
『ジェヴォンズのパラドックス:ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズと生物物理学・新古典派経済学の源流』ケント・クリットガード(Kent Klitgaard)2022年
『Jevons’ Paradoxes: William Stanley Jevons and the Roots of Biophysical and Neoclassical Economics』Kent Klitgaard 2022
目次
- 序文:Introduction
- 第1章 良いジェヴォンズ、悪いジェヴォンズ:ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズと生物物理学・新古典派経済学の源流 – Good Jevons, Bad Jevons: William Stanley Jevons and the Roots of Biophysical and Neoclassical Economics
- 第2章 経験主義者ジェヴォンズ:金・石炭・太陽黒点 – Jevons the Empiricist: Gold; Coal; and Sunspots
- 第3章 理論家ジェヴォンズ:政治経済学理論と新古典派経済学の源流 – Jevons the Theorist: The Theory of Political Economy and the Roots of Neoclassical Economics
- 第4章 エネルギー・労働・産業革命 – Energy, Labor, and the Industrial Revolution
- 第5章 結論:ジェヴォンズの多くのパラドックスと未来への考察 – Conclusion: Jevons’ Many Paradoxes and Thoughts for the Future
各章の要約
序文
著者は編集者チャーリー・ホールとの出会いから始まり、ジェヴォンズの二面性について説明する。ジェヴォンズは『石炭問題』で生物物理学経済学の先駆的洞察を示した一方、『政治経済学理論』では主観的効用理論を提唱し新古典派経済学の基礎を築いた。この矛盾する遺産が現代の環境・エネルギー問題への対処を複雑にしている。著者は産業革命の労働過程変化と化石燃料の役割を統合的に分析する必要性を主張し、持続可能な社会への転換には根本的な経済システム変革が不可欠だと論じている。
第1章 良いジェヴォンズ、悪いジェヴォンズ:ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズと生物物理学・新古典派経済学の源流
ジェヴォンズは『石炭問題』(1865年)で石炭枯渇による英国の産業衰退を警告し、効率向上が資源使用量増加につながる「ジェヴォンズ・パラドックス」を提示した。一方『政治経済学理論』(1871年)では、リカードの労働価値説に対抗し主観的効用理論を展開した。古典派政治経済学から新古典派経済学への転換期において、ジェヴォンズは生産における価値決定から交換における価値決定への理論的転換を主導した。彼の理論は個人の効用最大化行動を前提とし、階級対立より個人選択を重視する経済観を確立した。
第2章 経験主義者ジェヴォンズ:金・石炭・太陽黒点
ジェヴォンズの経験的研究は統計的手法を用いた科学的アプローチが特徴だった。金価格研究では新たな金鉱発見が物価に与える影響を分析し、太陽黒点理論では約11年周期の太陽活動が農業生産を通じて景気循環を引き起こすという仮説を提示した。『石炭問題』は最も重要な実証研究で、英国の石炭消費が指数関数的に増加し、深層採掘コスト上昇により国際競争力が低下すると予測した。技術進歩による効率向上が資源使用量を増加させるパラドックスを発見し、石炭代替エネルギーの限界も指摘した。
第3章 理論家ジェヴォンズ:政治経済学理論と新古典派経済学の源流
ジェヴォンズは『政治経済学理論』で、ベンサムの功利主義哲学を数学的に定式化し、古典派の客観的価値理論に代わる主観的価値理論を構築した。効用の最終度(限界効用)の概念を中心に、消費者と生産者の行動を統一的に説明し、完全競争市場における価値決定理論を展開した。労働供給理論では、労働者が賃金の限界効用と労働の限界不効用を等しくする点で労働時間を自由に選択すると仮定した。この理論的枠組みは後の新古典派経済学の基礎となったが、現実の労働条件や市場構造との乖離が大きかった。
第4章 エネルギー・労働・産業革命
産業革命は単なる機械化ではなく、エネルギー源の転換と労働過程の変革を伴う複合的現象だった。16世紀のエリザベス朝期に木材不足により石炭が暖房用燃料として普及し、18-19世紀には水力から蒸気力への転換が進んだ。この転換は技術的要因だけでなく、労働力確保の困難さと労働争議の激化が主因だった。熟練工の組合活動に対抗するため、資本家は化石燃料駆動の機械により労働者のスキルを代替し、工場労働の規律を強化した。石炭産業は16世紀から独占的に組織され、価格統制と生産制限により利益を確保していた。
第5章 結論:ジェヴォンズの多くのパラドックスと未来への考察
ジェヴォンズの業績には多くの矛盾が存在する。方法論では実証的研究と演繹的理論の対立、理論と現実では自由市場理論と独占的現実の乖離、労働理論では個人選択と工場規律の矛盾などがある。現代の環境問題に対し、効率改善だけでは資源消費削減は困難で、規模拡大が効率向上を上回るジェヴォンズ・パラドックスが継続している。化石燃料枯渇と気候変動は同一現象の両面であり、持続可能な社会実現には技術的解決策だけでなく、成長に依存しない経済システムへの根本的変革が必要である。グローバル資本主義の限界を認識し、地球の境界内での生活への転換が急務である。
アルツハッカーは100%読者の支援を受けています。
会員限定記事
新サービスのお知らせ 2025年9月1日よりブログの閲覧方法について
当ブログでは、さまざまなトピックに関する記事を公開しています。2025年より、一部の詳細な考察・分析記事は有料コンテンツとして提供していますが、記事の要約と核心部分はほぼ無料で公開しており、無料でも十分に役立つ情報を得ていただけます。 さらに深く掘り下げて知りたい方や、詳細な分析に興味のある方は、有料コンテンツをご購読いただくことで、より専門的で深い内容をお読みいただけます。パスワード保護有料記事の閲覧方法
パスワード保護された記事は以下の手順でご利用できます:- Noteのサポーター・コアサポーター会員に加入します。
- Noteサポーター掲示板、テレグラムにて、「当月のパスワード」を事前にお知らせします。
- 会員限定記事において、投稿月に対応する共通パスワードを入力すると、その月に投稿したすべての会員記事をお読みいただけます。
サポーター会員の募集
- サポーター会員の案内についての案内や料金プランについては、こちらまで。
- 登録手続きについては、Noteの公式サイト(オルタナ図書館)をご確認ください。
