哲学書『道徳的感情、道徳的現実、そして道徳的進歩』トーマス・ネーゲル2023年

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『Moral Feelings, Moral Reality, and Moral Progress』Thomas Nagel 2023年

目次

  • 序文 / Preface
  • 第1章 直感的感情と道徳的知識 / Gut Feelings and Moral Knowledge
  • 第2章 道徳的実在と道徳的進歩 / Moral Reality and Moral Progress

本書の概要:

短い解説:

本書は、道徳的直感の哲学的基礎を探求し、道徳的実在論の立場から道徳的進歩の概念を再考することを目的とする。主に哲学研究者や倫理学に関心のある読者を対象としている。

著者について:

著者トーマス・ネーゲルは、現代分析哲学を代表する哲学者の一人であり、心の哲学、政治哲学、倫理学など広範な分野で重要な貢献をしてきた。特に『どこでもない視点』で知られる客観的視点の探求を発展させ、本書では道徳的知識の認識論的基盤とその歴史的発展について独自の見解を提示する。

主要キーワードと解説

  • 主要テーマ:道徳的実在論と道徳的知識の認識論 [道徳的真理が人間の信念から独立して存在するという立場]
  • 新規性:歴史的に条件付けられた道徳的真理 [道徳的真理が常に普遍的であるわけではなく、歴史的状況に依存するという考え]
  • 興味深い知見:アクセシビリティ条件 [道徳的理由が適用されるためには、その理由を理解できる能力が対象者に必要であるという条件]

3分要約

本書は、道徳的直感の哲学的意義と道徳的進歩の概念について、著者ネーゲルの道徳的実在論の立場から体系的に考察する。第1章では、ハンプシャーの実話を出発点として、道徳的直感の認識論的権威をめぐる問題を探求する。特に、結果主義と義務論の対立を中心に、心理学的還元主義の挑戦を受けながらも、直感的道徳判断の客観的妥当性を擁護する。

ネーゲルは、反射的均衡の方法を通じて、道徳的直感と一般的原理の相互調整プロセスを重視する。しかし科学知識との根本的な違いとして、道徳的知識は因果的相互作用によるものではなく、実践的理性の領域に属することを指摘する。心理学的・進化論的説明は道徳的直感の権威を損なうものではないと論じ、むしろそうした外部視点からの批判自体が道徳的議論の一部であると主張する。

第2章では、道徳的進歩の概念を科学の進歩と比較しながら詳細に分析する。ネーゲルは、道徳的真理が科学的真理とは異なり、必ずしも時代を超えて不変ではないという独自の見解を提示する。道徳的理由は、それが適用される人々にとってアクセス可能でなければならないという「アクセシビリティ条件」を提案し、この条件に基づいて道徳的進歩を二つのタイプに分類する。

第一のタイプは、長い間アクセス可能であった理由の認識による進歩(同性愛の受容など)であり、第二のタイプは、歴史的発展を通じて初めてアクセス可能になった理由に基づく進歩(表現の自由の権利など)である。この区別を通じて、ネーゲルは道徳的実在論と歴史的発展の両方を尊重する道徳進歩理論を構築する。

具体的な歴史的事例として、古代ギリシャの奴隷制、宗教的自由の概念、現代の社会正義問題などを検討し、道徳的思考が個人・連帯・非人称的という三つの視点の相互作用として発展してきたことを示す。最終的に、現在の道徳的信念の歴史的偶然性を認識しつつ、将来の道徳的進歩の可能性に対して開かれた態度をとることの重要性を強調する。

各章の要約

序文

本書は2015年にハーバードロースクールで行われたデューイ講演と、2016年のローナー賞シンポジウムでの発表を発展させた二つの論文から構成される。両論文は道徳的認識論、道徳的実在論、道徳的知識の歴史的発展に関連する問題を扱っている。特に第二の論文では、道徳的真理が科学的真理とは異なり、時代を超えた不変性を持たないという独自の見解を提示する。すなわち、道徳的真理はそれが適用される個人にとってのアクセス可能性に依存し、そのアクセス可能性は歴史的発展によって変化するという立場である。

第1章 直感的感情と道徳的知識

ハンプシャーの実話を出発点として、道徳的直感の認識論的権威をめぐる問題を探求する。特に、結果主義と義務論の対立を中心に、心理学的還元主義の挑戦を受けながらも、直感的道徳判断の客観的妥当性を擁護する。ネーゲルは、反射的均衡の方法を通じて、道徳的直感と一般的原理の相互調整プロセスを重視する。しかし科学知識との根本的な違いとして、道徳的知識は因果的相互作用によるものではなく、実践的理性の領域に属することを指摘する。

心理学的・神経科学的説明が道徳的直感の権威を損なうわけではないと論じ、むしろそうした外部視点からの批判自体が道徳的議論の一部であると主張する。義務論的直感は、個人の不可侵性という独自の価値形態への反応として理解できる。最終的に、結果主義への全面的な移行が真の道徳的進歩と言えるかどうか疑問を投げかけ、個人を個別に尊重する道徳的視点の重要性を強調する。著者はこう述べる。「道徳的共同体の成員であることの利点は、量的ではなく質的に深刻に減少するだろう。」

第2章 道徳的実在と道徳的進歩

道徳的進歩の概念を科学の進歩と比較しながら詳細に分析する。ネーゲルは、道徳的真理が科学的真理とは異なり、必ずしも時代を超えて不変ではないという独自の見解を提示する。道徳的理由は、それが適用される人々にとってアクセス可能でなければならないという「アクセシビリティ条件」を提案し、この条件に基づいて道徳的進歩を二つのタイプに分類する。

具体的な歴史的事例として、同性愛の受容、表現の自由の権利、古代ギリシャの奴隷制などを検討する。これらの分析を通じて、道徳的思考が個人・連帯・非人称的という三つの視点の相互作用として発展してきたことを示す。現代の道徳的問題(社会経済的不平等、性的規範、グローバル正義など)についても、それらが特定の歴史的状況から生じた問いであり、普遍的な理性だけでは解決できないことを論じる。

最終的に、現在の道徳的信念の歴史的偶然性を認識しつつ、将来の道徳的進歩の可能性に対して開かれた態度をとることの重要性を強調する。著者はこう述べる。「道徳的進歩は、特定の歴史的発展を通じて初めてアクセス可能になった理由に基づく発見から成り立つことがある。」


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