッリであり、彼はアルゼンチンのフアン・ペロン大統領やボリビアのウゴ・バンセル大統領と緊密な関係を築いた。作戦の資金は麻薬取引で賄われ、アルゼンチンの海軍工科学校(ESMA)などの収容所が拷問と殺戮の拠点となった。当時のアルゼンチンにおけるイエズス会の責任者(プロヴィンチャル)は、ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(後の教皇フランシスコ)であった。

第9章 イル・クラック・シンドナ

1970年代前半、シンドナの金融帝国は危機に瀕する。彼は米国のフランクリン国立銀行を買収するが、不正な投機とマフィア資金の流入により経営が悪化、1974年に破綻する。これは米国史上最大級の銀行破綻の一つとなった。シンドナは詐欺罪で起訴され、イタリアに逃亡した後、誘拐を装うが逮捕される。彼の没落は、グラディオの金融ネットワークに最初の大きな亀裂を生じさせた。

第10章 高揚と新たな犯罪

シンドナ没落後、バチカン銀行とP2の金融パイプ役となったのが、ロベルト・カルヴィであった。彼はアンブロジアーノ銀行頭取として、リーチョ・ジェッリと組んで複雑なペーパーカンパニーの網を構築し、バチカン銀行を介して巨額の資金を不正に流用した。この資金は、ポーランドの自主管理労働組合「連帯」を支援するなど、政治工作にも使われた。一方、イタリアでは「緊張の戦略」によるテロが続き、1980年8月のボローニャ駅爆破(85人死亡)はその最悪の結末となった。

第11章 教皇の問題

1978年8月、教皇パウロ6世が死去し、後継に選出されたアルビノ・ルチアーニ(教皇ヨハネ・パウロ1世)は、質素で改革的な人物であった。就任直後、彼はバチカン銀行のスキャンダルとP2との癒着に関する報告書を精査し、マルチンクスらバチカン高官の更迭を決意した。しかし、就任から33日目の朝、教皇はベッドの上で亡くなっているのが発見された。検死は行われず、死因は急性心筋梗塞と発表されたが、その突然の死と改革への意志から、暗殺説が流布することとなる。

第12章 新たなネットワーク

1979年、アフガニスタンにソ連軍が侵攻すると、米国は大規模な秘密作戦を開始した。CIAはパキスタンのISI(統合情報局)と組み、アフガンのムジャヒディーンに武器と資金を供給した。この供給ルートは、パキスタンの麻薬ブローカーや、グルブッディーン・ヘクマティヤールのような過激派指揮官と結びつき、アヘンの生産とヘロインの輸出を急拡大させた。この「アフガン作戦」は、世界的な麻薬流通の構造を一変させ、その資金が後のアルカイダなどの組織を生む土壌ともなった。

第13章 シェルゲーム

カルヴィは、バチカン銀行の「口座No. 1」を利用して、アンブロジアーノ銀行から巨額の資金を、パナマやルクセンブルグに設立した架空会社(シェルカンパニー)に移し替える「シェルゲーム」を続けていた。これらの資金は、P2を通じた政治工作、武器取引、あるいは個人の着服に使われていた。バチカン銀行は「宗教的機関」という法的特権を盾に、これらの取引を秘密にすることができた。しかし、資金の流出は銀行の財務を逼迫させていった。

第14章 絶望的な首領

1981年、イタリアの裁判官がP2のメンバーリストを押収し、その全貌が公に暴露された。スキャンダルは国家を揺るがし、ジェッリは逃亡した。これにより、カルヴィとバチカン銀行の不正な資金ルートに監視の目が向けられるようになる。アンブロジアーノ銀行の経営は破綻寸前となり、カルヴィはバチカン銀行に支援を求めるが、マルチンクスは「保証書」の効力を否定し、見放す姿勢を示した。追い詰められたカルヴィは、最後の手段を模索し始める。

第15章 教皇は死なねばならない

1981年5月13日、教皇ヨハネ・パウロ2世は、サン・ピエトロ広場でトルコ人銃撃手メフメト・アリ・アジャによって重傷を負った。著者は、この暗殺未遂事件を、ソ連のKGBやブルガリアの秘密工作機関の関与とすることがCIA主導の情報操作(「ブルガリアン・コネクション」説)であったと主張する。その真の背景には、教皇がポーランド「連帯」を支援し、東欧の共産主義体制を脅かしていたこと、そしてグラディオの関係者が、教皇のバチカン銀行改革の動きを危惧していたことがあったと推測する。

第16章 サン・ピエトロ広場の銃撃

暗殺未遂事件の実行犯アジャは、トルコの極右テロ組織「灰色狼」のメンバーで、以前から同組織の幹部アブドゥラー・チャトルと共にCIAのエージェントとして活動していたとされる。アジャの釈放を求めるために、1983年には教皇ヨハネ・パウロ2世の娘を名乗る少女の誘拐事件(エマヌエラ・オルランディ事件)が起きるが、これもローマのマフィア「マリアーナ団」とバチカンの関係者が絡んだ不可解な事件であった。アジャは後に、暗殺指令が「バチカン内部の者」から出たとほのめかす発言をしている。

第17章 襲撃と方向転換

1982年、イタリア当局はローマ郊外の武器庫「スティバム」を襲撃し、グラディオが隠匿していた大量の武器と爆発物を押収した。これは、国内テロの根源が国家機関内部にあることを示す決定的な証拠となった。一方、冷戦の緊張が緩和されるにつれ、グラディオのような大規模な反共ネットワークの存在意義は薄れていった。しかし、その人脈、ノウハウ、特に麻薬取引と資金洗浠のインフラは、新たな目的のために再利用されることになる。

第18章 ブラックフライアーズ橋

1982年6月、アンブロジアーノ銀行が破綻し、カルヴィはロンドンに逃亡した。数日後、彼の遺体がテムズ川のブラックフライアーズ橋の下で、レンガの袋を首に括り付けられて吊るされているのが発見された。当初は自殺と断定されたが、後の調査で他殺の可能性が強く示唆される。カルヴィは、バチカン銀行とP2への巨額の資金流出の真相を暴露する恐れがあったため、口封じされたと考えられている。この事件は、バチカン銀行のスキャンダルを世界に知らしめることとなった。

第19章 殺人と誘拐

グラディオの秘密を暴こうとしたり、その犯罪に深入りしたりした人物は、次々と不可解な死を遂げた。ジャーナリストのカルミネ・ペコレッリ、アンブロジアーノ銀行破綻の管財人ジョルジョ・アンブロソーリ、判事エミリオ・アレッサンドリーニ、警察官僚ジュゼッペ・デッラ・キエーサ将軍などが暗殺された。オルランディ誘拐事件も解決せず、闇に葬られた。これらの事件は、ネットワークの生存と秘密保持がいかに徹底して守られたかを物語る。

第20章 神の御業

1980年代、イタリアの司法当局はP2とグラディオの捜査を進め、多くの関係者が起訴された。リーチョ・ジェッリは逮捕・収監されたが、後に脱獄し、数年後に再逮捕された。ミケーレ・シンドナは1986年、服役中の刑務所で、シアン化物入りのコーヒーを飲まされ死亡した。モンシニョール・ポール・マルチンクスは、1987年に逮捕状が出されたが、バチカン市国内に逃れ、イタリア当局の手を逃れた。バチカンは自らの関与を一切認めず、個人的な犯罪として片付けようとした。

第21章 死と復活

冷戦終結後、1990年に欧州議会は「グラディオ」の存在を公式に確認・非難する決議を採択したが、各国政府の調査は不十分に終わった。著者は、グラディオのネットワークは解体されたのではなく、休眠状態に入り、あるいは形を変えたと主張する。1996年のトルコでの「ススルルク事件」(麻薬密売人、警察官、国会議員の共謀が露見)は、国家と犯罪組織の癒着というグラディオ的構造が生きていることを示す事例である。

第22章 勝利するグラディオ

著者は、9.11後の「対テロ戦争」において、グラディオの手法が再び活用されていると論じる。アフガニスタン侵攻後、アヘン生産はかつてない規模に拡大した。偽旗テロの疑いが持たれる事件も発生している。そして、新たな「宗教的同盟」として、トルコのイスラム主義指導者フェトフッラー・ギュレンとその運動(「ヒズメット」)が、かつてのバチカンのように、政治的影響力を持つ宗教団体として米国と関係を深めていると指摘する。ギュレンは1990年代後半から米国ペンシルベニアに在住している。

第23章 センペル・エアデム

最終章で著者は、「センペル・エアデム」(常に同じ)というラテン語のフレーズに戻る。これは、かつてカトリック教会の不変性を謳う言葉だった。しかし、著者が描き出したグラディオの歴史は、権力の本質が「常に同じ」であることを示していると結論づける。国家の安全保障と称し、民主主義を守ると称して、情報機関は犯罪組織と手を組み、テロを利用し、宗教的権威を道具とする。その過程で生まれる麻薬と腐敗は、一般市民を苦しめる。本書は、この悪循環が過去のものではなく、現在も続いているという警告なのである。


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