書籍『自由の発明:英語圏の歴史と理念』ダニエル・ハナン 2013年

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『自由の発明:英語圏の歴史と理念』ダニエル・ハナン 2013年

英語タイトル:『Inventing Freedom: How the English-Speaking Peoples Made the Modern World』Daniel Hannan 2013年

目次

  • 序章 英語圏の奇跡 / Introduction: The Anglosphere Miracle
  • 第1章 同じ言語、同じ賛美歌、同じ理念 / The Same Language, the Same Hymns, the Same Ideals
  • 第2章 アングロ・サクソンの自由 / Anglo-Saxon Liberties
  • 第3章 イングランドの再発見 / Rediscovering England
  • 第4章 自由と財産 / Liberty and Property
  • 第5章 第一次英語圏内戦 / The First Anglosphere Civil War
  • 第6章 第二次英語圏内戦 / The Second Anglosphere Civil War
  • 第7章 アングロ・グローバリゼーション / Anglobalization
  • 第8章 帝国から英語圏へ / From Empire to Anglosphere
  • 第9章 汝らがいかなる国民であるかを考えよ / Consider What Nation It Is Whereof Ye Are
  • 結論 英語圏の黄昏? / Anglosphere Twilight?

全体の要約

本書は、英語圏諸国(アングロスフィア)が現代世界を形作った歴史と理念を論じた壮大な歴史書である。著者のダニエル・ハナンは、議会制民主主義、法の支配、個人の自由、私有財産制といった現代の基本的価値観が、英語を話す民族によって発明され、世界に広められたと主張する。

ハナンによれば、英語圏の例外性は5つの要素に由来する。第一に、統一された国民国家の発展。第二に、強固な市民社会の形成。第三に、島国という地理的条件。第四に、プロテスタント的文脈での宗教的多元主義。そして第五に、最も重要なものとして、人民に奉仕する法制度としてのコモンロー(慣習法)である。

物語は1世紀のゲルマン部族から始まる。タキトゥスが記録した原始的な部族会議から、アングロ・サクソンの賢人会議(ウィタン)、そして現代の議会制度へと発展する過程を辿る。特に重要なのは、10世紀頃にイングランドが世界初の統一国民国家として成立し、法の支配と代議制の基盤を築いたことである。

1066年のノルマン征服は一時的な挫折をもたらしたが、基層にあるアングロ・サクソンの制度と価値観は生き残った。マグナ・カルタ(1215年)は、王権さえも法の下にあることを明文化した画期的文書となった。17世紀の内戦と名誉革命(1688年)を経て、英語圏は議会主権と個人の自由を確立した。

アメリカ独立戦争は「第二次英語圏内戦」として位置づけられる。アメリカの愛国者たちは新しい権利を求めていたのではなく、英国人として生来持つ古い権利を守ろうとしていた。独立後も両者は共通の価値観で結ばれ、20世紀の二度の大戦では全体主義に対抗して戦った。

英語圏の拡大過程で、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドは平和的に独立を達成した。アイルランドとインドは当初は例外的存在だったが、最終的には英語圏の価値観を受け入れた。特にインドの民主主義の成功は、これらの価値観が人種や文化を超えて普遍的であることを証明している。

しかし現在、英語圏は危機に直面している。英国のEU統合、アメリカでの政府権力の拡大、国際法廷や官僚制度への権力集中により、伝統的な分権制と議会主権が脅かされている。著者は、オバマ政権の反英語圏的傾向を特に批判し、アメリカがヨーロッパ型の中央集権国家へと変質していることを警告する。

著者は英語圏諸国間の自由貿易圏創設と軍事同盟の強化を提案する。チャーチルが構想した「英語を話す民族の兄弟的結合」の実現こそが、自由と民主主義を守る道だと結論づけている。本書は英語圏の歴史的功績を讃美しながらも、その将来への危機感を込めた警鐘でもある。

各章の要約

序章 英語圏の奇跡

Introduction: The Anglosphere Miracle

著者は幼少期のペルーでの体験から始める。1968年のベラスコ政権下で農場が襲撃され、財産権の不安定さを体験した。同時期に建国されたにも関わらず、北米は南米より繁栄している。この差異は植民地化した民族の違いに由来する。英語を話す民族は財産権、個人の自由、代議制政府を重視し、イベリア系は封建制と大土地所有制を移植した。西洋文明の三要素は法の支配、個人の自由、代議制政府である。これらを一貫して適用してきた国は英語圏に集中している。英語圏は血統や土壌ではなく政治的価値観によって結ばれた文明である。

第1章 同じ言語、同じ賛美歌、同じ理念

The Same Language, the Same Hymns, the Same Ideals

1941年8月、ルーズベルトとチャーチルがニューファンドランド沖で会談した際、両国の絆を象徴する宗教的儀式が行われた。チャーチルは「同じ言語、同じ賛美歌、そして多かれ少なかれ同じ理念」と述べた。英語は規制されない自由な言語として発達し、他の帝国言語と異なり、植民地化後も生き残った。英語の語彙の豊富さは、正確で曖昧でない表現を可能にする。プロテスタンティズムは政治的アイデンティティの核となり、反カトリック感情が英語圏の結束を強めた。アメリカ革命も部分的には宗教的不寛容の結果だった。しかし宗教観察の衰退後も、プロテスタント的政治文化は英語圏に残存している。

第2章 アングロ・サクソンの自由

Anglo-Saxon Liberties

5-6世紀にゲルマン系部族がブリタニアに移住し、アングロ・サクソンとなった。遺伝学的研究によれば、現代イングランド人の多くは先住民との混血である。アルフレッド大王時代(9世紀)に統一国家が形成され、10世紀には世界初の国民国家となった。アングロ・サクソンは訴訟好きな民族で、コモンロー(慣習法)の基盤を築いた。法は王のものではなく「国土の法」であり、すべての自由民に適用された。賢人会議(ウィタン)は国王の権力を制約し、1014年には条件付きで王を復位させる前例を作った。この憲法的政府の概念は、1066年のノルマン征服によって中断されるまで発展を続けた。

第3章 イングランドの再発見

Rediscovering England

ノルマン征服(1066年)は英語を話す人々にとって災難だった。フランス語話者の貴族階級が支配し、英語は農民の言語に格下げされた。しかしアングロ・サクソンの行政制度は地方レベルで生き残り、コモンローは継続した。12世紀頃からノルマン系貴族もイングランド人としてのアイデンティティを持つようになった。1204年にフランスがノルマンディーを併合すると、この傾向が加速した。悪王ジョンの圧政に対し、貴族たちは1215年にマグナ・カルタを強制した。これは初めて政府が法に従うことを明文化した文書である。マグナ・カルタの執行機関としてパーラメントが発展し、1265年のシモン・ド・モンフォールの議会が現代議会制度の出発点となった。

第4章 自由と財産

Liberty and Property

英語圏の財産権概念は世界で例外的である。ヨーロッパ大陸では相続時に家族への配分が法的に定められているが、英語圏では個人が自由に遺産を処分できる。この差異は、財産を個人の完全な権利とみなすか、共同体への貸与とみなすかの違いに由来する。英国の長子相続制は、次男以下を自立に向かわせ、社会的流動性を生み出した。17世紀には富裕層が貧困層を大幅に上回る子孫を残し、教育を受けた中間階級が拡大した。財産権の絶対性は信託や財団を可能にし、市民社会の基盤となった。資本主義は生産よりも略奪が有利だった農耕社会のパターンを打破し、正直な労働によって富を築く制度を確立した。

第5章 第一次英語圏内戦

The First Anglosphere Civil War

17世紀前半、チャールズ1世の統治下で宗教、財政、権力をめぐる対立が激化した。王は議会なしに11年間統治したが、スコットランドでの反乱により議会召集を余儀なくされた。1642年に内戦が勃発すると、これは英語圏全体を巻き込む紛争となった。カヴァリアーズ(王党派)とラウンドヘッズ(議会派)の対立は、単なる階級対立ではなく政治的価値観の違いだった。レヴェラーズは世界初の自由主義的大衆運動として、個人の財産権と代議制政府を主張した。クロムウェルの共和制時代(1649-60年)を経て、王政復古(1660年)後も議会主権は維持された。1688年の名誉革命で議会制君主制が確立し、これが英語圏の政治的DNA となった。

第6章 第二次英語圏内戦

The Second Anglosphere Civil War

アメリカ独立戦争は「第二次英語圏内戦」として理解すべきである。植民地の愛国者たちは新しい権利を求めていたのではなく、英国人として生来持つ古い権利を守ろうとしていた。「代表なくして課税なし」の原則はマグナ・カルタに由来し、ジョン・ハムデンの船舶税抗争の伝統を受け継いでいた。宗教的側面も重要で、ケベック法(1774年)によるカトリック教会承認が植民地のプロテスタントを激怒させた。戦争は英語圏全体を巻き込み、旧来の地域的・宗教的分裂に沿って進行した。英国世論も植民地に同情的だったが、貴族院が妥協を拒否した。最終的にアメリカは独立を達成し、1787年憲法で英語圏政治哲学の最高傑作を生み出した。

第7章 アングロ・グローバリゼーション

Anglobalization

1707年のイングランド・スコットランド合同により、現代的な意味でのブリテンが誕生した。合同はスコットランドで人気が高く、イングランドで不人気だった。18世紀にブリテン・アイデンティティが形成され、プロテスタンティズムと反フランス感情が結束を強めた。大英帝国は民族的ではなく政治的アイデンティティに基づいていた。オーストラリアは囚人植民地から始まったが、個人主義的社会に発展した。カナダは王党派移住者が建設したが、最終的にはリベラルな社会となった。インドでは、ホイッグ派が教育による近代化を、トーリー派が伝統的支配構造の維持を主張した。マコーリーの英語教育政策により、英語圏的価値観を持つ中産階級が育成された。アイルランドは長らく例外的存在だったが、21世紀初頭に英語圏への復帰を果たした。

第8章 帝国から英語圏へ

From Empire to Anglosphere

英語圏の成功は5つの要素に基づく:国民国家の発達、強固な市民社会、島国という地理的条件、プロテスタント的文脈での宗教的多元主義、そしてコモンロー。外国人訪問者たちはこれらの特徴を注目し、特にトクヴィルは英米を「英語文明」の連続体として観察した。島国的地理は常備軍を不要とし、政府の権力を制約した。プロテスタント的価値観は勤労と倹約を神聖視し、経済成長を促進した。宗教的多元主義は世俗主義と寛容を生み出した。コモンローは政府を国民に従属させる独特の法体系を確立した。しかし英語圏諸国でも極端主義は根付かず、中庸な社会民主主義政党が発達した。愛国心が保守派に偏る理由は、英語圏が「弱者」になりにくいためである。

第9章 汝らがいかなる国民であるかを考えよ

Consider What Nation It Is Whereof Ye Are

現代の英語圏は深刻な危機に直面している。オバマ政権は反英語圏的政策を推進し、伝統的な同盟関係を軽視している。大統領の姿勢は父親の反植民地主義イデオロギーに根ざしている。同時に、英語圏諸国では言論の自由が制限され、国際法廷への権力移譲が進み、官僚制度が肥大化している。税負担は歴史的に異常な水準に達し、政府債務が急増している。これらの傾向は、個人よりも国家を優先する大陸ヨーロッパ型システムへの回帰を意味する。英語圏の伝統的価値観である分権制、議会主権、個人の自由が脅威にさらされている。自由貿易圏の創設と軍事同盟の強化により、英語圏の結束を回復する必要がある。

結論 英語圏の黄昏?

Anglosphere Twilight?

英語圏の物語は、統治者に意志を押し付けた人民の歴史である。原始的部族会議から現代議会制度への発展、コモンローによる自由の防衛、プロテスタンティズムから生まれた個人責任の概念、島国という地理的優位、個人主義的財産法から生まれた資本主義—これらすべてが現代文明の基盤となった。しかし今日、この遺産は放棄されつつある。英国はEU統合により主権を失い、他の英語圏諸国も中央集権化と官僚制の拡大に直面している。経済の重心はアジアに移り、英語圏の相対的地位は低下している。しかしこの過程は宿命ではなく選択である。解決策は英語圏自由貿易圏の創設である。チャーチルが構想した「英語を話す民族の兄弟的結合」を実現し、共通の価値観と制度に基づく同盟を強化することが求められている。


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